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ラジオアクティビティ  作者: 岡田健四郎 ZOMBRAY
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第3の脅威

 大きく割れた窓を見ながら、信二は長々と溜息ついた。

 今のところ、死亡者1名、失踪者2名、負傷者2名。誘拐1名

 ソフィーは右足を撃たれ、真斗は腹部を撃たれる。

 まったく地獄だよ。

 そう思いながらふと右側の窓から外を見た。

 何かが遠くで光った。

 信二はまさかと思い、黒木の荷物から双眼鏡を取り出し、外に出た。

 そして光ったほうとは逆側に向かって、バスの車体の下まで這った。

 そしてバスの下から双眼鏡で光ったものを覗いた。

 思ったとおりだ。

 奇形な顔をした男が双眼鏡でバスを見張っていた。

 こちらの行動は監視されてた。

 信二は這い戻り、バスの下から出て、バスの中に戻った。

 紘輝が待っていた。

「どうした?」

「監視されてる」

 紘輝は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに理解した。

「ありがたいこった」

 真人も聞いていた。

「予想通りだな」

 すると、車が真っ直ぐバスに直進するのが見えた。

 信二は用心深く見張り、拳銃を構えた。

 車がバスの正面で止まった。

 信二は息をゆっくり吐く。

 運転席から異形な顔をした男が出た来た。

 信二は引き金に指をかける。

 助手席から誰かが出てきた。

 見覚えのある顔――黒木大輝だった。

 どういうことだ?

