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Episode-23~湯けむり少し恋けむり~


ライブハウスを後にして、私たちは美紅と芽衣と萌香と駅前に合流して、今は夜行バスの中にいる。


ライブの疲れからかみんなは寝ている。


バスに乗った直前はライブの感想で盛り上がっていたのに、今は静かだ。


私は寝付けずで、窓の外を眺めていた。


あのワンマンライブ、私が成し遂げたんだよね。両親にさっき入口で会って、荷物と引き換えに、お父さんに「凄いじゃないか!」と頭を撫でられて、お母さんに「本当にいいライブだったわ!」抱きしめられた。


これが興奮が覚めやらないと言った感じかもしれないな。


「寝れないのか?」


「奏響。外を見ていただけ。」


私は耳に付けていたイヤホンを外した。


「良かったもんな、あのライブ。」


「奏響が満足したなら良かったよ。」


「穂川さん、顔に出ないよな…本当に凄かった。ラストも、正直嬉しかったよ。」


奏響らしい、素直に言ってくれることが。


「あの時誘ってよかったな〜」


…あの時、放課後か。私が教室でアコギを弾いているところを奏響に見られたんだっけ。


「俺もう少し寝ようかな。穂川さんもちゃんと寝なよ?」


「うん。お休み、奏響。」


奏響が席に戻ったのを見届けて、私はイヤホンを耳に付け直した。インディーズ契約、ついにしちゃったな。


もっと曲や歌詞の進化をさせなきゃな。あの綺麗な星空の先、どこまでもBlueStaR L!neЯを届けたいな。


「き、、きぃちゃん!」


「ゆう?」


「うん、僕だよ!おはよう!」


はっと目が覚めると優…顔近かった。


「お、おはよう。」


「もうすぐ着くよ!」


さっきまで暗かったのに、窓の外は明るく晴れていた。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。


「寝るの遅かったろ?大丈夫か?」


「うん、大丈夫。」


私は手荷物をカバンに詰める。バスが目的地に着いたので降りると白の世界。


「わあ〜!真っ白!」


「ね!綺麗だね!」


「本当に!」


美紅、芽衣、萌香がきゃっきゃと明るいトークをしている。


「眩しいな。」


太陽に反射されて白が強調されている。でもこの澄み渡った空気は好き。


「寒いねぇ〜!」


「でもいい雰囲気だよな!」


「和を感じる温泉街だな。」


私たちは草津に来た。対バン終わったら温泉行きたいと話をしていたけど、タイミングがなかなか無くて、冬休みなのでライブの勢いで来てみた。


大きい荷物を預かって貰うために、宿に向かった。宿にチェックインして、手荷物だけを持って、私たちは外に出た。


「ね!まず何する?」


「ね。もし良かったらここ行かない?」


「煌夏ちゃんから案が出るなんてびっくり、どれどれ?」


スマホを見せると皆賛成してくれて、早速向かうことにした。


「じゃじゃーん!どう!?」


「わあ!美紅ちゃんの赤の浴衣似合う!!」


私が提案したのは着物と浴衣をレンタルするところ。こういうのは雰囲気が大事かなと思って提案したら、喜んでくれたみたいで良かった。


寒いと言っても、今日は晴れてて比較的に暖かくてツイている。


「あ!きぃちゃんたち、こっちこっち~!!」


黄色の浴衣を着ている優のところへ向かう。奏響は紺、慧は深緑。美紅は赤、芽衣はピンク、萌香はオレンジのそれぞれ浴衣を着た姿、写真ももちろん撮った。


「煌夏ちゃん、紫似合うんだね?」


「煌夏、なんでも似合うよね!この前の水着とか浴衣も超可愛かったし!」


「凄い羨ましい!」


なんか、恥ずかしいな……目線だけ上を開けると奏響、慧、優が楽しそうに会話してる中、ふと目線が合って、笑ってくれた。


レンタル屋さんを出て、湯畑や熱乃湯、西の原公園を回って、草津の熱帯圏でカピバラなどの動物を見たり、おさるの湯もみ処 おさ湯も行った。


カピバラとさるがめっちゃ可愛くてヤバかった。


「ん〜!結構回ったね!?」


背伸びしながら言う美紅。


「だね〜!」


優もまだ元気そうだ。西の原通りで食べ歩きをしながら、次の行くところプランを立てる。


