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87話 サキュバスとしての目覚めと表には出せない決着

 一進一退の攻防が続く。

 無数に降り注ぐルカの魔力弾を掻い潜り、時には耐えて、爆発による土煙を突っ切って、俺は泥臭く地を這うように距離を詰めた。

 そして──ついに、後退しようとしたルカの足首をがっしりと掴み取った。


 「ちっ……!」


 ルカは即座に反応し、空いた逆の足で俺の顔面を容赦なく蹴り上げてきた。


 「ぐはっ!」


 脳が揺れる。さすがにかつての大魔王、身体能力の差が縮まっていることもあって、まあまあ痛い。

 だが、絶対に手は離さない。

 俺は痛みを我慢してその細い足首を強引に引っ張り、ルカの体勢を崩して地面に転ばせた。


 「しまっ──」


 俺はそのままルカの体の上に馬乗りになると、腕の動きを封じるように、力任せに全身を抱きしめる形で拘束した。


 「ええい、離せ、この野蛮人め!」


 至近距離で、ルカが俺の額に強烈な頭突きを食らわしてきた。俺も負けじと頭突きを返し、ゴンッと鈍い音が響く。


 「いっつぅぅ……っ!」

 「うぐっ……」


 お互いに額を押さえて視界を揺らし、ふらふらになる。

 その時だった。

 俺は朦朧とする視界の端、立会人として控えている観客たちの中にいる、お姉さんの姿を捉えた。

 お姉さんは、いつもの妖艶な笑みを消し、俺がルカを全身で強く抱きしめている今の状況を見て、ほんの少しだけ……本当にかすかに、不満そうに唇を尖らせていた。


 (……あ。お姉さん、嫉妬してる)


 その事実に気づいた瞬間、俺の下腹部の奥で、ぞくりと甘い火花が弾けた。

 あんなに恐ろしい副魔王が、俺が他の女(元男だけど)に密着しているのを見て、不機嫌でいてくれている。

 それがどうしようもなく嬉しくて、サキュバスとしての雌の本能がどろりと溶け出すのを感じた。

 俺はルカを組み敷いたまま、大声で叫んだ。


 「お姉さん! ちょっと恥ずかしいことするから、壁を作って観客から隠して!」


 わずかにお姉さんの肩が跳ねる。

 俺がこれから何をするつもりなのかを理解したのか、お姉さんはむすっとした表情を浮かべたが、すぐにそれを隠すように指を鳴らした。


 ズゴゴゴゴ……!


 大地が隆起し、俺とルカをすっぽりと包み込んでいき、広い部屋くらいの大きさをした、ドーム状の壁が一瞬で完成した。

 天井にはいくつか小さな穴が空けられており、最低限の明るさは確保されている。


 「……貴様、何をするつもりだ?」


 ドームという密室に閉じ込められ、ルカは嫌な予感を察したのか、もがきながら呟く。


 「魔法じゃ勝てないからな。……こうするんだよ」


 俺は拘束したルカの白い首筋に顔を寄せ、その柔らかな肌に思いきり吸いついた。


 「っ!? ひゃ、なっ……!」


 ちゅぅぅっ、とキスマークを刻み込むように強く吸い上げながら、俺は自らのサキュバスの尻尾を動かした。

 するり、とルカの服の隙間に入り込んだ尻尾の先が、彼女の下半身──最も敏感な場所を、ピンポイントで撫で、つつき、いやらしく押し込む。


 「あ、ぁんッ……!? や、やめろ……っ!」


 かつての大魔王から、信じられないほど甘く、甲高い喘ぎ声が漏れた。

 ルカの体が大きく跳ね、その強烈な快感によって、抵抗する腕の力が一時的に完全に抜け落ちる。

 その隙を逃さず、俺はルカの唇を強引に塞ぎ、深く、長い、キスを仕掛けた。


 「んむっ……あふ……っ」

 「んんんっ!?」


 ただのキスではない。

 舌を入れて相手の口内を貪るだけでなく、俺の体から、サキュバスとしての濃密なフェロモンが限界まで放出される。

 それを至近距離で、粘膜を通して直接流し込まれたルカの体は、ビクビクと痙攣し、俺を突き飛ばそうとする抵抗の力は、みるみるうちに弱まっていった。

 ぷはっ、と唇を離す。

 ルカは顔を真っ赤にして涙目を浮かべ、俺を睨みつけながらも、快感で指一本動かせなくなっていた。

 俺はにやりと笑い、自らの指にはめられた遠距離でも会話ができる魔道具を見せつけた。


 「お姉さんといつでも話せるように、この指輪をしててさ。……今から、これを起動する」

 「……っ。あいつに、聞かせるためか……?」


 ルカが熱い吐息を吐き出しながら、恨めしそうに睨んでくる。


 「うん」


 俺は目の前のルカに向かって、蕩けるような笑顔を向けた。

 そして指輪に魔力を通し、通信を繋ぐ。


 「……どうしたの?」

 「あ、お姉さん? 聞いて欲しいことがあってさ。今まで何度も何度も、お姉さんにいやらしいことをされてきたでしょ? ……それこそ、指一本動かせなくなるくらい、ぐちゃぐちゃに」


