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第41話 突然のマネージャー勧誘に驚きしかない!

 唐突なマネージャー勧誘に俺は驚いた。綾那さんからしたら既にやってもらうつもりで話をもってきたのだろう。しかし何で俺にそんなマネージャーの仕事が務まると思ったのだろうか、少し不思議でもある。とにかく返答を出すための口を開こうとするものの、言葉に詰まる。


 どうにか最初に言った言葉もしどろもどろな内容だ。


「ええと、どう言ったら良いのか。いきなり過ぎて返答に困ると言いますか」

「そうね。もちろん強制しないわ。きっとあの3人は渉君がやってくれるなら、よりやる気が出ると思うんだけどね」


 こちらの様子を確認して、綾那さんはバッグから自分のスマホを取りだし、電話をかけだした。


『もしもし彩夏?』


 相手は妹の彩夏ちゃんだろうか。確か今は実況を撮っているはずだ。


『あら、お姉様。急にどうなさいましたの?』

『今ね、例の件で渉君と居るんだけど、もう少ししたらそっちに向かうわね』

『例の件……。ああ、ゲームの件ですのね。わかりましたの。では後程(のちほど)来るのを待ってますの』


 綾那さんは電話を切ると、また俺の方に向き直る。どうやら一緒に別荘に戻るらしい。


「正直に言うけど、今回の別荘を使わせてあげるのは、実は君をマネージャーにする為なのと、竹中さんと、すみれさんに出てもらう為なのよ」

「えっ、それってもしかして」


 どうやら急に別荘とビーチとやけに気前が良いと思ったら、このお姉さんは最初からそんな思惑で動いていたとは。俺に断らせない為にわざわざこんな回りくどいやり方をしたのか?


「ごめんなさい。始めからこんな嫌な勧誘の仕方をするつもりじゃなかったんだけど、私もこっちで仕事があったので、いい機会だったから」


 悪気のない笑みを浮かべて相変わらず俺の顔を覗きこんでくる様を見ると、嘘か本当か分からない。けどまぁ、そもそもマネージャーとして勧誘する事や、竹中やすみれを出演依頼する事は決まっていたのだろう。


「そもそも、彩夏が2人にも出演して欲しいって、どうしてもお願いされたのと、渉君をマネージャーにしたいと言い出したんだけどね。それでうちの会社の社員達と話してOKが出たから、こうやって今私と君が話しているって訳なの」


 えーっと、そもそもこの話は彩夏ちゃんがすみれと竹中とも一緒にやりたいのと。俺をマネージャーにさせたいためって。このお姉さんは凄い妹に甘いのかも知れない。いや、絶対甘やかしているんだろうなぁ。


 彩夏ちゃん、裏でそんな事を考えていたのか。ここまでお姉さんを振り回す様は何だか彼女らしいと言えばそうだな。


 そうなるとやるしかないかも。恐らく、いや間違いなくすみれと竹中も、ゲームの出演を引き受けるだろう。本気で挑戦すると思う。それなら俺も付き合わないなんて、非常に後味が悪い。せっかくの話だ。やってみても良いと思う。


「分かりました。2人が承諾したら俺もマネージャーをやらせて頂きます」


 その返答が予想通りだと思ってたのか、綾那さんが嬉しそうに頷く。


「そう言ってくれると思ったわ。ならさっそく別荘に戻りましょう!」


 そうして綾那さんの乗って来た車を上野さんが運転して、俺達3人は別荘へと帰ったのだった。






 海沿いの道をまた引き返し、別荘に戻って来た。建物の中に入るとリビングには人気がなく、すみれ達が実況を撮っているだろう声が、2階の方から聞こえてくる。


 戻って来るなり綾那さんはソファーに寛ぎながらスケジュール脹を確認している。上野さんはキッチンに入りさっそく夕食の準備に取り掛かり始めたようだ。そんな中で俺がぼんやりテーブルの椅子に座っていると、すみれが2階から降りてリビングへとやって来た。


「兄貴戻っていたんだ。あれ、彩夏ちゃん? いや、え、どちら様でしょうか?」


 彩夏ちゃんにそっくりな、しかし明らかに幼さがない、年上の女性にすみれは気付いて驚く。その反応で綾那さんがスケジュール脹を閉じて立ち上がり、すみれの方に向き直る。


「初めまして。私は彩夏の姉の綾那です。気軽に綾那さんって呼んでね。貴女は――、赤坂すみれさんね?」

「え、あ、はい。そうです」


 どことなくすみれが、年上の綾那さんに(かしこ)まっている。妹と姉とで放つ雰囲気が明らかに違うせいか、目を白黒させていた。


「いつも彩夏がお世話になっています。実はすみれさんや、竹中朱里さんに話があって寄らせてもらったの」

「話、ですか?」

「うん、そうなの。申し訳ないけど、ちょっと彩夏と朱里さんを呼んでもらって良いかな?」


 お願いされたすみれが小さく頷くと、2階へと行き、他の2人を呼びに行った。すぐに3人がリビングへと入って来る。多分綾那さんがゲーム出演依頼の話を持ちかけるつもりなのだろう。


「あれ、えーっとこの綺麗なお姉さんはどちら様ですか?」

「初めまして、私は彩夏の姉の、姫柊綾那よ。貴女は竹中朱里さんね。いつも彩夏がお世話になってます」

「は、はい! お姉さん、よろしくお願いします」


 小さくお辞儀して挨拶を綾那さんがする。そのお辞儀に反射的に竹中もお辞儀を返す。


「お姉様、もう着いてましたの」

「ええ、今来たところ。例の話を今からするつもりよ」


 彩夏ちゃんが階段から降りて来るなり俺の隣の椅子に座る。


「すみれさんに、朱里さん。実はお二方にお話があって今日は来たの。ちょっと突然の話なのだけど良いかしら?」


 すみれと竹中は首を傾げている。今から話す事の成り行きを俺と彩夏ちゃんが後ろで静かに見守る。ただキッチンでは上野さんが夕食の準備を着々と作っていく。今日はハンバーグだろうか。良い匂いがこっちに漂って来ていて、場違いにも夕食が楽しみだなと俺は思ってしまう。


「実はすみれさんと朱里さん、2人にVTuberを題材にした恋愛ADVゲームのヒロインとして出演してもらいたいの」


 綾那さんは俺の時と同じように、名刺を2人に渡すと、詳細を語り出した。

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