なんとなくの日常~バイト編~
今日はお客さん少ないなそう思いながら、穂川 煌夏は受付していた。こう思ったら怒られるかもだけど人がいない分、他のバンド演奏が見れたりするからいい。
隠れた激アツなバンドがいたりするし、MARIN RUNLYやRonder Here、FranPlaZmaが目立つけど。私的にはBuBBle Balloonのポップ調な感じとか、たまに見るVery Future Eyeのような地下アイドルとか観れてちょっと楽しい。
最近は黄緑五目というバンドを見るなとか、まぁそんなこと思いながら、ドリンクバーの補充をする。
また違う日は、人が多い。FranPlaZmaが出演するからだろうな、しかもトリで。私たちもFranPlaZmaの降川さんみたいに謙虚な戦士でありたいな。
この前もFranPlaZmaの降川さんが私の受付に気付いてわざわざ挨拶しに来てしてくれた。その場数の余裕な姿勢も見習いたい。
「穂川?」
「慧か。」
柳 慧は私と組んでいるBlueStaR L!neЯのキーボードだ。FranPlaZmaのファンだから見に来たのか。このバンドにしかないキーボード&ボーカルで、静寂の中に音の神秘を感じるような少し複雑なサウンドが癖になるバンド。
降川さんは鍵盤と電子界の魔導師と言われることもあるくらいだからね。
「ほい。」
受付の記入をしてくれた慧に渡された受付用紙を確認する。
「問題ありません。こちらドリンクバー用のコップになります。」
「サンキュ。穂川に敬語使われると変な感覚だな。」
「バイト中ですから。」
「そんなことわかってる。」
バンド仲間だけじゃなくて、同級生だから。春休み前に配られたクラス分け表を見た。2年生になってもバンド仲間の奏響、優、慧だけじゃなく、クラス友達の美紅、芽衣も萌香も一緒だった。
「ライブ楽しんで。」
「あぁ、お前もバンド頑張れよ。」
慧はそう言い受付を離れた後。受付用紙を片付けようとしたら、その横にはハチミツレモンの飴が置いてあった。
「相変わらず、クールなのに世話焼きなんだから」
有難く休憩中にその飴を頂いた。それとFranPlaZmaのトリは受付からでも鳥肌が立つくらい、世界観溢れる音が聞こえた。
FranPlaZmaの魔法にかけられて、昨日は練習につい熱が入りすぎてしまい。14時から20時までやってしまった。
昨日はやりすぎ!と井間が言うから練習が休みになり、急遽バイト先の店長から連絡入って、今はCDショップでバイト中の柳 慧だ。外は雨が降っているからかお客があまり来ず。ずっと座っているのもあれだからと棚にあるCDの在庫を確認したり、入れ替え作業したりと意外と力仕事だ。
女子にはキツそうな作業だよな。とか思いながらレジ対応を終える時。
「あ、けーくんだ!」
「ん、井間か。」
外はまだ雨が降っているらしく、井間は雨水を払いながら傘を畳んでいた。相変わらず黄色のパーカーとキャップを着こなしていて洒落ているやつだ。
「やっほ!バイト中だったんだね〜!」
「あぁ。」
そういえばBlueStaR L!neЯの練習時にドラムの設置準備していた時。「あ!明日、CD発売日じゃん!」と井間 優が言っていたな。
「はい!これ、お願いします!」
「お預かりします。」
カゴを井間がレジに置いたけど、…どんだけ買うんだとツッコミたくなった。小さいカゴではあるが10枚から15枚ほどある。
「ふふ、けーくんがこうしてバイトする姿は新鮮だな!それに僕に対する敬語も!」
「幼稚園から一緒だもんな、俺ら。」
商品をバーコードに通しながら話す。
「長いよね、そーくんともだけど」
井間ともう1人幼馴染みの春田 奏響がいるのだ。
「呆れるほどな。」
「まぁ、僕は嬉しいけどね〜」
井間と春田とこれまであまり離れたことがなくこれが俺らは当たり前で、2年に上がっても同じだし、逆にお前らと離れることになったらどういう気分になるんだろうなとか
「けーくん、ぼんやりしてどうしたの?」
「いや、なんもない。」
