表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/78

いわゆる勇者

クズだった現実世界、「朱条 明」

果てしないギャンブルと借金の果てに命が消されそうになり救いを求め光の包まれた、そして目覚めたところはなんと



「……どの」

「ゆう……どの」


 なんだか声が聞こえる。

 うるせぇ、こっちはいい気分で酔っ払ってるんだ。静かにしてくれ。


「勇者殿!!」


 ジジィの声が聞こえる。

 殿ってなんだよ、殿って。

 今時あり得ないだろその語尾は。

 

「なんだよ!! うるせぇぞジジィ!」


 俺は目覚めた。

 寝起き一発目の怒号が響き渡る。

 

「おお、勇者殿。お目覚めか」


 目の前にジジィがいた。

 寝起きジジィは気分が悪い。

 大体なんだその服装は、ハロウィンでも行くのか?まだ夏だろ。

 暑苦しい格好しやがって……ってここどこ?

 俺は辺りを見回した。

 ここは俺が今まで見たことがある建物とはまったく違う構造をしている。

 バカ高い天井、とにかく広い空間、まるで絵の具で描いたような美しい色をした装飾品の数々。

 なんだここは。

 

「勇者殿、何をキョロキョロしておられるのです」


 ん?勇者?

 なんだよそれ、誰のこと言ってるの?

 今更だがここどこだよ。

 なんか、素直に綺麗なとこだなーって感心しちまったけど。

 まったく事態が飲み込めない。

 

「勇者殿、大丈夫ですか? 召喚の時に何かおありで?」


 勇者勇者うるせーな。俺は勇者じゃないっつーの。

 いい加減しつこいわ。

 ちょっと考えさせろや。


「あの……ハーブとかやっちゃってます?」


 口から出てしまった。

 頭がオカシイ奴は大体友達、じゃなくて大体見たことがある。

 こういうおかしな言動する奴は、ハーブ系をやってるに違いない。

 

「ハーブとは? 勇者様はお疲れのようだ。詳しいことはまた明日」


 あれ?おかしいな。

 ハーブじゃなかったのかな?

 そう思っていたら兵士らしきコスプレイヤーがやってきて俺の腕を掴み、そのままどっかへ引きずられていった。

 やれやれ長い夢だぜ。


 …………夢じゃない。

 ベッドの上で俺はやっと気づいた。

 そうだった、あの時光に包まれて俺は消えて、どこかへ旅立ったんだった。

 あれは確実に夢じゃなかった。

 夢の感覚ではなかった。

 たしか「助けてやる」とかいってたな。

 えーっと、俺の借金のことだよなたぶん。

 約束もした。助けてくれる借りを返すってことに。

 俺は落ち着いて考えた。

 たしかのさっきのジジィは俺のことを『勇者』と呼んでいた。

 勇者……なんのことだ?

 勇者といえば、あれだろ。

 ゲームや漫画で出てくる世界を救う人のことだ。

 え?

 勇者!?


「マジかよ!!」


 もっと落ち着け俺。

 俺は勇者になったのか!

 あいつハーブでイカれたジジィじゃなかったんだな。

 悪いことをしたなぁ……すまねぇジジィ。

 って、ジジィのことは今どうでもいい。

 意味がわからねぇ。

 借金で死にそうになり助けを求めたら光に包まれて変な声に助けてやるって言われてYESって言ったらこうなった。

 つまりこういうことなんだよね。

 うーむ。

 

「悩んでいるようだな。勇者よ」


 誰だ!?

 俺が寝てる部屋には誰もいない。

 ってかこの声と頭に響いてくる感じはあの時の!

 そう、あの光の時の声だった。


「お主は勇者となったのだ。 異世界を渡り歩き世界を救い続ける勇者にな」


 俺は勇者になるなんて一言も聞いてないんですが……。

 そういうお話だったんですね……。


「どういうことだ?俺が勇者?なぜ?ホワイ?」


 意味がわからないんだよなぁ。

 勇者になることと、俺の借金助けること、何の関係があるんですかね。


「お前は勇者となり世界を救え。そしてその救った報酬を我に捧げよ」


 へ?

 なにそれ何か勇者のイメージと違くね?

