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ラジオアクティビティ  作者: 岡田健四郎 ZOMBRAY
9/17

保安官本部

 奈々子は目を覚ました。

 そこはパトカーの後部座席だった。

 奈々子は運転席の後ろに座りなおした。

 日本の運転席とは逆だった。

「目が覚めたかね?お嬢さん?」

 ケネスがバックミラーで奈々子を見て聞いた。

 奈々子は腕を背中に捻り上げられていて、後ろ手に手錠を掛けられていた。

「なぜ手錠を掛けるの?」

 日本語訛りの英語で聞いた。

「な~に、あんたにちょっち暴行罪がある」

 暴行罪?この男は頭が狂っているの?

 道の途中で用を足してる男が居た。

 ケネスは車のマイクを掴んだ。

「そこの男、とまってろ」

 車のスピーカーを通じて語りかけた。

 ケネスは車から降りると、男の腕を捻って手錠を掛け、後部座席に乗せた。

「何があったんですか?」

 奈々子は聞いた。

「野外でのおしっこは犯罪だそうだ」

 男は怒りをあらわにした目でケネスを睨んだ。

 ケネスは車に乗ると、車の無線機を取って連絡を取った。

「ケネスから本部へ、どうぞ」

『こちら本部』

 無線から男の声が返ってきた。

「男女2名を逮捕。男性は車を所持、回収に来て欲しい」

『了解、レッカー車を送る。署まで連行しろ』

「了解」

 無線機を戻した。

「お前達は警察に行くことになる。カート、発進しろ」

 車は発進した。

「な~に、安心しろ。留置所には行かない。ちょっとしたら開放する」

 奈々子は今日の記憶が思い出せなかった。

「お嬢さんはなぜここに?」

「学校の旅行で着ました」

「そうか、旅行か…旅行はいい、仲間との関係も深まるし、家族と違って思いっきりふざけあえる」

 ケネスは笑った。

「知ってるか?妻が子連れでこんなところまに来てる居るときは、十中八九は夫に腹を立ててるんだよ」

 奈々子はなぜ突然そんなことを言うか理解できなかった。

「ほら、あそこだ」

 ワゴン車が止まっていた。カートはブレーキを掛けた。

 ケネスは降りた。

「奥さん、ここでの駐車は違反ですよ」

 運転席から若い女性が出てきた。

「すみません、タイヤがパンクして代わりが無いから…」

「言い訳はいいから警察まで来てもらうよ。な~に、ちょっと書類などを書くだけだからさ。お子さんも一緒にね」

 女性は車の中の子供を連れ出し、パトカーの後部座席に向かった。

 ケネスは助手席に乗った。

「ほら、つめてつめて!」

 2人はつめた。

「ごめんささい」

 女性は後部座席に乗ると、子供を膝の上に乗せた。4歳から5歳くらいの女の子だ。

「ケネスより本部へ、どうぞ」

『こちら本部』

「もう一台運んで欲しい車がある。ワゴン車だ」

『了解』

 ケネスは無線機を戻した。

 レッカー車がパトカーを通り過ぎた。

『ケネス、また駐車違反者が居たのか?』

「ボブ、ワゴン車はパンクしてるそうだ」

『ははは!パンクは良くあることだ!』

「まずはこの先にある車から運んでくれ。ワゴン車は後だ」

『アイアイサー』

「ボブ、ここは軍隊じゃないんだ。返事は了解だ」

