Episode-8~夏フェスの熱気と向上心~
私は途中だった新曲を仕上げた、途端に寝落ちてしまったらしい。机で寝てしまうのはよくあるが。
「首痛い…」
どうやら寝違えてしまったらしい。体を解して、私は顔を洗い着替えて、下の部屋に行く。
「おはよう、穂川さん!」
「奏響か!早いな!」
「おはよ〜、きぃちゃん!」
「はよ。」
まさか3人も早起きとは思わなかった。
「きぃちゃんも、もしかしてランニングに行くの?」
も、ということは……なるほど、普段から3人で走っているのか。そう考えながら、ソファーに座る。
「うん。体力欲しいから」
「きぃちゃん、オレンジジュースとコーヒーどっちがいい?」
普段は口にしないで行くげど、優と慧に突っ込まれそうだな。
「オレンジ。」
「走るんだから、エネルギーは入れた方がいいと思うよ?はい、オレンジジュースどうぞ!」
「ありがとう。」
案の定、優に突っ込まれた。
「体力な、確かに穂川の場合らギター弾いて、更に歌うからな。相当の体力必要そうだ。」
「まぁね。でも楽しいよ。」
オレンジジュースを飲みながら話す。
「ふふ、穂川さんらしいね!」
「せっかくだから、皆で走りに行かない?」
「どっちでもいい。」
私も3人に同行してランニングに向かう。いつもと違う景色が足を加速させる。時々写真を撮ったりしながら、爽やかな朝の日差しと風を浴びる。
「なにかが浮かびそうだ。」
ーーー今日もどこまでも高いな、入道雲と空色が。
「きぃちゃん、何してるの?」
後ろから優の声がすると思ったら、汗を拭っている優がいた。
「写真撮ってた。ほら。」
「いいね、綺麗な向日葵だ!きぃちゃん、本当に写真好きなんだね!」
太陽に向かって真っ直ぐに咲く、大きく黄色い花が開いてて綺麗だった。向日葵を見ると元気を貰える気がする。
「つか、穂川。足速いな。」
「そう?普通だと思うけど」
空の写真もこの青い小花も、この1枚ずつがきっと大きな思い出になる。
「ここが、明日の夏フェス会場か!」
そう明日は夏フェスも込めて、1週間なのだ。なんて素晴らしい偶然。
「おー!やっぱ大きい会場だね〜!」
「楽しみだ。」
「お、けーくんも?僕も!!」
夏フェスが明日に迫っていることもあって、私たちは少しはしゃいでいた時。
「あれ、もしかして穂川さんたち?」
「ん?あ、秦さんだ。おはようございます。」
「ほんとだー!おはよーございます!」
「おはようございます。」
「おはようございます!この前のライブではお世話になりました!」
「おはよう。BlueStaR L!neЯのみんなとこんな所で会うなんて奇遇だね!」
早起きは三文の徳の効果かもしれない。
「そう言えば、SiNSilentが夏フェスの屋外ステージやるとか言ってましたね?」
「へ〜それは楽しそう!」
「俺ら、夏フェスに参加し兼バンド合宿をしに来たんです!」
「おー仲良いんだね!まさに青春って感じ!」
……なんか、いつもの秦さんらしくない気がする。
「あの、間違ってたら申し訳ないですけど……秦さん何かトラブルでもあったんですか?」
「え?」
「何か困っているなら、力になれることあれば言ってください。私もSiNSilentのライブハウスの人員ですから。」
奏響、慧、優も頷く。
「実はね、急遽明日出演予定のバンドが出れなくなってね…」
「それは、大変ですね。」
「そうなんだよ。」
もう夏フェスは明日、流石の秦さんも焦るか。
「私らでは、役不足ですか?私たち丁度バンド練習のために来たので、楽器も機材もあります。」
「BlueStaR L!neЯ、最近はSNSでも話題になっているし、この前のライブも最高に盛り上げてくれたし……もしBlueStaR L!neЯが自信あるなら、テストさせてくれるかな?」
「だってさ…どうする、みんな?」
奏響、慧、優の頼もしい顔で、これからやる事は決まった!
