Episode-20 ~変わる景色と写真~
ある日の放課後で授業が終わると私はゆっくり部室に行くのが日課。音楽以外で好きなことが、あちこちの写真を撮るのが趣味で撮っては歩いての繰り返し。
だから、いつも部室に着くのは私が最後なんだけど、今日は優は生徒会、慧は日直、奏響は美紅も呼ばれていたからクラス委員だからなのか担任の手伝いだとか言ってたから。
珍しく私が先に部室に到着。誰もいないと寒いなと感じる季節になってきた。
SiNSilentで、今週と来週に2日ずつライブが決まっている。ワンマンの前夜祭とも言える、毎日練習して、お互いバイトあったりするけど。
やれることはやっている。
最近変わったことは、お昼タイムに戸野さんが混じり始めたかな。戸野さんが「萌香」と呼んでというので、少しそんな変化があるくらいで他は平和そのものだ。
私はチョコスティック菓子をサクサク食べながら、スマホのアルバムにある写真を整理していた。
ーーーガラッと音がした。
「あれ、けーくんとそーくんはまだ来てないんだね〜」
ホワイトブロンドとラベンダーのカーディガンがチャームポイントである、優が来た。
「優、思ったより早いね。生徒会お疲れ、よかったら食べる?」
「ありがとう、美味しい〜!きぃちゃん最近よくチョコスティック食べてるよね!」
「寒くなると食べたくなるんだよね、チョコとか。」
「なんか、わかるかも!僕もほらチョコあるし!お返しに上げる〜!」
「ありがとう。」
優からチョコを貰い食べる。まぁ緩い空気を纏いながら、奏響と慧が来るのを待つ。BlueStaR L!neЯはみんな来るまでやらないのが、暗黙のルールなんだよね。私が大体最後だけど、椅子に座ったり、雑誌やスマホ見てたりと各自好きなことして待っててくれてる。
「先に始めててよかったのに。」と言ったら
「一緒にやった方が部活らしいじゃんか!」
「ボーカルいないと締まらない。」
「なんかね、灯りが足りないというかね〜!」
とか、奏響と慧と優が言ってた。不思議だよね、それがいつの間にか今も続いているなんて。
「あ、もしかして写真整理してたの?」
「うん。気付けばアルバムの写真が7000枚も集まってた。」
「おー!きぃちゃんの写真が増えているなんて超見たい!」
そう言えば、ミニアルバムの特典に私の撮った写真のポスターカードにしようと言ったの優だったな。なんの需要があるのかイマイチ分からないけど、ファンが絶対喜ぶと優が言うから作ってみたんだよね。
「ん、見ていいよ。」
私のスマホを優に渡す。
「ありがとう!わぁ空とか海も綺麗に撮れてるね!あ、この猫とか花とかめっちゃ可愛い!」
優見てるとゆったりなんかぽかぽかしてくるんだよね。
「て、あれ?きぃちゃん??」
「」
「ありゃ寝ちゃったみたい。昨日夜更かしでもしたのかな〜?頑張り屋さんだもんね。今は起こさないけど、そーくんとけーくん来るまでだよ〜?」
私はいつの間にか寝てしまい、起きたら奏響と慧は部室に来ていて、呆れた顔していた。
「優、起こしてくれてよかったのに。」
「ふふ、なんか疲れてそうだったからさ!」
可愛らしいラベンダー色のカーディガンまで肩にかけてくれちゃってさ。私は畳んで、優に返して、ギターのストラップを私たちは肩にかけて練習を始めた。
もう空は暗くなっていた。各自楽器のメンテナンスしたり、ケーブル片付けたり
私はぐいっと背伸びをしたら、頭に温かい感触が?
