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第22話 星野宮きらりの登録者10万人記念パーティーをしよう!

 どうやら星野宮すみれの10万人見届けよう放送は終わったみたいだな。


 俺は竹中と彩夏ちゃんと計画していた、すみれのお祝いパーティーをするため、簡易折り畳みテーブルを置き、事前に準備しておいた、ケーキと飲み物に、ちょっとした食べ物を並べていく。そろそろ、向こうの3人がこっちの部屋に来る頃合いのはず。


 すると廊下でわちゃわちゃと声が聞こえてくる。


「どうして兄貴の部屋に行く必要があるのよ、朱里ったら聞いてるの?」

「そりゃ向こうの部屋で色々準備してるからだって。ほらほら~、さっさと入って」


 そんな2人の声と同時に扉が開かれ、竹中、すみれ、彩夏ちゃんの3人が俺の部屋にバタバタ入ってきた。


「ようやく来たか。星野宮きらりの10万人登録者おめでとう、我が妹よ」

「な、何よ。もしかしてこれ兄貴が企画したの?」

「まぁな。それに他の2人もすごくノリノリだったし」


 すみれはちょっと気恥ずかしそうに、横を向いて髪をくるくると弄りだしている。ちょっとは嬉しかったのだろう。こいつはいつも素直じゃないからな。


「さぁ皆さん! すみれさんの10万人記念を題して、今日はパーティーですの!」


 ――パァン!


 彩夏ちゃんはとっても上機嫌な声で、いきなりクラッカーを鳴らした。いつの間に用意してたんだか。クラッカーの紙の残骸が部屋の隅に色とりどりに落ちていく。


「わっ! もー、彩夏ちゃんったら驚いたじゃん~」

「わたくし一度これをやりたかったのですの。驚かせて申し訳ないですの」


 やれやれ、鳴らすのは良いけど俺が片付けるんだよなこれ。仕方なく地面に落ちた残骸(ざんがい)を拾い集め、ゴミ袋に突っ込む。


「とにかく今日はすみれの為にみんなで祝おうって企画だからな」

「ま、まぁ、その。兄貴やみんながこうやって祝ってくれるのは、素直に嬉しいかな」


 そこで竹中がポンポンと手を叩いてきた。


「はいはい、兄妹でイチャイチャしないで、ちゅうもーく!」

「別にイチャイチャしてる訳じゃないっての! からかわないでよ朱里」


 竹中に言われて、すみれが口を尖らせている。素直じゃない妹ってのは何だかんだ可愛いもんだな。


「そうですわ。今日はすみれさんの為にプレゼントを用意したのですの。気に入ってもらえると嬉しいのですの」

「え、プレゼント……? そ、そんな別に良いのに」


 すみれが若干申し訳なさそうに皆の方を見まわす。本人からしたら、今日はただみんなで遊びつくす予定だったみたいで、まさかプレゼントを貰えるなど思ってなかったのだろう。真面目な性格だから、つい遠慮している。


