1 お誘い
ある夏の日、都会の大通り。
みんな、あまりの暑さにめまいをおぼえつつ、歩いていた。
そんな中、スキップしながら進んでいる女。名前は橘 深雪。
赤い帽子を被り、顔のほぼ全てをマスクが覆っている。
周りの人たちの怪しんでいる目など気にせず、待ち合わせ場所の喫茶店に向かっていた。
(あ〜、暑い‼︎でも久しぶりに空兄と会えるから楽しみ!空兄、元気かなぁ〜。)
今年成人した深雪は、歌い手という職業についている。それは、空兄の影響だ。
喫茶店に着いた深雪は、コーヒーを注文して、席に座る。
そう待たない間に、待ち合わせの時間になった。
後ろから、聞き慣れた足音が聞こえてくる。深雪は満面の笑みを浮かべて振り返った。
「空兄‼︎元気?」
「久しぶり、深雪。元気だよ。深雪も元気そうだな。マスク付けてても、笑顔って分かるよ。」
苦笑いをしながら、向かいに座るのは、橘 空。深雪の従兄弟で、歌い手をしている。深雪が歌い手となった、きっかけでもある。
「最近、深雪は新しく動画を出しただろ。」
「ああ、『照り照りハート』のこと。」
「そうそう。あれ、めっちゃ良いと思うよ。」
「ホント?ありがとう!」
「また、コラボしような。でさ、ここからが本題なんだけど、俺たちのグループの『KING』のことは知ってるだろ。そのメンバーで旅行に行くんだ。で、それを編集してDVDにするつもりなんだ。でも、男3人じゃ、華がないだろ。だから、女子を2人ぐらい入れようと思うんだ。だから、……」
「えっ、行っていいの⁉︎行く行く!」
「そ、そうか。じゃあ頼む。明後日からなんだけど。」
「明後日!?どうしよう、心の準備が!」
「ははは。大丈夫、大丈夫。あと、キュウポンもいるから。」
「えっ、キュウちゃんも?やった〜〜!」
「じゃあ、明後日の朝7時に迎えに行くから。」
「うん、分かった!」
深雪は、帰りもスキップで帰った。
次回、「KING」のメンバーの宇海からの視点でかきます。