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停止時間 始まりの始まり

作者: 石窯小麦

本日三本目のまたまた別作品

明日早いから寝るに寝れず深夜テンション振り切って寝る前に書き上げたものです。

 いつも通りの学校からの帰り道。

 代わり映えのない日常の光景が突然切り替わった。


 道行く人が消え、走っていた車が止まり、バイクがスタンドもなしに立っている。

 世界全体の色彩も灰色がかり色を持って動いている人間が俺だけになった。


 おいおい、何がどうなってんだ?

 夢でも見てんのか?

 それとも急死したか?


 あまりに突拍子もない出来事で逆に冷静に思考出来ているのがありがたい。


 スマホは圏外、しかもカメラで写真をとっても記録されない。

 ふと腕時計を見れば秒針が動いていない。


 時間が止まった?


 それなら車とかが止まっているのに違和感はない、でも、なんで人が居ない。

 いや、生物が居ないんだ?


 ゴミあさりをしていたカラスや、飲食店の室外機の上に据わっていた猫も消えている。


 とにかく、家に向かってみよう。

 ここで立ち止まって考えていても埒が明かない。

 色彩こそ灰色っぽくなっちゃいるが建造物や道の形が変わった様子はないしな。


「ーーー―!!!!!!」

 得体の知れないナニカの音が轟く。

 本能的恐怖心を刺激するような音だ。

 猛獣のように猛々しい声ではない、銃声でもない、高く不安定に響くだけのような音。


 だと言うのに、ここから逃げなればならない、逃げなければ死んでしまうそう思わせるほど音だ。


 あまりの恐怖心に腰が抜けてしまった。

 姿は見えない、だが、ヤツは俺の位置を把握している。


 根拠はない、だが確信がある。

 逃げたいのに、関節が笑ってしまって力が入らない。


 ガチガチと恐怖心が煽られる。


「はっ――はっ――くぁぅ――はっ――」


 うまく呼吸が出来ない。


 クソッタレ、動け、動きやがれ!!!

 近くのコンビニまでで良いんだ、一瞬だ、動け、普段なら三十秒もありゃ行ける距離だろうが!!!


 必死にカクつく体を動かし、無様に這いずり回るようにしてコンビニに入ろうとする。

 だが、ドアが動かない。

 どれだけ押しても、どれだけ引いても全く動く気配がしない。


「はっ……くそ……ぁ」


 目の前にソレは現れた。


 灰色の世界でなおくっきりと目立つ、塗料で染め上げたかのような黒い人型の影。

 顔であろう部分は真っ暗な闇があるだけ。

 表情もないし体があるのか無いのかもわからない。


 だが、ソレからは濃厚な敵意や殺意が伝わってくる。


「ーーー―!!」


 再びあの音が響き渡る。

 まるで獲物を見つけ喜ぶような音だ。


 そして影が動く。

 地面を滑るように移動し、腕らしき部分を振り上げながら。


 恐怖に竦みきってしまった俺はそれを他人事のように眺めていることしか出来ない。

 振り上げられた腕らしき部分は俺の胸部を狙っている。


「――ぐあああああああ」


 腹の底から渾身の力を込めて叫び、地面を両手両足を使って弾き、右方向へ転がるように回避する。


 アスファルトが沈み込み、重く鈍い音が静寂の街に轟く。

 あんなもの食らえばひとたまりもない。


 さらなる恐怖が俺を蝕む。


 だが、行き過ぎた恐怖心に神経が振り切れたのか、呼吸が正常に出来る。

 手足にも力が入る。


 今なら逃げることが出来るかもしれない!!


