売女
小さい頃、ついつい好きな異性に
冷たい態度をとってしまったり
意地悪してしまったりと
天邪鬼な対応をしてしまう事ありましたよね
やりすぎて本気で嫌われたりすることも
私が形の無い「ソレ」に興味を持たない事を
薄汚れた世を目に映し生きてきたあなたが
何故そんなに綺麗な涙を流してまで
何かを失ったかのように悲しむのかしら
「失う事には慣れてる」あなたの言葉よ
飽きるほどに聞いたわ
私なんてそこらに転がってる口無しと
なんら変わりないっていうのに
何がお気に召したのかしら おかしな人ね
その涙だって私のことを想って流す
涙じゃないことくらい分かるの
あなたは傲慢で強欲な人だもの
そのくせ繊細で素直でまるで子供みたいな人
無駄な涙を流して勿体無いわね
私じゃなくて興味を抱いてくれる誰かに
あなたの「ソレ」を分かち合える誰かに
夢物語を語りながら流せばいいのに
受け止めてくれる誰かを愛せばいいのに
報われない努力 ご苦労様ね
伝えるだけ伝えて叶わない
自分のものにならないって分かったら
そんなふうに泣くなんて あなたって、
別に馬鹿になんかしていないわ
ただ 可哀想な人 って思っただけよ 哀れね
そんなに怒らないでよ それとも動揺してるのかしら
私の首 細いでしょう
貧弱なその自分の腕が逞しく見えるほどに
いいのよ そのまま締めたって
あなたに私が殺せるかしら
それは私には分からないけど
私にもひとつだけ分かることがあるの
今ここで私を殺しても殺さなくても
あなたがまたこのあとも泣くって事
自分の手で殺しておいて 「失った」って
また悲哀にふけるのかしら
それともここまでしたくせに怖気づいて
殺せなかった情けなさかもしれないわね
どちらにしても私には関係の無い事よ
私 あなたにもこの世界にも
これっぽっちの興味もないんだもの
寧ろ死んだ世界の方がよっぽど惹かれるわ
少なくともあなたの眩し過ぎる薄っぺらな
幸せに比べればよっぽど惹かれるの
こんな埃まみれの場所に生まれたんだもの
あなたの「ソレ」を私が理解して受け止めるには
私の命じゃ短すぎるの 全然足りないわ
だから出来るなら殺してほしいの
私がその薄っぺらい幸せの価値を知って
知りたくない何かに触れてしまう前に
知らないままでいいの 最初から無いものは
私が私の命に興味を持つ前に
その困惑した表情を私が哀れんでるうちに
「ソレ」を掴みとろうとしてる
その両手で殺してくれていいのよ
でもね 私も言いたいことがあるの
私、そんなふうに躊躇ってるあなたがすきよ
持ち合わせていないものに触れた時
それを感じてしまった時
自分の感情の変化に驚いて戸惑う
そっと手を伸ばせばいいのに
暖かさがあるかもしれないのに
躊躇っているのはいったいどちらなのか