雨だからか俺らしくないこと考えてしまった。
「お会計こちらになります。」
「はーい!」
「こちら商品になります。」
「ありがとう〜!また明日練習でね!!」
元気よく手を振りながらカランカランとドアを鳴らして店を出て行った。閉店時間になると雨降っていた天気が晴れていた。
「明日の練習も頑張らないとな」
そう思わせてくれる綺麗な夕焼け空だった。
今日は学校が創立記念日で平日休みで、前日がSiNSilentでライブだったこともあって、バンド練習もたまにはお休みにしようということで僕は制服に着替えてファミレスの接客をしていた。
ーーーカランカランと鳴ったドアの音がした。
「いらっしゃいませ〜!」
井間 優はテーブルを拭いていたんだけど、お客さんが来たんだと向かうと。
「あれ、優ちゃんだ!やっほ〜!」
僕のことをちゃん付けで呼ぶのは、花沢 美紅さん。
「こんにちは、井間くん!」
樋野 芽衣さんが、こんにちはと挨拶してくれて。
「井間さん、ファミレスでバイトしてるんだね!」
思い返してみると戸野 萌香さんとは会ったタイミングなかったかもと知った。
「今日バイトの日だったんだね。」
そしてBlueStaR L!neЯのギター&ボーカルの穂川 煌夏で通称きぃちゃんと呼んでいる。花沢さんたちは同じクラスなんだ!
「こんにちは!どうぞお席にご案内します!」
空いてる席にきぃちゃんたちを案内した。
「こちらのお席へどうぞ!」
「ありがとう、井間くん」
「優ちゃん、ありがとう!」
「井間さん、ありがとう。」
「ありがとう、優。」
律儀にお礼を言われるのはいい気分だな、と思いながらお冷を用意しに行く。
「ご注文お決まりですか?」
お冷やお手拭きを並べて、ハンディを操作する。
「私、トマトパスタとオレンジジュースにしようかな!」
花沢さんはトマトパスタとオレンジジュース。明るい性格の花沢さんに似合いすぎて少し笑いそうだ。
「私は、ケーキセットにする!」
「あ、私も芽衣さんと同じ物で!」
樋野さんと戸野さんはケーキセット。
「本日のケーキセットは、ベイクドチーズケーキかチョコレートになってます!」
「私、ベイクドチーズケーキと今日温かいからアイスティーにしようかな!」
「私はチョコレートケーキとアイスコーヒーにするわ!」
樋野さんがベイクドチーズケーキとアイスティー、戸野さんがチョコレートケーキとアイスコーヒーとハンディに入力する。
「かしこまりました!きぃちゃんは、何にする?」
きぃちゃんだからドリンクバーだけか、一緒にミニパフェかな?大体僕たちと行く時もそうだし!
「私ドリンクバーかな。」
「煌夏ちゃん食べなくていいの?」
「うん、芽衣。今はお腹空いていないから要らない。」
「ふふ、きぃちゃんだからね!では、ご注文承りました、ごゆっくり!」
ハンディを操作して、僕はレジ打ちに回ったら。
「井間くん、お疲れ!もしかして、さっきの人たち知り合い?」
「あ、お疲れ様です、水嶋店長。さっきの人たちは高校の同級生です!」
「へぇ、青春だね!今はそんなに人もいないから注文届けに行くついでに休憩入っても構わないよ?」
「本当ですか!ありがとうございます、それでは休憩頂きます!」
「うん、行ってらっしゃい〜!」
僕はエプロンと名札を取って、注文してくれた物をトレーに並べて、落とさないように気をつけながらきぃちゃんのところに向かった。
「お待たせしました!ご注文の品です!」
「あれ、優。エプロンしていない。」
「お、ほんとだ!」
「ふふ、店長さんから人少ないからと休憩もらった!」
「井間さん、丁度今日が平日でラッキーだね!」
「萌香の言うとおり、今日は学校の創立記念日で、平日の午後だもんね!」
今日のファミレスはいつもよりちょっぴり賑やかだなとさっきバイトサービスのドリンクバーから持ってきたカルピスソーダーを飲む。
「きぃちゃんたちは、その様子からして買い物?」
「そうなの!萌香がおすすめの映画があるってついでにショッピングもしてきた!」
花沢さんがたくさんの紙袋を指して行う!
