表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遠い旋律  作者: 神山 備
21/28

高広のノート

私は高広のノートを開いた。そう言えば、高広の書いた文字ってあまり見たことがなかった気がする。メールは手じゃ書かないし。


ノートには何枚か破られた痕があって、そのページの下には強く擦られた痕もあったりしたから、おそらく破られたページの方が高広の本当の本音なのだろうけれど…私が後で見ることになると、あいつも思ったんだろうな。そういうのは全部破ったみたいだった。(どこまで、カッコつけたいのよ、高広)



-高広のノートから1-


今、父さんから聞きだした。やっぱりオレは、あと少ししか生きられないらしい。


バカにしてるよ!後3月だって…そのうちオレ、何日まともに動けるんだ?何にもできないまま終るのか…そう思ったらめちゃくちゃ悔しくて、腹立ってきた。


でも、腹立てても何も変わんねぇことも分かってる。それでもオレにだって一応、夢も希望もあったんだけどな。


さくら嫁さんにもらって、子ども育てて、自分の設計した家建てて…でも、考えてみたら、なんかその夢って小っせーな。


それに、あいつ…看護師なんてやってる割にすぐにテンパるから、オレが倒れたなんて聞けばパニクって、他のこと何もできなくなるだろうからって、入院したことも口止めしといたんだけど…結果的に良かったな。でなきゃ、あいつの方が今のオレの状態を先に知ってしまうことになっただろう。

科が違おうがあいつも看護師だ。病名を聞いただけで瞬時にあいつは理解できるだろう。オレのこれからの道筋さえも。


オレは泣き暮らすあいつは見たくない。あと少ししかあいつの顔を見られなくても、だから笑顔で居てほしい。あいつの笑顔を見たら、それだけで元気になれそうな気がするしな。(バカだろ、オレ)


ゴメンね、高広。私、そんな風に思ってくれてたのに泣いてばっかだったね。もっと笑ってあげたら良かったね…


私はとめどなく流れてくる涙を拭いもせず、次のページをめくった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