「オレたち」「わたしたち」「僕たち」は『ハッピーエンドを目指したい!』
「ねぇ、本当に、私達はお互いのことを分かりあえないのかなぁ」
俯いたまま、顔が紅色の前髪に隠れ、カチューシャのように丸みを帯びた角が淡く水色に輝き、手に持つ槍が共鳴するように震える。
「……あぁ」
口元を数度動かし、短く告げ、なお自分の言葉に眉をひそめ項垂れ、自分の手に嵌めている籠手を覚悟を持って睨む。
「……ねぇ、ほんとうに、わたしたちは、このためだけにガンバってきたの?嫌だよ。あなたがぎせいに、なるなんて……」
槍に淡い光が侵食し、銀色に光を増していく。
「……多分な……俺達の代だったんだ、先代達の力を引き継ぎ、宝珠の力を解放して、封印から討伐する時が……」
籠手に嵌められた宝珠に描かれた四季の文字が輝き、その黒髪が金色に輝きだす。
「……でもっだからって……」
銀槍が振るわれ、四方八方から迫る大型昆虫が悲鳴を上げ、墜ちていく。振るわれる槍は、次第にその速度を徐々に遅れていく。
「……その気持ちだけで、十分だ、悪い」
恐ろしく速くその体を抱き抱え、勢いよく人が多くいる地点へ放り投げる。彼女の周りには金色の加護が掛けられ、外敵から身を護り、時折、その金色に照られた光がぽろぽろと落ちていく。
「……そんな笑顔がみたいわけじゃなくて……わたしは……まもられてるだけの、人形になんて……なりたくないのに……」
金色に照らされた拳が空を駆ける。暗い闇夜の帷に閉ざされた世界の理が外れた外道のその先へ、侵略する異人の大本山へ。
──私の冒険の記録──
*この日記には人の名前は出さない
*この日記は誰にも見せない
*この日記は……には絶対ぜったいに秘密にする!
私は、どうしたらよいのだろう。彼は多分今まで本気の姿を私の前では見せてなかった。異世界から来たあの新しい友人は、抵抗したものの、その異世界の最上級位クロウラーに食べられてしまった。あの黒とんがりは、まだ、帰ってこない。
……あの後、世界の皹が閉じられ、とても大きな衝撃波による風が三日間止まなかった。風が止んでも彼の姿は見えなく、各国で多額の懸賞金が掛けられるも、見たという情報すら入らなかった。私は、…………………、これは何度も書いたので書かなかったことにする。
結局私はどうしたいのだろうか、世界は穏やかな風が包み、争いの種は運ばれなくなった。つかの間の平穏なのかもしれないが、とてもさらに大きな力が欲しいとは思えない。5月病かな、でも今はまだまだ春が始まったばっかりだし。
どうしようか。
まだまだ余白がたくさんあるけど、書けそうにない。
追記:私と彼が初めて会ったあの岬からの景色は
……やっぱりないわ
──長い時を経て──
「おばさ~ん今日も来たぜ!!」特徴的な赤い髪を持つ活発な少年
「レックス~待ってよ~」綺麗な金髪のおっとりとした少女
「レックス待って下さい!」息を切らし真面目なメガネ君
「レックス、アイリス、メガネ君も、またかい?よくもまぁそんなに飽きないねぇ」
ゆっくりと腰を上げ、術式を展開し、日記を開く。
「おばさんの記録映像がとってもかっこいいんだ!おれ、あの兄ちゃんみたいになりたい!」
「……わたしは……その人の後ろで立ち回ってる……女の人みたいに……」
「過去の記録映像は、今では考えられないような術式展開でとても学校で学ぶよりも楽しいです!」
「まったく、あんたらは元気だねぇ、それじゃあ竜退治の記録でも見てるといいさ、ちょっと私は町に予定があるからね、見終わる前には帰ってくるけど、大人しくしてるんだよ、いいね?」
「はーい!」
「はいっ」
「分かりましたっ」
「それじゃあ行ってくるわ」
「……もうそろそろかな?、おばさんは行ったか?」
「何を企んでいるんですか?レックス」
「そうだよぅ、もう映像ははじまってるよ?」
「へへーんだ、おれっいいこと思いついたんだ!この日記の他のページ開いてみたいと思わないか?」
「さすがにそれはダメなんじゃないかなぁ?」
「レックス、わたしたちは大人しくと言われたはずです」
「いいから、いいから、だいじょぶだって、ほんの最初の1ページ目をめくるだけだって、すぐ戻すからさ」
「待ってくださいっ」
「……あっ」
レックスがページを開こうとしたとたんページが突如として高速にめくられ始める。そしてそれぞれの闘いの記録が走馬灯のように映っては消え、映っては消えを繰り返す。
「あわわわわわわわわ」
「どうするんですか!というかまずはなれましょう!」
「え~とっえ~とっ」
急にピタッと最初の1ページ目が始まる。
そして、記録映像が始める。
──回想 day1 開──
はぁはぁ、と、息を切らしながら、山道を急いで駆け降りる。後ろからは、ミシッと大木が軋み、バキバキバキと音を立てなぎ倒されるように倒れて行く。
今日は朝から靴紐が切れたり、カラスの羽を見たり、薬草が毒草しか見つけられなかったり、もう災難に災難を合わせたようなってもう今日は厄日!!
