ノエ
私の意識が戻ったと聞いて、夜ノエが早速来てくれた。
「ホントにゴメンね、私ったらさくらにひどいこと言ってたのね…高広くんそんな病気だって知らなかったから…知ってたら、あんな事言わないのに。」
「ううん、ノエに言ったら、きっと高広と何が何でも一緒に居ろって説教されると思ったら、言えなかった私が悪いのよ。」
「そうよ!どうしてそうしなかったのよ。」
「それがあいつの最後のわがままだったから…あいつ、必死で私を守ろうとしてたんだと思う。」
「何で一緒に居ないのが守ることになる訳よ!」
ほら…ノエはやっぱり怒り出すじゃない。だから、私はあんたには言いたくてもいえなかったのよ。
「ずっとあいつと一緒にいたら、私はたぶんあいつに付いて行ったと思う。」
「さくら!付いてくって一体何?!」
ノエはすごい形相で私を睨んだ。
「ノエ、そんな顔しないでよ。私は付いて行こうとしたの。でも、高広はダメだって突き放されちゃって…1人で逝っちゃった。」
「そんな!そりゃあんたもヤバヤバだったのは事実だけど、けど付いて逝くなんてあり得ないじゃん!」
あり得ないと言いながら、ノエはもしかしたらそれもあったかもしれないと思っているみたいだった。
「だから…帰って来たじゃん。」
「もう、解かんないこと言うんじゃないわよ!あん時、ホント大変だったんだから…」
そう言うと、ノエは私が倒れた時のことを話し始めた。
「あんたがさ、『高広…今…いくから…』なんて言うから、あいつ今更何の用って思って見たら、あんたばたっといっちゃうじゃない?あたし慌ててあんたからケータイもぎ取って、『高広くん?あんた一体今更一体何の用なの!それに、何言ったの!さくら倒れちゃったじゃない!』って怒鳴っちゃった訳よ。」
ノエは話を続けた。
「そしたらさ、電話の相手は高広くんじゃなくて妹さんだって言うじゃない?しかも高広くんが危篤で電話したって言うし、おまけに妹さんが『お兄ちゃんが三輪さんを連れてっちゃう』って叫んで電話切っちゃうしで…あたし、どうしていいのか判んなくなっちゃったわよ。」
そんなの理解できない方が、正解。
「そんでね、何とか気を取り直してあたしのケータイで119番して、さくらがこの病院の看護師だからって言ったら、病院に連絡して…ここに来た訳。」
「ありがとう、1人の時じゃなくて良かった。」
「ううん、そんなのいいけど…それでさ、ここに着いたら着いたで、いきなりあんた集中治療室だもん、ビックリしたわよ。ホントに妹さんが言うみたいに連れてかれると思った。で、あんた…高広くんとホントに…」
「うん、一緒に居たよ。高広の病室まで飛んだ。」
「しゃらっと、怖いこと言わないでよ。」
ノエはどん引きで震えていた。解ってもらえないだろうけど、ホントのことだから仕方ない。
私は、高広のところへ飛んだ時の話しをした。
「ふ~ん…それって不思議な話よね…でも、あんたたちがホントにつながってたってことなのかな。何かスゴ過ぎだわ。」
それを聞いて、ノエは首を傾げながらそう言った。