Episode-22 ~ 遠く晴れた冬空の向光側 ~
カーテンを開けたら、今日も曇りひとつなく透き通った青い空が見れた。
BlueStaR L!neЯ、初ワンマンに相応しい朝だ。
少し早起きしたから、夏休みから日課になっているランニングをしに、外に出た。
道中で写真撮りながらだから、ほぼウォーキングに近いけど。
昨晩、両親とクリスマスパーティーをした時に、両親のクリスマスプレゼントにBlueStaR L!neЯのクリスマスワンマンライブのチケット渡したら、「絶対行くな!」「楽しみにしてるわ!」と笑って受け取って貰えた。
久しぶりにあんなにドキドキしたかもしれない。いつもより少し落ち着かなくて、ミニチョコパフェをまた食べに行ってしまった。
そのままCDショップ、楽器屋さんを彷徨っていたら、いつの間にか外は少し薄暗く、街灯が少し照らしていた。
私は急いで帰って、着替えて、メイクと髪を整えて、最近お気に入りのピアスとリングをして。ギターとアコギのケース…バックステージパスがこんなにも増えてとつい見とれてしまったけど、それを持って家を出た。
「頑張って来い!」とお父さんに背中を強く押されながら。
SiNSilentが見えると、奏響も慧も優だけじゃなく、美紅、芽衣、萌香がもう来ていた。
「おはよう。みんな早いね。」
「穂川がマイペースなんだよ。」
スマホ時計確認するけど、全然時間ありますけど?
「ワンマン楽しみにしてたんだから!ね!」
「うん!楽しみすぎて何回もCD聞いちゃった!」
「えぇ、この時を待ちわびてたわ!」
期待してもらえるのは嬉しいけど、いつもより3人のテンション高いな。SiNSilentに入るとBlueStaR L!neЯをイメージした内装と物販がある。
新デザインのTシャツ、リストバンド、バングルライト、タオル。今回は、私と奏響のイメージに沿ったピックキーホルダー、慧のメンバーカラー深緑のキャップ、優の髪色をイメージしたクリーム色トートバッグがある。
あと、購入特典に煌夏、奏響、慧、優をイメージしたミニポプリが貰える。
「わー!わー!どれもかっこいい!!」
「しかも普段使い出来そうなのがいいよね!」
「ピックキーホルダー、絶対欲しい!」
物販はどうやら盛況のようで列が出来ている、ステージの方に進むとBlueStaR L!neЯのステージ。
クリスマスで使われるライトとか、星のように天井から吊るされている物などがあって、ステージにはSTAR IN SNOW STATIONと大きく書いてある。
「穂川さん。」
「ん?」
いつになく、奏響の表情は真剣だった。
「俺さ。「わかってる。奏響、慧、優が何を言いたいのか。ごめん、私が足踏みしていただけ……もう迷っていないから、安心して。」
私は、奏響にそんな顔させるなんて。慧と優にも……私はダメなリーダーだね。
「穂川。穂川がいいなら良いんだ。」
「無理、してない?足踏みって言ってたけど、その足踏みは恥ずかしいことじゃないよ?
