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Gawl of the nightmare ーガウル オブ ザ ナイトメアー  作者: Guren
悪夢の魔剣士編 勿忘草の女神の章
2/30

勿忘草の女神の章 第2節

なろう小説には似つかわしくないぎゅうぎゅうな文章になってしまっていますが、良かったら読んでください。



 2


 悪夢とはなにか……。

 悪い夢? 確かにそうかもしれません。でもあれは紛れも無い現実で、それは人々を覆い包み、あらゆる悪夢と悲劇を生み出しました。

 大陸全土を巻き込み、壮絶を極めた大戦が終戦を迎えたのは三年前の事でした。

 鉄の鎧を身に纏った騎士達が、大勢馬に跨り死に向かって駆けていきました。

 死んでいったのは騎士達だけではありませんでした。巻き込まれた人々も、大勢連れていかれるように死んでいきました。

 その大戦が終戦を迎えた後も、その傷跡は、大地に、人の心に、決して消えない痛みを植え付けました。混沌とした生活を強いられた人々の心には次第に狂気が芽生え始めました。まるであの大戦で狂気と言う名の種が蒔かれていたかのように……。

 ある人は大戦で肉親を失い、またある人は愛する人を、またある人は信じていた思想を失いました。

 自ら命を立つ人達もいました。生きる為に奪い殺す人達もいました。巻き込まれた大勢の人々にとっては、大戦はまだ続いているのです。

 ある人は言っていました。


「地獄とはどこですか? あの世の事ですか? それとも今自分達がいるこの世の事ですか?」


 人々は救済を求めて彷徨っています。か弱く痩せ細った精神を剥き出しにして奇跡を待っています。

 そんな時、大戦時から人々によって語られる噂がありました。

 戦火の中、多くの人々が異形の剣を振るう剣士を見たそうです。

 いつしかその剣士は『魔剣士』と呼ばれ畏怖させる存在となっていきました。

 その魔剣士が救いをもたらすのか、否か。誰にもわかりません。


 私はこの物語の最初の犠牲者です……。

 私はこの物語の結末を知りません……。


 朝方から降り始めた小雨が、徐々に強さを増し始めた昼過ぎ、黒いマントを纏った一人の男が自然に囲まれた小さな町へと足を踏み入れた。そこは寂寥せきりょうとした活気を失った町だった。

 都から遠く離れた田舎という事もあり、大戦の影響を大きく受けていないようだが、それでも家族の誰かが出兵し、帰らぬ人となったのはどこも同じであり、終戦から三年の月日が流れた今も尚、道行く人々の表情は暗かった。

 しかし、この町では大戦とはまた違う事が彼等を苦しめていた。

 ふと男が横の壁に目を向けると、行方不明となった少女の捜索を募る張り紙が何枚も折り重なるように貼られていた。

 一番新しい張り紙によると、この町の貴族の一人娘が行方知らずになっているとの事だった。町中を見渡すと、至る場所に行方不明者の張り紙が張られていた。

 消息を絶ったのは皆年若い少女達であり、張り紙には少女達の名前や特徴と、帰りを待つ家族の悲痛の叫びが書かれていた。

 張り紙だらけの通りを進んで行くと、貴族の屋敷が見えてきた。途中、行方知らずになった少女の噂話をする話し声が聞こえてきた。


「また一人いなくなったそうだ。今年に入って何人目だ?」


「また女神の神隠しか? 今度はヴァンハウテン家の娘らしい」


「貴族って言っても、あのボロ屋敷の名ばかり貴族だろ?」


「賞金を出して探しているって話だ。ちょうど今屋敷に賞金目当ての余所者が集まっているらしい。町に居座られなきゃいいんだが……」


「軍は動かねぇのか? 前領主が大戦に貢献したっていうのによう」


「それにしても、アナハイトの連中は女神の神隠しとかほざきやがって、若い娘が消えるのが当然みたいな顔をしていやがる。神隠しが女神のせいっていうなら、犯人はもう分かり切っているようなものじゃねぇか……」


