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決戦場は卒業パーティー!【中編】


(……でもエリーの指示でタキシードをオーダーで仕立て直したから、めちゃくちゃ決まってるもんね。あーこれは逞しい騎士系が好きなご令嬢はときめくなー)


 わかるわかるー、とリズも頷く。

 なぜならリズもどっちかというとガッチリムキムキ系が好きなので。

 ヘルベルトは中身を知っているから、お断りだが。


(で……)


 反対方向を見れば、令息たちの視線はマルレーネとモナに釘づけである。

 それはそうだろう。

 四大侯爵家の一角、ユスト家の令嬢。

 しかもたった一人の女の子。

 いくら養女とはいえ、彼女の美貌はリズも目を見張った。

 ヘルベルトでなくても見惚れるのは無理もない。

 まあ、ヘルベルトはマルレーネの容姿だけでなく、努力家で庶民的なところも好ましく思っているようだが。

 そしてモナだ。

 平民の彼女は、今回エリザベートの気合いの結晶。

 元々の素材がいいので、エリザベートとマルレーネの二人に並んでも問題ない可愛らしい姿となっている。

 なにがすごいってエリザベートが選んだのはミニスカートのドレスだ。

 肌を見せる習慣のない貴族にとって、あんなに足が出る服装は()()()()()

 だというのに、エリザベートはあえてその丈でドレスを仕立ててモナに着せた。

 たださすがに平民のモナがそんなドレスを着て行けば、貴族たちになにを言われるかわかったものではない。

 それも見越して、薄い白のレース生地で覆うようなロングスカートを腰から羽織るように着せてある。

 ピンク色のミニスカートは、その薄い白のレーススカートの間から見える形だ。

 上半身はしっかり着込んであるし、白のレーススカートは大きめのリボンと後ろの部分が多めのフリル状に詰めてあるため、前からだけ、脚がうっすら見えるというなんとも斬新なデザインになっている。


「よ、妖精……」


 誰かがそんな風に呟いた。

 モナを見ての感想だろう。


(わかる)


 と、誰も見ていないところでリズも頷く。

 背中のリボンが大きいので、歩く度にヒラッとふわっと舞い上がり、羽根のように見えるのだ。

 エリザベートに「モナ、あなたは俯きがちになってしまうから、とにかくわたくしの頭を見ていることだけ考えなさい!」と言われている。

 ついでにマルレーネに「ワタシが侯爵家に引き取られて、最初に教わったのは笑顔の練習よ!」と、ここ数日ずっと微笑みを浮かべ続ける練習もしていた。

 それにより、今のモナはその辺のご令嬢では太刀打ちできない独特の空気を醸し出している。

 特別製のドレスもあいまって、なんだか現実離れしていているのだ。

 あれは【勇者】というより【聖女】に近いかもしれない。


「アーファ!」

「え?」


 しかし、そんなリズのところに今度はこちらがドッキリするような人物が駆け寄ってきた。

 淡い水色のドレスを纏った双子の姉、アリアリリィ・エーヴェルインだ。

 その姿を確認した時「まさか」と思った。

 だってアリアはまだ八つ。

 学園は年齢制限などないが、貴族たちは息子や娘の学園で婚約者探しを兼ねているため、それなりに年頃にならないと通わせたりはしない。

 リズのように、特別な事情でもない限りは。

 しかも今日のパーティーは卒業パーティー。

 だから、アリアがここにいるのは……どう考えてもおかしいのだ。


「は? はぁ!? ァァァァァアリアァ!? ななななんで、なんでっ、なななでこここここにっ」


 普段冷静なリズも、これには動揺を隠せない。

 おかげで勇者特科の生徒たちに奇妙なモノを見る目で見られている。

 それはそうだろう、彼らからすればアーファリーズ・エーヴェルインは見た目とは裏腹に無敵超人のようなものなのだから。

 それがあんなにもわかりやすく動揺している。


「あ、あのね、あのね、王子様に招待状をいただいたの! ゼジルさまっておっしゃる、三番目の王子様!」

(あの野郎の差し金かぁ! ついにアリアに手ぇ出しやがったな殺す!!)


 嬉しそうなアリア。

 だがしかし反対にすべてを悟ったリズの表情は阿修羅だ。

 あの野郎、やりやがった。

 リズがもっとも許し難い行為——家族を巻き込む行為だ。


「わあー、管理人さんにそっくりだんべぇ〜」

「! モナ」

「はわっ」


 エリザベートの咎める声色に、すぐ口を塞ぐモナ。

 だが、漏れた言葉はもう戻らない。

 会場内でモナに見惚れていた男たちの表情が一瞬「?」となったが、すぐにデレェ……と緩む。

 意外にも方言のギャップで陥落した者が多い模様。


「あの、管理人さん? そちらの管理人さんにそっくりなレディは……」

「あ、ああ……ボクの双子の姉……アリアリリィ・エーヴェルイン」

「わ、は、はじめまして。アリアリリィ・エーヴェルインともうします。妹がいつもお世話になっております」

「お世話してんのはボクだよっ」


 ロベルトが控えめに質問してきたので答えたのに、姉ときたらこれだ。

 しかし、ハッとする。

 今まで手紙には……手紙というよりも報告書のような「本日教員免許を取得。仕送りの金額を来月より白金貨一枚分上乗せします」とか、そんな内容しか送っていない。

 ゼジル王子との不仲など、伝えたことがないのだ。


(だ、だって王子と不仲とか言ったら絶対心配されるし……)


 その理性はあるのにどうしてブレーキはぶっ壊れているのか。


「ふ、ふーん……まあ、確かに王子からの招待には断れないもんね」

「うん!」


 その割には大変嬉しそうだ。

 浮かれてる……これは完全に浮かれている。

 そもそも、八歳は社交界に出るには早すぎる。

 せいぜいお茶会デビューが席の山。

 リズのような規格外ならまだしも——いや、アリアもある種十分に規格外ではあるが——完全に巻き込まれているというのに、この能天気な姿。

 頭痛がする。



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