第49話 新学期の始まり!
夏休みが明けて遂に新学期が始まった。俺とすみれは自分たちの教室に入ると、既に竹中も先に来ていた。
俺はどこか、この前の出来事が頭の中でフラッシュバックする。それだけで、とても恥ずかしい感情が吹き出そうになるのを、必死に抑えようとした。
竹中と目が合うと少し向こうも意識しているのか、一瞬だけ目を反らそうとした。が、すぐにいつも通りに接してきてくれた。
「おっはよー。すみれに赤坂君。ついに夏休み終わっちゃったねー」
「おう、おはよう、竹中。今日も元気だな」
「おはよう、朱里。海に行ったり、ゲーム声優の仕事をしたり、そしてトレーニングと、色々あったけど、むしろこれからだね」
何故か俺が自席に座ると、そのまま2人も来て会話を始める。
「うんうん、これから彩夏ちゃんも含めて、気合いを入れて頑張らないと。だよね、赤坂君?」
「お、おお。そうだな。3人が完璧な演技が出来るよう、俺もサポート頑張るよ」
「兄貴もこれから忙しくなるから、体調管理しっかりね。私達の管理が仕事なんだから。頼りにさせてもらうわよ」
そうか、秋からは本格的に収録をやると聞いたんだった。となれば、そこからが正念場だ。VTuberをテーマ、ヒロインとしたゲームは、まだ市場にはほとんど出ていない。このゲームが成功し売り上げが良ければ、出演しているVTuber達の知名度も当然上がるはずだ。
綾那さんはこの企画が社運を賭ける程じゃないとは言っていたが、売れた方が断然良いに決まっている。そして出演しているVTuberの人達にとってもターニングポイントと言えるかも知れない。
そんな事を考えていると、校内の朝のチャイムが鳴る。久しぶりの学校で、何だか急に現実に戻って来たみたいだった。それほど夏休みの間、俺にとっては色々とあったのだと、しみじみ思ってしまう。
すみれと竹中が自分の席に戻って行く。ああ、そう言えば、宿題全部終わらせてなかったな……。ちょっと気が重いが、二学期が始まったのだった。
学校では朝からどうでも良い始業式などに参加し、眠気を我慢するのが辛かった。それからあまり覚えていない内に下校時間となり、帰る事に。
すみれが竹中を誘って3人一緒に下校するよう誘ったが、どう言う訳か今日は用事があるのか、1人で帰って行ったようだった。だからなのか俺は今、妹のすみれと一緒に下校している。
「竹中は今日何か用事でもあったのか?」
軽い気持ちですみれに聞くと、
「ちょっと寄る所あるって。それはともかく、兄貴は朱里の事どう思っているの?」
そんな事を不意に聞かれた。一瞬意図が分からず、答えに窮する。
「え、どうって」
「朱里は私の親友よ。今さら隠さなくても、告白の件は知ってるの」
「なっ!? 何ですみれがそれを知ってるんだよ」
「朱里が教えてくれたの。前々から告白するってね。で、朱里の事どう思ってるのか、親友の私としても知りたいのよ。兄貴の事を信用してない訳じゃないけど、どうしても心配なのよ」
なるほど。すみれはもうその事を知っているんだな。当然親友同士なんだし、話していてもおかしくは無いか。
「どこまで竹中から聞いているかは分からないけど、俺も竹中の事が真剣に好きだよ。ただ、今はVTuberとして、ゲームの出演もある訳だし、まずは収録が終わってから、俺から改めてちゃんと話そうと思うんだ。それに彩夏ちゃんの気持ちにも、真剣に返事をするつもりだ」
妹にこんな話をするとは思わなかったが、それ程すみれが竹中の事を真剣に考えているのだろう。親友が変な男に引っかかるとか、普通は嫌だよな。仮にすみれに恋人が出来た場合、俺なら相当相手の男がどんな奴か調べるし。やはりシスコンだと言われても、これは仕方ないかも知れんが、これは譲れない。
「そっか。ちゃんと真剣に考えてくれていたんだね。良かった。兄貴はちょっと面倒くさがり屋だし、いい加減な所があるから、心配だったけど、安心したよ」
すみれは少し安堵したと同時に、その身体から大きな音が聞こえてきた。
――ぎゅるるるる。
お腹から分かりやすい程の空腹音が聞こえたのだ。
「あはは……。今日はちょっと朝あんまり食べてなかったから」
すみれが照れくさそうに言うと、どこかキョロキョロと辺りを見渡す。
「ねぇ兄貴、久しぶりにどっかご飯でも食べに行かない? この辺にファミレスあったよね」
「ダイエットでもしてるのか?」
「そんなんじゃないって。最近は1人でも演技の練習をしていて。何かとエネルギーを使うのと、あと最近あまり時間がなくてさ」
確かに夜の配信をした後も、熱心に何かしていると思っていたが、どうやら演技の練習をしていたという訳か。
「じゃあ行くか。可愛い妹と一緒に行けるのなら、大歓迎だ」
「あんまりそんな言葉を外で言わないでよ。こっちは恥ずかしいんだから。じゃあ行きましょ」
俺とすみれは久しぶりに兄妹で一緒にご飯を食べに行き、それから自宅へと帰ったのだった。




