見知らぬ青空
「起きて、信二君起きて」
ソフィーが信二の体を揺らして、起こそうとしていた。
信二は目を覚ました。
「う、う~ん…ん…もう着いたか?」
信二は自身のほっぺたを叩き、眠気を飛ばそうとした。
「ううん、まだ」
「じゃあ、もう一眠りするわ」
「そうじゃなくて!パンクしてるの」
「何だ、たいしたことないじゃん…………パンク!?!?」
信二は窓の外を見た。前までの緑豊かな森とは打ち変わって、乾いた殺風景な砂漠が当たり一面に広まっていた。
「ここは…どこだ?」
「たぶん、ニューメキシコ州」
「メキシコ州?俺達はカリフォルニア州に向かってたはずだぞ」
「でも、私の知ってる限り、こんな砂漠地帯はニューメキシコ州としか…」
信二は席から立った。ソフィーを覗けば、教師も含め、全員眠っている。
「皆起こす?」
「いや、やめておこう。それより一旦外に出て様子を確認しよう」
そう言って信二は旅行用バスの扉を開けた。
外は暑かった。どのくらい暑いかって?真夏の東京並み、あるいはそれ以上だ。
冬の寒さが懐かしい。が、冬になると夏の暑さが懐かしくなるだろう。
ソフィーも降りてきた。
「あっつ!冬の寒さが懐かしいよ」
信二と同じ事を言った。
「ちょっと周囲を見てみようか?」
「う、うん」
信二はソフィーを連れ、真っ直ぐに進んだ。焼け付くような暑さを耐えながら。
一体どれくらい歩いたのだろう。
大きなクレーターに出た。
「ここ、どこだろうね?」
「さあな」
ソフィーの質問に適当に答えた。まるで隕石が落っこちた後だ。
そのクレータ-の遥かさきに、1軒の小屋があった。
「お前はここで待ってろ」
「あなたは?」
「向こうに行く」
そう言って小屋に向かった。
小屋に着いた。この粗末な建物は、もう長いこと手入れされいないように見えた。窓は割れ、板壁も所々シミで汚れている。しかし、何者かが生活している気配があった。
中に踏み込むと、暖炉には赤々と炎が燃えている。薪はまだくべられたばかりのようだ。この真新しい痕跡は、火を扱えるものが生活していることを明確に示している。
だが、本当に……ここに住むのは人なのだろうか?
奥まった中2階の机に、古びた写真と日記が置いてあった。写真には大勢の子供や大人が写っていた。日記は英語で書かれているため、完全解読には時間がかかる。壁には新聞紙が何枚か飾ってある。
入り口の扉がきしむ音が響いた。階下を覗き込んだ視界の端を、何者かが通った。
その人に電話か何かを貸してもらおうと、暖炉の部屋に戻った瞬間――――。
信二は頭に強い衝撃を受けた。
意識が遠退く中、信二は悟った。小屋に入ってきたのは尋常ではない人、サイコパスか殺人鬼であることを。元々こんな暑い中、暖炉に火をつける事態おかしい。
もしかしたら、俺死ぬかもな。
そこで思考はぷつりと途絶えた。