第0夜 指の骨が折れた男
アスクレピオス、彼は無名ですが実は設定盛りすぎな神様です。
初心者の作品なので、色々と拙いところは大目に見てくださると幸いです。
私はアスクレピオス。
医者にして医術の神である。
元は人間だった私も神になって久しい。
『アスクレピオス様、今日も治癒を求むる者達が参っております。どうか彼らにお恵みを。』
うむ。
さあ、神の診療所の始まりだ。
私の治療スタイルは基本的に夢での治療だ。
うん?理由?ああ、それは私が神であることと関係があるのだ。私の事が見える者は少ないのでな。我が父アポロンほどの神であれば見る事のできる者も多いのだがな…私では夢に顕現するのが精一杯だ。
まあ、見えたら見えたでそれもまた苦労があるらしい。ちょっとお忍びで現れるだけでも大変な騒ぎになるそうだ。
また、私だけでは治療できない…例えば継続的な治療が必要なものなどは人間の神官の仕事だ。私の神官は医術に秀でた者ばかり。
皆、変わらぬ勤めと信仰、感謝しておるぞ。
私に治療を求める者達は昼間は神官達に治療を受け、夜は夢の中で私に治療を受ける。
ふむ。そこの男は骨が折れているのか。
早速夢に顕現しよう。
『私は医神アスクレピオス…其方がこの聖域にやってきたのは何故か?』
最早恒例となった遣り取り。しかしこれも医神としての勤め。果たすことに疑念などない。…無いのだ。決して『直してあげるよ〜』でいいとは思っていない!
…コホン。
男は答えた。
『指の骨を折ってしまいまして。どうか治して頂けないかとこの聖域にやって来た次第でございます。』
そうかそうか。うん、すぐ治るぞ。
『確かに承った。』
指の骨を神の力で治す。指が再び正しい形にしてなっていくのが見えるようだ。なるほど、既にくっついてしまっていたから神官達も治癒を施さなかったのだな。
『明日の朝目を覚ませばその指は治っていることであろう…』
『ありがとうございます!帰ったら供物を用意させて頂きます!』
『うむ。』
症状を石板に書き込んでおく。これらの石板はある程度集まったらパピルスに記録しておく。再び来た時に役に立つ事もあるからな。
さてと、次は誰であろうか?
楽しんででいただけたでしょうか?
次回は『不妊治療が仇となった女性s』です!
なお、この物語は『エピダウロスの医療神域』から発見された石板をモデルに作成しています。