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4章 火竜

 セリス等の前には、シューの時とは違い、炎の渦が出てきた。かなり距離があるのに、凄く熱い。炎の中から低い声がする。

《我、呼ぶ者 お前?》

一つ一つの単語のように語りかけてくる。その声に吸い取られるかのように、セリスは目眩がしてふらついた。目の前には名前の通り、火竜がいた。体は炎の衣をまとっているかのようだった。

「俺の名はセリス=ハウノ。世界大精霊サラマンダー、あなたとの契約を俺は望む」

《何故?》

セリスは息をのむ。この精霊は、シューの時よりもそう簡単に契約できそうにない。そう感じた。セリスの額から一滴の汗が流れる。焦げ茶の目は、炎によって赤く染められていた。そして、何よりも、サラマンダーから流れてくる魔力に圧倒されてしまって、質問に答えられない。いや、言葉が出てこない。何をどうすればいいのかも分からない。足を見る。寒くて震えているかのようにガクガクしていた。セリスは一歩下がって深呼吸をする。

「サッ、サラマンダー。俺は、世界精霊を集めて……ジュラを倒す!!その為に、あんたの力を借りたいんだ!!」

何を言っているんだ!!と、エドワード。

《しかし ジュラ まだ復活 ない 我 目覚めることを 禁じられている》

《サラマンダー!!あなたも分かっているのでしょう?ジュラのマナが流れてきている事を!!》

若草色の髪を揺らして、シューが前へ出ていく。サラマンダーはアメジストのように美しい紫色の目で、シューを見た。その目から、何か悲しいものをセリスは感じた。紫色の目がゆっくりと閉じていく。

《我 古きマスター 約束 守る 邪魔する者 シュー 許さない》

シューは頭に来たのか、魔法で剣と盾を出して構えた。周りには、目を開けていられないほどの強い風が流れ込んでくる。

《大唱霊術師様はもういないの。それに、今の私のマスターはセリスよ!!セリスは大唱霊師様のような力はないけど、必ず強くなる。古のマスター(大唱霊術師)との約束だって、セリスと契約しても守り通せる事でしょう。だから、契約をして。サラマンダー》

《… シュー お前 自分 使命 忘れている 今 世界 守る いにしえのマスター 約束 守る 我 新たなマスター 認めない 我がマスター いにしえだけ》

《サラマンダー、あなたに何を言っても聞かなそうね。だったら答えは一つ》

二体の精霊の声が重なる。

≪戦うまで≫

 シューは風の剣でサラマンダーに斬りかかる。それに対抗して、サラマンダーは炎のブレスを吐き散らす。風の中に炎が入り込み、竜巻はたちまち炎の渦に変わった。渦は、セリスとエドワードを襲う。

《?!サラマンダー!!私のマスターに何を》

《セリス マスター なら 我と 戦うべき 構え セリス 戦う》

サラマンダーは、セリスに戦いを挑んでいるかのようだった。と、言うより挑んでいるのだ。

 セリスは、体中が震えていた。が、それは恐怖で震え上がっているものではなかった。世界精霊と戦うのが、楽しみで仕方がなかったのだ。

「…、サラマンダー。俺はおまえの挑戦を受けるぜ!!俺は精霊たちと戦う。まぁ、基礎魔法位は使わしてもらうけどな」

セリスがサラマンダーの申し出を受けると、少し笑ってアメジストの目をセリスに向ける。

《では 挑む 我 セリス 力 試す》

セリスは、腰にかかっている3つの内の1つ精霊鍵(フェアリーキ―)を取り出し、サラマンダーにそれを向けた。

「いくぜ!!火竜野郎!!《我 汝の力を求る 我 自然の音を聞く でよ!! 氷の小精霊 ディォ!!》おまえの力、見せてやれ!!」

鍵から出てきたのは、小さな妖精だった。それを見た瞬間、シューはぎょっとした。

《セリス?!あなた、戦闘能力のないディォを出して何をするつもり?!ディォを殺すに等しいわよ?!》

「シュー、おまえも手伝え、俺にいい考えがあるんだ!!ディォ、サラマンダーの周りに雪を降らせるんだ!!」

セリスがいうと、小さな精霊はその言葉に従い、サラマンダーの攻撃を受けないように飛び、大量の雪を散らした。

「シュー、サラマンダーに竜巻をぶつけろ!!」

《でも…》

「いいから!!」

シューは少し不安を残した顔をして、セリスの言うとおりにした。さっきよりも大きな竜巻を起こして、飛ばした。その竜巻は、勢いよくサラマンダーに向かっていく。

《無駄 風 火 勝てない》

そうサラマンダーは言って、ブレスを出そうとした瞬間。吹雪が起こった。セリス以外の者は、唖然とする。

「ぃよっしゃぁ〜!!決まった!!」

吹雪の中で、サラマンダーは必死に雪を溶かそうとする。が、寒さには勝てなかった。サラマンダーの皮膚が徐々に赤から紫に変色していった。そして、その場に座り込み、うずくまった。