 そのまま俺は、ルカの耳元で甘くささやいた。銀髪が頬をくすぐるように、わざと。


 「だから、俺もルカに同じことをしようと思うんだ♡」


 もはや自分が完全に発情したサキュバスであることを俺は隠そうとしなかった。

 再びルカに覆い被さり、首筋、耳たぶ、鎖骨。あらゆる敏感な場所を舐めてしゃぶり、尻尾の先端で下腹部の最奥を執拗に掻き回し、こねくり回す。


 「や、やめっ……あ、ぁぁっ……!」


 ルカの情けない喘ぎ声が、密室のドーム内に響き渡る。


 「……お姉さん、聞こえてるでしょ?」


 もはや俺の中に、男としての面影などほとんど残っていなかった。

 ただ純粋に、サキュバスの少女として先代魔王の体をめちゃくちゃに凌辱し、快楽を与え、その甘い反応を喰らって自身の快楽を得るという連鎖に溺れていた。

 そして俺は、指輪の向こうで聞いているはずの存在に向かって、ひどく甘ったるい声でささやいた。


 「俺が他の子を可愛がってて、もどかしくても、お腹の奥が疼いても……我慢してね。俺をこんな淫乱な体に作り変えちゃった、お姉さんが悪いんだから♡」


 その言葉を合図に、俺はさらに激しく、ルカの体を貪り尽くした。


  ◇◇◇


 数十分後。

 ドームの中には、むせ返るような淫靡な匂いと、生ぬるい熱気が充満していた。


 「はぁ……っ、はぁ……っ」

 「あ……ぅ……ぁ……っ」


 お互いに荒い息を吐きながら、俺はルカの上に馬乗りになっていた。外からは見えなかったとはいえ、口には出せないような行為の果てに、お互いの下半身はぐしょぐしょに濡れそぼり、だらしない水音を立てている状態だ。

 俺は、白目を剥きかけてピクピクと痙攣しているルカの頬を、ペチペチと軽く叩いた。


 「戦闘不能みたいだし。俺の勝ちだよね?」

 「……だま、れ……っ。このような……決着、認めるか……」


 ルカは息も絶え絶えに、しかし魔王としての意地だけで俺を睨み返してきた。


 「ふーん。なら、殴ってみせてよ。……そんな元気も、もうないでしょ?」


 俺はルカの腕を自由にさせたまま、挑発を兼ねて、彼女のお腹の上に自分の濡れたお尻を押しつけ、ぐりぐりと円を描くようにいやらしく擦りつけた。


 「んふっ……♡ ほらほら、殴ってみなよ♡」

 「く、そ……っ」


 ルカはワナワナと震える拳を握りしめたが、それを持ち上げる体力すら残されておらず、ただ奥歯を噛んで俺を睨むことしかできなかった。

 魔法を練る精神力も、とっくに快楽で吹き飛んでいる。


 「勝ち、だね」


 俺が堂々と勝利宣言をした、その直後だった。


 「……壁を崩すから、最低限見られる状態になってちょうだい」


 指輪から、低く、暗く、恐ろしいほどに独占欲を煮詰めたお姉さんの声が響いた。声だけで俺の子宮がキュンと鳴りそうになるほどの圧だ。


 「うん、わかった」


 俺は立ち上がり、乱れた服を急いで整えていく。ルカは地面に倒れ伏したまま、動こうとしない。

 容赦のない轟音と共に、土のドームが一気に崩壊する。

 巻き上がった大量の土埃が俺たち二人に降り注ぎ、ぐしょぐしょに濡れたいやらしい雰囲気も、甘ったるい匂いも、すべてが土にまみれて物理的に隠蔽された。

 土煙が晴れたあと、観客たちの視線の先で、地面に這いつくばったルカは力なく拳を地面に叩きつけた。


 「……くそ。これでは、負け以外の何物でもない」


 大きな舌打ちのあと、ルカがはっきりと敗北を認めた言葉が草原に響く。

 こうして、魔界の覇権を懸けた頂上決戦は、あまりにもインモラルで表には出せない形をもって、完全に決着がついたのだった。

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