「へぇ、映画か!映画も良いけど、僕もそろそろ春服とか買いに行きたいんだよね〜!」
「井間くん草津温泉旅行の時も思ったけど、おしゃれだもんね!」
「確かに芽衣さんの言う通り、黄色と黒のジャケットととか着こなしてたもんね!」
「ふふ、3人とも褒めてくれてありがとう!」
花沢さん、樋野さん、戸野さんはいつもこんな感じだ。ストレートに褒めてもらえるのは嬉しいけど少し照れくさくなるな。花沢さんは服で、樋野さんは本で、戸野さんは小物を買ったとのこと。
「きぃちゃんは、何か買わなかったの?」
「私?私は音楽雑誌買った。」
「あ、今月のBANDOのか!今日そういえば発売だったね、僕も帰り買って帰ろうかな〜!」
「そういえば、表紙にSMerAの洲崎さんが載ってたな。」
「それ本当!?」
SMerAの洲崎さんは僕の憧れのかドラマーで、これは絶対に帰りに本屋に寄って買いに行くと今決意した。
「さすがバンドおバカさんたちね」
「ほんとだよね〜美紅!」
「でもこの前のSiNSilentのライブ良かったですよね!」
3人が盛り上がっている時、ふと、きぃちゃんの耳軟骨と中指をよく見ると紫とシルバーのピアスとリングが変わっていた。今日買ったのかな、前は黒だった気がする。
「あ、そうだ。優にこれ渡しとく。」
きぃちゃんに僕に渡してくれたのは、黄色のピアスだった。
「この前の友チョコのお礼。」
「きぃちゃん…ありがとう!大事にするね!」
何気ないやり取りに、こんな嬉しいサプライズがあるなんて思いもしなくて、カルピスソーダーの甘さと炭酸のせいかな?僕の心が弾んだ。
皆はもうファミレスを出るらしく、僕も休憩終わりでレジ対応をする。
「あ、優。明日、CD借りてた返すね」
「うん、わかった!4人とも買い物楽しんでね!」
ーーーカランカランとドアが鳴り、皆が行ってしまった。
「ありがとうございました〜!またのご利用をお待ちしております!」
僕は4人が使っていたテーブルを片付けて、洗い場に食器やコップをカウンターに持っていく。
「ありがとう、井間くん。あれ?なんだか、いつもより嬉しそうですね」
「はい、店長さんのおかげで!休憩頂き、ありがとうございます!」
今日のファミレスのバイトは一段と頑張れそうだと僕は接客を務めた!
