3章 ギルド
「…まだかよ…」
結局、セリスは第2の大唱霊術師様を探す旅に出ることにした。何故なら、シュー強制で。今、2人が目指しているのはセリスのいた小さな田舎村『アルテス村』からかなり遠い『王都ヴィッツァ』。この世界で一番大きい所と言っていい場所だ。そこへ行くのは、王様に会うため(と、言ってもそう簡単には会えないだろうが)。世界の状況を教えるやらなんやらと、シューが言っていた。きっと、田舎小僧が言った事なんて貴族が信じることがない。と、セリス。何やかんや言っても、結局ついて行くしかなかった。
ここは、村はずれの大森林地帯。空気がよくて居心地がいい所だ。より奥に進めば、アルテスよりも小さい名も無き村がある。そこで、今日は一夜を過ごす予定のようだが…
「ったくよ!!朝起きたら何?荷物と俺がこの大森林の入り口に放置とか…お前が風で運んだんだろ!!どうせ、元からそのつもりなんだったろ」
《よく分かっているじゃない。そうよ。だって、セリスがいなきゃ私は旅に出れないわ》
「お前さ、会った時とキャラ変ってる。」
《そうかしら?》
「うん」
落ちている石っころを蹴りながら、セリスは頷いた。シューは、「何?!」っと言わなくても分かってしまう顔をした。セリスは無邪気に笑いかけた。そんな幼いような顔を見れられると、シューも笑うしかなかった。
そろそろ精霊界にもどる。と、言ってシューは鍵の中に戻って行った。
しばらく歩いていると、気づけば空はオレンジ色だった。木々の間から零れる小さな宝石のような光は、次第に黒く染まった。夜が来たのだ。木の多いこの地では、暗さがさらに増している。セリスは少し怖くなった。真っ暗で何も見えない、ライヒも連れてくればよかった。と、思い始めた(でも、シューが許さないだろう)。
ガサッ、何か物音が聞こえた。セリスの体はビクッと反応した。その音は、風の悪戯らしく、何かが居たわけではなさそうだった。ほっと、一息ついてまた歩き始めた。が、セリスの首に冷たいものが当たった。それは見なくてもわかった。ナイフだ。
あまりの恐怖に声も出せない。シューを呼ぼうと鍵に触れたら、何かが手に当たった。石だ。さっきは気付かなかったけど、周りには黒ずくめの者が木々の間からたくさん見えた。
「…貴様、精霊師だな」
黒ずくめの男がナイフでぺちぺちとセリスの頬をたたく。セリスの目が潤む。
「ひっ…ひゃっ、ひゃぃ…」
「…連れて行け」
「えぇ?!ちょっと…貴方様方?!俺は行く所が…シュー!!シュー!!出て来い!!シュゥー!!!!」
「黙れ」
どす!!
「ぐはっ……」
セリスは男に鳩尾を殴られ、気を失った…
目が覚めると、何故かベッドの上だった。
(…??何で??俺、確か変な奴らに囲まれて…それで…)
「よぉ、目が覚めたか?小僧」
頭の中が混乱しつつも、セリスは声のした方を見た。そこに立っていたのは金髪の好青年だった。
「…あ゛!!!あんたその声、俺を襲った黒い奴!!よくも…(しかもコイツ何かカッコいいし…)」
ジャラッ。青年の手にはセリスの精霊鍵があった。あっと、セリス。青年は、鍵をグルグル回して握りしめた。ニッ。と笑うと、セリスの横に座った。
「わりぃわりぃ驚かせちまったな。俺はエドワード、エドワード=サリソン」
名前を名乗ったと言う事は、悪いやつではなさそうだった。(でも、襲われたが)
「あ、俺…」
「セリス=ハウノ。だろ?君の事は知っているよ。アルテスから来た田舎小僧。この世界大精霊の鍵を持って」
金色の鍵を掲げて見るエドワード。セリスははっとして、鍵を奪い返した。そして、エドワードを指さして言った。
「俺の鍵に触るな!!第一、この話に俺キャラは2人もいらねー!!」
「はぁ?!意味不明なこと言うな!!…小僧!!」
何の話か分からないことを言い合う2人だった。
そんな話を終えると、疲れた顔をしてエドワードが言った。
「あんな風に連れてきたのは悪かった。…セリス、ここがどこかわかるか??」
ムスッとした顔でセリスがベッドに横たわる。
「…知るかっての」
エドワードが苦笑いをする。
「ここは、君が目指していた名も無き村だよ。森林奥地帯の」
「え?!」
エドワードが話を続ける。
「でも、実際はそんなの仮の姿・名前だ。本当は地下に広がる魔術師が集まる『魔導師ギルド』だ。ここでは、力なき魔術師が憩ったりして、力をつける所だ。君は、精霊師なのに、魔力が有り余っている。(精霊を召喚するのには、かなりの魔力を必要とする)その代わり、精霊学の知識はないけどね」
「…。悪いかよ」
「悪いね。だから、その有り余った魔力で治癒魔法を扱えるようにするんだ。そうしたら、君は一人でも戦える」
セリスがあせって話に割り込む。
「まっ、待てよ…俺、ギルド員になるなんて…」
「君の精霊が承知した。」
なぬ!!と、セリス。鍵から、シューの声が聞こえた。
《大丈夫、彼らから悪い風は感じない》
セリスは少し考えていたが、シューやエドワードの言った事に従った。
「それに、君にこれを渡したかった」
エドワードがズボンのポケットから金色の鍵を取り出した。シューは目を丸くしていった。
《…!!それは…世界大精霊、炎の精霊『サラマンダー』!!こんなところに居たのね…》
「ここに精霊師は君しかいない。だから、契約してほしいんだ。君のためにも、サラマンダーのためにもなるからね」
セリスは渡された金色の鍵をじっと見つめていた。何か、その鍵から熱い何かが感じた。セリスは急に立ち上がってエドワードに言った。
「俺、契約する。コイツの力を知りたい」
「…わかった。では、広間へ行こう。あそこなら何もなくてやりやすいだろう」
広間へきた。セリスは深呼吸をして鍵を出した。
《我、契約を求る者 我、理の力を求る者
精霊よ 我、呼びかけに答えよ 出でよ!! 炎の世界大精霊サラマンダー!!》