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病んDAYS  作者: 森ノ宮金次郎
友原宮子
2/12

ストーカー② 監視と束縛

ただただ勢いに任せて書いている感じの作品です。

 毎日毎日、携帯が点灯しています。大量のメールが今日も届いたのです。もうそういう物だと認識してしまえば、大したことはありません。中身に関しては詩のように短文が多いです。近況報告や、質問、予言じみた言葉や、睦言むつごとなどバリエーションに富んでいます。

 圧倒的物量、文字の暴力とも言えるその量。一日に百件はゆうに超える頻度なのです。とてつもなく暇な人なのだな、そう思われても仕方のないことでしょう。事実そうに違いないのです。

 

 その代わりに外出先での遭遇率が減ったように思います。その理由は明白ですが。ええ、盗撮に盗聴されているからです。わたしを監視するのに、いちいちそばにいる必要がない。ただそれだけのことなのです。狂ったように送られてくるメールにそう記されておりました。おおかた学校を休んだ時にでも部屋に忍び込んだのでしょう。

 何か行動を起こす時には必ず、着信があります。朝起きる時、朝食を食べる時、歯を磨く時、服を着替える時、トイレに行く時、出掛ける時。友原さんは看守の才能があると思います。どんな些細なことでも見逃すことはありえません。きっと数多あまたの脱獄王も彼女を前にすれば、地にひれ伏すことでしょう。

 電話が鳴れば出る。ごく自然のことです。すると当然のように彼女が待ち構えています。どうでもいい雑談や、しょうもない指示が飛んだりします。返事もしません。通話終了しておしまいです。着信拒否をします。少し目を離すと解除されます。いたちごっこなので諦めました。


 FBIにマークされた重要人物のような扱いです。デカダンスにふらふら浮かぶクラゲのような人生を送る、このわたしが。だからでしょうね、何も感じず、平穏無事に生活を送られるのは。感情が鈍麻どんましているのです。自身のことでさえ他人事に感じてしまうんですね。

 これほどまでに熱くマークされているにも関わらず、すぐにそのことを忘れてしまう。その度にメールや着信でまた思い出す。これの繰り返しです。ああ、なるほど。確かに彼女にとっては運命の人なのかもしれません。常人には耐えがたい苦痛や懊悩おうのうが、丸っきりわたしには感じない。病的に鈍感なおかげで、均衡を保てている訳ですから。


 それでも少しは障害がありました。三大欲求であるところの『性欲』です。生理現象として直立した股間。その処置が手軽になりました。インターネットさまさまと言った所でしょうか。刺激的な画像と動画を探し、煩悩ぼんのうのままに衝動を吐き出しておりました。そう、これまでは。

 最初に断っておけば、羞恥や戸惑いは一切ありません。下半身丸出しで当然のように鎮座するわたしに対し、猛然と友原さんは阻止してくるのです。性に対して清廉潔白なのか、純情なのか、はたまた嫉妬なのか。なかんずく性欲に関しては看過できない問題のようです。果てしなく迷惑この上ないのですが。


 ここで初めて攻防がありました。その日も何食わぬ顔で自慰行為にふけっておりました。もう脳がそっちに旅立っておりますから。動画ならばヘッドホンしておりますので、着信など歯牙にもかけません。部屋のドアがノック、というよりは借金取りの取り立てのごとく叩かれておりました。ドアノブも45度揺れっぱなしです。ですがどこ吹く風でございます。いよいよクライマックス。小規模な昇天、まさに天にも昇らんとする解放感と僅かな徒労感が迫っています。下腹部にも熱がこもったその瞬間のことでした。


 ダイナマイトが炸裂したかのような音。拉致された被害者を助けに来たヒーローのような登場です。ドアノブが吹き飛んで来た時の驚きは今でも克明に思い出されます。片耳のイヤホンを外し、振り返りました。肩で息をしている友原さん。握り過ぎた両手からは血がしたたっています。

 わたしは修繕費しゅうぜんひを脳裏に浮かべました。しかしそれよりも中断してしまった作業があります。クルリと背を向けるとまたしても動画に没頭し始めました。背後で怒鳴り声が聞こえますが、こちらも負けじと音量を上げます。首の後ろのえりを掴まれ、女性とは思えぬ力で引き倒されました。その勢いでパソコンに装着したイヤホンが外れます。あられもない嬌声きょうせいが部屋中に響き渡りました。それを聞いて友原さんは「ひっ」と小さく悲鳴を上げて、脱兎の勢いで走り去ってしまいました。まるで野生動物が突然の大きな音に驚き、逃げ去るかのようです。

 僥倖ぎょうこうにして重畳ちょうじょうです。我慢した分だけの多幸感を得られ、それとは別に一抹の不安を抱きながらその日を終えたのです。

どう解決させようか悩み中。いや、この主人公にしてもう落ちが見えたも同然なのですが(笑)

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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