 影は不思議そうにこちらを見つめている。

 何故躱せたのか、そういいたげな雰囲気だ。


 こいつが動く前に逃げなければ。


 両手両足に力を込めて跳ね上がり、影に背を向け、脱兎の如く駆け出す。


 無我夢中で走る走る走る。


 どこへ逃げるのかも定まらず、ただ遠くへ逃げるように走る。


 どれだけ走っていたのかはわからない。

 まだほとんど距離は取れていないのかもしれない、もしかするとものすごく長い時間走り続けていたのかもしれない。

 何にしろ、息が切れてきた。


 恐る恐る後ろを振り向く。


 ヤツが居た。

 首を腕らしき部分で薙ごうとしている。


 無意識にヤツに向かって振り向きながらバックステップをしていた。

 全体重をかけた背後への体当たり。


 予想外の行動だったのか影はそのまま俺とともに倒れ込む。

 そのままマウントポジションを取り、拳を叩きつける。

 何度も何度もヤツが動かなくなるまで叩き込み続けた。


 顔の部分にヒビが入り徐々に動きが弱々しくなる。

 やがて防御すらしなくなった所でようやく俺は殴るのをやめた。


 だが、相変わらず世界は灰色のまま。


 もう動きがないことを確認し、ヤツから離れる。

 ふと、殴ったときのまるで人間のような感覚が今になって襲い掛かってきた。


 柔らかくそれでいて硬い。

 肉と骨を殴るあの感覚だ。


 なんだってこんな気分の悪い状態にならなきゃならないのか。


 クソッタレ。


 ともかく、ここから離れよう。

 こいつが生きてるのか死んでるのかは分からないが、いつ突然起き上がり襲ってくるかもしれない。

 それに、この影がこいつだけとも限らないんだから。


 影から離れようとした瞬間、まるでこの時を待っていたかのように影が起き上がり、逆に押し倒された。


「ーーー―!!」


 嬉々とした咆哮。


 影から伝わる俺への敵意は先程よりも濃い。


 マウントを取られた状態で腕が頭に向かって打ち込まれる。


 一か八か、顔面らしき場所に向かってこちらも拳を突き出す。


 ヒビに拳が突き刺さり影の顔が砕ける。

 同時に俺の頭部にヤツの腕が突き刺さり意識が途絶えた。




 けたたましい電子音が鳴り響き、不愉快な目覚めがやってくる。


「なんだ……夢か……」


 ろくでもない夢を見たもんだ。

 全身汗塗れじゃないか。


 ベッドから起き上がろうとして違和感に気づいた。

 右腕が何かに捕まっている。


 自由な左手で布団を剥ぎ取るとそこには――


「んぅ……寒いわよ……」


 見知らぬ美女が居た。


「誰だテメェ!?」


「朝から煩いわねぇ……昨日アレだけ殴り合った仲なのにもう忘れたの?」


「いや、お前みたいな女知らねぇよ!」


「ほら、殴り合ったでしょ? 灰色の世界で真っ黒な影みたいな私と」


「……は?」


「だから、あの影が私なのよ。 私は貴方を殺して貴方は私に殺された。

 結果、どういうわけか貴方と私が同時に存在しているんだけどね」


「……なんなんだよテメェ」


「さぁ? ただ、私は貴方を殺して貴方に成り代わるはずだった存在だってことしかわからないわよ」


「成り代わるって、じゃあ何でお前女なんだよ」


「知らないわよ。

 予想立てるなら、貴方に使われてない部分で私を補った結果じゃないのかしら?