 不意に会話が途切れる。どうやら男の存在に気付いて口を閉ざしたようだった。不意に彼等は男と目を合わす。彼等の瞳は怖れと不安で淀んでいた。それからよそよそしく別々の場所へと散って行った。

 一瞬見えた彼等の不安と恐れに淀んだ瞳を気に留めながら、男は再び歩みを進め始めた。

 貴族の屋敷は目の前に立つと確かに古ぼけていた。入り口の扉までの間にある小さな庭だけは綺麗に手入れがされてはいたが、それとは対照的に屋敷の外壁の煉瓦は、至る所に小さな亀裂が目立っていた。

 長い歴史を感じさせると言えば聞こえが良いが、手入れがされているのと雨曝しとでは訳が違う。どうやらこの屋敷は後者のようだった。

 田舎の貴族だからという事ではないのだろう。豊かな暮らしを続けていける程、貴族だとしても余裕は無いなのだ。むしろ貴族だけが貧困に喘ぐ者達を無視して優雅に暮らしたならば、その貴族の屋敷は何者かの手によって焼かれ、金品強奪の末に一家皆殺しに遭うかもしれない。むしろ戦後間もない頃は良く耳にした胸糞の悪い話だ。

 少し目立つと誰かの理不尽な怒りを買ってしまう。それが今の世の中の現状なのだ。その事からも、この屋敷に住まう貴族達は、少なくとも町の人々から要らぬ怒りは買ってはいないのだろう。

 男が庭越しから屋敷の様子を見ていると、入り口の扉が開いた。

 するとそこから、剣や弓、槍やボウガンを背負った賞金稼ぎと思われる傭兵達がぞろぞろと出てきた。

 その中の一人、弓を背負った長い黒髪の傭兵が、男に気付いてまっすぐと視線を向ける。その視線に答えるように、男も一瞬目を合わすが、何も無かったように互いに視線を逸らし男は屋敷の前を去った。

 それから少し歩き、男は町外れにやってきた。目の前には深い森が口を開けて獲物を待っているかのように広がっていた。

 まだ昼過ぎだというのに森の中は薄暗かった。まるで森の中へ日の光を運ばせぬように、背の高い木々が絡み合うように重なっていた。微かに開いた木々の隙間から、地面へと直線を描く日の光が注がれていた。その風景を見ながらそっと息を吐き、男は森の中へと足を踏み入れた……。


 ――『この先、アナハイト』――

 森の中を道沿いに進み、道が二手に分かれた場所の一方に、そのように書かれた白い立て札があった。

 降り続ける雨は強さを増し、地面をぬかるみさせ、大きな水溜りをいくつも作り、降り注ぐ水滴は、木と地面と水溜りとを打ち立て自然の調べとは呼べない止まない雑音を奏でていた。

 そんな悪路の森の中を、少年は肩から大きな鞄を揺らしながら息を切らして走っていた。

 森の道はまっすぐだが人の足では距離があった。少年の出で立ちは、ここまで雨に打たれながらぬかるんだ道を必死に走ってきた事を物語るように、茶色い髪も、肘まで捲った白い長袖のシャツも、その上に羽織った革のベストも、右膝に穴の空いた黒いズボンも、履き潰したブーツも、皆雨に濡れ泥が跳ねて酷く汚れていた。

 しかし、少年の青い瞳はまっすぐ森の出口を見据えていた。息もとうの昔に切れている。今にも倒れてしまいそうだった。何度もぬかるんだ地面に足を取られそうになった。それでも少年は足を止める事無く走り続けた。

