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第27話 星野宮きらりのメンバーシップ特典企画を考えよう!

 私は赤坂すみれ。星野宮きらりと言う名前でVTuber活動をしているわ。最近はコラボもやれて少しずつ人気も出てるの。


 今日は週末4人でやるコラボ放送をするために昼過ぎから、朱里、彩夏ちゃん、兄貴を含めて配信の打ち合わせをしたの。そしてその後にゲームセンターへ行きお化け屋敷で酷い目に遭ったりと、色々あったわ。


 そして今日は夜に少しだけ配信をやる予定だったので、私は帰るなり配信の準備をしていた。事前にSNSで予告していたのだけど、私のメンバーシップの特典を考える企画配信の予定をしていたからね。


 ふと、そこで配信準備をしていた時に、ある事を思い出した。帰ったら兄貴にプレゼントを渡すつもりだったんだ。私はプレゼントの入った箱を持って、隣の部屋へ向かい何度かノックした。


「兄貴今ちょっと良い?」


 ノックしてみたが返事がないみたい。寝てるのかしら。ドアノブを捻ってみると鍵もかかってなくて、扉を勝手に開けて入る。中の様子は電気は付いているものの、部屋の主は出払っているようだった。


 パソコンが起動していたので確認してみると、星野宮きらりの切り抜き動画のエンコードをしている途中――。


「これ、私が指定してお願いした動画ね」


 どうやら待ち時間の間にどこかに出かけたようね。どちらにせよ今から配信するし、その間には帰って来るでしょ。私は自室に戻りさっそく予定していたメンバーシップ特典を考える配信をする事にしたわ。




 私は早速配信をするために、呼吸を整える。最初の声は疲れていても、元気よくいかなくちゃね。


「みんなー、こんきらりー! 今日は予定していた通り、メンバーシップが許可降りたので、その特典を作ってみようと思います。少しでも可愛い絵を作れるよう頑張るぞ!」


『メンバーシップ出来たら入るからね!』、『どんなの作るのか楽しみ~』、『ちゃんと使えるのよろしくね~』。


「主にメンバー用バッジやカスタム絵文字を作っていきますね~」


 私は液晶タブレットを取り出しパソコンに繋ぐ。さっそくどんな絵を描くか考えてみる。


星野宮きらりと言えば、一番のトレードマークは星よね。まずはこの星から作ってみようかな。名前の後ろに星が付いたり、メッセージに星を流せるようにすれば、私の配信もきらきらして良い感じ。


「まずは星の絵を作ろうかな。やっぱり星がないと私のチャンネル感がないよね。まずは星バッジ作るね」


『きらりんの星どんなのかな』、『きらりんは絵描けるの?』、『やっぱり星だよね!』。


 私は液タブで星を頑張って描こうとする。ちなみに朱里と違ってそんなに絵心があるわけじゃないけど、美術の成績は4よ。頑張れば多少使えるのが出来るはず!


 ちなみに朱里こと雷桜つばきのメンバーシップの絵は、さすがにハイレベルなものだったのよねぇ。雷マークや、デンデン太鼓、角マーク、実用的に使う文字イラストも綺麗に仕上がっていたわ。羨ましい限りね。


 そして変わった事があって、最近私の事を視聴者さん達が、きらりちゃんではなく、『きらりん』と愛称をつけて呼んでくれている。これはだいぶ知名度と人気が上がって、呼ばれるようになった事かな。


 気さくにきらりんって呼ばれるの、可愛いし気に入ってるよ。


「なかなか、液タブで描くの難しいわね……! このっ、このっ。まぁ良い出来じゃないの」


 う~ん。星1つ描くのにここまで難しいとなると、先が思いやられるわね。自分のことながら情けないわ。とにかく星は何とか描けたので、次は何を描くとしようかしら。


『きらりん絵ヘタクソ~。でも可愛いから許す!』、『頑張ったやん。じゃ、はよ次描いて』、『星の次は何描くんだい?』、『次は?』。


「次はカスタム絵文字も描いていこうかな。使える文字で、『キラリッ』とか『草』に『ガンバ!』など無難に使える物作ってみるね~。あと、顔も描いてみようかな」


 よし、液タブで文字を作っていく。朱里いわく、とにかく可愛いのが良いらしい。


『良いじゃん』、『使えない、わけわからんのでも良いけどね』、『可愛ければ何でもよか』と、みんなのチャット欄のメッセージを見ながら、私は絵文字とキラリの顔を作っていく。普段から絵を描いているわけじゃないから、いざ描くとここまで難しいとは。


 むむむむむ……!


 これなら私の生みの親である、もこちび先生に今度作ってくれるよう依頼しないといけないわね。他のVTuberの人達も自分たちのママに頼んでいる人もいるし。


「やっぱり難しいなぁ~。今度先生にお願いするかなぁ~」


『きらりん、先生に頼むんかいっ』、『顔絵は先生に頼まないと無理だよね、つばきちゃんじゃないしさ』、『もこちび先生おねがいしま~す。きらりん挫折してますよ~』。


 くそー。文字は何とかなったけど、さすがにキャラの絵は私には無理そうだー。先生に頼んでおくしかないかー!