『アイアイサーキャプテン、了解』

 レッカー車が男の車を回収しに向かった。

「まず、全員の名前を聞こう。お嬢さんから順番にな」

「佐々木奈々子、佐々木が苗字で奈々子が名前だ」

「ジェーン・ハーベルト」

「ローズ・ペグ。娘はミラー」

 ジェーンはオールバックの髪の毛を掻き毟った。

「ナナコにジェーンにローズにミラーっと、よし出発」

 カートはアクセルを踏んだ。

「にしてもローズ、なぜここに?」

「目的地の近道って聞いたから」

「誰に?」

「どこかの男に」

 ケネスはうなずた。

「大変ですな。私が町一番のステーキの店に案内します。あそこのTボーンは絶品ですな」

 この男はおしゃべりなのか、黙った姿を見ていないな。

「この場所で何があったんですか?」

 奈々子はなるべく愛想に良い声で言った。

 ケネスは薄笑いを浮かべた。

「この場所では核実験が行われた。それにどこかの町の地下で、今でも石炭が燃えているんだ。そう、ここはまさしく地獄だ」

 ケネスは暗い顔で前を見ていた。

「皆良い人だったよ。いや、まあ、ほとんどがな。中には気の毒な人も居る。放射能を被爆し、世間から嫌われた連中がな」

 それまで喋っていたケネスが黙り込んだ。過去の何かをじっと見つめながら。


 乾燥した岩場の上で、セガールがトランシーバーから朗報が流れるのを待っていた。

『セガールか?』

「スティーブ、やったか?」

『アンナが殺された』

 セガールは殴られたような驚愕な顔をした。

 が、それは一瞬だけで、すぐに笑みを浮かべた。

「あの馬鹿女。あれだけあっさり殺せと言ったのに」

『アンナを殺したのは保安官だ』

「どうやら保安官を見くびっていたな」

『だが、ガキを1人捕まえた。綺麗な銀髪の女だ』

「まさか…やるのか?」

『ああ、やるつもりだ』

「誰ので?」

『投票で』

 セガールは笑みを浮かべた。同時に悲しみの顔も見せた。

「アンナが殺されるなんてな……」


 パトカーが走っていると、巨大な洋館のような建物が見えてきた。

 正面には入り口があったが、普通のドアだった。

「ケネスより本部へ、どうぞ」

『本部よりケネスへ、どうぞ』

「ただいま本部に到着しました」

『人ではいるか?』

「くれるか?」

『1人送る』

 パトカーは洋館の正面に止まった。ケネスはパトカーを降りた。

「カート、見張ってろ」

 そう言って洋館に入った。

 カートはパトカーから降りると、ホルスターから自動拳銃ベレッタM92Fを抜き、4人が乗ってる後部座席に向けた。

「逃げないでくれ。殺したくない」

 イタリア製のクールな拳銃を向けながら、カートは言った。

 奈々子は今日の出来事が思い出せなかった。

 厳密にはなぜパトカーに乗せられ、手錠を掛けられているのか理解できなかった。

 私は警察に捕まるような事をしたか?

 洋館から誰かが出てきた。少し太った巨漢だった。

 顔にはボロボロの麻袋を被り、腰からはエプロンを纏っていた。

 巨漢はパトカーのトランクから何かを出した。

 抱え込んで居たのは女だった。

 腹部に銃弾を食らって重傷だが、辛うじて生きていた。

 そうだ!全てを思い出した!