バンドの練習は昨日まで2週間くらいやったんだけど、BlueStaR L!neЯで俺はバンド活動をしているんだが、今日は皆が生徒会やバイトが入ってて練習がない日だ。
春田 奏響はバスケ部の助っ人が終わった後で、今はラーメン屋のバイト中だ。少しでもお金貯めて、バンド活動を豊かにしたいからな。
「いらっしゃいませー!」
お店のドアが開いたから、振り向いて挨拶すると。
「よ。今日バイトの日だったんだな。」
「そーくんだ、やっほ〜!」
幼馴染みでバンド仲間のキーボードの柳 慧とドラムの井間 優が来店客したみたいだ。
「お冷とお手拭きです。」
慧と優のところに並べて置く。
「サンキュ。」
「ありがとう!」
たまに2人が来ると変な感覚するんだよな、特に慧と優は腐れ縁で幼稚園からの付き合いだから余計にかもしれない。
「慧はバイトで、優は生徒会だったんじゃなかったか?」
「うん!ちょうどばったりそこでけーくんと会ってさ!」
「俺も井間も今日は両親の帰りが遅いから、どこかで食べて行くかという話になったんだ。」
「そうか!慧と優、麺の硬さと脂とか普通でいいのか?」
「おう、頼む。」
「僕麺少し硬めで!たまにラーメンって食べたくなるんだよね〜!きぃちゃんにもさっきたまたま会って誘ったんだけど、断られちゃった。」
優が言うきぃちゃんとは、BlueStaR L!neЯのギター&ボーカルの穂川 煌夏さんだ。めっちゃストイックで俺たちはいつも練習に必死だ。
「穂川さんはラーメンとかあまり食べなそうだな!」
「おー確かに、僕たち男子だから女子のことあんまわからないけど、花沢さんとかのお弁当たまに除くけどきぃちゃん少なく見えるし!」
「じゃ悪いが仕事戻るが、2人ともごゆっくり!」
俺は喋りもそろそろ程々にして厨房に行き、店長に注文表を渡しに行って、ラーメンの器を洗って行く。
「また飯抜いてんじゃないだろうな、あいつ。」
「あはは、どうだろうね?この前ファミレスの時はドリンクバーだけだったけど!」
厨房に居ても慧と優の会話は聞こえるわけで、ふと思い出す。草津温泉旅行の時も食べるところ見なかったなと思い出す。
「今度また誘ってみるか。」
慧と優も時々心配するが、俺もたまに心配になるな。夏の合宿で寝るのも食べることも疎かにしてしまう光景見たしな。
「だね!きぃちゃん今なにかしてるのかな?メッセージ送ってみよーっと!」
というか、今まで俺ら3人だけの会話だったのに、いつのまにか穂川さんが話題になることが当たり前になってきたな。
「春田、これ持って行ってくれ頼む!」
「はい!」
俺は出来たてのラーメンをお客さんへと運びに行ったり、注文聞いたりしている内に
「味玉入り醤油ラーメンとネギ増し少し麺硬めの醤油ラーメン持ってけー」
「はい!」
この2つは慧と優のかと、注文表を確認しながら持っていく。
「お待たせ致しましたー!こちら味玉入り醤油ラーメンと、ネギ増し少し麺硬めの醤油ラーメンです!」
2人の前に、ラーメンを置く。
「春田、サンキュ。いただきます。」
慧はレンゲと割り箸を取り出して、スープをレンゲで冷ましながら掬って口に運んだ。
「わぁ、美味しそう!食べる前にきぃちゃんに写真送ろう!あ、きぃちゃんから返事きた!」
優にスマホを見せてもらい、俺と慧が覗き見ると『喫茶店でバイトの休憩中』と紅茶とエプロンの写真付きで書かれていた。
「きぃちゃん喫茶店のバイト中か!いただきまーす!」
優も冷ましながら食べ始めた。穂川さんも大変そうだな、ライブハウスだけじゃなくて、実家の喫茶店の手伝いしているみたいだからな。
「きぃちゃんが接客してるの少し意外だよね!」
「そうだな。でも最初の印象より今なら接客も納得するが。」
「確かに!僕たちの名前ちゃんと覚えてたし、なんだかんだ親しみやすかったよね!」