きぃちゃんだって、僕たちだって迷うことあるし、不安に思うのは当たり前で、前に進むのはちょっと怖い。きぃちゃんだけが我慢しなくていいんだよ。」
「うん……ありがとう。けど、ここに停まってちゃダメなんだよね。BlueStaR L!neЯは、この先の空の向こう側を駆け抜ける。
私は、大丈夫。」
そう伝えると、奏響、慧も優も、安心した顔で笑った。
「時間だね。準備、しよっか。」
私たちは楽屋に行き、それぞれ楽器のメンテナンス、チューニング、ストレッチなどして過ごす。私は観客の1番後ろにいた。
ここにいると自然と気合いが入るんだよね。
私のジンクスみたいな感じかも。
いくつもバックステージパスが貼られたギターケース、いつかこのケースの色が見えないくらい、音楽の景色をキミたちとステージに上がってマイクの調節、ケーブルの整理を終えた。
「円陣やんないのか?」
「お!けーくんにも、ついに円陣が染み付いたか〜」
「まぁ、悪くない。」
「慧が珍しく素直だな!?でも気合い入るよなー!」
「まぁーねぇ〜!じゃ、きぃちゃんお願い!」
優の発言から始まった、この円陣は今やライブ始まる前の風物詩。
「このワンマン、一生忘れない最高のステージにしよう…青い星を流れる熱狂をっ!!」
いい顔してるな、本当。頼もしいな。
「「「「BlueStaR L!neЯー!!!!」」」」
学校の体育館の赤い幕が上がると優がシンバルを鳴らして、ペダルを踏むそこに奏響のベースと慧のキーボードが加わり、私はまだイヤモニを付けない、この好きな瞬間を1つの音も聞き零さないように。
目を閉じて、耳を澄まして。私は弦を弾いて、この呼吸に全て込める。ベース、キーボード、ドラムの音がピタッと止んだ。
「ギラギラと眩しい太陽
あんなに輝いてて
暑くて存在感があるのに
手を伸ばせば遠そうで」
今回はアカペラからスタート。
「バチッと弾かれて
手を引いてしまいそう
目を逸らしてしまえば
逃げてしまえばいいのかもしれない
でも 負けたくないから
ここで諦めたくなんてないから」
ここでドラムがリズムを刻み、ベースのズンとした音圧とキーボードのまるで教会があるような。少し冬らしさがありつつ。ShinE L!ghtの温かさを感じて欲しい。
「例え 泣いてしまっても
太陽が雨から虹へと変えてくれるはず
だから キミたちの心は
ボクたちが燃やす 」
ShinE L!ghtが一発目の時の癖があって、歌いながらイヤモニを耳につける、音がズレちゃうから。それをわかっているのか、序盤は3人は観客にはほぼわからないくらいの少し遅めになるんだよね。
でもそれくらいこの曲には思い入れがあって。面白いよね、何も言ってないのに。
「この鼓動が 高鳴り 熱く輝くまで
何もせずにいられない、そんな一歩を
この熱い想いを聴いたら、最後だ。
ここで止まるなんてもったいない。
手を翳せば光が、暑くさせる。
青く輝き 赤く燃えて
緑鮮やかに 黄の輝きに
ボクたちはー 輝く光になれるんだ。」
『きっと、強く。』
このマイクを握って、あのスポットライトがかかる瞬間だけ、私は特別になれる。
そしてさっきとは打って変わって調和が嘘のように、狂い始めるドラムが叩く速度とおんりょうを上げる。キーボードのピアノとシンセがぶつかる音が主張する。ベースのこれまでに感じたことないかもしれない、ズンというよりズッシリとした感覚が床から伝わる。
ギターも負けないとペダルを踏むと同時に弦を強く鳴らす。
「今日も高い壁が立ちはだかる
先の向こうは何も見えない
でもわくわくしないか!?
なにかが始まる予感
そんな希望の圧が鳴るんじゃないのか!?
鳶が大きく鳴いて 高らかに自由に
飛び回っているぞ 大きく翼で
僕もそっちへ行きたいと
飛び出したいと 鳴ったスタートの笛だ
「その壁を蹴り壊せば
閃光の道が開けたぞ!『YES!』
さぁ、ここから走り抜け!『GO!』
僕は『僕だと』強く主張しろ!『Year!』
鼓動が激しく揺れ動く方へ
聞こえるだろ この心音がザワめく
ここで何もしない奴は負けだ。
下を向いている奴は
あの広い空を見たら
きっとどうでもよくなる
後ろの影に怯えることなく
その目の前に、まっしぐらに『Wow!』
壁を越えて『GO!GO!』
その暗い影を通り過ぎて
ーさぁ、いまだ!
