2つの食事一家
「トム~!トム~!フレッド!ジョージ!」
暴走族の女の解体作業をしていたトムは呼ばれるがままに調理室に向かった。
調理室で30代後半ほどの男が椅子に座っていた。
トムに続いて2人の男がやって来た。
片方は天然パーマの髪形をしていた。
もう片方の痩せこけた男は剥げていた。左側の頭部に銀色のプレートをはめていた。顔色も死人のように悪い。2人とも20代後半くらいだろうか。
「トム、フレッド、ジョージ、悪いがモーテルで便秘薬を貰ってくれ!浣腸のほうだ!」
男は辛そうな顔をしながら叫んだ。
天然パーマの男が肩を竦める。
「お兄、いつ俺達はお兄の家政婦になった」
「フレッド!頼む!そんなこと言わないでくれ!俺は2週間半も便秘なんだ……ああ!辛くてたまらん!」
「ははは!2週間も!?こりゃ傑作だわチルトン」
ジョージは狂ったように笑いながら転んだ。
「かかかw!チルトン!お前の便秘姿は傑作だわ!」
チルトンは叫んだ。
「ああ~~!黙ってくれジョージ!俺だって笑いたいよ!便秘で辛いよ!苦しいよ!」
フレッドは剃刀で右薬指の皮膚を切りながらへへへと笑って近寄った。
「お兄、とりあえず飲むほうの便秘薬を飲んでトイレに行け。その間に浣腸を取ってやるよ」
「頼む、フレッド!辛くて車も運転できん!」
トム、フレッド、ジョージは部屋を出た。
チルトンは弾薬を飲んだ。
そして2階のトイレに入った。
「畜生!この便秘め!皆して俺を苦しめる!」
チルトンは無茶苦茶に壁を殴った。
そして冷静になった。
「弱ったな……腹と腰とけつが痛い。これでは料理どころか車も運転できん。参ったな……」
チルトンは1人、便秘に苦しんだ。
紘輝はバスの運転席で次のトランシーバーの会話を待った。
信二は目を覚ましたクラスメートに事情を説明していた。
紘輝は不機嫌そうに腕を組んだ。
立花は無事だろうか?佐々木も変な警察に連行された。
保安官は正常な人間に見えたが立花をさらった男は明らかに異形だ。
言いようの無い誰にもぶつけられない怒りを感じていた。
この際、居場所の分かる佐々木の助けに向かったらどうだ?
そんな思いを胸に抱いた紘輝は首を鳴らす。
今のところの戦力や武器は絶望的。
金属バット、拳銃、恐らく五右衛門が持ってきてるであろう竹刀にその他色々。
あの怪物じみた連中は飛び道具を持たないだろうが、警察は厄介だ。散弾銃を持っていた。
その時、ソフィーが近くに来て座った。
「大丈夫?何か険しい顔してるよ?」
「あ?あっ…ああ大丈夫だ」
本当はいらいらしているが、表に出してはいけない。
「それよりお前は大丈夫か?俺達よりもグロいの見たんだろ?」
「え?うん、大丈夫……(だと思う)」
「そうか?今心の中で「だと思う」とか思ってないか?」
「ううん!思ってないよ!全然思ってない」
「本当か?」
「本当に大丈夫」
紘輝は聞くなり頷いてトランシーバーを見た。
「その無線で助けは求められないの?」
「無理かもな。ここを通るトラックがあればいいが、警察の周波数もトラックの周波数も分からずじまいさ。周波数が分かれば俺は助けを求めるが」
ソフィーは頷いた。
そして心配そうな顔をした。
「立花さんも佐々木さんも大丈夫かな?」
「……立花は俺も心配だ。佐々木は剣道部で1、2を争う実力者だ。きっと大丈夫だ…きっと」
そうでないとやりきれないからだ。
紘輝はバッドエンドが嫌いな性格だ。2人に何かあったら恐らく発狂しかねない。
信二は紘輝に因った。
「どうだ?連中は信じたか?」
「3割は信じた。3割は半信半疑で4割は信じてない」
「だろうな」
綾瀬マユが信二に近寄った。
「あの、信二君、殺人鬼集団は何人居るんですか?」
「不明だよ。知ってれば俺が皆殺しにしてやる」
紘輝が代わりに答えた。
「不明……ですか」
「ああ不明」
その時、2人の男女がやって来た。
男子は大角と言う性悪だ。
女子は佐貫と言う茶髪の女子だ。
