現実、逃避
三題噺もどき―はっぴゃくきゅうじゅうろく。
今日も今日とて、雨が降っている。
毎日毎日、飽きもせずに、雨は降っている。
警戒されていた台風は逸れたのか、消えたのか、それともまだ台風の中に居るのか。
起きてからテレビも見ていないから分からない。
「……」
ジメジメとした嫌な暑さに耐えながら、扇風機を回して、ベッドの上に寝転がっている。
起きてからずっとこの姿勢のままでいる気がするが……気のせいだろう。
だってもう既に時間を見れば昼を過ぎている。
さすがに土曜日で休みだからと言って、だらけすぎだ。
「……」
いつもなら土曜授業があったり、模試があったりするんだけど。
くだんの台風がどの程度か分からないので、今日は休みなのだ。
土曜日なんだから休んでいいだろうという感じもあるのだが、教師陣はどうやら渋々だったらしい。何が嫌なのか……私には分からない。
「……」
おかげで暇を持て余している。
だからこうしてベッドの上に寝転がっている。
右を向いたり左を向いたりしながら。
スマホを右に持ち替えたり左に持ち替えたりしながら。
「……」
毎日毎日、飽きもせずに動画を眺めている。
なんの知識も得られるわけでもない。
なんの刺激も得られるわけでもない。
「……」
ただただ時間だけを溶かしていくためだけに。
スマホをいじって、ごろごろとしている。
何かしなくてはと思いながら、何もしないで過ごしている。
「……」
次々とスクロールしていく画面の中では、その度に動画が変わる。
明滅するように入れ替わっていくので、たまに気分が悪くなる。
ならばやめればいいだろうという感じだが、そう簡単にいかないのが、現状である。
ネットの中というのは、存外居心地も悪くなく、依存するのも仕方がないと思ってしまう。
「……」
以前見ていた、地球儀のシーンから始まる、各地の絶景を魅せる動画。
今回もまたどこかの外国らしい。なかなかに雄大で美しい景色だとは思ったが、ただそう思っただけだ。そう、コメントが書かれていたからそう思った。
「……」
幼い子供がはしゃいでいる動画や、小さな動物の動画。
どれもこれも、可愛いと思うし、こういうのを見るとペットを飼いたいと思わなくもない。
だけどまぁ、思うだけで終わるし、癒されるとかそんなものもない。
「……」
時折流れてくるのは、コーヒーを淹れたり、カクテルを作ったりしている動画。
フィルターに粉を入れ、その上から細い湯を注ぎ入れる。
ぽたぽたと下に溜まっていき、最後にはきっといい香りがするのだろうという湯気と共に、一口飲むところで終わる。
美味しいのだろうとは思うし、これが楽しみな人も居るんだろうけど……色々とめんどくさそうだと思ってしまう。
「……」
氷を形成していき、様々なお酒やジュースを入れていく。カシャカシャと、特徴のある音と共にかき混ぜていき、最後には色の綺麗な飲み物が注がれている。そのグラスを、こちらに差し出すように動かしたところで終わる。
まだ飲酒の出来る年齢でもなし、おいしそうだとは思うが、そう簡単に飲めるものでもなし。そもそもあの筒もそんなに簡単に手に入るのか……。
「……」
何はともあれ、めんどくさそう。
そう思ってしまうと、面白みもなくなっていく。
そういう見方をするためではないと思うが、そう見てしまう自分もいるという事だ。
基本的にめんどくさがりだから。
「……」
たまに流れてくるおしゃれなカフェとかは、あの子と一緒に行ってみたいと思わなくもないが……大抵それは遠く離れた都会での話なので。
望んだところで、叶うものでもない。
「……」
「……」
「……」
まぁ、こういうのを見るときは。
現実を忘れるという事が目的みたいなこところもあるので。
もう、時間も見ずに、ただただ、多少の罪悪感に苛まれながら。
現実を忘れていることにしよう。
お題:コーヒー・地球儀・ネット




