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冒険者になろう!【中編】


(貴族らしいけれど……)


 それが爆発している。

 平民の彼らに貴族の教育は耐え難かろう。

 たまのガス抜き、ということで今日は存分に喋り倒させるのがいいかもしれない。


「ほら、そろそろ冒険者協会だぞ。しゃんとしろ」

「うん!」

「はいだ!」


 ダメだ、完全にガスと共に気も抜けた。

 肩を落としつつ、扉を開ける。

 賑わいが急に静まり返るのは、どこの冒険者協会建物も同じらしい。

 気にすることなく受付に進み、浮遊魔法で浮かんでカウンターの上に手を乗せる。


「この二人の冒険者登録をしたい」

「ひっ! ……あ、あ、ア、アーファリーズさんっ……! わ、分かりました!」


 この受付嬢はリズのことを知っている人物だったらしい。

 それなら話は早いな、と床に足をつけて二人を呼び寄せる。

 だが、隣接する酒場にたむろう冒険者が、みんなリズを知っているようではない。

 何人かはこちらを見ながら「誰だあのガキども」と訝しんでいる。


「管理人さんはもう冒険者登録を済ませているのか?」

「済ませてるよ。在学中に登録したんだ。学費稼がなきゃいけなかったからね」

「え! 自分で学費稼いでたんか!? すげーだべな!?」

「冒険者は日雇い労働者みたいなものだから、割りのいい仕事をするにはもってこいだったんだよね。キミたちもこれからは自分で稼いで、将来のために貯めておくなり、たまの贅沢をしたりするといい」


 ボクは実家に仕送りしなきゃいけないけど、と心の中でつけ加える。

 この二人にそれを言うと、なんだか「自分たちも仕送りしたい」とか言い出しそうだったからだ。

 それ自体は悪くないと思うが、まずこの二人の実力が分からない。

 受付嬢が差し出した書類にサインをする程度の学力はあるようだが、では、自分の実力を正しく理解した上で自分の実力相応の依頼を選び取ることができるのかどうかは怪しいところ。


「書類に不備はありませんね。では、こちらが冒険者証となります」

「おおー!」

「ありがとうございます!」


 細いカード状の冒険者証を受け取って、はしゃぐ二人。

 冒険者証は皮のカードケースに入れて、腕に巻きつける。

 それもセットでもらって、早速二人は腕にそれを装備した。


「かっけー!」

「ちなみに、冒険者に関して説明は必要ですか?」

「そうだな……フリードリヒ、モナ、聞いておくといい。ボクは依頼を探してくるから」

「「はーい!」」


 二人とも非常に素直である。

 まあ、冒険者に関しての説明といってもリズにとっては一般的な範囲。

 冒険者は上はAから下はDまでランクがあり、さらにその中でカラー分けされている、という内容。

 優秀になればプラチナ、その次がゴールド、その次がシルバー、一番下はブロンズ。

 登録したら『Dランクブロンズ』からスタートだ。

 その後、達成した依頼内容によってランクアップを申請できる。

 依頼の過程は冒険者証が記録するので、ズルはできない。

 腕につけるこの冒険者証は、記録媒体になっているのだ。

 こう見えて、これは魔道具である。


「よう、アーファリーズ。また定期的な荒稼ぎか?」

「おう、ストルス・ロスド。そうだぞ。なにか割りのいいやつはないか?」


 話しかけてきたのは、全身鎧の大男。

 名をストルス・ロスド。

 王都を拠点にする最大クラン『太陽の玉座(サン・グ・ディロネ)』のリーダー。

 常に兜をかぶっているので、彼の顔はリズも見たことがない。

 声で男だと判断している。


「それならボアの群れ討伐をやらないか? うちのクランで何度もやっているんだが、最近復活の速度が速い。……いや、速すぎる。他にも群れない魔物も群れていたりする。ギルドが騎士団に報告して調査を頼んだが、国は動く気配がない」

「む……」

「お前ほどの魔法使いなら、なにか分かるかもしれん。同行してくれないか? 調査依頼も兼ねてだ。その分割増して払う」

「いいだろう。とりあえずボアの群れ……それから、本来群れないはずの魔物の群れとやらだ」


 騎士団……国が動かない。

 それを聞いた時眉を寄せた。

 あからさまだったたろうが、仕方ない。

 国に所属する騎士団の職務は国民の安全ではあるが、それは主に貴族階級の者たちを指している。

 他国との戦争や、それこそ魔王が現れれば国家の危機としてその武力や潤沢な予算で前線を任されるだろうが、彼らは日々を必死に生きる平民を、魔物から守ることはない。

 魔物から弱く、身分の低い人々を守るのは、彼らのような冒険者だ。

 冒険者の中でもストルスのような『Bランクシルバー』以上の者たちは、自警団としての役割を自ら担い、『クラン』を立ち上げる。

 クランは複数のパーティーが参加しており、ある種の目的のために徒党を組む。

 そしてそれらのクランや、個人(ソロ)が一つの協会として助け合い、情報共有の場となるのがここ『冒険者協会』というわけだ。

 ストルスの『太陽の玉座(サン・グ・ディロネ)』は王都でも最大クラン。

 五つのパーティーが参加している。

 この規模となるとクラン専用の建物があったりするのだが、今いるこの場は冒険者協会本部の建物。

 つまり、ストルスは魔物の数の変化や群れない魔物が群れること、そして討伐したボアの群れが再び群れを作るくらい数を増やす異常を相談しに来た……ということだろう。

 そのくらいの異常事態ならば、最大とはいえ一クランにすぎない『太陽の玉座(サン・グ・ディロネ)』からではなく、冒険者協会から国に伝えるべきだと判断した。

 だが、それでも国は……動かなかったと。


(まったく、なにをやっているのか)


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