 そんなことよりもお腹すいたわ。 朝ごはんにしましょう?」


 女は俺の腕を開放しベッドから出ていく。


「おい待て、話はまだ……」


「あら、まだもう少し私の胸にその腕を抱かれたかった?」


「んな!?」


 冗談よ冗談、とクスクス笑いながらキッチンへ向かっていく。


「ベーコンと目玉焼きとトーストで良いわよね? 材料それぐらいしか無いし。

 貴方は……紅茶淹れといてもらえるかしら」


 俺にティーポットと茶葉を押し付けてそそくさと調理を始めるてしまう。


「だから話がまだ」


「ご飯食べながらでも問題ないでしょう?」


「……分かった、とりあえず飯を食いながらだな」


「そ、だから早く紅茶淹れちゃって?」


 納得は行かないがいつも通りの手順で紅茶を淹れる。


「カップはどうするんだ?」


「換えの青いカップの方を私のにするわ」


「砂糖とミルク」


「スプーン2、ミルクなし。 毎朝いつも通りのよ。 貴方の記憶から色々形成されてるみたいだしね、私」


 釈然としねぇ確かにいつも通りの飲み方だし、カップも変えは青い方だし……じゃあアレはマジで現実のことだってのかよ。

 一体全体どういう現象なんだよ。


「まあ、少し落ち着いたほうが良いわよ? あんまり焦っても良くないから」


「そうかよ」


「そうなの」


「ってかお前今気づいたけどなんつー格好してんだよ」


「だって着るものなかったんだから仕方ないでしょ? 貴方の持ってるシャツで一番大きいの使うしか無かったのよ。 もちろんノーブラよ」


「ノー……なんでもちろ……いやそうか、女物の下着はないからな」


「パンツだけは借りてるけどね。 ちゃんと洗うから許して?」


「勝手にしてくれ」


「とりあえず、朝ごはんとお話が済んだら買い物に行きましょう? 主に私の下着と服を買いに」


「まてまて、金はどうする」


「お願いします♪」


「可愛らしく言ってもそんな金は」


「あるでしょう? 貯金をほんの少し崩すだけじゃない」


「アレはいざって時のための資金だぞ」


「そのいざって時じゃないかしら? それにちゃんと返すわよ」


「どうやって稼ぐつもりだよ、お前戸籍とかねぇだろ」


「残念ながら多分あるわよ。 世界が歪んじゃってるからね」


「は? 世界が歪んでるってどういう意味だよ」


「ま、それは食べながら話しましょう?」


 キッチンからベーコンエッグとトーストの乗ったプレートを一枚ずつもって来ながら女は言った。


「紅茶もいい香りね。 記憶よりも香りが良いわ! ね、早く食べましょう?」


「はぁ……まあそうだな、いただきます」


「いただきます!」


 言うが早いかよほど腹が減っていたのか女はベーコンエッグとトーストをすごい勢いで食っていく。


「ん~!!! やっぱり記憶よりも良いわ! 美味しいってこういうことなのね!」


 その表情はとても幸せそうで、昨日のアレとは似ても似つかないし雰囲気も全く違う。


「さて、世界がゆがんでるって話だったわね。

 これは単純、私達が出会った空間自体があらゆる生物の認識のズレによってできた歪んだ時間だから。

 その中で起こった出来事は当事者たちに返ってくるだけなんだけど、その際に世界から情報修正を受けるのよ。

 最初からこうだったみたいな感じでね」


「なんだそりゃ、どんだけご都合主義な空間だよ」


「実際そうでもしないと余計に歪みが酷くなるからじゃないかしら?

 あったのにない、無かったのにあるが頻発するのはズレが加速するだけだからね」


「ふむ……まあ、仮にそれが事実だとしたら一体お前はどういう存在になるんだ?」


「そうね……髪の色も目の色も貴方とは違うし顔立ちからして人種が違うわよね……義理の姉弟とか婚約者とかそんな感じじゃないかしら?」


「お前絶対今時分のほうが姉だとか思っただろ。 あとただの高校生に婚約者はキツイんじゃねぇの?」


「私が姉なのは当然よ? 貴方より落ち着いてるもの。

 まあ、何にしても結局のところはいまいちわからないわね」


「それに、世界自体が情報修正受けるのに何でお前の服とかがないんだよ」


「それこそ中途半端に体を持った弊害じゃないかしら? だから色々と中途半端なのよきっと。 社会的に大きくズレるようなものだけが修正されたみた


いな」


「結局いまいちよくわからんことに変わりなしか」


「そういうこと、さてご飯も食べたし、お話も終わりでいいかしら?」


「なんかもうどうでも良くなってきたしいいよもう」


「じゃあ、服とか買いに行きましょう?」


「そこも確定なんですねはい」


「そ、デートよデート。 今日は土曜日なんだからそのあと少し遊びましょう? ゲーセンとかカラオケとか!」


 見た目だけならアルビノ系の美人だし、デートというのも楽しそうではある。

 服もなく過ごさせるというのも何だしなぁ……。


 それにあの楽しみにしてますみたいなキラッキラの笑顔されるとなんとも反論しづらい。

 何でこうなったんだか。


 平穏なはずの日常が一瞬にして非日常になり、日常に戻ったかと思えば非日常がまだくっついてきている。


 確かに毎日が退屈だと思ったりはした。

 だが、あんな命懸けのスリリングなものを味わいたくはない。


 結果としてなし崩し的にこの美女との共同生活が始まりそうだというのには少し健全な男子高校生としては期待が膨らまんでもないが。

 果たして、これから先どうなるのか、不安半分期待半分といったところか。


「あら? 黙り込んじゃって、もしかしてデートって言われて恥ずかしくなっちゃったかしら? 流石は彼女いない歴=年齢の童貞くんだね!」


「それ言ったらお前だって彼氏いない歴=年齢の処女じゃねぇか!!」


「当たり前でしょう? だって昨日生まれたばかりよ? 私」


「あーはいはい、そうでしたねー」


「そういう適当な返答はよくないと思うなぁ私」


「それ以外に言いようがねぇんだから仕方ねぇだろ」


「ま、それもそっか、私達出会ってまだ一日目だし、私が一方的に貴方のこと知ってるだけだしね。

 しょうがないか、じゃあ、改めまして今日から末永くよろしくね? ア・ナ・タ♪」

読了お疲れ様でした。

このような稚拙な文に時間を割いていただきありがとうございます。

見苦しい点がいくつもあるような気がしますが生暖かい目と広い心で受け流してやってください。

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