表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遠い旋律  作者: 神山 備
10/28

ある憶測

「ちょっと何それ!信じらんない!!」

高広からの別れの言葉を告げると、ノエはそう怒鳴った。

「何か引っかかるもんもあるけどさ…んでも、高広くん見損なったわよ。さくらがここまできれいになったってんのに、他の女のとこにいくか?フツー。」

「たぶん、新しい彼女は、あいつのウソだと思うけど…」

ウソだと思いたい。そんな気持ちも含まれてるのかもしれない。私にはどうしても他に好きな娘がいるとは思えなかった。

「じゃぁ、一体何?どうしたらそんな選択肢が出てくるわけよ!」

「それを聞きたいのは私よ!!」

でも、ノエが怒りに任せてそんなことを言うから、私は思わず彼女に怒鳴ってしまった。

「あ…ゴメン。ノエが悪い訳じゃないのに…」

「謝らなくていいよ。あたしの方が言い過ぎた。」


ノエには言えなかったけど、気にかかっていたことはあった。それは、高広の家であいつが私の顔を覗き込んだ後見せたあの表情と、あいつも痩せてしまっていること。もしかして、何か病気じゃないかって…


でも、病気だったとしても、それがたちまち別れなきゃならない原因にはならない。私は病院に勤めているんだし、相談してくれたら一緒にタッグを組んでも治していけるはず。

ただ…それができないとしたら…もう、治しようのないところまできているのだとしたら…全て辻褄が合うことになる。


私は、自分の憶測が正しいと認めたくはなかった。でも、何度考えを巡らせても考えはそこに行き着いた。認めるのが怖くて、私は高広の別れを受け入れた。

正直言えば、一度だけたまらなくなって電話を入れてしまったけど、高広は何度鳴らしても出てはくれなかった。(人には番号を外せと言ったのに、私からだって判ってる)

私にはそれが、高広からの暗黙の答えだというような気がして、余計辛くなったから、2度とかけることはなかった。そして、高広が言うように、別に彼女が出来たんだ、そうムリに思い込むことにした。


そして、さくらの季節がやってきた。今年は冬が長くて中々だったけど、やっと開いた。

私は病院前の桜の木がぽつりぽつりと花を開かせた時から、他の人がきれいだとつぶやく声を聞きながら、ずっと俯いたまま通勤した。見上げると眩しくて、きれいで、涙が出そうだったから。

私の名前がさくらだから、一緒にここで花見がしたいと言ってたな、あいつ…今、どうしてんだろ。


「三輪ちゃん、お疲れ~。」

「じゃぁ、上がりま~す。」

そんなある日のことだった。

夜勤を終えた私は、帰ろうとして職員通用口に向かっていた。

職員通用口は救急の搬送口のすぐ隣にある。

私は駆け込んできた1台の救急車のサイレンに反応して、何気なく救急搬送口を覗き込んで降りてきた急患を見た。


そして、次の瞬間…私は凍りついた。

-血の気を失くして苦痛に歪んだ顔で運ばれて、病院のストレッチャーに乗せられた搬送者は、他でもない…高広だったからだ。-



神山でございます。


ああ、やっぱり! とか言わないでくださいね。


ま、タイトルからしてラブラブで終わらないだろうと踏んでいたあなた、正解です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