 2人は後部座席のドアを開け、中から奈々子を運び出した。

 そしてバスに乗り込んだ。

「全員無事か?!」

 黒木は奈々子を抱えながら言った。

「はい、いえ、1人死んで2人が怪我しました。それに誘拐も」

「そうか」

 黒木は奈々子を運転席の後ろにある席に座らせる。

 ヴァンからさらに2人の男女と1人の少女が出てきた。

 3人はバスに乗り込んだ。

 黒木はドアを閉める。

「「黒木先生!」」

 真希と佐藤海咲がやって来た。

「今までどうしてたニャ?」

「色々と、タクシー運転手が死んで、異形な奴らに襲われ、奈々子を救い出した」

 黒木はバスを見渡す。

「妻は……百合は?」

「行方不明です。目を覚ましたときから居ません」

 黒木は少し心配な心情になった。

 異形者――カートがバスに入ってきた。

「どうする?」

 カートは黒木に聞く。

「ヴァンに、鎖か何かは?」

「ある」

「良し、ヴァンとバスを鎖で結び、ヴァンでモーテルまで引っ張る」

「モーテル?」

「そうだ、ここよりは安全だ」

 カートはヴァンまで戻り、鎖を探した。

「あの人は?」

 海咲が聞く。

「見た目は最悪だが中身は最高の男だよ」

 黒木は散弾銃から弾を全て排出した。

 そして全部拾い上げ、ポケットに突っ込む。

 信二は安心感を覚えた。

 大人――しかも散弾銃まで持った男黒木が戻ってきた。

 結局は一番の戦力になるのは大人だ。

 カートがヴァンとバスを鎖で繋げた。

 黒木は運転席に座った。

 鍵が無かった。

 仕方なく、他の方法でエンジンを掛ける方法を探した。

 信二はソフィーの脚を見た。

 止血剤を使ったから出血は収まったが、いつ見ても痛々しい。

「大丈夫か?」

 信二は尋ねた。

「ええ、大丈夫…」

 余裕の笑みを見せるが、実際は痛みに耐えていた。

 突然、バスのエンジンが掛かった。

 信二は運転席に居る黒木に聞いた。

「そう言えば、何でバスのエンジンを掛けるんですか?タイヤがパンク――」

「運びやすくするためだ」

 ヴァンが出発する。

 バスも引っ張られて出発する。

 黒木が運転席に置かれていた無線機を取って周波数を変える。

「いいぞ、そのままモーテルまで運び出せ」

『了解しました』

 信二が黒木に聞いた。

「このまま逃げないんですか?」

「あいにく、ガソリンが足りないんでね」

「モーテルまで言った後は?」

「窓を補強して――」

「立てこもる?」

「そうだ、その通りだ」

 黒木はトランシーバーを見つけた。

「これは?」

「ああ、途中で襲ってきた異常な連中から奪い取ったものです」

「俺も同じのを持ってる」

 そう言ってポケットから同種のトランシーバーを見せた。

「連中はこれで連絡を取り合っているのか」

「それと」

 信二は双眼鏡を持つ男――セガールの居る場所を指で指した。

「あそこに双眼鏡で見張っている男が」

「やはり監視が居たか」

 黒木は大して驚きもしない。

 いつの間にかモーテルに着いた。

 黒木は笛を吹いた。

「全員バスから降りてモーテルに入れ」

 クラスメート達はバスから降りてモーテルに向かった。

 黒木は真人を止めた。

「お前も男なら彼女に肩を貸してやれ」

 奈々子を指差す。

 真人は奈々子に肩を貸し、歩き出した。

 そして皮肉っぽく言う。

「剣道部の実力者が何て様だ」

「途中で……退部したお前には、言われたくない」

 信二はソフィーに肩を貸す。

 黒木は真斗を抱え込む。

「重傷なのはこいつとヴェルネか」

「まったく信じられませんよ、B級ホラーの様な出来事ばかりだ」

「世の中A級映画の出来事ですむほど甘くは無い」

 そう言ってバスから出ようとしたが、2つのトランシーバーから声が聞こえた。

『スティーブン、連中がモーテルに移動した』

『本当か?それは厄介だ』

『俺はどうする?』

『引き続き見張りを頼む』

『了解ですよ』

『それよりまずいことになった』

『どうした?』

『実はな、封印の扉が開いて……』

『連中が出てきたのか!?』

『まあな』

『お前達はアジトに居るからいいがな!俺は外に居るから危険なんだよ!』

『分かってるが、これはチャンスかもしれん』

『なぜ?』

『連中に連中を襲わせる』

『で?』

『こっちが始末する手間が省ける』

『……そううまくいくか?』

『いけばいいが』

 再び雑音しか聞こえなくなった。

 黒木と信二は顔をあわせた。

 連中とは一体何か?というばかりに2人は首を振り、モーテルに入った。

 モーテルに入れば作業が始まった。

 黒木の指示の元、板や鉄板を窓に打ちつけ、補強を始めた。

 瞬く間にモーテルは要塞になった。

 クラスメート達はモーテルの部屋で一休みした。


 真希は双眼鏡でモーテルの裏の外を覗いた。

 遠くに何かあった。

 バスだった。

 自分達と同じ旅行用のバス。

 真希は気配を感じて横を見た。

 真人が隣に居た。

「何を見てたんだ?んん?」

「これを見て」

 真希は双眼鏡を渡した。

 真人は覗く。

「何てこった!あれは1組のバスだ!」

「どうすんの?」

 真人は考え込む。

「黒木先生は今は取り込み中、相沢は黒木の手伝い、仕方ない俺は行くぜ」

「でも、危ない――」

「その話乗った」

 2人は振り返る。

 サッカー部の部長聖夜と剣道部の部長五右衛門が立っていた。

「俺達もあそこに行くぜ」

「拙者もその話に乗る」

 これはゲームや冒険じゃないと真希は言おうとした。

「それに距離は思ったより遠くは無い」

 3人の男子はこっそりと裏口から出て、バスに向かった。

 真希は3人を止めようとした。

 だが、足元に何かがあった。

 回転式拳銃|コルト・ディテクティブ・スペシャル《CDS》だった。

 しっかりと装弾されている。

 真希はCDSを拾うと、3人を追って外に出た。

 3人は既にバスの入り口まで着いていた。

「やっと…追いついた」

 真希も3人の後についた。

「ねえ、やっぱり戻ろうよ」

「何言ってる、個々まで来たんだ」

「そうだぜ」

「……」

 4人は既に開いているバスの入り口から中に入った。

 安全にためにバスの入り口は閉めた。

 中は何もなかった。

 厳密に言えば、所々に血の跡がある。

 4人は背筋が凍りつくのを感じた。

 間に合わなかった。そう思ったが

 気配と声がした。