その白さに 自由なカラースプレーを
振り撒いて キミの虹を描いてしまえ
その缶の中身を空っぽにしてしまえ
先の未来は それでは終わらない」
この不協和音の熱狂は、まだ終わらない。ベースがグリッサンドが聞こえ、重音をさらに重ねる。シンバルも電子音も、私のコーラスがFLASH BreaKeЯから次の曲へと繋げる。
「衝撃のビートは ズレた音が吠える」
ギターの歪んだリフがガツンと入って、時に不協和音気味のコード進行で緊張感を会場を煽る。
「『シンバルが』裂く 夜を切り開くぞ」
優が叩くシンバルがバチバチ鳴り響く、タイトでパワフルなビート。
「手拍子、手拍子ー!!」
「暴れたりていないだろう?」
変拍子やオフビートを織り交ぜる。
「叫べ!『叫べ!』壊せ!『壊せ!』
この不協が制圧する和音で
心の鎖を 全部ぶち破れ」
私は鋭いソロやノイジーなフレーズで攻撃的なギターフレーズを弦で弾く。
「手が傷だらけで 靴をすり減らしても」
キーボードは不気味なシンセ音やグリッチっぽいエフェクトでカオス感を強調。
「モノクロの『鍵盤が 』そのカオスは
やがてこの世界は 物足りなくなる」
こんなにめちゃくちゃな音なのに無機質さが効くのは何故だろうか。
「『重低音が』 地面を揺らし続ける!」
奏響がドゥーム感のある重いベースライン。スラップやピック弾きでパーカッシブなアタック感を加える。
走れ!『走れ!』燃えろ!『燃えろ!』
Ride or Die'Sの壁を突破だ!」
優のドラムの加速するリズムに煌夏のギターと奏響のベースの強い音と最後が慧オルガンの独特さで、3曲の〆に余韻を会場に残した。
「ShinE L!ghtとFLASH BreaKeЯとRide or Die'S、3曲続けて聞いていただきました。
こんばんは、僕たちBlueStaR L!neЯのワンマンライブSTAR IN SNOW STATIONにようこそ。序盤からエンジンかけましたか、ついてこれてますか?」
観客の歓声が聞こえる。
「メンバー紹介行きます。キーボード、柳 慧!」
シンセとオルガン、サンドグラスが見えるようなトリプルキーボードでしか出来ない音が会場に響く。
「こんばんは。全力でやるから、会場と配信の全員覚悟しとけよ。ドラム、井間 優。」
どこかで聞いたことある、私の即興曲Parfait and Chocolateのワンフレーズを弾いた。よっぽど気に入ったらしい。
「こんばんは〜!僕たちと甘ーいクリスマスライブの時間にとろけてってね〜!ベース、春田 奏響」
FLASH BreaKeЯのサビ前を弾いて魅せた。ここのベースのスクラップがめっちゃかっこいいんだよね。
「こんばんは!3曲でバテてないだろ?」
観客から見えるバングルライトを振る姿と声が聞こえる。
「お前たちはまだ!もっと!もっとだ!まだまだ盛り上がれるだろう!?」
奏響の煽り言葉に、会場が応える。
「そのテンションでよろしく。BlueStaR L!neЯのギター&ボーカル、穂川 煌夏!!」
ShinE L!ghtとRide or Die'Sのミックスフレーズを弾き終わると、会場が拍手に包まれた。
「「「煌夏ー!!!」」」
赤のバングルライトを振る、美紅、芽衣、萌香が見えた。3人に軽く手を振ると周りからもきゃっきゃっと声がちらほら。
「?」
「ひゅ〜♪かっこいい、きぃちゃん!」
「さすが。」
「いいね、魅せつけてくれるな!」
「…奏響がFLASH BreaKeЯやったから。」
まったく、この人たちはすぐ茶化すんだから…
「配信側楽しんでますか〜?」
配信が映っている画面見るとペンライト振るアイコンがたくさんコメントに表れる。優と奏響が配信者に向かって手を振っている。
「まだまだだからな。」
「さて、次行きますか!」
「外は寒いけど、青い空には太陽が情熱を注いでいる。」
慧の神聖なる電子音と奏響のベースが刺激で爽快感の風が吹き込む。
