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第48話 その言葉は突然に。

 移動した公園で2人、当然誰の姿もいない。どうしてこんな公園に竹中は俺を連れて来たのだろうか。ここに来るまでは他愛もない話題で話しながら来たが、花火の打ち上がる音が次々と聞こえてくる。祭りが本格的に始まったのだろう。


「それでさっきの勝負のお願いって、ここじゃないといけないのか?」

「うん。ここの方が良いの。ここで……良いんだ」


 竹中は少し緊張しているのか、手を強く握っている。そんなに難しいお願いを言いたいのだろうか。


「とりあえず、そこの椅子に座ろっか」

「そうだな」


 2人で椅子に座る。


「あのね、赤坂君。さっきの勝負のお願いなんだけど」

「そうだな。約束だからな。俺の出来る事なら良いけど」

「うん。あはは。何ていうか、赤坂君ってさ私の事どう思ってるかなーって、知りたくて」

「どうって。前にも言ったが、一緒に居て楽しいし、とても頼りのある友達って言うか。まぁ口にすると恥ずかしいけど、異性としても魅力的だと思うぞ」


 竹中は少しの沈黙を保ち、口を開いた。


「私って少し男っぽいって言うか、女性として魅力ないかなって思ってたけど。案外魅力も少しはあるんだね。嬉しいな、赤坂君に言われると」


 妙に竹中の顔は赤くなっている。そう言う俺もさっきの言葉で多分赤くなっていると思う。


「お願いって今の質問で良いのか……?」


 何かとても胸騒ぎがした。今から竹中が言う事はきっと、とても大事な事だと分かる。こうやって2人きりになって、こんな形で。そして俺を見る竹中の表情は、いつも見せた事のない程緊張しているのがこっちにも伝わってくるからだ。


「ううん。違うよ。あのさ、こんな事いきなり言われたら驚くと思う。でも今日ずっと言おうと思ってたの。私は、私は赤坂君が、渉君の事がずっと前から好きなんだ。やっぱりこのまま隠しておく事が出来なくて。だから私と良かったら付き合ってくれたら良いなって、それが私のお願い。ごめんね、こんな形でさ。卑怯だよね。でも、それでも、もう言わずにはいられなくて、私ったら嫌な女だよね」


 一生懸命に思いのたけを伝えてきた竹中は、少しばかり泣きそうな顔をしている。俺がどう言ってくるのか怖くて、緊張して、少し震えてもいるのが分かる。


 いつも軽い調子の竹中とはあまりにもかけ離れていて、そして突然の、本気の告白にかなり俺は戸惑ってしまう。


 竹中の事は当然嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。恋人となったら楽しいのが分かる。でも色々考えてしまう。彩夏ちゃんの気持ちにも、未だきちんと応えていないのに、俺は竹中の気持ちに応えて良い男だろうか。


 そもそも俺は竹中の事が好きなのだろうか。今さらになって自分の気持ちと向き合ってみる。


 そして今まで一緒にいて、俺は竹中朱里と言う女性が好きなんだと、今更になって気付いた。告白されて気付くとは、鈍感ってすみれに言われても、何も反論できないな。いつだったか、夜に言われたな。


 考えてみれば、妹のすみれの事も好きだ。シスコンと言われても仕方ない。だがそれは当然妹としてだ。そして彩夏ちゃんの事も好きだ。だがこれも妹みたいな感じとして好きだ。だから彩夏ちゃんの気持ちにハッキリ応えてなかった。曖昧にしているのは男として最低だ。


 ここで竹中の気持ちに対して曖昧に応える訳にはいかない。ただ、今は色々お互いの事も考えないといけない時期だ。竹中はゲームの仕事のためにトレーニングもして頑張っている。ファンも楽しみにしている。だから今俺が考える最良だと思う考えを言おう。それが他の人からは間違っているとしてもだ。


「竹中の気持ちは分かったよ。本当にありがとう。俺も竹中の事は好意的に思ってるよ」

「あっ、それってじゃあ……?」


「待ってくれ。今の竹中にはゲームの仕事もあるだろ。それに集中してほしいんだ。ファンも楽しみにしてると思う。ファンには俺もいるしさ。それに彩夏ちゃんにもちゃんと向き合って話をしたいと思う。それが終わったら、今度は俺から竹中に気持ちを改めて伝えたい。だからゲームの収録が終わると思う、来年の収録が終わる時まで待ってほしい。我がままなのは分かってるが、それが今言える俺の返事だから。でも、勇気を出して言ってくれて、ありがとな」


 俺の言葉にしばらく黙っていた竹中だったが、力んでいた拳がほぐれていく。


「あはは……。赤坂君は真面目なんだね、何だかんだ言ってさ。でも私待ってるよ、その時まで。うん、ちゃんと言ってくれてありがとね。何だかスッキリした!」


 竹中は俺の返事に満足したみたいで、とても清々しい表情になっている。いつもの明るくて元気なその様子を見ると少しホッとした。


「私、初めてのゲーム収録だけど頑張るよ! 赤坂君もしっかり私達のマネージャーよろしくね。だからそれが終わるまで待ってるよ」


 竹中がその言葉を言い終わると同時立ち上がる。


「そう言ってくれる竹中は本当に良い奴だな。何で俺みたいなやつを気に入ったのやら」


「全く、赤坂君は自分の事が分かってないのは変わらないね。わざとなのか分からないけど、すみれにもよく言われてるんじゃないの?」

「ま、まぁな……」


 確かにそうかも知れない。いや、気付いていても、その先に行くと言う事があまり分からない、ただの子どもなんだろう俺は。


「さっ、まだ時間もあるし花火今からでも見に行こうよ!」

「ん、そうだな。まだまだ打ち上がってるしな」


 そうして俺達はまた花火大会を楽しむ事にした。


 竹中からの告白は嬉しかったし驚いた。多分俺なりの返事は出来たと思う。


 今は竹中にとっても大事な時期だ。手にしたチャンスに対して一生懸命になってほしいと思う。何も焦る必要はないと思うんだ。きっと待っているのも辛いと思うが、向こうもしっかり理解しているはず。


 俺達はまだ大人じゃない。子どもなんだ。時間もあるし、ゆっくり物事を進めても良いはずだ。そんなふうに安心して思ってしまうのは、竹中の表情が明るく、魅力的だからかも知れない。

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