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病んDAYS  作者: 森ノ宮金次郎
友原宮子
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ストーカー① 告白と破棄

主人公わたし木梨勉きなしつとむ一般家庭で、大らかな両親のもとすくすくと育つ。

何となく生きて、何となく過ごす毎日。運が悪いが、まるで意に介さない性格なので毎日が幸せ。

今日も変人に絡まれて、受け流す日々。

 ラブレターをもらいました。ええ、もちろん初めてのことです。一度も話したこともなければ、同じクラスになった訳でもない。家が近い訳でも、両親同士が仲良い訳でもない。その女の子の名前は友原宮子ともはらみやこと言うそうで。小柄で、眼鏡を掛けてちょっと地味な子でした。

 浮かれるとか嬉しいとか、そういう感情が湧きませんでした。強いて言うなれば、どうして?という疑問だけが脳を駆け巡りましたね。結局の所『運命の人』が自分だったようです。手紙からざっくり引用すれば。

 相手にするだけ時間の無駄だと思いました。ええ、この手合いはどんな反応をしても喜ぶものです。露出狂と大して違いありません。無視するのが一番です。可愛らしいキャラクターの手紙に文字がびっしり埋まっていました。ちなみに最初の一文が『好きです、私の運命の人』でした。ああ、もちろんそれ以降は読んでもいません。前世や、ソウル、赤い糸辺りが活躍するんじゃないでしょうか。

 したがって残りはゴミ箱に捨てることにします。返事?書く訳ありません。音信不通からの自然消滅を狙うに限ります。ええ、もちろんそんな単純に終わるなら、人生楽でいいのですが……。ヤンデレ何て言う人種に関わるなんて、わたしもついてませんね。いえいえ、人生は生涯暇つぶし、そんな言葉もあるくらいです。感謝しないといけません。珍獣みたいなものですから、彼女たちは。


 その日も変わらない朝でした。いえ、ラブレター貰った次の日なのですが。捨てたはずのそれが机の上にあるんですね。まぁ、そんなこともあるみたいで。心霊現象や怪奇現象の類に近いですよね。とりあえずラブレターには『今度は捨てないでね』というありがたいお言葉が。もちろん捨てました。ですが無限ループの予感がしましたので、拾い上げます。そのままポケットに突っ込みました。

 リビングに入ると笑い声が聞こえます。どうやら母親が誰かと話しているようです。ええ、予想通り友原さんですよね。想定の範囲内です。もう彼女面して、母親と打ち解けてけて外堀を埋めようという算段です。それがどうしたと言った具合ですよね。母親に友達ができて良かった、そんなレベルの話です。丸っきりわたしの人生には関係ない訳で。

 席に座るとにっこり微笑んできます。親戚の馴れ馴れしいおじさん程度の扱いですよ。あ、どうも、みたいな。軽くあごを引いて会釈する程度の関係です。やたら明朗快活に両親と談笑しています。父親に至っては鼻の下を伸ばしている始末です。


 さて登校の時間です。腕でも組んで来るかと思いきや、三歩後ろに付いて歩いてきます。これは意外です。あ、いや、むしろ今までのキャラに違和感があったのかもしれません。俯き加減で、両手でしっかりカバンを持っています。おっと忘れていた。外門を抜ける直前に思い出しました。庭に焼却炉があるんです。ですからラブレターをそこに放り込んで、火を付けました。黒煙が上がります。それを絶望的な目で友原さんは見ていました。小声で「どうして」と呟いています。


 わたしはそれを横目にしながら何も言いませんでした。百聞は一見に如かず、燃やされた恋文こそが答えなんです。下手なフォローなんて無粋じゃないですか。はっきりと答えてあげるのも優しさなんです。他人に興味がない私ですから、いえ自分にもあまり興味ないですが。傷は浅い方だと思いますので、さっさと次に行ってもらいたいものです。後ろからはしゃくり上げる声が聞こえましたが、振り返りませんでした。


 結局彼女は学校にも来ませんでした。隣りの教室の廊下側なんです、彼女。だから移動教室の際、彼女の席が空白になっていたので発覚した次第です。何事もなく一日が過ぎ、帰宅しました。一見して何も変化が無いようでしたが、机の上に携帯電話が置かれていました。開くとメールが一件受信されていました。

「いつでも一緒だよ」

 何のことかさっぱり分かりません。霊にでもなって取り憑いたのかもしれません。わたしは頭を掻きながら、ベッドに放りなげました。一つだけ言えることがあります。彼女はまだ諦めていないということです。

普通なら怖がることに対して、まるで気にしない。そんな人物を書きたくて始めました。ひとしきりヤンデレの相手をして満足したいなぁ。

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