「この曲は、常に進化し続ける。私たちが成長し続ける限り…BeyonD the BluE。」
私がギターを鳴らす、そこから優が会場の熱を上げる。
「青い空を描いて見た夢へと
手を伸ばすのに 澄んだ青は
高くて遠い強い光は あの眩しくて
目を逸らして瞑って 僕は諦めてしまいそうだ」
ボーカル煌夏から始まり
『だけど、「僕は」僕らは諦めたくないから』
煌夏、奏響、慧、優のコーラスが入り
「どこまでも奏で続ける ギターの弦を
遠くまで響かせる 強くこっちだと合図を出す」
煌夏がギターサウンドを奏で
「重低音の圧が織り成すベースは
優れた強い道へと補強して」
奏響がベースの振動を伝えて
「ペダルを踏み続けて
スネアとシンバルを無邪気に
慧眼なリズムが目印だ!」
優が楽しそうな軽やかなリズムを叩き
「たとえ鍵盤が崩れそうになっても
煌めいていた あの夏を取り戻そう。」
慧がシンセでこの熱を包み込む。
「仲間がいる『YES!』 太陽がある『YES!』
暗い夜の裏には 月が満ちて輝き
どんな嵐が来ても 星は消えない
『オー!オー!』一緒に歌えば、心の光が
『Shine on! Shine on!』あの青い空を
『僕らの腕に引き寄せるんだ!!!!』」
夏の太陽は日が長いと夏の太陽が弾ける、ギターのギュインと会場に鳶のような勢いが纏う。
そして、RiNG SuNRaNが弾ける。
輪を広げる 音楽は風に流されて
太陽のように走り出す
勇気をくれる『YES!』
友達と この熱を『絶やすな』
君たちの心の輪まで
その炎が周りに巡って
さあ 手を挙げて
叩こう!『タタン!』叫ぼう!『Year!』
ここでは それが許される!
夢を追いかける、最高のステージへ
『ボクらは、太陽の輪を追いかける!』」
ベースの振動が強く地面から伝わる。
「まだまだ、夏は終わらないぜ!?」
「ほらほら〜置いてっちゃうよ♪」
「もう少し俺たちと夏を楽しもう。」
「ドラムの勢いに負けちゃダメだよ!」
ーーBAN!BAN!ステージから白煙と爆発音が響く。
「Watar ArM BANG!!」
エフェクターでふわっとした空気が水を纏うようなキーボードの音。
「僕らは探してた、こんな熱い場所を
照らしてくれるスポットライトは
なかなか無くて」
私は冒頭を歌うが、なんか伝わる雰囲気がもうなるようになれ!!
「「こんな最高潮も得られないまま」」
ギターとベースに火花が散る弦捌き。
「「「「ーーーだけど、そんなところで終われるなんて、あるわけないだろ!」」」」
これこそ音楽の化学変化かもしれない。急に起きた事なのに、練習してたような一体感が奇跡が生まれる。
「水鉄砲に負けない、熱い炎を燃えあげろーー!!」
ドラムのタムとバス、キーボードのピアノがぶつかり合い、ふわっとギターとキーボードのコーラスがシャボン玉がぷくぷくと浮き、スポットライトとコントラストが映える。
「BAN!『BAN!』撃ち抜けろ
あの空まで星まで届くまで
BAN!『BAN!』行ってしまえ!!」
ドラムが激しいリズムを刻む
「いっくよー!」
「「「「せーの!」」」」
ーーーバン!と白煙と爆発音が最大に放たれるが、まだ楽器の音は終わらない。
「会場のみんな〜!配信の皆も手を高く伸ばして
、さぁもっと会場を熱くしよう!!」
「BeyonD the BluE、RiNG SuNRaN、WateR ArM BANGをやったが、いけるかー!?」
「「手拍子!!せーの!!」」
優と奏響のエネルギーがBlueStaR L!neЯとこの会場や配信まで繋げる。まだまだ燃料は尽きない。
「手拍子から始まる曲といえば!?」
「『Colors LuckDaYー!!』」
お客さんからこのタイトルを言って貰えるなんて嬉しい。
「鮮やかな色とりどりの道を
駆け抜けてみた もっと遠くへと
階段を駆け昇る『YES!YES!』
坂道がさらに加速させる
風は微かな潮風がまだ温かく
気持ちを晴れやかにする『YES!YES!』
こんな1日があってもいいよね!