秦さんとの約束時間は14時か。
「秦さんのテスト曲何にするの?」
「ShinE L!ght、かな。フェスでも合いそうだからやりたいなと思う。
せっかくアップデートした私たちを秦さんにみせたいし。それに、慧がシンセ購入記念に相応しい。」
「お前こそ、そのエフェクター始めて見るだが?」
「本当だ、前の穂川さんの家で見たエフェクターとは違うやつだ!」
「慧も奏響も気付いた?今日まで沢山バイト入れてついにこのエフェクターを買ったんだ。結構音圧とか音の重みとかが最高なんだ。それに今回の場面に絶対このエフェクターは合ってる気がするんだ。」
「ま、とりあえず通してみよう。」
「そうだね〜。」
「あ、待って。急遽夏フェスで審査してもらうとSNSに投稿する。みんなの写真付きで。」
「お、抜かりないね〜」
「当然でしょ。このライブも夏に負けないくらい熱くさせるんだから。」
「だな。」
「BlueStaR L!neЯ、星のように燃え上がろう!」
通し練習をして14時になったので、秦さんに指定された場所に楽器と機材を持って向かった。
「おじゃまします。秦さん。」
「やぁ!さっきぶりだね、BlueStaR L!neЯのみんな。」
「今日はよろしくお願いします。」
「「「よろしくお願いします!!!」」」
夏フェスに出演する一員になれるなんて、夢にも思ってなかったからこんなチャンスが恵んできてくれて嬉しい。
「元気がいいね!僕の方こそよろしくね!じゃ、会場に案内するね。」
秦さんに案内された会場は、SiNSilentのライブハウスより大きい。さすが規模が違うな。
でも、規模が違くてもやることは同じ。
「じゃ、審査始めようか。」
秦さんの真剣な表情に、私達も気合い入る。B新アンプと新エフェクターの初の組み合わせを使うのが楽しみすぎる。
「ShinE L!ght、行きます!」
「いっきまーす!!」
ドラムカウントから私はギターに強い思いを込める。夏フェスを制するのは、BlueStaR L!neЯだと。
ーージャジャーン!!
「……君たち、成長しすぎでしょう。」
「ありがとうございます。」
「前に聞いたShinE L!ght良かったけど、今回のは更に2倍、いや3倍はいいな。音圧も勢いもあって、夏フェスにぴったりだ。」
新アンプと新エフェクターの相性がめっちゃ良かった。ペンション帰ったら、全部のペダルとかエフェクターの組み合わせを、試そう。
ブブっとバイブがさっきから鳴り止まないスマホを見るとSNSには凄い量のコメントがあった。
@MusicLover23: 「BlueStaR L!neЯのShinE L!ght、めっちゃパワーアップしてる!きいなのギター、鳥肌立った」
@DrumFan_Yuu: 「優のドラム、めっちゃエネルギー爆発!夏フェス絶対行く!」
@CoolKeys88: 「慧のシンセ、めっちゃクール!あの電子音、頭から離れないよ!!」
@BassVibes: 「奏響のベース、重低音が心に響く!フェスで生で聴きたい!」
こんなにコメントって来るんだ。凄い。
@SummerFestFan: 「BlueStaR L!neЯ、夏フェス出るの!?SiNSilentのライブやばかったから、絶対見に行く!」
@StarLinerLove: 「きいなの新エフェクター、どんな音なるの?楽しみすぎる!」
@LiveHype2025: 「このバンド、絶対これから来る!ShinE Lightの進化、早く生で聴きたい!」
この期待の声から、伝わる胸の高鳴りに、私はギターを強く握る。
「すっごいね、これ!全部僕たちへのじゃん!
しかもトレンド5位じゃん、ヤバすぎる!」
「応援されてるの、純粋に嬉しいな。」
「だな、応援の期待に応えなきゃな!」
「秦さん。BlueStaR L!neЯの参戦、認めてくれますか?」
秦さんの答えは、強い期待の瞳が持っていた。
「もちろん、合格だ!」
「やったね〜!」
「帰って、夏フェスに向けて練習だ。そうだ、セトリはどうする、きぃちゃん?」
「セトリは、ShinE L!ght、WateR ArM BANGからRide: OЯ Die´Sに繋げて、最後はTR!BE L!NK DR!VEで締める。どうかな?」
「いいね!盛り上げ曲の爆盛りって感じで〜!」
この勢い、絶対途絶えさせない。
「ねぇ、穂川さん!」
「秦さん、どうかしましたか?」
「この前のTシャツのデザインまだある?」
