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2章 世界

辺りは、綺麗なオレンジ色に染まっていた。そのオレンジ色の中に、セリスがいた。

「ライヒ!!ライヒ!!なぁ、見てくれよ!!俺、精霊と契約できたんだ!!」

帰る途中のライヒに向かってセリスは叫んだ。振り上げている右手には、さっき契約を交わしたばかりのシューの鍵があった。ライヒは何が何だかか分からないままセリスの話を聞く。セリスが寄ってきたところで、ようやく状況がわかった。

「セリス…世界大精霊のシューと契約したのか?!すげぇ!!でも、何で先生はセリスにそんな凄い鍵を渡したんだろう…?俺だったら人に渡さないで、自分が契約するな〜」

「それ、ある意味俺に対する嫌味だろ…」

セリスはライヒを睨んで隣り合わせに歩きながら言った。

「でも、確かにそうだよな…。何で俺なんかの為に…そりゃぁ、学校入ってからセンセーが精霊学専門って聞いていろいろ話とかしてたからな…あ、俺さ、やっぱ高校行くから」

「はぁ?!なんだよ、またいきなり。まぁ…お前が行く気になったなら良いけどさ」

《殺す…》

「ライヒ、何か言ったか?」

セリスとライヒが辺りを見回す。風の流れが変わった。と、ライヒ。まるで、セリスとライヒを捕まえるのかのように、風が吹き荒れる。

「?!セリス!!何かの魔法だ!!この村にこんな風は吹かない!!構えろ!!」

「?…あ、ああ!!」

二人は背中合わせになった。ライヒは鞄から理魔術書(ライヒは見習い理魔導師)のフリーズを出して、セリスは腰からぶら下げたシューの鍵を取り出した。その瞬間、目の前に何かが現れた。

《殺す…殺す…殺す殺す殺す》

何と、目の前に出てきたのは闇魔法で作られる『ゾンビ』だった。ゾンビは、地面に這いつくようにしながらセリスに向かって来る。

 セリスは「ヒっ」と、声を上げた。(だって、ゾンビから悪臭が漂うんだ!!)

「くっ、くっせぇ!!なんだよコイツ!!おい、ライヒ、フリーズ…」

「言われなくても!!」

ライヒが魔術書を開く。

《我、氷の使者 理の使い 開け氷の扉!! フリーズ!!!》

辺りは冷気に包まれていき、その冷気は次第にゾンビを包み込んだ。そして、氷となってゾンビを固めた。

「やったか!!」

ゾンビは動かない。セリスは足の力が抜けて、その場に尻もちをついた。

「…ふぅ、これで一応平気だな。いっ、急いで帰ろうぜ、ライヒ」

「あ、ぁぁ…」

二人は闇に染まった道を走りだした。が、走っていたのは束の間だった。

 ピキピキ…ピキ…何かが割れる音が聞こえる。その音が聞こえた瞬間、セリスは鳥肌がたち、冷や汗をかいた。青ざめた顔で、セリスはライヒと顔を合わせた。ライヒも顔が青ざめている。セリスが苦笑いしながら言う。

「らっ…ライヒ君??何か聞こえた??僕には聞こえたんだけどー?…」

「うん、セリス君。僕にも聞こえたよー?…」

パリンッ!!と完全に割れた。それは、ゾンビの入った氷の割れた音だった。うおーうおーと唸りながら、セリスとライヒを追いかける。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!出たぁぁぁぁぁ!!!」

「やばい!!逃げるぞ、セリス!!走れ!!…おい、何やってんだよ!!セリス!!」

セリスは、ライヒの言葉を無視してシューを召喚しようとしていた。目を瞑り、鍵を目の前へ出した。

《我、汝の力を求る 我、全てを嵐とする者 我、世界の風になる者 出でよ!! 風の精霊シュー!!》

ぶゎ!鍵から嵐のような風が吹いて、小さな精霊が出てきた。

《セリス 行きますよ 魔法を唱えて》

「え??え??しゅっ、シュー?!」

《自分の魔力を信じて 造形して》

シューは羽を羽ばたかせてゾンビの方へ飛んでいく。そして、セリスと戦った時と同じ風の剣を創り出して、ゾンビに切りかかる。

《セリス!! 早く!!》

シューがセリスをかす。セリスは、手で何かの形を作り出して呟いていた。ライヒは、怖くて尻もちをつく。

《我、光を求る者 我、光を操る者 いけ!! ライトにング!!》

セリスのかざした手から、いくつもの小さな光の球が溢れ出した。そして、その光はゾンビへと飛んでいく。

「いっけー!!」

光はゾンビにあたり、当たった所から次々に穴が空いて行く。ゾンビはうおーうおー言いながら、光に包まれて消えていった。セリスは魔力を使いすぎて、そのまま倒れてしまった。

「おっ、おい、セリス!!セリス!!」



 目が覚めると、セリスは自分の家のベッドに横たわっていた。

《目が覚めた?》

「…?…!!シュー?!な、なんでまだいんの?!」

《失礼しちゃうわね ここまで運んだの誰だと思っているのかしら?》

シューは小さな頬をぷくっとふくらませて言った。その姿は、まるで絵に描いたかの様に可愛かった。小さな羽で飛んでくると、シューはセリスの頭の上で止まった。

《セリスはあんな魔法が使えたから セリスには話しておくわね》

「…何を??」

《世界の状況》

「はぁ?!」

シューは改まった顔でセリスと向かい合った。その眼はとてもさっきとは違い、とても真剣だった。

 《じゃぁ、セリス 何故私『世界精霊』が目覚めたか分かる?》

「…なんとなく」

《…世界精霊っていうのはね 世界を守護するために『ジュラ』との戦いの後に作られた精霊なの 実際、私たちは封印されていた》

「されていた?」

《そう 『ジュラ』を二度とこの時間に戻さないように だから 『ジュラ』のいない世界では封印されていた けど…『ジュラ』はもうすぐで復活する 何故かは分からない けど 風が教えてくれている きっと また世界を闇に包もうとしているのよ 自分の願いを叶える為に…》

「願い?」

《それは後に… それに 私たちが目覚めたって言うことは… 大唱霊術師様がやってくる 私たちを求めて その時はあなたとの契約破棄ね♪》

「なっ?!…まぁ、世界が助かるならそれも仕方ないよな…」

セリスはちょっぴりしょげた。

《そういうことだから セリス あなたに手伝ってもらいたいの 第2の大唱霊術師様を探すの 私と契約できたんだから そんなの簡単よね?》

「ぇぇぇぇ?!まっ、待てよシュー俺、学校あるし…」

セリスはおどおどしながらシューに言う。ふと、セリスは思った。

「あのさ…シュー。話変わるけど、なんであのゾンビは俺たちを狙ったんだ?別に何かやらかした訳じゃないのにさ」

シューもはっとして、頭を抱え込んだ。確かに、あのゾンビはセリスを狙っていた。では何故?何故セリスが狙われたのだろうか?何かセリスにあるのだろうか。だとしたら、何があるのだろう。

《…どうでもいいから 答え 明日出してね じゃぁ またね〜》

「えっ…おい!!シュー…」

シューは鍵へと戻って行った。

「…ちぇっ。勝手な奴!!」

セリスはそのまま、乱暴に布団の中に潜り込んですぅっと寝込んだ。


 闇に包まれた部屋に一人の男がいた。

「セリス=ハウノ…やっと見つけた…我の願いがもうすぐ叶うのだな…『セレスティア』…もうすぐお前にも……」


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