好きな曲聞いて、僕たちみたいに歌って
ハッピーな日にしてしまえ!『Year!Year!』
その希望の線は青い星の光になる。」
もう奏響も慧も優も、自由すぎるな!
「そのまま自転車で、駆け抜けよう!」
TR!BE L!NK DR!VEー!」
「そうだ!みんなタオル回しちゃえ〜!!」
「暑い夏の視線が、冷めた熱を起こす
あまりの天気の良さに
出かけてみようと思い立って
Tシャツと短パンに着替えて
キャップを被って 自転車を走らせてみた
公園の緑の多さに
少し自然のエネルギーを貰えた
さらに自転車のペダルを強く踏んだ。
途中で寄り道した
駄菓子屋のラムネが甘くて美味しすぎた
はじける炭酸にリフレッシュされて
吹いた風で髪がなびいて
少しの嬉しさが
チャレンジの力に変わった。
例え途中で止まって
雨宿りに 本屋で立ち読みしたり
コンビニでアイスを買ったりしながら
また晴れた日に その足で何度でも
走れ!『走れ!』ペダルを踏み続けて
自分のリズムに合わせて
どこまでも 遠い場所に向かって
『TR!BE L!NK DR!VE!』
それでいいんだ!」
ーーージャジャーン!!ドドン!!
「はぁ〜5曲は、やり過ぎちゃったかな?」
「流石に、休憩するか。」
「観客の人もみんな座ってくださーい!!流石に水飲みたいでーす!」
各自汗拭いたり、水飲んだりする中。
「ねぇ、きぃちゃん!」
「何、優。」
「昨日のやつ歌ってよー!」
「昨日のって何を?」
「ミニチョコパフェの歌!あれ僕好きでさ〜!」
「え、Parfait and Chocolate?」
エレキギターから後ろにある、アコースティックに変える。
「みんなも聞きたいよね?きぃちゃんの歌!」
会場が異様な盛り上がり…
「…優と皆がいうなら」
弦をティロリン、ティロリンと鳴らして、フィンガーノイズを効かす。
「とろける甘さの中に」
優が手拍子して、それに釣られてみんな手拍子を始める。
「パリパリとコーティングされたチョコ
甘さと苦味が、口の中をわくわくさせる
さらにスプーンが行くと、サクサクとした
アーモンドとチョコムースが
私の悩みまで溶けてしまうー。って感じの、即興曲ですが。」
観客から温かい拍手。
「ふふ、やっぱ楽しい曲〜!あとね、あれも聞きたい!」
「ああ、SunSet Glow Wayか!」
「井間、お前本当に好きだな。」
「え?だってけーくん、きぃちゃんのアコギの曲と言えばでしょ!」
ちょうどアコギ持ってるから、そのまま弾く。
教室の窓から夕陽が差し込むような、そんなアルペジオ。
「ある夕陽が差し込むと
眩しい輝きに 影が生まれる。
不安や葛藤が、ひそひそと凪いでいる。
その時間はきっと大事な時間。
目をつぶって深呼吸をすると
温かで涼やかに響き合う。
そして、開けるとまだ太陽は輝き続けている。
きらきらと、輝く空
オレンジ色の空、甘くて酸っぱい味が
僕の心は、安らかに眠りにつく。
明日の光、どんなに暗い夜が
この先に沈んでも。」
ゆらゆらと揺れる赤のバングルライトでお客さんが応えてくれている。
「明日の光、どんなに暗い夜が
この先に沈んでも。