俺も穂川さんの印象は、クールさと静かさも相俟ってあまり人と喋るイメージもなかった。でも穂川さんと出会った時、ちゃんと会話できたしな。
「きぃちゃんは人と関わりたくないというよりかは、バンドに対して真っ直ぐなだけだったんだなって今ならわかるよね!」
俺も今ならわかる、穂川さんの歌とギターの上手さを実際感じているしな、作詞作曲を頑張っている姿も垣間見てもいるからな。
「はー!ご馳走様、美味しかった〜!」
「ご馳走様、美味かった。」
「おう!」
「春田、もう上がりの時間だから上がっていいぞ。」
「はい!お疲れさまです!」
おつかれーと店長から声を貰ったので、事務室に向かう時。
「そーくん今から上がりなら外で待ってるね!」
優がそう言うので、俺は急いで着替えて荷物を纏めた。お店の裏口から出た。
「あ、そーくん!こっち!」
「バイト、おつかれ。」
「あんがと!」
俺たちはラーメン屋を後に、帰り道を歩き出す。
「ね、これからきぃちゃんの喫茶店に行かない?」
優が面白い提案をする。
「お!いいな!」
やっぱり今は穂川さんもいないと少し変なんだよな。これもいつの間にか俺たちの中で溶け込んでいるんだな。
「どちらでも。」
慧は相変わらず素直じゃないな。
「いらっしゃいませ。と思ったら奏響、慧、優が来た。」
喫茶店のドアのベルがチリリンと鳴り、中に入ると穂川さんが声をかけてくれたが、ちょうど食器を片していたところだったみたいだ。
「えへへ!遊びに来ちゃった〜!」
「いいけど。お席に案内します、どうぞ。」
穂川さん、接客でも学校でもあまり笑わないのが少しあれだよな。
「お冷とおしぼりお持ちしました。ご注文お決まりでしたら、お伺いします。」
穂川さんがトレーと一緒にお冷とおしぼりを持って来てくれた。
「んーとね、僕はプリンパフェとアイスカフェオレにしようかな〜!けーくんとそーくんは?」
「井間はラーメン食った後なのに、パフェ食うのか。俺はホットコーヒーにする。」
「俺はどうしようかな。」
「本日の飲み物はキャラメルラテと桜の紅茶がオススメです。ご飯物がお好みでしたら春野菜のペペロンチーノかキノコとしらすのパスタ。デザートがお好みでしたらクリームブリュレと桜餅餡蜜がオススメです。」
穂川さん笑顔少ないけど、こういう気遣いいいんだよな。バンド活動の時とかもそうだけど、ケーブルとか俺らもやるけど、俺のとか慧の分も率先して整理してくれるしな。
「んじゃ、春野菜のペペロンチーノとキャラメルラテにしようかな!俺まだ晩飯食ってないし!」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
お辞儀をして厨房に行ったみたいだ。しかし本当にレトロで落ち着く店だよな、昼に1回来たことあるけど満席で人気あるのも納得する。
「おまたせしました。お飲み物からお持ち致しました。アイスカフェオレとホットコーヒーとキャラメルラテになります。」
キャラメルラテにはウサギが描かれていた。
「わ!そーくんのキャラメルラテのクリームの部分うさぎだ!超可愛い!」
優が俺のキャラメルラテを激写し始めた。俺もあまりに上手かったから撮ったけど。
「ふふ、良かったわね!煌夏!」
「お母さん。」
穂川さんのお母さんが料理をも持ってきてくれたみたいだ。
「おじゃましてます!」
「春田くん、柳くん、井間くんいらっしゃい!」
穂川さんはちょっと嫌そうな顔をしているのが気になる。
「最近手伝いの時は、煌夏が飲み物やっているのよ!そのラテアートも煌夏なのよ!お待たせしました、プリンパフェと春野菜のペペロンチーノになります。」
「え!そうなの!?」
「なるほど、そういうことか。」
「穂川って本当に器用だよな。」
穂川さん器用なんだけど、性格とかを考えれば、俺たちに教えたく無かったんだな。
「もう、お母さん余計なこと言わないでよ…」
「余計なことじゃないわよ!あなたあんなに頑張ってたじゃないの!」