「穂川、お前食べなくていいのか?」


慧がこちらを振り返って言う。


「大丈夫、要らない」


私はこの写真たちでお腹いっぱいなのだ。


「きぃちゃん、あんま食べるところ見ないよね〜」


温泉まんじゅうを食べながら言う優。口の端に餡子が付いているから、口の端を指さしといた。


「煌夏、細いもんね!」


美紅が後ろから抱きついてきた。


「ライブはあんなに頼もしいのにな!」


奏響、それは余計の一言という。


「「ねー!」」


芽衣と萌香が同意のように笑う。私はもう何も言わないと遠い晴れた空を見上げた。


白い吐息が登って行くのを眺めていたら、何か暖かい物が触れた。


「優?」


「ふふ、あげる!」


優がくれたのは、はちみつティーだった。


「少しは体に入れた方がいいよ!」


「……ありがとう。」


「うん!僕も温かいのが飲みたかったからさ〜!」


暫くはまたあちこち見て回って、レンタル屋さんに浴衣を返して、喫茶店で今は一息中。


「温まるね〜!」


「ほんと!でも浴衣着れて良かった!!」


各自食べたり、飲んだり、喋ったり。私は写真を見ていた。


「穂川。これやる。」


ふと隣に座っていた慧が差し出されたのは


「絆創膏?」


「足痛いんじゃないのか。」


…慧も優も、優しすぎるんだから。


「ありがとう。」


しかも、皆にバレないように渡すとか気遣い上手すぎる。


「慧も優も、穂川さんに皆お返ししたいんだよ。」


喫茶店を出ると、奏響が隣に立っていた。


「奏響?」


「あのクリスマスプレゼントも、ライブのラストのもほんと嬉しかったからさ!」


なんて顔をしたらいいのか、わからないよ。皆に置いてかれないように後を追った。


宿に戻って、荷物を受け取り部屋に向かった。


「おー!広いねぇ〜!!」


優が部屋を開けて反応する。


「別々も考えたんだけどさ、こういうのもいいかな?って思ってね!!」


美紅曰く7人泊まれる部屋みたいだからとても広い。


「いいんじゃないか?楽しそうだし!」


「先に露天風呂行く?」


「行こいこ!」


私は荷物を端に寄せて、入浴セットとタオルをカバンから探して持つ。


「煌夏ちゃん、行こ!」


「芽衣。うん。」


芽衣たちの後を追った。


「じゃ、また後で。」


「うん!柳くんたち、後でね〜!」


ーーーカコン


「あったか〜!」


「足伸ばせるのいいね!」


「ね!もえ!」


頭と体を洗って、私も湯船に入る。


「なに?」


視線を感じて、目を向けると美紅、芽衣、萌香がこちらを見ていた。


「ううん、いや。」


「ごめんね。煌夏ちゃん、絵になるなって思って!」


「気にしないで、煌夏さん!」


「???」


よくわからないままだけど、まぁいいやと湯に温まるのに気を向けた。


「あっつい、私もうギブ!」


「はふ、私も!」


「私たち、もう出るけど煌夏さんは?」


3人はもう上がってしまって、私は湯船の中。


「湯けむり、温もりに、心が溶ける。」


寒い空気の中のほかほかな湯に、落ち着きながら、つい口ずさむ。


ーーーカラカラとドアを開けると湯気で真っ白の光景だ。


俺たちは中に進み、それぞれ頭洗ったり、体洗ったりして、湯船に浸かる。


「はぁ〜きっもちい〜!!」


「井間は、この時間なっても元気だよな。」


「けーくんが大人すぎるんだよ〜!」


隣の樋野さんたちの声が聞こえる、あっちも楽しんでいるらしいなと思うと俺も楽しい気分になる。


「あれ?きぃちゃんは?」


適度に温まって部屋に戻ると、優の言う通り穂川さんの姿がなかった。


「やっほ、男子たちおかえり!」


「煌夏ちゃんなら、まだお風呂だよ!」


樋野さんが答えてくれた。


「そうか。」


「花沢さんたちは集まって何観てるの?」


「ふふ!秦さんから貰った、クリスマスライブの映像!」


まさかSiNSilentの秦さんからそんなもの貰ってたとは、花沢さんは凄いな!


「お〜!綺麗に撮れてるね!」


「だよね、私もそう思う!」


戸野さんもすっかりこっちに馴染んだな。穂川さん春の時は1人が多いイメージがあったのに、俺たちとバンド組むことになるなんて、穂川さんと組む前の俺なら信じられないんだろうな。