月の光が寝ているあなたを癒して
目を覚ます頃には、朝日が昇る。
例え雨が降っても、緑が潤うように
心にも潤いを与えてくれる。
今はまだお休みが、必要なのかもしれない
だから、慌てなくて大丈夫。
ずっと、あの太陽が見守っている。」
再び観客から温かい拍手が飛び交う。
「ありがとう、きぃちゃん!」
「さすが、上手いな。」
優はともかく、慧が珍しく素直。明日雨とか嫌だな。
「胸にグッとくるねー!」
「それは光栄だね」
奏響、慧、優も楽器を座ったまま構えている。
「じゃ、このままORANGE PIERROTの世界へと来てもらおうかな?」
アコギをSunSet Glow Wayをそのまま赤からオレンジにライトが変わりORANGE PIERROTのイントロへ繋げる。
ハロウィン用途は違って、落ち着いた秋風が吹くような穏やかな雰囲気がベースとオルガンが作り。シンバルがさわさわと明かりを灯す。
「いつもと違う景色に、僕らは目覚めた。
鮮やかな音色によって、招待された。」
私は冒頭をカッティングと弦を弾きながら歌う。
「7弦が静かで爽快に葉音が鳴って。」
スライド・グリッサンドで歌と奏でる。
「リズムとサウンドが気分を2倍明るくする!」
優がシンバルとバスをリズミカルに叩き、スティックを回しながら楽しげに歌う。
「5弦が波を起こして キミを静かに攫って行く!」
奏響のベースがアップビートでグルーヴを効かす
「カラフルな音が3階段も駆け抜ける」
慧がピアノ音とシンセにエフェクターを絡ませてグリッサンドを手で流して、その場で回わる。
『夜に魔法をかけて 温かい音色へと
この赤のスポットライトが
僕たちの音の魔法に
キミは光放ち もうかけられている。』
スポットライトはひとつだけ黄色いライトが差し込む。キュッと音がして
「深い夜を、まだ上着が外せない。
光が来て、電車が来たとわかり
扉が開いたから、空いている席に座る。」
静かなアカペラから、少しずつリズムが刻まれる。
「ガタンゴトンと進んでいく電車。
疲れた夢にうたた寝を委ねて
進む道は暗くて、遠い。
でもきっとあの月は
僕の頑張りを見ている
キミを輝かせるスポットライトを
浴びせることを 待ちわびている。
今はまだおやすみと寝ているだけ。
明日は元気な空へと導いた
だから、もう大丈夫…TRAIN MOON'sでした。」
さっきまで夕焼けだった会場が、星空のような光景が広がる。
「はぁ、もうすっかり夜になっちゃったね!」
「そうだな。」
「さっきまで、眩しい夏!って感じだったのにな!!」
「残りもあと、3曲かな。」
「早いねぇ〜!」
会話しているとドライアイスの白煙がステージを冬へと変える。
「季節も早い、この前まで夏合宿してた気がするのにな。」
「日誌もあと僅かだったね!」
「もう12月25日のクリスマスだもんね!」
「僕はね、家族でご馳走食べたんだよー!けーくんは?」
「双子の妹に、マフラーをあげた。」
「相変わらず、シスコンだな!慧!」
「そーいうお前はどうなんだよ。」
「え?犬の散歩して、部活の助っ人して、家族と兄貴を含めたクリスマスを過ごしたよ!!