 もう今日は無難な文字絵を作って配信を終わるしかないかな。先生忙しくなければ良いけど。


「自分で作れるのはまた今度配信で作るけど、後はもこちび先生に依頼しちゃいます」


 あまりにもお粗末なメンバーシップのバッジや絵だと恥ずかしいしね。もこちび先生なら完璧な物を仕上げてくれるでしょう!


『もこちび先生お願いします~』、『そういやもこちび先生もVTuberやってるらしいね』、『もこちび先生もやってるの? ちょっと見てみるわ』、『もこちび先生のVTuberとか興味あるわ』。


 何だかすっかり、もこちび先生の話題に移ったけど、とりあえず今日は短時間で放送を終わる予定だったので、私は配信の締めへと移る事にする。


「今日はちょっと短いけど配信終わるね。スパチャ読みはまたまとめてやるので。おつきらり~」


『おつきらり~』、『お疲れ様でした~』、『おつきらりー』、『おつおつー』。


 そうして配信を終えると、スマホに通知が来た。誰だろうか。送られてきたメッセージをちらりと確認すると、もこちび先生からきていた。


『すみれちゃん、こんばんは。今度またきらりちゃんのイラストを描くので、その時一緒にメンバーシップの絵を格安で作ってあげるね。もこちゃんより。PS。今度コラボしましょうね』


 この配信を先生今見てたのね。何度か先生とはきらり関係で会ったけど、名前の通りちびっこと言うか、年上にしては幼女みたいな人だったわ。


 そう言えばあの人、会った時に自分のも作るって言ってたのよね。


 もこちび先生はプロのイラストレーター兼漫画家。小説のイラストや、たまにゲームのキャラクターデザインを手がけている人。


 本来こんな実力ある先生にデザインしてもらうのには、かなりお金がかかるはずだったんだけど、運よく安く作ってくれる事になったんだっけ。


 当時、星野宮きらりを作ってもらうために、色々と作ってくれる人を探していた時のこと。私はバイトで稼いだお金で、出来るだけ自分好みのデザイナーさんを探していたのだけど――。


 でもそういう好きなデザイナーさんは有名で、実力のある人は依頼料が当然高くて、あまり名前が知られていないデザイナーさんに頼もうと思ってたの。


 SNSで依頼を募集しても一向に私がお願いしたい人がいなかったので、もうその人にしようとする直前だった。突然もこちび先生からメッセージが届いたのだ。


『こんばんは~。VTuberの2Dモデル作成依頼を考えてるんですよね。良かったら一度私と会って、そちらのキャラクターの構想次第では安く作っても良いと考えています。どうでしょう?』


 それがもこちび先生との初めての出会いだった。


 でもこの時代本当にあの有名な先生なのか疑わしいよね。だから私は先生の事務所の住所や電話番号を調べて、ためしに事務所に電話をかけたの。


 そうしたら若い女性の人が出てきたわ。私の事情を話すと、あれは本人だと、電話で当の先生本人が話してくれたのよね。もうびっくりしたっけ。あの時は。


 そうして私は直接もこちび先生と会い、2人でカフェに入り星野宮きらりの構想や、へたなりに書いた自分のデザインを先生に見せるとえらく気に入ってくれたわ。


 で、もこちび先生が星野宮きらりの生みの親になってくれたってわけ。2人とも都内だったからこうも都合よく実現したのよね~。


 値段は秘密。多分正規に依頼したら、かなりの高額になると聞いた時は背筋が凍ったわ。


 先生はカフェで話を終えたら速攻で私を事務所に連れ込み、星野宮きらりを作り出したの。色々と細かい部分や、星の髪飾りのこだわりなど聞いてきて、サクサクと動作部分も調整したりと仕事は凄く早く、この時本当に私はラッキーだったなと思う。まぁそれでも作ってもらうのには数日かかったけど、驚異の速さで納入してくれたわ。


 で、何で私の依頼を受けたか聞いたら、


「すみれさんの熱意のあるデザインや、こだわりがあるならやってあげたいなって。後は自分も活動用のを作る前に練習するために、ね?」


 と、言ってきたの。どうやら私のきらりは練習を兼ねてるらしい。でも仕上がったモデルはとんでもなく完璧。文句なんか言えない程にね。


 そんな昔の事を考えていたら、母親から風呂に入るようにスマホにメッセージが来た。両親は私が今からVTuberとして配信するって言ったら、気を利かせて部屋には入って来ないの。本当に理解がある親には助かるわ。


「まだ兄貴も帰って来てないみたいだし、先に入っておこうかな。それとあれ渡してあげても、いいよね」


 私は机の片隅に用意しておいたプレゼント箱を見た後に、浴室へと向かうため部屋を出たのだった。

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