「おい、俺達はちょっくら外に行くわ」
「駄目よ!危険よ!」
ソフィーは忠告した。
「いいか?俺達はいかれた殺人鬼なんて信二ね~し、怖かね。居たら俺が滅茶苦茶にしてやんよ」
そう言って2人は外に出た。
「待って、危険よ!」
ソフィーは出ようとした。
紘輝は扉を閉めた。
「なにをするの!2人を止めなきゃ!」
「勝手に行かせろ。後悔するのは自分だ。」
ソフィーは一瞬恐怖を感じた。
いつもの紘輝君じゃない。
瞳の奥底からただ因らぬ何かを感じた。
「でも、このままじゃ彼らが殺される」
「自業自得だ。いいか?信じないなら自分の目で、見て自分で信じさせたほうがいい」
大角と佐貫はバスの近くにある大きな岩の裏にある錆びた廃車に入った。
いつの間にか辺りは暗くなっていた。
大角がポケットから粉状の白い薬を出した。
「それは何?」
「ドラッグだ。知ってるか?覚醒剤はセックスの快感を高めるのさ」
「へ~楽しみね」
「ああ、そうだ」
2人はドラッグを吸引した。
「く~効いてきた…やるぞ?」
「ええ、やりましょう」
2人は突然服を脱ぎ始めた。
下着を外し、文字通り裸になった。
大角は仰向けに寝て、その上に佐貫がのしかかった。
「お前!意外と大きいな。おっぱい」
「あなたも、立派じゃない」
大角は興奮した。
2人はキスを始めた。
「日本でこの年で始めてるのは俺達くらいだ」
「でしょうね」
2人の興奮が高まった。
「チルトンも気の毒だぜ、便秘なんてよ」
ジョージはワゴン車を運転しながら言った。
フレッドは缶詰の豆を食べながら後部座席に座るトムを見た。
「トム!家族の中でエッチしてないのお前だけだぜ!」
「ははは!俺達は体験済みだ。俺達ヴィクトール一家は一族代々気に入った相手は生かし、気に入らない相手はセックスした後は首を切って殺すのが風習なんだ。お前も気に入った相手を見つけてエッチしろよ!俺達の相手は気に入らない性格だったから殺したけどな!」
2人は愉快に笑った。
トムは無言で座っていた。
「死体とエッチしたらどうだ?」
「おいおい、死体じゃ子供生まないし、気に入らなくても殺せない。損だぜ」
2人は愉快に笑った。
トムは無言で座っていた。
トムは性行為など興味が無かった。
「チルトンもエッチしたことあるんだ。あのチルトンがだぞ!」
「その後は?」
「彼女に逃げられたそうだ!」
2人の愉快な双子と無口の弟はただモーテルに向かった。
「もう少し!もう少し!あっ……感じた…」
「俺もだ」
大角と佐貫は倒れこんだ。
「ははは……いつもより気持ちよかったぜ」
「はあ…はあ…そうね」
2人は笑った。
「第2ラウンド始めるか?」
「ええ」
再びあの体勢に戻った。
「俺のはまだ立ってるぜ」
「なら、刺すだけでいいわ」
2人は再び始めた。
2人は気づいていなかった。
後ろから何者かが近寄っていた。
包帯を巻いた少年――ニックだった。
ニックはつるはしを引きずりながら2人に近寄った。
2人はまだ気づかない。
佐貫が体を揺さぶりながら、上半身だけは制服を着た。
ニックはつるはしを構える。
大角がやっと気づく。
「佐貫!危ない!」
佐貫は後ろを振り向いた。
そして叫びながら廃車を出た。
つるはしは大角の右足首を貫いた。
大角は喚いた。
「佐貫…いてえ…助けてくれ!」
佐貫は一瞬助けようと思った。
だがニックがつるはしを抜き、佐貫に近寄った。
佐貫は大角よりも自分の命が大切だった。
構わず逃げた。
バス目掛けて
だが、何かが前に現れた。
ダグラスだった。
ダグラスは佐貫を両手で軽々と持ち上げた。
そして地面に叩きつけ、羽交い締めした。
佐貫に逃れる手段など無かった。
そして、大角を引きずってニックが近寄った。
ニックの他に誰か居る。
ダンとスティーブンだった。
「ダン、こいつをどうする?」
スティーブンはダンに聞いた。
ダンは回転式拳銃M500を佐貫に向けながら考え込んだ.
