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ラジオアクティビティ  作者: 岡田健四郎 ZOMBRAY
11/17

尋問

 ケネスは興奮を抑えながら拳銃に弾を込めていた。

 今日は大収穫だ。

 中学生だがルックスもスタイルも良いナナコってアジア人と20代後半くらいのローズって良い女が捕まえられたんだ。最高だ。

 あの男とガキは要らないな。

 殺すか?

 生かすか?

 ゲームをするか?

 それは、あいつら次第だ。

 ケネスは興奮を抑えながら洗面所を出た。

「トム!来い!」

 トムが肉切り包丁を持ちながらやって来た。

「トム………お前に良い仕事を与えよう……ゲーム(‘‘‘)の準備だ」

 トムは敬礼するなりどこかに向かった。

 ケネスは納屋に入った。

 納屋の中心でジェーンが吊り上げられていた。

「どうだね?気分のほうは?」

「クソッタレだ!」

 ジェーンはつばを吐きかけた。

 つばはケネスに届くことは無かった。

「良い威勢だ。ゲームの遣り甲斐がある」

 ケネスはホースを取った。

「その前に体を洗わなくてわな」

 凄まじい勢いで水をかけた。

「よせ!やめろ!」

 ジェーンは水の冷たさと痛みを感じた。

 突然ケネスの通信機が受信した。

「こちらケネス保安官」

『ケネス……夕食はまだなの?』

 老婆の声が聞こえた。

「母さん、昼飯を食ったばかりだろ?まだまだだよ」

『ケネス、あたしゃ腹が減って死にそうだよ』

「人は飲まず食わずで一週間は生きられるよ」

『ケネス……夕食を……』

「分かったよ」

 ケネスは周波数を変えた。

「ケネスよりショーンへ、どうぞ」

『こちらショーン、どうぞ』

「マザーが腹をすかせてる、何か軽いものを作ってくれないか?」

了解ラジャー

通信終了アウト

 ケネスは無線機をしまうとジェーンを見た。

「また後でな」

 そう言うなり納屋を出た。

 母さんは本当にわがままだな。


 ミラーはどこかの部屋に入れられていた。

 そこは子供部屋のようにぬいぐるみや三輪車などが置かれていた。

 ミラーは恐怖と不安を感じていた。

 母親はケネスに連れて行かれ、自分はどこかの部屋にいる。

 部屋にはミラーだけが居るのではない。

 60代後半から70代前半ほどの老婆が椅子に座りながら編み物をしていた。

「大丈夫だよ、お嬢ちゃん。ケネスは根は良い人なんだ」

 老婆はそう言うなり子守歌を歌いだした。

 ミラーは不安に感じた。

 お母さん大丈夫かな?いじめられてないかな?

 そう思っていると、突然別の声が聞こえた。

「助けてくれ」

 男の声だ。

 ミラーは更に不安がった。

 男の人の声……助けて?

 老婆は気づいていない。編み物に夢中だ。

 ミラーは老婆に気づかれないように声のしたドアに向かった。

 ドアは鍵が掛かっていない。

 ミラーはドアを開けた。

 そこは物置だ。

 物置には男が縛られていた。

 ミラーは鋏を取り、男を縛っているガムテープを切った。

「助かったぜ、お嬢さん」

 そう言って突然ミラーの口を塞いだ。

「ここは危険だ……どこかに隠れてろ」

 そう言って物置を出ようとした。

「おじさん誰?」

 ミラーは青年に聞いた。

「俺は名乗るほどの者ではない。彼女を助けに行く」

 男はガムテープで老婆の口を塞いだ。

 老婆は抵抗した。

 男は老婆をガムテープで縛った。

「ここの連中はきちがいだ」

「お母さんは変な警察に逮捕されちゃったの」

「そいつは偽保安官だ、お母さんが危ない」

「じゃ助けて!」

「ああ、助けてやるからここに居ろ」

 男は部屋を出た。


 男は階段を下りた。

 案の定、階段の横には鉄製の引き戸がある。

 そこに俺のガールフレンドが居るはずだ!

