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自習室 席番号X   作者: ステルス
2/2

〜席番号新5番〜

鋭い視線を感じて、私が振り返ると、外に人がいた。

現在時刻8時32分。私がここに来たのは、8時20分。施設が8時から開館なのは知っていたけど、自習室が30分から利用可能なのは知らなかった。ということで、1番に部屋に入ることができた。

そして2番目の利用者が入室する。割とすらっとした身体にジャージを着て大きなリュックを背負った高校生?ではなさそうな男性が、同じ横列の席に座った。不機嫌に見えるのは、気のせいだろうか?

そんなことを考えながら小学生以来一度も使っていない、ダサいリュックを開ける。中には大量の春課題、提出が2日後に迫っているものばかりだ。課題を残してしまうのは毎年恒例だ、、でも今年は何が何でも提出しないといけない。私もいよいよ受験生だ。1年後の高校のためにも、内申を落とすのはかなり痛手になってしまう。

と、その時外の中央階段に人の気配を感じた。この部屋の壁は入り口と階段側の壁がガラス張りになっていているから、外を見ることができる。じっと人影を見つめる、、、。

、、、落胆した、やはりいるのか。

現れたのは黒色のショートヘアにメガネ、ワンピースを身にまとった真面目を絵に描いたような自分とは正反対の小柄な少女だった。そして彼女は急に朗らかな笑みを浮かべながら、その視線の先に手を振った。嫌な予感がする。

2階の入り口からも人が入ってきた。その人物に、思わず視線が動く。

今すぐにでもランニングができそうな部活用のシャツに長ズボン、足元もきっとあれはランニングシューズだ。もうすぐ180センチになりそうな身長なのに、その顔には幼さと優しさがある。真面目少女に向けられたそのメガネ越しの瞳は、一点の曇りもなく笑っている。

勝ち目がない。ガラス越しの2人は、私が見てきたどんな恋愛もののドラマなんかよりも幸せそうで、お似合いだ。

少年の名は 麻倉 真名斗

葉坂北中学校3年。部内1の足の速さをもつ駅伝部副キャプテン。私の好きな人。

少女の名は 塩凪 凛音

葉坂北中学校3年。天才的な画力を持つ美術部部長。麻倉 真名斗の幼馴染。私の恋敵。

私の名は 丘野 聖奈

葉坂北中学校3年。特にパッとした経歴があるわけでもない、駅伝部マネージャー。

勝ち目がない。でも可能性はゼロじゃない。

そのことを象徴するかのように、あの2人は入室すると、少女は右端のの入り口側の席に、少年は左の1番奥の隅っこの席に座った。2人とも私には気づいていない。

風の噂で聞いた。あの2人はただの幼馴染だと。そして麻倉はこの自習室によくきているらしいと。少女もきているのは想定内だったけどね。

席に着いた少年が、ふと後ろを振り返る。 目があった、そしてぎこちない笑顔で軽く会釈をした。その目は少し曇っているように見えた。

私も会釈を返した。 他の女の子には、あんな顔しかできないんだ。心がチクッとする。

そして少女も私の方を向いた。そして笑顔を見せてくれた。

ドキッとして必死に笑い返す。うまく笑えたのかはわからなかった。

傷つくのは私、そんなことわかっている。

それでも譲れない。

私はあの笑顔がほしい。



残された時間は約1年。

進路先も君の笑顔も、この自習室で手に入れたいんだ。

そのために私はここに来たんだ。



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