「お願い、助けて」
佐貫は日本語で命乞いをした。
ダンは決断した顔をした。
「こいつはそんなに可愛くねえな。殺そう」
佐貫には英語で喋るダンが何を言ってるか分からなかった。
「お願い助けて」
ついに泣き出した。
「こんな小物は銃弾1発の価値も無い。絞め落とせ」
ダグラスは右手で佐貫の首を絞めた。
目が飛び出しそうになるくらい苦しかった。
佐貫は必死で息を吸おうとした。
だが、凄まじい握力が喉を絞める。
佐貫は動かなくなった。気絶した。
ダグラスは佐貫を抱えた。
「こいつは計画に使うんだ」
ダンはそう言って大角を見た。
「こいつは計画に使えそうだな」
ダグラスはどこかに向かった。佐貫を連れて。
信二は今夜行われるであろう、真紅計画に警戒していた。
立花と佐々木は誘拐された。
果たして2人は無事だろうか?
その時、トランシーバーから音声が聞こえた。
『やれ~~!』
やれ?
真紅計画が始まるのか?
その時、バスの数メートル先前で何かが燃え出した。
大きな太い鉄骨のようなものが直立で地面に刺さっていた。
そこの周りの藁が燃えていた。
鉄骨に誰かが縛られていた。
佐貫だ。
鎖で体が巻かれ、身動きが取れない状態だった。
佐貫がホラー映画で出るような悲鳴を上げた。
なんてこった…これが真紅計画!
信二は消火器を持って外に出ようとした。
紘輝が止めた。
「よせ!罠だぞ!」
「目の前で人が焼かれてるんだ!今ならまだ助けられる!」
そう言って外に出た。
「糞!一人で…無茶しやがって!」
紘輝も消火器を持って外に出た。
クラスの男子全員が何か手伝おうと火事現場に向かった。
女子達はバスに残った。
信二と紘輝は消火器で、他は砂や石や布で消火活動した。
女子達は祈るように見守った。
だが、バスに何かが入り込んだ。
それは扉を閉めた。
ニック、ダグラス、ダン、スティーブンの4人だった。
「いいか!叫ぶなよ!叫んだ奴は撃ち殺す!」
と英語で叫んだ。
英語の分かる女子は理解したが英語の分からない女子は喚いた。
「叫ぶな!殺すぞ!」
ダンは拳銃を構えて警告した。
ニックは英語が分かってないと理解し、素振りで意思表明した。
英語の分からない女子はニックの素振りを見た。
ニックは叫ぶ素振りをした。
そして殺される素振りをした。
女子は理解した。
”叫ぶな、殺すぞ”
そう言う意味だった。
女子全員叫ばなくなった。
怯えた。
ソフィー、真希、真斗を除いて。
ダンは拳銃を構えながら女子1人1人の顔を見た。
真希の体を眺めた。
「いい体とルックスだ。俺好みだ」
真希は殴りつけたかった。
だがここで殴ったら殺される。
だからやめた。
ダンはソフィーを見た。
「ダグラス!こいつを捕まえろ!」
ダグラスはソフィーを後ろから押さえた。
「いや!放して!やめて!」
真希は隙を見て拳銃を奪おうとした。
だが、ニックが真希の腕を押さえた。
「ダン、早くしろよ」
スティーブンは自動拳銃コルト・ガバメントと握りながらバスを往復し始めた。
「ダグラス、丁重に持て成せよ。そいつはボスの捧げ者だ」
ダンは女子のルックスを見て1人1人に言い渡した。
「お前は解消」
「お前は食事」
「お前は妊娠」
「お前は観賞」
「お前は――」
どれも意味不明だった。
だが、ソフィーは不気味と不安を感じた。
ダンは満足げに頷いた。
「いいぞ、クラス1やクラス3やクラス4やクラス5と違って美人が多いな」
スティーブンはトランシーバーで交信を始めた。
「セガール、状況は?」
『必死に消火してるな。馬鹿な連中だ。全員で消火するなんてな』
ソフィーは驚いた。
誰かが見張ってる?