 ケネスが家から出てきた。

「トム!その女はいつも通りあれをやれ!」

 太った巨漢――すなわちトムは、女を肩に担ぐと、家に入っていった。

 ケネスは散弾銃を構えながらパトカーに後部座席の近づいた。

「全員車から降りろ!」

 全員言われるがままにパトカーを降りた。

「これから本部に入ってもらう。1人1人尋問する」

 そう言って誰にするか決めているのか、目で全員を見ていた。

「ミラーちゃんは祖母のノーマに遊んでもらってね。カート!女の子をノーマおばちゃんの場所に連れて行け!」

 カートは拳銃をホルスターに仕舞った。

「さあおいで」

 カートはミラーの左手を掴んでゆっくり引っ張った。

「誰から始める!」

 3人は迫力のある怒鳴り声で一瞬痙攣を起こした。

 ケネスは3人を睨んだ。

「よ~し……お嬢さんから始めよう……」

 ケネスは首を「こい!」とばかりに振った。

 奈々子はケネスについて行った。

 家からまた誰かが出てきた。

 それは先のトムとは別の巨漢だった。

 レザーコートを着て、右手に鉈、顔には包帯を巻いていた。

「ジャクソン、こいつらを見張るんだ。いいな?」

 ジャクソンはうなずいた。

 ケネスは奈々子を連れて家に入った。

 玄関に入ると、右側に2階と繋ぐ階段があった。

 左側の奥には鉄製の引き戸があった。

「どこに連れて行く…気ですか?」

「な~に、ちょっとした尋問室だ」

 ケネスは鉄製の引き戸を開けた。

 中は3つの鉄製フックがぶら下がり、部屋の左隅には冷蔵庫のようなものが倒れていた。

 部屋はさながら肉屋のようだ。

 右側の奥にはまた鉄製の引き戸があった。

 だが、ケネスは部屋の中心にあるテーブルをどかせ、鉄製の1メートルほどの正四角形の鉄板を持ち上げ、梯子を下ろした。

「中に入れ」

 奈々子は言われるがままに梯子を下がった。

 中は廃棄された工場のように汚らしかった。

 部屋の中心には井戸があった。

「ここは?」

「尋問室だよ」

 ケネスは梯子で下りながら言った。

「トム、閉めろ!」

 トムは言われたとおり鉄板で入り口を塞いだ。

 ケネスは突然散弾銃のストックで奈々子の後頭部を殴りつけた。

 奈々子は意識が朦朧とし、倒れこんだ。

 ケネスは奈々子の両手首を鎖で縛り上げ、南京錠を掛けて吊り上げた。

 奈々子は鎖に吊り上げられ、空中にぶら下がった。

「う~ん、君は尻まである髪の毛をポニーテールで纏めているね?私好みだよ」

 奈々子の意識は朦朧としているので、何を言ってるか聞き取れなかった。

「顔もアジア人とは思えないくらい可愛い。日本人はアジアの中でも美人が多いね」

 そう言って奈々子の髪の毛の匂いを嗅いだ。

「いい匂いだ、うん、君のことが大好きだ。後でゆっくり尋問しよう」

 ケネスは奈々子を気絶させるか迷った。

 手のひらを女のシャツの下に這わせる。ブラ越しに完璧な胸が感じられた。いいぞ。

 ケネスはにやっとした。お前は中学生にしては十分過ぎる女だ。

 俺を興奮させる動物的本能、完璧な胸、美形、ツインテール。

 ケネスは慎重な道を選んだ。こちらが他の奴を尋問している間は気を失ってもらおう。

縛ってるから逃げることは無いが、自分が仕事をしている間にもがいて疲れきったらつまらない。その強さを残しといてくれ……俺のために。

 奈々子の頭をわずかに起こし、手のひらを首筋にあてがって頭蓋骨の真下にあるくぼみを探した。このつぼは、これまで数え切れないほど使った。砕かんばかりの力を込めて親指を圧迫し、軟骨がめりこむのを感じた。奈々子は即座にぐったりした。20分だ。

 ケネスは自分の興奮を抑えながら、叫んだ。

「トム!開けてくれ!」

 鉄板が開く。

 ケネスは梯子をあがった。

「あの女はどうした?」

 トムは指差した。

 一番右端の豚をつるすフックに女をつるしていた。

「よし、よくやったトム……と言いたいが、弾丸が体に入ったままじゃ危ないな。全部抜くんだ。いいな?全部だぞ」

 トムはうなずくと、女をフックから外し、テーブルに載せた。

「楽にしてやれ」

 ケネスは冷たく言い放つ。

 トムは肉切り包丁を持った。

 一瞬だった。

 トムは手際よく女の喉を切った。

 女の喉から血が噴出し始めた。

「よし、弾を抜け」

 トムは大きなピンを取った。

 傷口にピンを入れると、弾を抜き始めた。

 ケネスは家の外に出た。

 外ではジャクソンがローズとジェーンを見張っていた。

「いいぞジャクソン!男のほうは納屋に連れて行け!女のほうは地下室に連れて行け!」

 ジャクソンは2人の肩を掴んだ。

「畜生!放しやがれ!」

「やめて!」

 ジャクソンは納屋に向かった。

 納屋に着くと、男の両手を縄で縛り、つるし上げた。

「畜生!放しやがれ!」

 ジャクソンは女を家に連れ込んだ。

 階段の横にある鉄製の引き戸を開け、弾抜き作業をしているトムを通り過ぎ、部屋の右端にある鉄製の扉を開けた。

 長い階段が下に続いていた。

 ジャクソンはローズを連れ、階段を下がる。

 ようやく地面にたどり着く。

 そこは居間のように広かった。

 だが、あちこちに水溜りがあった。

 部屋の中心に縦長の鉄製の台があった。

 右側の壁には、包丁、鉈、斧、鋏などの刃物がずらりと並んでいた。

 その上に、大型のチェーンソーが貴重品のように飾ってあった。

 チェーンソーの刃に「日々を大切に」と書かれたラベルが貼られていた。

 左側には謎の拷問器具が並べられていた。ここは拷問部屋だ。

 ジャクソンはローズを台に乗せた。

 そして、両手両足4つの首に台に繋がった手枷足枷を掛けられた。

「やめて!なぜこんなことするの!」

 ジャクソンはローズの口にタオルを詰め込み、縛った。

 うるさいわけではない。自殺出来ないようにだ。

 ジャクソンはローズを置いて地下室を出た。

 そして、鉄製の扉を閉める。

 

 


 

 


 

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