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三題噺もどき5

現実、逃避

作者: 狐彪
掲載日:2026/06/27

三題噺もどき―はっぴゃくきゅうじゅうろく。

 




 今日も今日とて、雨が降っている。

 毎日毎日、飽きもせずに、雨は降っている。

 警戒されていた台風は逸れたのか、消えたのか、それともまだ台風の中に居るのか。

 起きてからテレビも見ていないから分からない。

「……」

 ジメジメとした嫌な暑さに耐えながら、扇風機を回して、ベッドの上に寝転がっている。

 起きてからずっとこの姿勢のままでいる気がするが……気のせいだろう。

 だってもう既に時間を見れば昼を過ぎている。

 さすがに土曜日で休みだからと言って、だらけすぎだ。

「……」

 いつもなら土曜授業があったり、模試があったりするんだけど。

 くだんの台風がどの程度か分からないので、今日は休みなのだ。

 土曜日なんだから休んでいいだろうという感じもあるのだが、教師陣はどうやら渋々だったらしい。何が嫌なのか……私には分からない。

「……」

 おかげで暇を持て余している。

 だからこうしてベッドの上に寝転がっている。

 右を向いたり左を向いたりしながら。

 スマホを右に持ち替えたり左に持ち替えたりしながら。

「……」

 毎日毎日、飽きもせずに動画を眺めている。

 なんの知識も得られるわけでもない。

 なんの刺激も得られるわけでもない。

「……」

 ただただ時間だけを溶かしていくためだけに。

 スマホをいじって、ごろごろとしている。

 何かしなくてはと思いながら、何もしないで過ごしている。

「……」

 次々とスクロールしていく画面の中では、その度に動画が変わる。

 明滅するように入れ替わっていくので、たまに気分が悪くなる。

 ならばやめればいいだろうという感じだが、そう簡単にいかないのが、現状である。

 ネットの中というのは、存外居心地も悪くなく、依存するのも仕方がないと思ってしまう。

「……」

 以前見ていた、地球儀のシーンから始まる、各地の絶景を魅せる動画。

 今回もまたどこかの外国らしい。なかなかに雄大で美しい景色だとは思ったが、ただそう思っただけだ。そう、コメントが書かれていたからそう思った。

「……」

 幼い子供がはしゃいでいる動画や、小さな動物の動画。

 どれもこれも、可愛いと思うし、こういうのを見るとペットを飼いたいと思わなくもない。

 だけどまぁ、思うだけで終わるし、癒されるとかそんなものもない。

「……」

 時折流れてくるのは、コーヒーを淹れたり、カクテルを作ったりしている動画。

 フィルターに粉を入れ、その上から細い湯を注ぎ入れる。

 ぽたぽたと下に溜まっていき、最後にはきっといい香りがするのだろうという湯気と共に、一口飲むところで終わる。

 美味しいのだろうとは思うし、これが楽しみな人も居るんだろうけど……色々とめんどくさそうだと思ってしまう。

「……」

 氷を形成していき、様々なお酒やジュースを入れていく。カシャカシャと、特徴のある音と共にかき混ぜていき、最後には色の綺麗な飲み物が注がれている。そのグラスを、こちらに差し出すように動かしたところで終わる。

 まだ飲酒の出来る年齢でもなし、おいしそうだとは思うが、そう簡単に飲めるものでもなし。そもそもあの筒もそんなに簡単に手に入るのか……。

「……」

 何はともあれ、めんどくさそう。

 そう思ってしまうと、面白みもなくなっていく。

 そういう見方をするためではないと思うが、そう見てしまう自分もいるという事だ。

 基本的にめんどくさがりだから。

「……」

 たまに流れてくるおしゃれなカフェとかは、あの子と一緒に行ってみたいと思わなくもないが……大抵それは遠く離れた都会での話なので。

 望んだところで、叶うものでもない。

「……」

「……」

「……」

 まぁ、こういうのを見るときは。

 現実を忘れるという事が目的みたいなこところもあるので。

 もう、時間も見ずに、ただただ、多少の罪悪感に苛まれながら。

 現実を忘れていることにしよう。












 お題:コーヒー・地球儀・ネット

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