「……ありますけど、もしかして。」
「ふふ、それは当日のお楽しみだよ!」
私たちはテスト会場から追い出された。考えてても仕方ないから、ペンションに戻って、夜中迄アレンジを考え尽くした。
ギター引きすぎて手首が痛い。エフェクターがたまらなくて慧に止められるまでひきつづけてしまった。
夏フェスに参戦できるなんて思わなかったし。その緊張からなのか、私は夜の海岸を歩く。
"澄んだ蒼 どこまでも遠い
群青色が深く暗くて
怖いかもしれない
でも それは案外近くにあるかもしれない。
行ってみたら
もしかしたら明るいかもしれないから。
手を伸ばして、遠いあの場所に走るんだ。"
私らしくないな。
「きぃちゃーん!」
「優、慧、奏響。」
振り返れば、こんな頼もしい3人がいる。だから私はギターを弾いて、前へ高い空まで歌うだけ。
「今の新曲?」
「ううん、ただの鼻歌」
「鼻歌なのか、あれ?」
「いい歌詞になりそうだったのにな!」
ペンションに帰れば、もう夜明けはすぐそこだ。
「おはようございます、秦さん。」
「おはよう!BlueStaR L!neЯのみんな!」
「「「おはようございます!」」」
「今日はよろしくお願いします。」
スタッフも気合入ってる雰囲気が伝わる。
「こちらこそ、あ、そうだ!みんなにプレゼント!」
秦さんから渡された物を開けて見ると
「え、秦さん、これって!!」
「ふふ、Tシャツとリストバンド作っちゃった♪物販で売れたらいいね?」
「秦さん、神すぎるんだけど!」
「デザインも凄くいい。」
夏フェスに出さしてもらえるだけじゃなくて、こんなサプライズまで……秦さん。
「これは、期待に応えなければ。」
「だね〜!頑張ろうね、きぃちゃん!」
SiNSilentの秦さんから、サプライズTシャツとリストバンドでの夏フェス参戦!俄然やる気MAX!!とSNSに投稿した。
@StarLinerFan: 「BlueStaR LineЯの新Tシャツ、めっちゃカッコいい!物販で絶対ゲットする!」
@FestVibes2025: 「リストバンドもヤバい!夏フェスでBlueStaR LineЯのグッズ着て応援するぜ!」
@RideOrDieFan: 「Ride: OЯ Die´S、フェスで聴いたら絶対盛り上がる!きいなのギター、楽しみすぎる!」
@SummerRocker: 「SiNSilentのライブ最高だったから、夏フェス絶対神回になる!BlueStaR LineЯ、燃え上がれ!」
SNSのキミも私たちと、暑い夏フェスを。
リハを終えて、私たちは2番目の出演だ。
「ねね、なんか掛け声とか円陣みたいなのやりたいよね〜?運動部みたいにさ!」
「掛け声か、いいな!そういうの!」
「どんなのだよ?」
「例えばー」
夏フェスだというのに、3人ったら頼もしいな。
「準備はどう?穂川さん!」
「バッチリです。」
「BlueStaR L!neЯは、きっといいバンドになるよ!」
「この夏フェス、絶対熱いライブにします。」
「うん。期待しているよ!」
秦さんの期待に、私は裏切らない。
「きぃちゃーん!円陣やろう〜!」
「結局、掛け声は決まったの?」
「うん!青い星が流れる熱狂をBlueStaR L!neЯ!ってどう?」
悪くない。
「いいんじゃないか。」
『BlueStaR L!neЯのみなさん、出番お願いします!』
「穂川さん、お願い!」
「私なの?」
慧も優も、私が言うのを待っているらしい。
「……青い星が流れる熱狂を!"BlueStaR L!neЯー!"」
わーー!!と響く歓声と観客の人達。胸の鼓動をこの観客と共に!
「こんにちは。僕たちはBlueStaR L!neЯです。僕たちBlueStaR L!neЯが冷めやらないライブにします!」
優のカウントと勢いを託すスネアを叩くドラム。私のギターが観客のエンジンをかけ、慧のシンセサイザーの電子で熱い感覚が駆け抜けて、奏響のベースが音のバランスを包むだけじゃなく、汗が一筋流れるほどの重点音。
イヤモニつけるのが、勿体ないくらい。それくらい絶好調の奏響、慧、優……私もその音に応える。
「ShinE L!ght」
ベースとドラムが主張しあって、そこへシンセの電子音がぶわっと包んで、ハウリングとピックスクラッチする太陽の眩し差に負けない音圧が、この場を支配する。
支配……そういえば、奏響が言ってたな。
私たちは、進化を恐れない。ShinE L!ghtのように、強く輝くのだから!
