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管理人と大貴族【中編】

 

「え? え? あ……?」

「君はここの職員かね? 局長は?」

「え、と、そ、そ、その、ただ、ただいま連れてまいります」

「ああ、いないなら構わんよ。ただ、こちらのアーファリーズ・エーヴェルイン嬢を『勇者特科』の担当教師に推奨したい。彼女なら間違いないだろうからね」

「わたくしもよ。夫も息子たちも賛成してくれているわ」

「ミュラー家もエーヴェルイン嬢を推奨する。ロベルトが大変信頼を寄せているようだ。最近手紙も頻繁にくれるようになって、自由に会いにもいけるし……そうそう、この間は妻の誕生日パーティーにエリザベート嬢と一緒に、勇者特科の子たちが出席してくれたんだよ! あれは嬉しかったなぁ」

「それは羨ましい! 来年のエリザベートの誕生日はぜひ我が屋敷でパーティーをしよう! 可能かね、管理人殿!」

「許可」

「おおおおー!」


 両手を掲げて喜ぶケイアー公爵。

 その様子に顔面蒼白になり、さらに小刻みに震える男性職員。

 なんなら汗もすごい。


「また娘にドレスを買ってやれる……ああ、なんと嬉しいことだろう! しかももう嫁の貰い手などないと思っておった。ああ、まさかまたミュラー伯爵家のロベルト殿に婚約を申し込んでいただけるとは……」

「本当に、ご縁とは不思議なものですね」

「あら? まだエーヴェルイン嬢の教員免許試験の願書が出てこないの? 受付はこちらよね?」

「は、はいいいいっ! す、すぐお持ちしますぅ!」


 ふふふ、と三人が笑い合う。

 それを見上げて、リズもにんまりと笑った。


「ご協力感謝しますよ」

「なぁに、この程度造作もない。しかし、こうもわかりやすく差別が行われているのは問題だ。陛下にご報告させていただいても?」

「ボクは構わないけど、それよりもっとやることがあると思う。あと五、六年のうちに魔王が復活する。それに備えておかねばならない」

「……本当に、復活するというのですかな?」

「する。あのままならね」


 断言した。

 その瞬間に受付カウンターから「願書でございます!」とあの男性職員が書類を持って現れる。

 その書類に目を通し、確認してからサインした。


「で、では、すぐに受理いたします! 試験日は『大地の季節・烈火の週・雷の日』に開催される予定です。日程が近づきましたら、お手紙でお知らせしますが……」

「『大地の季節・烈火の週・雷の日』だね、わかったよ。アリガトー」


 にや、と笑ってみせる。

 ぐぎぎ、という表情をした男性職員に手を振って、支援者三人のもとへ戻った。


「提出と受理するという言葉、しかと」

「ええ、見届けさせていただいたわ」

「ホッホッホ……エーヴェルイン嬢が教師になられる日が楽しみですねぇ」

「っっっ」


 言質取ったのを、しっかり確認したからな。

 という釘を刺すのも忘れない。

 さすが上級貴族様方である。

 再び真っ青になった男性職員をによ、っと笑ってから事務局を出たリズたち。


「しかし、魔王復活が現実味を帯びてきたとなれば世界規模で対策が必要ですな」

「ちなみにだが……エーヴェルイン嬢は【賢者】の称号をお持ちと聞く。その魔法の力で、あの空間を再び閉じることはできないのだろうか?」

「可能か不可能かで言えば可能」

「なんと!」


 驚いて顔を寄せてきたエリザベートの父、ケイアー公爵に、少し離れてもらう。

 顔が近い。

 存在がでかい。暑苦しい。


「……しかし、なにか条件がある、と?」


 その分冷静に問いかけてくるミュラー伯爵はさすがこの国の古参貴族、といったところだろうか。

 そう、とリズは静かに頷いた。


「現法にすごく不満がある。【勇者候補】の称号を与えられた者への待遇の愚かさ。それにより【勇者】に至れなくなっている者たちが溢れ、その後の人生もろくなものではない。貴族からしても扱いに困り、未来を奪われる。なぜ世界のために戦う力、可能性を有する者が冷遇されなければならない? しかもこれは、この国だけでなく世界中で同じことが起きている。こんなの、認めてなどおけない」

「む、むむむ……確かに。当事者となってからまさに頭の痛い問題でしたな」

「うむ……」

「そうですねぇー。我が家は特に立場上、マルレーネちゃんを引き取って、その益だけは得ようとしました。マルレーネちゃんにはすごくそこのところ疑われましたけど……マルレーネちゃん、普通にかわい〜んですもの〜」


 くね、くね、とするユスト夫人。

 一応、学園内の街道なのでやめてほしい。

 冷めた目で見られて「こほん」と咳払いしていつもの彼女に戻る。


「つまり、現法を変更すればよい、ということかな? それならば——」

「いいや、それだけでは足りない。もちろんそれは第一条件だ。しかし他にも条件がある。シンプルにボクだけの魔力では足りない」

「なんとっ」

「でもそれを解決する方法はある。ボクの双子の姉、アリアリリィ・エーヴェルインの助力だ」

「姉……?」


 そう、と頷く。

 そもそも、魔王を封じてあるあの空間は、魔王の城、その周辺含めた数キロメートルをくり抜いて五重の空間のズレ。

 これほどの封印魔法をリズ一人で行うには、魔力が不足する。

 桁外れの魔力量を持つ姉——アリアリリィの魔力を得られれば、たった二人でも封印をし直すのは不可能ではない。

 だが——。


「もしくは最大級の魔力蓄積型の魔石が五つ」

「五つ!? この国にあるのは一つしかないぞ!?」

「そう。だから可能か不可能、どちらかと言えば可能」

「だが、条件が……か」


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