見て!家のラブラドール可愛いでしょ!!」
え!?ステージバックに犬の写真が…いつの間に。静かだった会場が笑いの渦に。。。
「アホ田」
「あはは〜、さすがそーくん!」
畜生、でもラブラドールが超かわいい。
「ま、いいんじゃない。奏響らしくて。」
「さてと、次の曲行きますか?」
「次の曲はなんだ?」
「Bell Sound illumint!on、この曲の僕はドラムじゃなくてペダルは踏むんだけど…じゃーん!ベルなんだ〜!ジングルベ〜ル♪」
やっぱりベルを優に任せたのは正解だったな。
「クリスマスソングを作ってみたから聞いて欲しい。」
ピアノから始まり、ベースを聴いて、アコギを奏でる。
ーーーシャーン♪
「街ではしゃいでる子供たち
自分もなんだかわくわくする
街並みで、この間まではなかった
大きなクリスマスツリーを
見たからかもしれない
木や街頭に4色のライトが光ってて
1番上の星を見つけたら
はらはらと白い雪が舞い降りてきた
さっきまでは、晴れていたのに
祝福の天使が 街をホワイトクリスマスへと
変えていく。
ああ、こんな幸せの気持ち
なんだから、久しぶりな気がする
ケーキ買って帰ろうかなと
少し寒さに足早く歩く。
疲れて、寝てしまった
少し朝に起きると少しだけいいことが
あるかもしれない。
白い天使からの贈り物が
幸せを運んでくれたみたいだ。」
そのままピアノが楽しい曲調で、会場を弾ませる。
「あと2曲。」
「さあ、楽しんで行こう!」
「Winter Sky Lim!t!」
「雪が舞うあの空は、降り積もる
白い景色が少し足踏みさせる。
雪が止むまで、炬燵で温まって
みかんの甘酸っぱさが
爽やかな冬を染めてくれる。
ああ、なんだかいいな
ついついうたた寝して
気付けば、冬の風が
ほんの少しだけ花の香りが混じるようになった
白が、いろんな色に染まっていく瞬間は
僕に勇気をくれる
その白いクッションを
うさぎのように飛び跳ねて
あの月まで行こう!
明るい光の向こうまで〜」
シャーン♪シャーン♪と軽やかで楽しそうにベルの音が響く。
「ジングルベール!ジングルベール!
鈴が鳴るー!森に林に響きながら〜♪♪」
「ご機嫌だね、優。」
「うん、だってすっごい楽しいから♪」
「確かに、楽しいな〜!」
「そんな歌詞を作っちゃう、きぃちゃんが凄い!昨日まで悩んでいたのが、感じられないほど
クリスマスのイルミネーションのようで
温かい光が灯る、そんな歌詞だったよね!」
「そうだな。」
「そんな褒めても、何も出てこないよ。」
「楽しいライブはあっという間だねー!
ラストあと1曲!」
「会場、そして配信のみんな楽しんでくれましたかー?」
会場からは大きな拍手、配信画面からはたくさんのコメント
「たくさんの拍手、ありがとう〜!」
「またワンマンライブやりたいな。」
「そうだね!またBlueStaR L!neЯとこの会場の皆さんでね!配信の人も、SiNSilentのライブ是非聞きに来てくれよなー!」
「大体週末に月2回から4回やってるから、俺たちの音聞きに来て欲しい。」
「それでは、きぃちゃんそろそろ!」
「ラスト行きますか!」
「行こう、穂川。」
「わかった、この曲でラストになります。」
「「「「White Some Star'Liru。」」」」
優のペダルとスネアをリズミカルに叩く音。奏響がエフェクターと踏んで、ベースが音に圧を与える。慧がピアノ、シンセ、オルガンのコントラストが会場に響き渡る。
アコギの弦を揺らす、ペダル踏んで
ゆったりとした時間とこの音に込めて。
「寂しい空気を進むと、なにもなくて。
一人で見ていた空から雲がちぎれて
ふわりふわりと白が舞い落ちる。
その中で手を広げて、あまりの冷たさに
きっと止まってしまった。
そっと、振り返れば街を灯りが
僕の心は彩るのに、そんな温もりが
今は、どうしてか切ない気持ちなんだ。
無数の星が輝いて見えるのかもしれない。
降り積もる白は、甘いと思ったら
苦い味だった。でも深く心に染みた
あのいくつかの星の中から
ずっと、何かを、探しているのかもしれない
Star'Liru…Ra〜。