 男は近くに置いてあった木製バットを持って引き戸に近寄った。

 そして、引き戸を慎重に開けた。

 誰も居ない。

 そこはただの肉屋のような場所だ。

 だが、部屋の奥にあるもう1つの引き戸から声が聞こえた。

 女の声だ。助けを求めてる。

 あいつか?俺の愛する人か?

 男は引き戸に向かった。

 引き戸を開けると、そこは薄暗い地下室のような場所だ。

 誰かが部屋の中心で誰かが拘束されている。

 声からして別人だ。

「助けて!誰か!」

 別人だが助けを求めている。

 助けなくては!

 背後から気配が感じた。

 男はバットを構えて振り向いた。

 トムが立っていた。右手にはスレッジハンマーがあった。

 男はバットを振った。

 だが、トムは左手でバットを掴み、奪った。

「た、助けてくれ」

 男は情けない声で言った。

 トムは命乞いなど聞かない。

 ハンマーで男の頭を殴った。

 男は倒れた。

 打ち所が悪いのか、一発では死ななかった。

 男は痙攣を起こした。

 白目をむいた。

 トムは両手でハンマーを掲げ、振り下げた。

 ハンマーが男の後頭部に直撃した。

 男はぴくりとも動かなくなった。

 トムはもう一度ハンマーを構えた。

 死んでるはずだが、念のためだ。

 ハンマーを振り下げた。

 男の頭蓋骨が砕ける音がした。

 トムは男を引きずり、テーブルに乗せた。

 ローズを閉じ込めている引き戸を閉めた。

「助けて!!」

 ローズの声が響き渡る。


 奈々子は目を覚ました。

 が、両手はトムとジャクソンが抑えていた。

 上半身の服を脱がされていたが、ブラジャーだけは外されていない。

「目が覚めたかね、ナナコ」

 ケネスが後ろから聞いた。

 鞭を持って。

 それもただの鞭ではない。

 所々沢山のバラの棘のようなものが付いていた。

 あれで打たれたら、ひとたまりも無い。

 奈々子は一瞬恐れを抱いた。

 ケネスは愛想の良い声で聞いてきた。

「さて、君は学校の旅行で来たと言ったね?つまり他のお友達も居る訳だ。友達の居場所を教えてくれないか?頼むよ、な?」

 奈々子は既に理解していた。

 こいつは偽保安官だ。

 きっと私のように他の人たちもあれこれ理由をつけては連行し、恐ろしいことをしたんだ!

 言うか……言って溜まるか!

「知らないよ」

 奈々子はそう言った。

「そうか、嘘をついてるな。では、無理でも聞き出すか」

「無理でも?」

 奈々子は急に不安になった。

「そうだ、今は法律で禁じられているが昔は拷問と呼ばれる方法で事情聴取していたんだ。禁止さえしなければ、犯罪者達は拷問を恐れ、犯罪を起こさないのにな」

 そう言って鞭を構えた。

「いいか?もう一度聞く。友人達の居場所は?」

「知らない」

 ケネスは奈々子の背中に鞭を打った。

 鞭が腫れを起こし、棘が皮膚と肉を切り裂いた。

 それは言いようの無い苦痛だった。

 だが威力は低く、致命傷にもならない。

 奈々子は思わず悲鳴を上げた。

 ケネスは満足した。

「良い声だ、痛いだろ、え?我慢しなくていい。友人達の居場所を教えれば開放しよう」

 奈々子は痛みのあまりケネスの声が聞き取れなかった。

「答えなし…ではもう一度」

 そう言って再び鞭を打った。

 奈々子は悲鳴を抑えた。

 だがうめき声が漏れた。

「むっ悲鳴を抑えたな?」

 再び鞭を打った。

 奈々子は自身の意識関係なく悲鳴を上げた。

「そうだ、我慢はいけない。泣きたいときは泣け、叫びたいときは叫べ、それが人生だ」

 再び鞭を打つ。

 まだ4回しか打たれていないが、奈々子は40回打たれた気分だった。

 もはや背中の傷は痺れだした。

 ブラは裂かれ、胸が露出した。

「さあ答えろ、友人達の居場所は?」

 奈々子は考え込んだ。

 この男は恐らく他者が痛めつけられるのに性欲を感じる性格なのだろう……

 それとも弱弱しくなる私の姿を楽しむのか?