細く鋭い爪、硬く滑らかな鱗、長く鋭利な尻尾に、ギザギザの歯を持つ厳つい頭、まるでトカゲを大きくしたような大トカゲが後ろから迫り来る。
目の前が開け、薄暗い森から少し明るい所へ出たようだ。曇りであるがまだ慣れない光の加減に目を細めながら、走り続けようとした時、
目先にとても急勾配な崖が広がっているのが見え、咄嗟に体を地面に着け、勢いを減らす。波がぶつかる音を後ろにどうにか止まれたことに安堵はしていられない。
その時、今まで見たことのないような服を身に包んだ男が崖のそばでぼうっとしていることに気づく。目線は海ではなく、森だが。
──嘘でしょ!?なんでここに人いるの!?そのまま落ちてもらえないじゃん!?
そんなことが気になって、すぐに駆け寄る。トカゲは迫る。このままではMPKになってしまう、実際問題誰にもわからないってのがほんとうなんだけど、なんだけどぉ、私は耐えられないっ
男を抱え、吹き飛ばされるかのように地面を転がる。
トカゲは……尻尾を器用に扱い落ちることを防いだようだ。
「あんた大丈夫!?どうしてここにいるの!?ってか服装見たことのないんだけど!?」
私は気が動転して様々質問したけど、全然反応がなくて、むしろ今の置かれている状況に反応できていないようで、
それどころじゃない、トカゲが迫る、後ろには役立たず、無理じゃない!?
突然、男が立ち上がり、私のすぐ横を通り過ぎて私よりも前に行く。
とっさのことで全然反応ができなくて、唖然として、
トカゲがもう爪を振り下ろしていたけど、
男の拳周りが金色に光り、その拳が上に振り上げられ、
大太鼓が鳴るような轟く音が響いて、
次の二擊目でトカゲの頭が消えた。
私は何も言えず口をパクパクと開け閉めしていたのだけれど、
ものすごく強くて凄いと思った人は、自分の行為よりも、トカゲの血を見て青ざめてて、
ものすごく顔が白くなってて、具合が悪そうに見えて、
気絶した。
私は曇り空を見て、どうしようかと思った。
──回想 day1 終──
あんなに慌てていたのに、いざ映像が始まると夢中になっていた赤髪が突然立ち上がる。
「なぁなぁ、これ青空のほうがいいよなっ!」
「突然何を言うんですかっ!」
「んー、わたしも、青空のほうが……いいかな?」
「アイリスさんまで何をっ!」
「アイリスさすがっ分かってるなー!」
にぎられた手の感触に顔を赤める少女
「だからってどうするんですかっ!わたしたちにはどうにもできないじゃないですかっ!」
「……そうなんだけどねぇ」
突然、日記の表紙の表示が描き変わり、表紙の筆が銀色に輝く粒子に包まれ、立体となって構成され始める。
「なんですかっこれっ!」
「……きれい」
「よーしっ!これを使えばいいんだな!」
「あっレックスっ危ないかもっ」
銀色の筆が少年の手に握られる。ふわふわと漂う魔力である銀色の燐光は不思議とどのように扱うかを教えてくれる。
「みんな!どんなかんじにしたい?おれはね~、かっこいい兄ちゃんがいい!」
「……わたしは青空がいいな」
「僕としては気を失った彼がこの女性の膝枕を得るのが……」
「よしっ!みんな!強く想像したかっ?行くよー!」
『想像世界』
発光する筆が揺らめき、流れ、線をなし、形を作り、物を描き、世界を作る。旋律のような銀の木霊する音は一つの音楽のように聞こえ、少年少女達の明るい世界を表しているかのようだ。
「もっかい見よう!」
「どうなってるんでしょうね?」
「……たのしみっ」
──快想 day1 開──
はぁはぁ、と、息を切らしながら、山道を急いで駆け降りる。後ろからは、ミシッと大木が軋み、バキバキバキと音を立てなぎ倒されるように木々が倒れて行く。
今日は朝から靴紐が切れたり、小指をぶつけたり、薬草が毒草しか見つけられなかったり、最後にはトカゲでもういやになっちゃうくらいの厄日!!