「大丈夫よ落ち着いて、ね」

 大人の声だ。

 一番後ろの座席から聞こえる。

 4人は慎重に冷静に行った。

 そして恐る恐る覗いた。

 そこには怯えている通称平均太郎と呼ばれる山田太郎と女子生徒を落ち着かせている黒木百合の姿があった。

「「「「百合先生!!!!」」」」

 4人は同時に喜びの声を上げる。

 百合は振り返る。

「あなた達、目を覚ましたの?」と百合が聞く。

「はいそうですが」と真人が答える。

 真希は言った。「近くのモーテルで2組の全員と黒木先生が居ます」

「大輝が……彼が居るの?」

「はいそうです」

 真っ先の黒木の名前を言ったのは2人の愛の象徴だ。

 すると、外から何かが近寄ってくる気配を全員が感じた。

 真人、真希、聖夜、五右衛門が外を見る。

 何も居ない。

 と、思ったら凄まじいスピードで何かが走り去った。

 いや、這っていた。

 4人は警戒した。

 何かがバスの周りを這いまわる。

 その数は増える一方だ。

「囲まれたな」真人はそう呟き、金属バットを構える。

 聖夜はモーテルにあったバールを構える。

 五右衛門は木刀を構えた。

 真人と聖夜がバスの出口に駆け寄った。

「坂本、ドアを開けてくれ」

 聖夜がそう言うと、真希はバスの扉を開ける。

 真人と聖夜が外に出る。

 そして見渡す。

 何も居なかった。

 聖夜はバスの中に入る。

 真人は入り口の前に立ち、真希に振り返って言った。

「もう居なくなったな」

 そう言った瞬間だった。

 バスの屋根から何かが飛び降りて真人に乗っかる。

 聖夜は慌ててそれの後頭部をバールで殴り、真人を引きずってバスの中に入れる。

 真希は扉を閉めようとする。

 だが、もう一匹中に入ってきた。

 真希は扉を閉め、侵入者を見た。

 それは人型だった。

 だが人ではなかった。

 全身の肌が真っ白になっていた。

 爪は獲物を引き裂くようにできていると思うくらい鋭かった。

 全身に毛は無く、筋組織が露出している。

 手足が獣のようになっている。

 恐ろしいのは顔だった。

 鼻が無かった。

 瞳孔も異常なまでに拡大していた。

 口は人と変わらないが、鋭い鮫のような歯がずらりと並んでいる。

 耳は悪魔のように尖っていた。

 こんな生命体は今までに見たことが無かった。

 その生命体は四つん這いで真希に走ってきた。

 真希はその顔面を右足で蹴る。

 化け物は一瞬怯んだが、右足首を掴んできた。

 真人は金属バットで頭を殴る。

 化け物は恐ろしげな奇声を発しながら倒れた。

 聖夜は止めとばかりに後頭部をバールで殴る。

 完全に動かなくなった。

「これは何!」

 真希は思わず声を上げる。

 真人も聖夜も首を振る。

 その時だった。

 窓を割って別の化け物が入ってきた。

 姿は殺したのとまったく同じだった。

 真人はバットで頭を殴る。

 その化け物は失神を起こした。

 聖夜が止めを刺そうとした。

「待って!」

 百合が止める。

「どうして!」

「この生物をモーテルまで運ぶの!」

「なぜ!」

「いいから!」

 真人は近くに置いてあったガムテープで両手両足を縛った。

 そして引きずりながら外に出た。

 全員外に出ると、モーテルに向かった。

 だが真希はバスの屋根を見た。

 驚愕だった。

 まだ大勢の化け物が屋根に乗っかっていた。

 全員急いでモーテルに入り、裏口を閉めた。

 そして捕まえた生命体をテーブルに乗せる。

 丁度黒木と信二が入ってきた。

「百合!」

 黒木は驚きと喜びを感じた。

「これで医療面は心配ないな」

「あなた、それよりこれを」

 テーブルの上の生命体を指差す。

 黒木は心底驚いた顔をした。

「こ、こいつは一体…」

「まだ無数にいるわ」

 黒木は興味深そうに近寄る。

 その時、その生命体が目を覚まし、噛み付こうともがく。

 黒木は言った。

「こいつを調べよう」

「やっぱり、そう言うと思ったわ」


 黒木は鎖でその生命体を縛った。

 そしてモーテルにあったビデオカメラを回す。

 カメラマンは信二だ。

 後は全員別の部屋に居る。

 瞼を開き、眼球を露出させる。

 懐中電灯で眼球を照らす。

「瞳孔に変化がない、光に反応しない。こいつらは目が見えないようだ」

 謎の生命体は首を回す。

 黒木は試しに部屋の隅でボールペンを鳴らす。

 怪物は黒木の居る方向に振り向き、奇声を発する。

「代わりに聴覚が発達しているな」

 音を立てず、ゆっくりと近寄る。

 そして歯を見た。

「爪も歯も鋭い。恐らく肉食だ」

 黒木は握力測定器を握らせる。

「握力も強い。チンパンジー並みかそれ以上だ」

 怪物の首に注射器を刺して、麻酔を注入する。

 怪物が大人しくなり、やがて眠る。

「恐らくこいつらは暗闇で生きていけるように適応したんだ」

 信二ははっとする。

「まさか」

「連中が言っていたのはこいつらのことだろう。どこかの洞窟で封印してたんだ」

「じゃあ」

「俺達は奇形集団、殺人一家、そしてこいつらと3つの脅威にさらられている」

「ありがたくないな」

「こいつらに何か名前をつけてやるか?」

「何て名前を?」

「知らん、考え中。カメラは止めろ」

 信二は言われた通り、カメラを止めた。

「とにかく、こいつらはあの奇形集団も襲うだろ」

「なぜ?」

「無線会話で聞いてた通り、連中はこいつらを恐れている」

「そこはありがたい」

 

 モーテルから遥か遠くにある奇形集団のアジト。

 そこでは再び会議の様なものが行われていた。

 スティーブンが意見を述べていた。

「封印の扉が破壊されて“ダーク・シーカー”が解き放たれた!」

 スティーブンは机を叩く。

「今こそ全ての仲間を集めてこのアジトで立てこもるんだ!」

 ベルゼブブは興味なさそうに言った。

「ダークシーカーは無能な野獣だ。恐れるにたらん」

「だが連中は俺達の仲間を何人か襲って食ったんだ!」

「だが町に居る仲間はきっとアジトに戻りたがらんだろう」

「このまま外の仲間を見捨てろと!」

「様子を見るだけだ、ダークシーカーは夜行性だ。日中は姿を現すことは少ない」

「だが――」

「いいか、俺が奴らを脅威と断定するまで勝手な行動するな」

「……分かった……」

 

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