「ね!男子たち、煌夏のことどう思ってるの?」


「「ぶっ!?」」


水を飲んでたら、花沢さんの一言に吹き出してしまいそうになった。


「ケホケホ…!」


「ふふ、3人とも落ち着いて」


本当、勇者だな。花沢さん。


「春田くんはともかく、そちらのお2人さんは、ねぇ?」


「見てたらわかるよね」


「うんうん!」


花沢さんと樋野さんはともかく、戸野さんまで気付くのか。さすが女子だな。


「煌夏、私から見ても綺麗だと思うし、この歌ってる姿かっこいいしさ!」


「煌夏ちゃんは気づいてなさそうだけどね」


「そうだね。煌夏さんを見る限りは」


俺もちょっと気になってはいたんだけど、なかなか難しいんだよな。


「あはは、まぁ分かっちゃうよね?」


「井間くんが1番わかりやすいまである!」


「あそこまで気遣いできる、井間くんと柳くんには感心するけどさー」


「俺は。」


「慧?」


「まだこのままで良いと思ってる。」


「僕もなんだよね〜!まだまだバンドとしても、友達としても楽しみたいしさ!」


「優。」


2人は優しいからな、気遣いも。何年も幼馴染み続けてられている俺らだからな。


「そう!ならいいけど、煌夏泣かしたら…私許さないから!!」


花沢さん。


「美紅…」


「うん!花沢さん、約束する!」


「あぁ。」


はぁ、慧と優、穂川さん、俺も…長い間、仲良く居られるといいな。


「そーくん!」


腕に抱きついてきた、優。


「大丈夫だ。お前が心配することはない。」


軽く睨む、慧…まったく。


「わかったよ。」


こればかりは、2人を信じることにしよう。


「煌夏さんも罪な人だよね。応援ソング普通に歌ってくれる優しさもあるし。」


「確かに、これで惚れない人は多分いない。」


「ふふ!煌夏ちゃんのファンクラブあるくらいだもんね!」


女子たちがきっと指しているのは、花沢さんが持っているスマホ、クリスマスライブの穂川さんが歌って、ギター弾いている姿。


「知ってる?ファンクラブの大半は女子なんだよ!」


あはは、さすが穂川さんだな。


ーーーコンコン。


「あ、きぃちゃんかな?はーい!」


優がドアを開けに行くと、穂川さんだった。


「…おまたせ?」


「おかえりなさい、煌夏ちゃん!」


「何してたの?」


「ふっふっふー!クリスマスライブを観てたんだよ!!」


「そうなんだ。」


いろいろ話していたら夕飯の時間になった。


夕飯、多くない?


食べ物に関しては、男子たちに任せよう。とちまちま食べることにした。


「穂川、食ってるか?」


「慧、食べてるよ。」


「あんま減ってるように見えないのはなんでだろうね〜」


食べてるってば…食べる専門は他に任せてたら、夕飯は無くなってた。


食べ過ぎた。夕飯の後はトランプやったり、話したりしてる内に夜は深まっていて。


みんなは寝息立ててた。私は起き上がり周りが寝てることを確認して、財布と携帯と部屋の鍵1つ持ってホテルを出た。


「…きぃちゃん?」


はぁ、と息を吐くと白く上って消えて行く。寝れないから抜け出して来たけど、星がよく見えるな。


良い詩でも浮かびそうだ。ホテルから近い川辺に来た、川の水を触ると冷たいけど、室内の火照りが解けて行く。


「楽しい温かさの火照りを

綺麗な川の流れに 冷まされて

眠い目は 夜空の美しさに

忘れていた 何かが零れ落ちそうだ。」


開けて何も無いところに来ると、月と星空がこんなに眩しいなんて知らなかったな。


「こんなに光が強い月星を見たら

たくさんの希望と願いが

自然とこの胸の中を温めてくれている

夜のパレットに そう描かれている」


「きぃちゃん!」


「!?」


この声は、優。


「なに?」


「いや、トイレ行ってたらきぃちゃんがホテルを出ていくの見たからさ。追ってきたんだ。」


優は人の事よく見ているからな。ライブでも部活中でも周りを気配るのが上手だ。


「大丈夫だから、部屋に戻りなよ。」


「いやだよ、きぃちゃんを置いてくなんて僕できないよ。」


川の水冷たいな。空気もこの水も透明なのに存在してるとわかるな。


「楽しかったね。旅行。」


「そうだね!楽しかった!」


「3日後、また練習だよ?」


「はは、頑張ろう!」


「うん。」


星がたくさんあって、今にでも零れ落ちてしまうんじゃないかと思ったら


「あ、流れ星」


「わ、ほんとだ!?」


一筋の光に込めた願い、どうかBlueStaR L!neЯをその光の先へ行かせて欲しい。


「きぃちゃん、何かお願い事した?」


「うん。でも秘密。」


「えー!」


明るい優に後をついて行って、もうホテルは目の前。


「穂川!」


「穂川さーん!!」


「奏響、慧。」


「良かった、部屋に優と穂川さんの姿がなかったから心配してたんだ!」


「たく。1人で夜の外に行くなよ、穂川。」


「なんで、私?」


「前の夏の合宿もそうだったからね!」


「あはは!きぃちゃん逃げ場ないね〜!!」


はぁ…深い夜ももう明けは近い。暗い空が希望に溢れていた。


私たちはお土産を買って、新幹線に乗った。


「カピパラ可愛い」


「それ大きいぬいぐるみだね〜!」


熱帯圏でのカピバラがあまりにも可愛くて、大きなぬいぐるみを見つけて、買ってしまった。


「おー!このぬいぐるみもふもふだ!」


「うん。」


「楽しかったね、煌夏!」


「うん。企画してくれてありがとう、美紅。」


「また、何処か行こうね!煌夏ちゃん!」


「次は、熱海とか行きたい。」


「煌夏さん!是非!!」


「穂川、海好きだな。」


「確かに、海はあの開放感がいいよなー!」


そんな賑やかな話をしていたら、もう東京にすぐ到着してしまった。


……To be continued


エピソード23を読んで頂き

誠にありがとうございます!


湯けむりすこし恋けむりと甘酸っぱい青春を

楽しんで頂けましたでしょうか?


次回のエピソード24は

9月11日木曜の夕方17次回の投稿です!

よろしくお願いします!

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