あぁ、でも振り返ればその答えはそこにあった。キミたちが持っていた。」
奏響、慧、優が楽器の音を止めた。私は椅子から立ち上がって、さらにジャジャジャンとアコギを掻き鳴らす。
ふふ、驚いた顔している。
「私からのBlueStaR L!neЯへのクリスマスプレゼントを聞いてくれますかー?」
私はアコギのエフェクターを踏んで、ペダルを踏み替えて、この弦でクリスマスの特別感を演出する
「ふわりと華やかな香りが包む
些細な夜。黒の深い群青色が鮮やかで
白、青、黄、緑、赤……
あそこには何億色の色があって
いくつもの線が結ばれている
僕たちみたいなんて言って。
じっと見上げ続けると
ポロポロと流れる……
綺麗すぎて心からも溢れて
でも怖くも寂しくもない
あのオリオン座みたいに
結ばれている、僕たちは
大丈夫と満月に負けない笑顔で言った。
だから、安心して行こうよ。
音楽の五線譜の上を
走り抜けるの、いくつもの駅を
もしかしたらそれは各駅停車かもしれない
時には寄り道なんてして
甘い味に笑って
苦い味で停まって話をして
真っ白に溶かされて
たくさんの星のようにいつかは
燃える熱い夏の太陽のように
煌めくと信じて。
奏でて響く、ガタンゴトン
青い彗星を通過する時
その美しさで心を洗われたりして。
最初は1人かもしれない
でも待っていれば、人が乗ってきて
優しいキミは笑う。
終点もない、どこまでも遠くの
空は、果てしない旅は
BlueStaR L!neЯは、今日も走り続ける。
STAR IN SNOW STATION」
煌夏ソロVer.のDistant ClearSkyでした。シャンシャンと鈴の音が聞こえた気がした。
こうしてステージの幕は降りたのだった。
「さいっこーだったね!」
「BlueStaR L!neЯ、本当にかっこいい!」
私たちは会場の観客の人たちを見送ったあと、思いっきり誰かに抱きつかれた。
「きぃちゃんっ」
「優?」
「ずるい!…ずるいよ、本当に。」
優は笑っているのと反対に、目頭にぽろぽろと涙が溢れていた。
「確かにあれは反則だな。」
慧は呆れた顔、少し目が赤い気がした。
「俺もちょっと危なかった。」
奏響も…私は歌でしか、素直な気持ちを伝えられないから。
「頭に浮かんだから、歌いたかった。ただそれだけ。」
秦さんのところに行き、片付けを手伝っている中。
「ぐす。もうきぃちゃんたら!」
わいわいと楽屋でやりとりしていたら。楽屋のドアからノックが聞こえて、ドアを開けた。
「こんばんは、BlueStaR L!neЯの皆様」
「梅田さん、こんばんは。」
「「「こんばんは」」」
「BlueStaR L!neЯのワンマンライブ拝見させて頂きました。前回の配信ライブもとても素晴らしく、BlueStaR L!neЯの中にある熱を感じさせて頂きました。
特に最後のSTAR IN SNOW STATIONとても胸が温かく、あなたたちの絆に感動しました。
ぜひアンブレーベルに来て欲しい。いかがでしょうか?」
梅田さんが手を差し伸べている。
私は、奏響、慧、優の顔を見て。覚悟出来た。
「はい、ぜひよろしくお願い致します。」
その差し伸べられた手に私は握り返す。
「やったー!!」
「「「おめでとう!!!」」」
「美紅、芽衣、萌香。ありがとう。」
このあと、瓏さん、降川さん、秦さんから花束を頂き、とても祝福してもらった。SiNSilentの箱バン契約はまだ継続ということで、とりあえず話になり。詳しくは後日ということになった。
私はライブハウスを振り返って見る。
「私、間違ってないよね。」
「大丈夫だよ!僕たちなら!」
「穂川さんはひとりじゃない。」
「俺たちで、これからも先を進んでいくんだ。」
「そうだね。私たちはあの空の遠くを目指す。」
私たちは、美紅と芽衣と萌香が用意してくれた
打ち上げ会場に急いで向かった。
……To be continued
エピソード22を読んで頂き
誠にありがとうございます!
ついつい熱が入り長いエピソードになってしまいましたが、ワンマンライブ盛り上がって頂けたら嬉しいです!
次回の投稿は9月11日木曜の午後12時です。
よろしくお願いします!