一体誰が?何処で?何で?
ニックは真希を取り押さえながらスティーブンの指示を待った。
今回の作戦での指揮者はあくまでダンではなくスティーブンだった。
ニックの力は強かった。
拘束を解くことは難しかった。
スティーブンはダンを睨んだ。
「早くしろよ、火が消されるのは時間の問題だ。遊ぶのも程ほどにな」
ダンは容姿端整の女子に暴行を加えていた。
「これだけ痛めつければ抵抗できないな」
ダンはズボンを脱いだ。
そして――――性行為を――――始めた。
周りは死への恐怖からか怯えながらも叫ぶことは出来ない。
スティーブンは呆れながらその様子を見ていた。
「悪趣味な奴だな。レイプ好きの男は最低だ」
ダグラスもニックは頷いた。
『おっ炎が女に移ったぞ』
紘輝は消火器で火を消していた。
だが、火は激しかった。
それどころか、佐貫の服に燃え移り始めた。
畜生!火が一向に消えない!
真斗はリュックの中にあったカッターをこっそり出した。
そして、刃を限界まで出してレイプに夢中のダンの頭目掛けて振りかざした。
ダグラスが奇声を発する。
ダンは振り向き、拳銃の引き金を引く。
最強の回転式拳銃が大きな轟音と共に火を噴く。
弾丸が真斗の腹部を貫通した。
「うぐっ!」
真斗はうめき声と共に倒れこんだ。
カッターが床に落ちる。
真希はチャンスとばかりにニックにズ付くを加え、カッターを拾い上げ、ダンの背中に刺す。
ダンは叫び声と共に拳銃を落とす。
スティーブンは拳銃を構え、引き金を引こうとした。
引けなかった。
安全装置が掛かっていた。
真希は一気に距離を詰め、スティーブンの頭部を殴った。
頭部、腹部、脚部、安全装置の解除は愚か、息をする間を与えずに殴り続ける。
ダグラスは救援のためソフィーを放そうとした。
「女を放すな!ニックが殺れ!」
ニックはつるはしで真希を刺そうとした。
だが、大勢の女子がニックを取り押さえた。
ニックは抵抗した。
形勢逆転だった。
『スティーブン、まずい!銃声で男が戻ってきている!』
スティーブンは危機感を感じて、後部座席の窓を割って外に出た。
「くそ!撤収だ!」
ダンは激痛に耐えながら、スティーブンの割った窓から外に出た。
ダグラスもソフィーを連れて外に出る。
ニックはダンの拳銃を拾い、女子達を脅しながら外に出る。
紘輝が真っ先にバスに乗り込んだ。
「化け物どもは!?」
「外に!」
女子全員が叫ぶ。
信二は逃げていくダンたちを見た。
ソフィーがさらわれてる。
信二はダン達を追った。