 勇者ってこう何かもっとこう、見返りを求めない感じだったような。

 というか報酬を捧げよってなによ。


「世界を救うのはいいとして、なぜ報酬を捧げないといけないの?」


 捧げてどうするんだよ。

 聞いたことないぞそんな勇者。

 お前の勇者像、どういう認識だよ。


「お前は助けを求めたではないか」


 たしかに俺はあの時助けを求めた。

 まさに絶体絶命、神にもすがる思いだった。


「確かに求めた。借金のことを助けてくれるんだろう?」


 あれはそういうことだよな、やっぱり。

 それしかないし。


「そうだ、私はお前の借金のことを助けてやる。だがそれは、力を貸してやるということだ」


 あー、確かにそう言ってた気がする。

 あの時は勢いで口から言ってたからあんまし覚えてないけど。

 俺そういうえばかなり威勢のいいこともいってたな。

 

「借りたものは必ず返すのだ。これはあらゆる世界の道理であり、揺るがないものだ」


 同じ台詞聞いたわたしか。

 そうでした、借りました私。

 あなたから力を借りました。

 

「思い出したか? 自分が言ったことには責任を持て」


 はい。


「お前はあらゆる世界を救い続け、その報酬を私に捧げることで返すということになる」


 そういうことかよ。

 返すってのはそういうことか。


「話はここまでだ。まずはこの世界を救って見せるがいい。この世界のランクは最低レベルだ。お前でもなんとかなるレベルであろう」


 まだまだ聞きたいことがあるんですけど……。

 もう行っちゃうんですか……。

 てかどこへ行くんですかね……。


「あーもう!めちゃくちゃだよ!分かった、とりあえずこの世界を救って報酬もらえばいいんだろ!」


 やっちゃったほうが早い。

 ここでうだうだしててもしょうがないな。

 とりあえず、世界を救えばいいんだろ。


「そういうこと。じゃね」


 え?なんで最後だけそんなにフランクなの。

 何か拍子抜けなんですけど!?

 そして声は聞こえなくなった。


 ヤバイことになったな正直。

 何度も言うけど聞いてないよこんなの。

 勇者って 未経験者歓迎! だったの?

 簡単な作業ですぐ覚えられますってか。

 どっかで聞いたことある感じだぜ。

 なんか異様に疲れた。

 もうとりあえず寝よう。

 明日何か説明あるらしいし。


 ――――――――翌朝


 あ~良く寝た。

 どこでも眠れるのが特技だったけど勇者になって異世界でも眠れるとは思えなかった。

 これは、よく眠れるのが特技界一位だな。

 そんなくだらないことを考えていたら部屋のドアがノックされた。


「勇者様、お目覚めですか。陛下がお呼びでございます」


 陛下……?

 ああ王様のことか?

 しかし、この格好でいくのか?

 実は俺の服装は完全に終わっていた。

 なにせ白Tシャツにスエットだからね。

 だって過ごしやすいんだもん。

 代えの服なんてもちろん持ってないからしょうがなく俺はこのままの格好で向かった。

 臭くないよね?そんな心配をしながら。


「陛下、勇者様が参られました」


 おいおいなんだよこれ。

 俺は王様らしき人の前に立たされた。

 周りには兵士、いや騎士っていうのかな。

 そんな屈強な男たちが見守っている。

 これ完全にRPGの最初のとこだ。

 こうもテンプレ通りなんだな。


「勇者殿、よく眠れましたか。もう大丈夫のようですな」

 

 たしかによく眠れたし、昨日みたいになってない。

 てか昨日の俺、かなりヤバイ様子に見えただろうな。


「勇者殿、早速だが話を進めたい」

 

 なんか凄く焦ってる感じがする。

 王様ってもっとゆっくりしたペースで接してくるんじゃないのか。

 周りの騎士たちも視線が厳しい。

 そんな目で俺を見ないでくれ。

 厳しくされるのは慣れてないからもっと優しい目で見てよ。


「この世界を救って頂きたい!!」


 俺のを手を握り大きな声で言ってきた。

 ちょっと手が汗ばんでて気持ち悪いんですけど。

 これが美少女ならなぁ……いかんいかん。


「もう勇者殿しか頼れる者がおらんのです」


 握る手に力がこもってる。

 王様の熱意がビンビンだぜ!

 なんてことはない。

 よくわからないから、まだ。


「このままでは、この世界は魔王によって支配されてしまう」


 俺まだ一言も喋ってないけど、話が早いですね。

 とりあえず聞いてみるか。


「陛下、いったいどういうこと? じゃなくて、どういうことでしょうか?」


 言葉遣いこれでいいよね?ね?

 やれやれだな。


 

  

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