 吹雪が治まる。

「…どうなったんだ?」

エドワードが、ゆっくり顔を上げあたりを見回した。目の前には、大きな紫水晶のように丸くなったサラマンダーが居た。サラマンダーは、全く動かない。

 セリスが立ち上がり、サラマンダーの方へと歩み寄った。

「…サラマンダぁ??…?!皆!!下がれ!!まだ体力が残っている!!」

セリスがみんなに忠告すると同時に、サラマンダーの体がまた赤色に戻り、バッと起き上った。弱ってはいなかった。逆に、さっきよりも強いマナを感じる。サラマンダーは、セリスをギロッと睨みつける。炎の衣は、さらに増す。どん、どん。と、歩くたびに地面が揺れる。サラマンダーの口から、ほろほろと炎が零れおちる。

「あちっ!!」

《セリス 我 本気 戦う 我 世界の流星 流す 星 滅 『メティオ・フォーム』!!》

本気になったサラマンダーは、炎最強の魔法『メティオ・フォーム』を唱えた。上から、いくつもの炎をまとった流星が向かって来る。

「皆!あっちへ!!…?!」

セリスの真上に流星が来た。そして、セリスに直撃した。

 流星がおさまると、周りは岩だらけになっていた。

《…セリス!!セリス!!…サラマンダー…!!あなたは!!》

シューが剣を向けた時、急に下が冷たくなるのを感じた。

「ぇ?!何だ?!」

エドワードが言った。それと同時に、雄叫びの様な声が聞こえる。岩と岩の間から冷たい空気が流れ込んでくる。すると、いきなり岩が崩れた。その正体はさっきよりもはるかに強い吹雪だった。いや、吹雪じゃない。

《…え。これって…騎士魔法ナイト・マジック氷騎士ザ・インブルナイト?!まさかセリスが…》

吹雪の真ん中には、大量のマナを放出しているセリスが居た。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

叫び声が大きくなるにつれて、吹雪の威力も増す。そして、雪が互いにくっつきあい、騎士の様な形になった。その騎士は、雪の槍をサラマンダーに向け、刺した。

《あぁぁぁぁぁ!!!》

サラマンダーは、倒れこんだ。と、同時に騎士と雪も消える。セリスはぺたぁっと座り込んだ。一気に魔力を消費したために、息切れしていた。

「…はぁっ…まだやるのか、サラマンダー…」

セリスの青い髪から一滴の水が垂れた。

 サラマンダーは重たい体をゆっくり起こした。

《我 セリス 認める セリス 契約 続けろ》

「…。《我、 契約を結ぶ 火と共に結ぶ》」

サラマンダーは長い首を少し伸ばし、目を瞑った。声にはしないで、セリスの心に直接話しかけてきた。

《セリス マナ 魔力 古のマスター 同じ お前 強くなる》

「…え?」

金色の鍵が身の前にあった。

 頭がくらくらした…

「セリス!!」




 《セリス!!セリス!!…セリス!!》

なくシューが目の前にいた。目から大粒の涙が流れていた。

「…シュー。ごめんな、心配掛けて…ほら、俺、契約できた。少しは戦力増えたろ?」

《うん…うん…》

セリスがシューの涙を拭う。そうすると、ニコッと笑った。

「なぁ、シュー…教えてくれよ、大唱霊術師様との約束」

《…大唱霊術師様は、第二の大唱霊術師が現れるまで誰とも契約をするなっていっていたの。悪用する者がいるかもって事で…》

「…そっか」

セリスが笑ってシューを見る。小さな頭を大きな手でなでる。

《でも、セリス本当だね、さっき言ったの…まだいないけど、ジュラを倒すって…》

「あぁ…もちろん。だって、俺はシューのマスターだからな!!まだ現れない第二の大唱霊術師様と戦うよ。だから、最後の最後まで力、貸してくれよな!!」

シューがセリスの指を握る。

《もちろん!!》


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