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ラジオアクティビティ  作者: 岡田健四郎 ZOMBRAY
10/17

君は可愛いよ

 気が付くと、立花は見知らぬ心地の良いベッドの上に居た。

 ここは、どこか人気のない地下壕のような場所。下水道だろうか?上を見ると、明かりが立花を照らしている。

 拘束されていなく、自由のみだった。

 私の身に何があったのだろうか?

 冷たい絶望感がたちまち全身を満たす。

 目の前に、左半分が歪んでいる男、ダグラスが立花を見つめていた。

 立花は思わず悲鳴を出してしまった。

「キミ、クァワイイネ~」

 ダグラスはほとんど正確に発音できていない英語で言っていた。

 立花も英語は話せるが、ダグラスとは話したくなかった。

「オレノ、ミライノヨメ」

 ダグラスはえへっえへへと笑いながら近寄ってきた。

 立花は仰向けに寝ながら両手で後ろに下がった。

 壁に当たってしまった。

 ダグラスは立花を抱き上げた。

「エヘヘ!ワハハハハ!」

 立花はダグラスの頭を遠ざけようと両手で掴んだ。

「放して!お願い!」

 英語で叫んだ。

「マ~マ~、ボクハ美人トケッコンスルヨ!」

 立花はダグラスの左耳を噛んだ。

 ダグラスは悲鳴を上げ、立花を放した。

 ダグラスは遠吠えを上げながら立花の背中を片手で掴み、持ち上げ、地面に叩きつけた。もう一度持ち上げ、また叩きつけた。

「シネ!シネ!シネ!」

 何回か叩きつけると、我に返った。

 立花は立ち上がろうとした。

 全身が酷く痛む。ちょっと動いただけでうめき声が漏れた。何とか肘をついて身体を起こす。

「ゴメンネ!ゴメンネ!ゴメンネ!」

 ダグラスは土下座し、謝っていた。

 一体何なんだろう?この人は?いい人なの?悪い人なの?

「ゴメンナサイ!」

 少なくとも、機嫌を取ればいい人なのかも……しれない。

「い、いいのよ、大丈夫だから」

 なるべく愛想の良い声と口調で言った。

「ホント?」

 ダグラスは笑った。

 人は外見で判断してはいけない。これは昔からの教訓だ。もしかしたら、この人は善人かもしれない。

 その時、鉄製の扉が開いた。

「ダグラス!この中途半端野郎!」

 トカゲのように乾いた皮と2つに裂かれた上唇を持つ男がやって来た。

「この獲物は俺のだろうが!」

「ゴメン!ダン!ゴメン!」

 ダン……これがあの男の名前か?

 ダンはダグラスを平手打ちした。

「この糞忌々しい弟が!俺達は今夜残りの連中を殺しに行くんだよ!」

 残りの連中?どういう意味かしら?

 さらに誰かが入って来た。

 ベルゼブブだった。

「ダン、ダグラス、準備しろ」

 ダグラスは部屋の右側の壁にある大きな扉を開けた。

 中は武器庫のようだ。

 ダンは世界最強の回転式拳銃、S&W M500を取り出し、ベルトに挟んだ。

 ダグラスは大昔に斬首刑の際に使われていた処刑用の斧を持ち出した。

「分かってると思うが、フランス人は殺すなよ?」

「分かってる、俺もダグラスもそんなへまはしない」

「とりあえず、シビルとホワイトも来る」

 3人は部屋を出た。

 立花は呆然とベッドに座っていた。

 が、次の瞬間にはダグラスが部屋に入り込み、立花の口を塞ぐと、どこかに連れて行った。

 ダグラスはどこかの部屋に入れた。

 そこは中心にベッドがあり、周りにテレビやラジオなどの家具が置いてあった。

「ココ安全、キミハボクノモノ」

 立花は気味悪く感じた。が、ダンやベルゼブブよりはましに思えた。

「キミハボクノ……ママトノ約束」

 立花は、ただダグラスを見ていた。


 信二たちはバスに戻った。

「どうする!どうやって立花たちを救う!?」

 紘輝は怒鳴り声で信二に言った。

「落ち着け!今対策を考えてる!」

 真希がそう言えばとばかりに口を開いた。

「佐々木ちゃんは確かGPS発信機を持っていたはず」

「「確かか?」」

 信二と紘輝は同時に言った。

「荷物を入れてる場所に装置の信号を受信できる装置か何かがあったはず」

「「確かか?」」

 真人はバス乗車している全員を見た。

 まだ寝ている。

 紘輝は金属バットを握りなおした。

「よし、GPS受信機を探そう」

 信二と紘輝は外に出た。

 荷物を入れる場所は開いていた。

 2人は奈々子のリュックサックを取り出し、中身を確認した。

 ノート型パソコンとスマートフォンのような装置があった。

「これの内どっちかだ」

 2人はバスに戻った。

 紘輝はバスの入り口を閉め、パソコンを開いた。

 パソコンの画面に赤い点滅があった。

「これか?案外近いな」

「救出に向かうには武器が少なすぎるな」

 現状ではモーテルにあったワルサーPPKと金属バットしかない。

 奈々子の日本刀は異形者に奪われた。

『ダンとダグラスが始末する』

 信二と真人は一瞬痙攣を起こした。

 真斗がトランシーバーを持っていた。

『ホワイトとシビルは援護するんだ』

 恐ろしく冷たい声がトランシーバーから聞こえた。

「それはどこに?」

 真人は驚いたような声で聞いた。

「アンナ…って言う人が持ってた…」

「人じゃない化け物だ!」

 紘輝は怒鳴るように言った。

「まて、静かに」

『銀髪の女は監禁する。フランス人は生け捕りにしろ』

 ソフィーは殴られたような顔をした。

「何で私?」

『全員バスに居る。チャンスは今夜だ』

 起きている全員が背筋に寒気を感じた。

『他のクラスは全員殺した。後は2組だけだ』

 他のクラスは全滅したのか……?

『以後、今作戦を真紅計画コードレッドと呼称する』

 真紅計画――コードレッド

『連絡は終わり』

 トランシーバーからは何も聞こえなかった。

「紘輝、周波数をメモしろ」

 紘輝は周波数をメモした。

「悪いが救出は後になるがいいか?」

 紘輝は渋々うなずいた。

「今は防衛のことを考えよう」

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