 なら、強がってやろう。

「お、教えるから、やめてくれ」

「お、言い出す気になったか?」

 奈々子はなるべく皮肉っぽく言った。

「友人は、お前の…母親の…あそこに居る」

「この汚らわしい女め!」

 ケネスは鞭を打った。

 何度も何度も打った。

 気づけば奈々子の背中は血と傷で覆われていた。

 奈々子は痛みのあまり涙も流れていた。

「少しやりすぎたか」

 ケネスは鞭を置いた。

 そして奈々子の前に立った。

「この…拷問マニア…」

 奈々子は怒りのこもった声で言った。

「これが拷問だと思うか?違うな、これは尋問だ。言っておくが拷問はもっと凄まじい。お前はベトナム戦争に行った事はあるか?俺はかなり若い頃に行った。俺達兵士は祖国のために、家族のために必死に戦った。戦って戦って戦った。隣に居た戦友は鉈で首を切られ、俺はベトナム人に捕まった。

そいつらは俺達に何をしたと思う?拷問だ。

それは耐え難い痛みだった。苦痛で仲間や情報を売りそうになった。今の鞭打ちなんてまだ気持ち良いほどだ。

奴らは俺達に食事なんてくれなかった。気の毒なのは弱い奴だ。弱い仲間は仲間に殺され、それが俺達の食事になった。

そうだとも。俺は人肉を食ったことがある」

 ケネスは奈々子の髪を掴んだ。

「俺はある日脱出をした。屈辱と敗北感を感じた俺は復習のために奴らの居場所に舞い戻った。全員苦しめながら殺したよ。そうだとも、拷問して殺したんだ。良い気分だ。俺は再び祖国の為、アメリカのために戦った。死に掛けたこともある。だがある日負傷して、俺は帰還することになった。だが空港で待ち受けていたものは何だと思う?歓声か?歓喜の歌声か?ほめ言葉か?違うな。非難の嵐だ。

 俺達は祖国のために戦った。だが反戦者は、国民は、国は、俺達ベトナム帰還兵を人殺しや赤子殺しや野蛮人といって非難しやがった。さらにアメリカは戦争に負けた。たかがベトナムにだ!

 俺達は、死んでいった戦友は何のために戦ったんだ?さらに俺はベトナム帰還兵という理由で警備員すらなれない。何で差別されたのか……俺は故郷に戻った。そこでも避難の嵐。

 ある日事切れた俺は避難した奴らを次々と殺した。ゆっくりと、なぶり殺しにしながらな。

 良い様だった。いい気味だった。良い気分だった。

 俺は晴れて殺人鬼となり、ここニューメキシコ州に引っ越した。そして現在に至った」

 奈々子はこの話を聞いて哀れに思えてきた。

「そんな……ことが……」

「そうだ、俺はアメリカに居るベトナム人達を殺した。日本に居るベトナム人を殺した」

「残酷……だ…」

 奈々子は弱々しい声で言った。

「お前はアジア人だな?ベトナムもアジアだ。なら、この恨みをお前で晴らしてやろうか?それが嫌なら友人の居場所をはけ」

「嫌だ……自分で…探せ」

「いい度胸だ」

 ケネスは奈々子の後頭部のつぼを押した、奈々子はぐたりとなった。

「傷口を消毒して包帯を巻いてやれ。これからが本番だ」

 トムとジャクソンは奈々子を運んだ。

 ケネスは地下室に飾ってある鉈を見つめた。

 ベトナム人から奪い取り、仲間の敵を取った鉈だ。

「俺は拷問した相手を鉈で切るのが好きなのさ」

 そう言って首を鳴らした。

「あれが拷問?違うな、あれは尋問だ」

 ケネスは鉈を大切そうに持った。

「あれは尋問、拷問はこれからだ」

 そして、鉈を振った。

「ベトナム人が俺にしたような拷問をな」

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