細く鋭い爪、硬く滑らかな鱗、長く鋭利な尻尾に、ギザギザの歯を持つ厳つい頭、まるでトカゲを大きくしたような大トカゲが後ろから迫り来る。
でも、ここの先で私は勝つのだ!!
目の前が開け、薄暗い森から少し明るい所へ出たようだ。曇りであるがまだ慣れない光の加減に目を細めながら、走り続けようとした時、よしこれだ!!
目先にとても急勾配な崖が広がっているのが見え、咄嗟に体を地面に着け、勢いを減らす。波がぶつかる音を後ろにどうにか止まれたことに安堵はしていられない。
その時、今まで見たことのないような服を身に包んだ男が崖のそばでぼうっとしていることに気づく。目線は海ではなく、森だが。
──嘘でしょ!?なんでここに人いるの!?そのままトカゲに落ちてもらえないじゃん!?
そんなことが気になって、すぐに駆け寄る。トカゲは迫る。このままではMPKになってしまう、実際問題誰にもわからないってのがほんとうなんだけど、なんだけどぉ、私は耐えられないっ
男を抱え、吹き飛ばされるかのように地面を転がる。
トカゲは……尻尾を器用に扱い落ちることを防いだようだ。残念~。それよりもっ
「あんた大丈夫!?どうしてここにいるの!?ってか服装見たことのないんだけど!?」
私は気が動転して様々質問したけど、全然反応がなくて、むしろ今の置かれている状況に反応できていないようで、全然話を聞いてくんないっこのガリガリ!
それどころじゃない、トカゲが迫る、後ろにはこの役立たず、えっ無理じゃない!?
突然、男が立ち上がり、私のすぐ横を通り過ぎて私よりも前に行く。
とっさのことで全然反応ができなくて、唖然として、
トカゲがもう爪を振り下ろしていたけど、
男の拳周りが金色に光り、その拳が上に振り上げられ、
大太鼓が鳴るような轟く音が響いて、
次の二擊目でトカゲの頭が消えた。
私は何も言えず口をパクパクと開け閉めしていたのだけれど、
ものすごく強くて凄いと思った人は、その拳に力を入れすぎたのか、見た目相応ふらふらになって
気絶した。
私はその倒れてきた頭を受け止めて、しばらく膝にのせ、ちょっと地面が痛いと後悔しながら、晴れ渡った空を見上げた。
──快想 day1 終──
「へへーんだ、オレたちにかかればこんなのあさめしまえの、すっとこどっこいだぜ!!」
「話がまとまったかな?」
「しかし、その筆の力はいったいなんなのでしょうね?」
「細かいことはいいのさ!」
「……そろそろおばさんがくるんじゃないかな?」
「やべっとりあえず本閉じようっ!」
「これでひとまず安心ですかね」
「今日のこと、三人だけの秘密だよね?」
「そのとおり!またあしたも聞きにこれたらやろうぜ!」
──カランコロンっと門の扉が開く音がする。
「今帰ったよ、おや?もう終わってたのかい?少し長居してたみたいだね。」
「とってもおもしろかった!また見たい!」
「また見に来てもいいですか?」
「また三人で」
「いいとも、まぁみんなの両親に心配かけないようにはするんだよぅ?さぁ今日はもう遅いし帰りな」
「「「はーい!」」」
「あぁ、そうだ、次はこの冒険の始まりの映像でも見せようかね、最後の青空が綺麗なのさ」
少年少女達は互いに目を合わせ、笑顔を深くさせる。
「じゃーなー!おばさん!」
「今日もありがとうございました!」
「また来ます!」
この家の門をくぐり、駆け出す。
「なぁきいたか!今の!」
「うん!」
「驚きましたね!」
「よーしっ!」
赤髪の少年が元気いっぱいに叫ぶ。
「オレたち」
金髪の少女は胸に手を当て落ち着いて言う。
「わたしたち」
メガネ君はメガネをかっこよく光らせキザに言う。
「僕たち」
少年少女達は手を合わせ手を上げる
『みんなの想像力でハッピーエンドにしよう!』