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まちちゃんの話2

思わずあって声を出したのが運の尽きだったのかな、私はもうとにかくビックリしてて。

昨夜もまちちゃんのインサタを覗いてたせいかな、まちちゃんにまさかそんなすぐ会えるとは思ってもなくて。


だって私達の高校はとっても広いんだもん。

1週間に1度、木曜の授業で会えたら十分だったのに。

まさかこんな風に会えるとは思ってもいなくて。


私達の高校は広い敷地を有している。

多分端から端まで歩くと10分位はかかるんじゃないかな。

正門の前に左に1号館、右に8号館。

そのまま左奥に行くにつれて2、3…戻って8、9…。

そんなメインから離れたところにあるのが後の13号館から17号館。

1から16の建物に押し出されるような形で、敷地の左端と右端にそれぞれ佇んでいる。

左端に13から15、右端に16、17だ。


私は男ばかりの工学系のクラスに居たから外れの15号館にしか基本いないんだ。

それに対してまちちゃんは文系のクラス。

確か7号館。私たちとはかけ離れた場所で過ごしている。


だからこそ夏休み明けの最初の週、月曜日。

それも三限なんて中途半端な時間に1号館の玄関で友達と談笑するまちちゃんを見た時、私はもう頭が真っ白になって。


「あっ、きみ」


なんて、声を漏らした。

今思うとすごく恥ずかしい、出会い方にしても初対面にしてもこれは酷いと思う。


でもね、声を出した時。まちちゃんは私を見て知ってますって顔をしてくれたんだ。

周りの友達が誰?って言うのに知り合い、授業が一緒なんだって答えて私の方に来てくれた。


そんなのに私は浮き足立ちそうだった、私のこと覚えてくれてたんだって。


「久しぶりやね〜あっと、名前なんやっけ?」


「名前?…はなかわりさ、りさ」


「りさ?りさちゃんね〜よろしく。そういえば私のこと分かる?」


「分かるに決まってんじゃん…」


その時鐘の音が響いた、三限が始まる5分前の鐘だ。

まちちゃんはゆっくりと瞬きをしてから、玄関前へと残していた友達の方を見た。

それから首を戻して、私を見つめ直して。


「そーなん?なら良かった、んじゃまた次のフランス語で会おね」


まちちゃんは屈託ない、擬音にするならえへへって顔で私に軽く手を振ってきた。

それで話は終わりって合図だったのだと思う。

思わず私も手を振り返して、まちちゃんとまちちゃんの友達が背を向けて居なくなるのを、ゆっくり歩いてギリギリまで眺めていた。



まちちゃんの笑顔と、軽く振ってきたあの手が忘れられなかった。

月曜三限前の事だった。


そして恐ろしいことに火曜日もまちちゃんに会ってしまった。

その日は9号館、何限かはよく覚えてない。この建物は事務的な手続きを済ませる建物になってるから、秋学期始まったばかりだし、タイミングがよかったのだと思う。


でもそんな理由後付けで、ただその瞬間私は驚いて。まちちゃんも驚いた顔をしていた。

そうして間を開けてから昨日ぶりやね、なんて笑っていた。何してるん?とかも言ってた。


私はまちこちゃんこそ何してるの?とか無難なこと言い返したんだと思う。

ヘラヘラと気軽さそのままのまちちゃんに、ちょっと腹が立ったのは覚えてる。

その後どうなったのかな、もうよく覚えてないや。でもまちちゃんはまたえへへって笑って私の前から去っていったよ。

いつだってまちちゃんは私の前では笑ってたんだ。


水曜日、またまちちゃんに会った。

また9号館だった。何限かはやっぱり覚えてない。

まちちゃんはその時友達と一緒に居た。

さすがにこれには私もまちちゃんも戸惑っちゃったよね。

やばない?めっちゃ会うやん、りさ私のこと着けとる?なんてまちちゃんは言ってきたね。


りさ、なんて早速呼び捨てにしてきてさ。


私はやっぱりちょっと腹が立って、まちちゃんこそ私のこと着けてるんじゃないのって言い返したんだ。

まちちゃんはやっぱりやばいね面白いねって笑ってその時も去っていったんだ。


一緒にいた友達にあいつめっちゃ会うんよ、とか言ってた声が離れていく最中に耳によく残った。

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