 なぜ少年は走るのか。その答えは少年の背後にいた。

 迫り来る男達である。見るからに悪漢と呼ぶに相応しい形相となりをしていた。腰には剣まで差していた。そんな悪漢達が三人、少年に向かって怒号を飛ばしながら迫っていた。


「待ちやがれクソガキァ!」


 そう叫びながら先頭を走るハゲ頭の悪漢が剣を鞘ごと腰から引き抜き、左手で剣を抜くと、右手に持った鞘を少年目掛け投げ付けた。

 勢いよく回転し空を切る音を発しながら、鞘は少年の足に命中した。少年は鞘を内股で挟むように足の内側に絡ませ、まるで足を掛けられたように前のめりに倒れ込んだ。


「うわぁ!」


 勢いよく転んだ少年は短い悲鳴を上げるも、透かさず立ち上がろうとした。だがその時既に少年は悪漢達に周りを囲まれ、彼が顔を上げるとそこにはハゲ頭の悪漢が殺伐とした形相で少年を見下ろしていた。


「手間取らせるんじゃねえぞクソが!」


 ハゲ頭の悪漢は怒鳴ると、間髪入れずに少年の顔面を蹴り飛ばした。蹴られた少年は地面に顔を打ち付けた。少年は弱々しくゆっくりと顔を起こそうとする。そこへ追い打ちを加える足が伸び、少年の横顔を踏み付け再び地面に打ち付けた。雨のせいでぬかるんでいた地面に少年の顔はめり込んだ。


「ぁああっ!」


 耳を引き裂くような激痛に少年は悲鳴を上げ、同時に半分地面にめり込んだ口に泥が入り込み、吐き出しながら悶えた。

 それを見下ろしながら、ハゲ頭の悪漢は少年の耳を磨り潰す勢いで足に力を加える。少年はハゲ頭の悪漢の足を退けようと必死で押した。だが足は微塵も動かなかった。

 その様子を見下ろしながら、悪漢達はヘラヘラと笑いこの状況を楽しんでいた。


「勘弁してほしいかアルゴン。だったら取ったモノ今すぐ返せ。そしたら楽に殺してやるからよぉ!」


 アルゴンと呼ばれた少年に、ハゲ頭の悪漢は言うと返答を待った。


「ここには無い! 違う場所に隠した。オレを殺したら見付からないぞ!」


 顔面を地面にめり込ませながら、アルゴンは必至で叫んだ。


「あぁ? とぼけんじゃねぇよ! だったらさっきから大事そうに抱えてるそのでかい鞄には何が入ってんだよぉ!」


 アルゴンの見え透いた嘘にハゲ頭の悪漢は逆上すると、痺れを切らし仲間達に目で合図した。仲間の悪漢達は静かに頷くとアルゴンの鞄に手を伸ばした。


「や、やめろ!」


 アルゴンは叫びながら渾身の力で両足を振り回した。すると右足がハゲ頭の悪漢の股間を打ち上げた。股間を強打されたハゲ頭の悪漢は奇妙な呻き声を上げて前かがみになり、その瞬間アルゴンの顔面から足が離れた。

 その一瞬の隙を突いてアルゴンは起き上がると、渾身の力を込めてハゲ頭の悪漢の顔面を殴り付けた。

 鈍い音とともにハゲ頭の悪漢は仰け反りながら後退りした。

 しかし、アルゴンの腕力では倒すまでには至らなかった。

 ハゲ頭の悪漢が姿勢をもとに戻すと、その顔面は両方の鼻の穴から滝のように血が流れ出ていた。口の中にも鉄の味が充満し、唾を吐き捨てる。

 すると地面に大量の血と、それに混じって二本の歯が転がった。それを見たハゲ頭の悪漢は舌で口の中を舐め回し、何処の歯が折れたのか確かめた。

 折れたのは前歯だった。舌を突き出すと当たる筈の前歯がもうそこには無い。そうしている間にも口の中は血で溢れ、同時に沸き上がる憎悪が全身を駆け抜けた。

 全身の血が逆流したかのようにハゲ頭の悪漢は顔を真っ赤にさせ、また血を吐き捨てると、怒りに震えながら、血走らせた眼光でアルゴンを睨み付け、言葉にならない奇声を上げながらアルゴンに剣を振り下ろした。

 アルゴンは咄嗟に身を引いて避けようするが、間に合わない。


 ――もう駄目だ。殺される!