「ギラギラと眩しい太陽
あんなに輝いてて
暑くて存在感があるのに
手を伸ばせば遠そうで
バチッと弾かれて
手を引いてしまいそう
目を逸らしてしまえば
逃げてしまえばいいのかもしれない
でも 負けたくないから
ここで諦めたくなんてないから
例え 泣いてしまっても
太陽が雨から虹へと変えてくれるはず
だから キミたちの心は
ボクたちが燃やす
この鼓動が 高鳴り 熱く輝くまで
何もせずにいられない、そんな一歩を
この熱い想いを聴いたら、最後だ。
ここで止まるなんてもったいない。
手を翳せば光が、暑くさせる。
青く輝き 赤く燃えて
緑鮮やかに 黄の輝きに
ボクたちはー 輝く光になれるんだ。
きっと、強く。」
この光の勢いは太陽のように止まらず、奏響のベースと慧のシンセが水の波音を「WateR ArM BANG」へ走らせる。
「僕らは探してた こんな熱い場所を
照らしてくれるスポットライトに
なかなか届かなくて
こんな最高潮の場で 何も得られないまま
ーーーだけど、そんなところで
終われるなんて、あるわけないだろ!
熱い炎を燃えあげろ 水量 全力全開で
BAN!BAN!撃ち抜けろ
あの空と果てのない海まで
BAN!BAN!届くまで行ってしまえ!!」
更に優のシンバルと私のコーラスと音圧を上げて「Ride: OЯ Die´S」に繋げる。
衝撃のビート、ズレた音が吠える。
シンバルが裂く、夜を切り開くぜ。
叫べ!壊せ!
この不協和音で。心の鎖、全部ぶち破れ。
モノクロの鍵盤、カオスを響かせ。
重低音が、地面を揺らし続ける!
走れ!燃えろ!
Ride or Die'Sの壁を突破だ!」
ステージが吹き出す水も、スポットライトひも私たちも勢いを失わない。
「まだまだラストもより上がれますか!?」
「夏フェスは始まったばかりだ。」
「さぁ、BlueStaR L!neЯと最後まで駆け抜けよう!!」
ベース音の厚みとギターのオーバドライブでさらに熱の馬力を上げる。
「「「「TR!BE L!NK DR!VE!!」」」」
ここだと、ペダルを踏む。
「暑い夏の視線が、冷めた熱を起こす
あまりの天気の良さに
出かけてみようと思い立って
Tシャツと短パンに着替えて
キャップを被って 自転車を走らせてみた
公園の緑の多さに
少し自然のエネルギーを貰えた
さらに自転車のペダルを強く踏んだ。」
あぁ、この夏フェスを忘れたくない。
「はぁ。はぁ。熱いライブをありがとう、BlueStaR L!neЯでした。」
こうして、夏フェスのミニステージを終えた。ハケに行って、階段に降りると秦さんが駆け寄ってきた。
「とっても良かった!凄いもう暑すぎて!」
「ありがとうございます。」
「見てみて!Tシャツとリストバンド5000個は用意したのに、全部売り切れてしまったよ!」
「わわ!SNSも超バズってるよ!?」
@FestRocker2025: 「BlueStaR LineЯの夏フェス、ガチで神回!ShinE Lightの音圧、会場揺れた!」
@StarVibes_X: 「Ride: OЯ Die´S、ドラムとキーボードやばすぎ!優と慧、最高のコンビ!」
@BassLover2025: 「奏響のベース、TR!BE L!NK DR!VEで心臓ドクドク!BlueStaR LineЯ、会場支配した!」
@SummerStarLiner: 「WateR ArM BANGの水しぶき、夏フェスにめっちゃ映えた!Tシャツとリストバンド、完売おめでとう!」
@LiveHype2025: 「BlueStaR LineЯ、夏フェスで伝説作った!次は全国ツアー待ってる!」
「うわ、トレンド1位になってる!」優が目を輝かせて言う。
「この勢い、次に繋げないとな。」
「次のライブは、SiNSilentのライブだな!」
「その先のステージはもっと大きいところ。」
夏フェスのあの大きなステージ。それを目指して、ライブだけじゃなく、夏フェスのステージ、優がファンである"SMerA"のステージを観に行ったり、慧と奏響が好きな"BlanC"や"FILANSHE"の激しくも高貴な音調。私の好きなバンド"Glayer"までたくさんのバンドが参加している。
いつか、私たちも。憧れだけなんて終わらせない。私たちは、次のステージに向かうために。ペンションの夏合宿は何も変え難いものとなった。
……To be continued
エピソード8を読んでいただき
誠に有難う御座います!
煌夏たちが夏合宿を迎えて、海で遊んだり
秦さんに出会って、夏フェスミニライブも成功させた。
次に立つのは、SiNSilentのライブ!
BlueStaR L!neЯはどんなライブを魅せるのか!!
次回の投稿は、8月27日の午後正午です!
よろしくお願いします!