「すみれ。遠慮なんてしないでよ。私達はこれからこのメンバーでコラボもやって行く仲間でしょ。そんな仲間が10万人達成したんだし、祝っても良いじゃん」

「そうですの。遠慮なんかしないでほしいですの。受け取ってくださいな」


 そう言いながら、彩夏ちゃんがごそごそと自分のバッグから、綺麗に包装された箱を取り出しすみれに手渡した。素直にすみれは受け取ると、包装紙を丁寧に剥がす。


 その包装された箱は、どこか高級ブランドの名前のロゴが記されている。うわー、めちゃくちゃ、高そうだな、あれ。


「ちょっ、彩夏たんのそれ高級ブランドじゃん。さすがお嬢様」


 箱を開けると、そこにはとてもシンプルだが、上品な品だと分かる星形のイヤリングが姿を現した。どうやら星野宮きらりのリボンの形とそっくりなイヤリングだ。


「このイヤリング。きらりのリボンと一緒だ……。でもこんなの売ってないよね。彩夏ちゃんこれって作ってもらったの?」

「はい。お察しの通り、そのイヤリングはオーダーメイドで作ってもらいましたの。あの、気に入ってもらえましたですの……?」


 少し不安そうに上目づかいですみれを見上げる彩夏ちゃん。しかしその心配は無用だった。


「うん。こんな高級そうなの受け取れないって言いたいけど、でも私のために作ってもらったんだよね。大切に使わせてもらうね、彩夏ちゃん。ありがとう!」


 すみれはそう言って、早速両耳にプレゼントされたイヤリングを耳に付けた。


「思った通りとても似合ってますの!」

「ほらっ、赤坂君。可愛い妹に言う事あるでしょ!」


 バシッと竹中に背中を叩れる。どうやら褒めろって事なんだろうな。


「お、おう。似合ってるぞ、すみれ」

「そ、そう? まぁその…………、ありがと」


 すみれが少し、もじもじしながら小声で言う。


「もーーっ、すみれったら素直じゃないんだからっ」

「もう、やめてよね。ちょっと恥ずかしいじゃん」


 しかし、じっくり見ると本当に似合ってるな。さすが彩夏ちゃん。女子力が高い上にお嬢様とか、どんだけスペックが高いのやら。


「それじゃ次は私のプレゼントだね。ふふん、すみれの好みは長い付き合いだから分かってるのよね」


 自信たっぷりに竹中がバッグからプレゼントの入った箱を取り出した。そしてそれをすみれに手渡す。さすがに彩夏ちゃんのような高級なブランドの箱でなかったが、名前は聞いた事のあるブランドだ。


「あ、これ私が好きなブランドだ」


 中身を空けるとスカイブルー色の財布が入っていた。ゴテゴテした装飾などはしておらず、シンプルで機能性の高い財布だ。確かに今のすみれの好みにはピッタリと言えるな。


「すみれの好みドストライクだと思うんだけど、どうかな?」

「うん、すっごく良いよ、朱里。本当に私の好みだよ。大切に使わせてもらうね。ありがとう!」


 こうして女性陣2人のプレゼントを渡し終えて、ついに最後の俺の番が来た。まぁこの流れからして、兄が渡さないなんてある訳ないよな。もちろん分かってるさ。そして、兄だからこそ、一番妹が欲しがっている物が分かってると、知らしめてくれようぞ!


「渉さんも早くすみれさんに渡すんですの。きっとお兄さんからのプレゼント、すっごく喜んでもらえると思いますの」

「用意してるの分かってるんだから。早く、すみれに渡してあげなよ!」


 竹中と彩夏ちゃんに催促され、俺も用意していたプレゼントの袋を取り出した。そしてそれをすみれに渡す。他の2人と違ってちょっと袋が大きいのは、趣向が全く違うからだ。これはきっと喜んでもらえると、俺は確信している。


 渡されて袋から中身を取り出すと、それは妹が好きなアニメキャラクターのパーカーと寝巻きセットだった。いつも家でごろごろしてる時に必要だと考え、予約しておいたのだ。これこそ日常で必要とする、素晴らしいプレゼントだと言えよう!


 さぁ、我が妹よ。泣いて喜んで良いんだぞ!


 しかし何か寒い雰囲気がこの場を支配しているのは、気のせいだろうか。


「あ……うん。まぁその欲しかった奴だし。私の事よく分かってんじゃん兄貴のくせに」

「あははっ。やっぱり妹の事をよく分かってるのはお兄ちゃんだったって事なのかねぇ」


 一瞬殴られるんじゃないかと思ったが、周りの女性陣も案外理解があって大して気にした様子がないみたいだな。すみれも早速中身を出してパーカーや、寝巻きのデザインを見ているし。


「とーっても可愛いですの。わたくしも近々登録者数が20万になったら、渉さんから何か可愛い物が欲しいですの!」


 いきなり彩夏ちゃんが俺に抱き付いてくる。積極的にくっついて来るから、俺は無理やり引きはがすのも気が引けるのだが――、何者かの(たか)のような鋭い視線が刺さってきた。


 すみれが俺を睨んでいるのだ。


「彩夏ちゃんほら、離れて。くっつき過ぎだって」

「そんなケチケチしないでほしいですの。減るもんじゃありせんし」

「モテる男は辛いねぇ~……、赤坂君はたらしかな?」


 俺は彩夏ちゃんをどうにかひっぺ剥がして、


「ほらほら、今日は星野宮すみれの10万人記念パーティーだし、食べて遊ぶとするぞ」

「わたしーーー! ツイスターゲームやりたいでーす!」


 竹中が鼻息荒くツイスターゲームをどこからか取り出した。


「はい、却下」


 すみれが氷のような冷たい表情で、竹中の用意したツイスターゲームを片付ける。悲しそうな表情で竹中が膝を崩して、しくしくと泣く真似をしているが、当然無視される。まぁ当然だよな。ちょっとやっているのを見たいとか思ったりもしたが、心の奥底に隠しておくとしよう。


「さっ、まずはケーキをみんなで食べましょう。彩夏ちゃんもやりたい事あったら言ってね」

「わ、わたくし、ババ抜きやりたいですの!」


 テーブルに置かれたトランプを指差して言ってきた。


「そうだな。じゃあ負けた奴がモノマネ一発芸だな」


 こうして俺達4人は楽しく遅くまでゲームやお喋りと、賑やかに過ごしたのだった。一番モノマネを強いられたのは、不幸にも彩夏ちゃんで、理由は簡単。表情に出やすかったからだ。


 そして竹中と彩夏ちゃんはすみれの部屋に泊まっていったのだった。

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