 アルゴンが死を悟ったその時である。

 突如雷鳴と共に、その場にいた者達全員が動きを封じられる程の激しい突風が森の中を吹き抜けた。

 やがて突風が止むと、視界の隅、風が吹き荒れた方向に人影がある事にその場にいた全員が気が付いた。

 そこには黒いフードを目深に被り、同じく黒いマント姿の、背には棺のような形をした強固な鉄鞄を肩で担いだ何者かが立っていた。素顔はフードで隠され伺い知る事は出来ないが。背格好からして男であると分かった。

 いつの間に現れたのか。森の中は雨が降っていて尚且つ薄暗いとはいえほぼ一本道であり、見通しは決して悪くない。アルゴンとのやり取りの最中にでも気付かないはずがない。


「見世物じゃねぇ! とっとと失せやがれ!」


 男に向かって悪漢の一人が叫んだ。しかし内心逃すつもりはなかった。この現場を見られたからには生かしておく事は出来ない。だが悪漢達に焦りは無かった。殺す人数が一人から二人になるくらいだと考えていた。

 辺りは木々が生い茂る森。通り道を外れた場所に穴でも掘って埋めてしまえば、この世の終わりまで見付からないだろう。むしろ埋めずに放置した方が、獣達が食い散らかして無かった事にしてくれるはずだ。

 悪漢達の考えはまるで自分達が有利な立場にいる。と、一切の疑いもせずに考えられた過筋書きに過ぎなかった。

 それは男が一見した限りでは重い荷物を担いだ、ただの旅人のようにしか見えなかったからだ。しかもその重い荷物さえも、男を片付けた後に奪うつもりでいた。

 その時、ハゲ頭の悪漢の足元に跪いていたアルゴンは、隙を突いて男の方へと駆け出した。勢い余って男の足元に倒れ込み、飛び付くように男の脚にしがみ付いた。


「助けてくれ! オレはまだ死ぬ訳にはいかないんだ!」


 アルゴンは情けない裏返った声を上げながら、フードに隠された男の顔を覗き込んだ。男の方もゆっくりとアルゴンの方へと顔を向け、泥だらけになりながら必死に助けを乞う彼の瞳を、フードで出来た暗がりから覗き込んだ。

 その時、男と目を合わせたアルゴンは、身の毛もよだつ悪寒に襲われた。まるで心の奥底を覗かれたと同時に、何か得体の知れない恐ろしく、見たくもないものを無理やり見せられたような、とても表現出来ない気味の悪さを瞬間的に植え付けられ、アルゴンは掴んでいた男の脚を振り払うように離し、地面に尻餅を突いた。


「おいお前! そのガキ助けてやるつもりかぁ?」


 ハゲ頭の悪漢が男に言った。すると男は悪漢達の方へゆっくりと顔を向け、静かに口を開いた。


「助けを求められた。断る理由は特に無い」


 男の声は想像よりも年若く、声の質から歳は二十歳前後。もしかしたら自分といくつも変わらないかもしれないとアルゴンは思った。

 だが、不気味な程に落ち着いたその語り口は、一切の震えも緊張も感じていない事が伝わってきた。なんと表現すれば良いのか、大雑把に説明するならば、若者の肉体の中に百戦錬磨の強者が入っているような、そんなありもしない想像物がアルゴンの頭の中に浮かんでいた。