「……」
穂川さんのお母さんが言っていることも少しわかる気がする。彼女は謙虚というか、会話はしてくれるが、優のように話すの得意派ではないからな。
「少しは自分を認めてあげなさい。それでは皆ごゆっくり!煌夏ももう今日は上がりなさい、手伝ってくれてありがとう!」
お母さんはそう言って厨房の奥へ行ってしまった。穂川さんはエプロンと髪を解いた。
「だって言うのって恥ずかしいじゃん。最近できるようになったばかりだし、まだ全然失敗もするし。」
穂川さんが珍しく拗ねているようだ。
「でも本当に凄いよ〜!ほら、昨日行った有名なカフェアート屋さんと同じくらい綺麗だし!」
優がスマホで見せてきた画像は、隣駅にある俺でも知っているSNSで話題になってた店だ。優はそういうのも好きで、昨日春限定の行くんだと言ってた気がする。
「確かに。俺にもそう見える。」
「飲むのが少しもったいないくらいにな!」
とはいえ温かいまま飲まないのも微妙だしなと、心を鬼にして冷めないうちに飲むことにした。甘さもちょうど良くて美味しい。
「飲み物がやっているということは、穂川がこのホットコーヒー淹れているのか?」
「まぁね。珈琲とか紅茶好きだし、火を通す物意外は私にもやれるし。」
穂川さんは本当に凄いな、努力しているんだろうけどあまり見せるタイプでもないし、好きだからやれると言えるのが凄い。
「ふふ、本当かっこいいなー!きぃちゃんは!」
BlueStaR L!neЯのギター&ボーカルはこうじゃなきゃな!
ーーーくしゅん。バックヤードでウエイトレス着替えてるところだ。
今日はライブハウス午前中やって、午後はお母さんとお父さんがやっている喫茶店の手伝いだ。お昼は混雑するから忙しいけど、15時半以降は手が空き始める。
珈琲と紅茶が好きで、自分でたまに淹れたりするんだけど。と言っても動画で見て真似してやってるだけなんだけど。
半年前くらいに休憩でお母さんに紅茶を淹れた時。
「美味しいわ!ねぇ煌夏、こんなに美味しく淹れられるなら、飲み物やってみない?」というのでやってみたけど、まあ普通に淹れるくらいなら何ともないけど、ウチはカフェアートも女性が特に人気でやるんだけど難しい。
動画やお店に実際行ったりして、合間ぬって両親がいない時に練習するんだけど上手くいかない。両親に見せながらやると2人で騒ぐからやりにくいし、ちょっと恥ずかしいからあまり見られるのは好きじゃない。
最近やっと奏響たちに作詞作曲の相談をするのにも戸惑うのに。私はアールグレイにマーマレードジャムを入れてカップを持って奏響たちがいる席に行く。
「あれ?その紅茶から柑橘ようないい匂いするね!」
「アールグレイにオレンジジャムを淹れたの。」
「確かに、オレンジの香りがするかも。」
ウォーターサーバーから紙コップ取り出して、零れないように紅茶を入れる。
「優、飲んでみる?」
「いいの?」
あまりにも飲んでみたいと顔をしていたから。
「熱いから気をつけて。」
「ありがとう!あ、美味しい!」
「お父さん特性マーマレードジャムだからね。」
私は紅茶を飲み進めていく。
「ね、穂川。明日の練習帰りラーメン食べに行こう。」
慧が誰かを誘うなんてレアだ。
「ラーメンか、私食べるの早くないし、猫舌なんだよね。」
「もしかして、それ気にしているのか?穂川さんらしいと言えば穂川さんらしいけど。」
「えー!?そんなこと気にしなくていいのに〜!」
私は昨日のバンド練習の帰り道、再びラーメンに行こうと言われて断ったんだけど、優と奏響に手を引かれて、強制的に行くことになった。
3人に連れて行ってもらった、ラーメンは美味しかったけど、舌をやけどしてしまった。
こんにちは!この作品を読んで頂き
誠にありがとうございます!
短編のつもりが、盛りだくさんにしてしまいましたが、楽しんで頂けると嬉しいです!
よろしくお願いいたします!