 それ故に、悪漢達は男の態度に苛立ちを覚えると同時に、僅かな不安を覚えた。

 しかし、人数的にも自分達が負ける要因は何処にもないと信じていた。


「だったら死んでもらうしかねぇな」


 そう言うとハゲ頭の悪漢は剣を構えた。それを合図に他の悪漢達も剣を抜き、一斉に男へ襲い掛かった。

 迫り来る悪漢達を眼前に、男は咄嗟にアルゴンを庇うように彼の前に飛び出すと、瞬時に担いでいた鉄鞄を迫り来る悪漢達の方に投げ付けた。

 鉄鞄はその重々しい姿からは想像できない速度で回転し、悪漢達の突進を妨害しながら空中へと舞い上がった。一瞬飛来して舞い上がった鉄鞄に注意を晒された悪漢達は、再び男へと剣を向けようとした。

 その時である。男が立っていた方向から、男が初めて現れた時と同じように突風が吹き荒れ、雷が落ちたかのような青白い光が辺りを照らした。

 その光景をアルゴンも男の背後から見えていた。宙を舞った鉄鞄を目で追ったと同時に突風。そして不意打ちを食らったように雷。気が付けばアルゴンは両腕で顔を覆って身を守っていた。両腕を顔から離した時、男の腕には自身の身の丈を超える異形の大剣が握られていた。

 それは余りにも禍々しく、剣と呼ぶよりも、巨大な魔物の腕と呼んでしまいたくなる程に邪悪な姿をしていた。

 漆黒に染められた刃。そして猛禽類を思わせる爪のような突起物が無造作に生え、尚且つその中心には心臓のように脈動する物体がはめ込まれた柄。更にそこから剣全体へ纏わり付く血管のように伸びた筋が、柄にはめ込まれた物体と同調する様に、青白い光を放ちながらその場を怪しく照らしていた。


「な、なんだ一体!」


 男の手にする異形の大剣を前に、悪漢達は足を止め、先頭のハゲ頭の悪漢ら弱々しく今にも泣き出しそうな声で呟いた。

 眼前に立つ存在を目の当たりして、彼等の戦意は既に失われていた。

 アルゴンは悪漢達の表情が恐怖に戦慄しているのを確かに見た。そんな哀れな彼等に男は大剣を振り上げ、そして踏み込むと同時に空を切った。

 その刹那、一瞬の時間差が生じた末に、まるで金属と金属を激しく打ち付けたような衝撃音と共に突風が吹き荒れ、木々は激しく揺れ、突進する竜巻となって悪漢達を森の奥へと吹き飛ばした。

全てが終わった時には降っていた既に雨は止んでいた。

 男は雨が止んでいる事が分かると、徐にフードを脱いでアルゴンの方に顔を向けた。

 そこにはアルゴンの予想を裏切る程に、優しげな表情を浮かべた若者の顔があった。

 燃え盛るような紅蓮の長髪と、透き通るような白い肌。人形のような整った顔立ちと、翠玉のような見たこともない瞳の色。

 そして、その芸術のような顔を不完全にしてしまうかのように、男から見て左の目尻の下には、水平に裂かれた痛々しい切り傷が刻まれていた。


「大丈夫か?」


 男はそう声を掛けながらアルゴンに手を差し伸べた。

 気が付くと男の腕からは異形の大剣は忽然と姿を消していた。

 しかし、そんな事にも気付かない程に、アルゴンは呆然と男の顔を、尻餅を付きながら見上げていた。

 そして、ハッと差し伸べられた白い手に気付くと何の言葉も出ないまま男の手を掴んでいた。男の手はまるで氷のように冷たかった。

 起ち上がったアルゴンは、今度こそ何か言おうとしたが、彼があたふたしている間に、男はいつの間にか木の枝に引っ掛かっていた鉄鞄を担ぎ、何も無かったかのように半分放心状態のアルゴンを尻目に、じゃあな、と一声掛けると去っていった。

 アルゴンは去っていく男の後ろ姿を見送る事しか出来ず、我に返ったのは男の姿が見えなくなった後だった。


「間違いない。魔剣士だ。本物の魔剣士だ……」


 森に平穏が戻る中、アルゴンは男が去っていった道を見つめながら静かに囁いた……。


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