「お疲れ!」
いちごミルクを飲んでる、奏響だった。
「奏響。はちみつティーだ。もしかしてくれるの?」
「おう!」
「ありがと。」
なんか変なの。なんて思いながらもほのかな温かさがちょっと嬉しかった。
「これ、やる。」
「チョコ饅頭じゃん、ありがとう?」
お礼言うと、慧に頭撫でられた。
「???」
「ふふ、きぃちゃんが心配なんだよ!頑張り屋さんだから!」
好きというだけで、頑張ってるつもりはないんだけど、曲の歌詞とアレンジに行き詰まってるのが、いつものお約束。
奏響と慧、私以上によく私のこと見てるもんな……きっと優も。
気付いているんだろうな、でも、言わないでくれている優しさがこの2つとラベンダー色のカーディガンだ。
ダメだな、このままじゃ…気分転換に帰り道を遠回りして散歩でもしてみよう。
少し薄暗くなってきた教室。
聞こえるのは時計の音と俺が日誌を書いている音だけ。面倒だけど、今日は日直だから仕方ない。
「でも、この日誌も大分薄くなったな。」
前までそんな事も思わなかったのに、もう12月だもんな。そんな事を柄にもなく、白が薄くった方を少し触って、そう思っていた。
ーーーガラッと教室のドアが開く音がした。
「慧か、そっか!今日日直か!」
「そうだ。お前は担任の手伝い終わったのか、春田。」
俺と春田は、井間ともだが幼馴染みだからあまり遠慮とかがない。
「あぁ、やっとな!冬休みの課題のホッチキス止めやらされた。嫌だなぁ課題。」
「人気者のクラス委員は大変だな。」
「はは、まーな!」
こういうサラッと言える春田に、時々イラッとするが羨ましくもある。前に座る春田と俺は日誌の残りの欄を書き進めていく。
「日誌の右側、もう薄くなったな。」
「さっきそれ、俺も思った。」
多分、井間でも同じ反応するだろうな。
ーーーピロリン!と春田のスマホの通知音が鳴った。俺のはバイブモードにしてるから鳴らない。
「あ、優からだ。」
「寝てるのか、穂川。」
幼馴染みトーク部屋に、穂川が寝ている写真と『静かに入ってきてね!』と言うメッセージだった。
「写真は送らなくて良かったんじゃないか?」
「あはは、まぁ優らしいけどな!」
最近の穂川は、練習以外は少しぼんやりと考え事してる感じだったな。そんな穂川が気になるのか井間は心配そうにあいつを観ていた。
俺も春田も、どう声をかけるか悩んでいた。あいつが考えてるのは曲のことなんだろうが、なるべく穂川から言った時にと決めている。
手伝ってやりたいとは思うが、穂川なりの何かがあるんだろうと、時間が必要な時もあると俺は思う。
「終わった。」
「お、日誌書き終わったんだ!お疲れ!」
「職員室行くから、お前先に部室行っててもいいぞ。」
「うーん…いや、一緒に行く!」
春田なりの気遣いか。
「じゃ、行くか。」
教室を後にし、特にあまり喋ることもなく廊下を歩いて、職員室に行き担任に日誌を渡した。
「失礼しました。」
「よし!部室行くか……って、おい、そっちは部室の方向じゃないぞ!」
「アホ田、そんなことわかってる。ただ…寄り道だ。」
こっちの方向は部室とは逆だ。そんなのわかっている。わかってなさそうに歩く春田は放って、俺が向かった場所は。
「いらっしゃい!」
購買だ。棚から新発売と書かれた、チョコ饅頭と水を取り出す。
「なるほど、そういうことか!」
「ようやくか、アホ田。」
今の俺にできることはこのくらいだからな。
「俺は、あったかいはちみつティーにしようかな♪」
「いいんじゃないか。」
春田が金を払い終わったのを見て、購買を出て部室に向かう為に廊下を歩いた。
「穂川さん、紅茶好きだもんね!」
「最近は珈琲が多いみたいだがな。」
「普段は紅茶を飲むことが多いけど、悩み事あると珈琲飲むよね」
「口より行動に出るタイプだからな。」
部室に着いた、ドアをゆっくり開ける。
「あ、そーくんとけーくん。お疲れ〜」
緩い口調で小声で話す、井間。
「おう。」
「優もお疲れ、優は生徒会だったんだろ?」
「まーね!」
空いてる机に荷物やら上着やらを置いていく。
「穂川さん、まだ寝てるのか。」
薄紫のカーディガンが肩にかかって、突っ伏して寝ている穂川。
「おー思ったより、熟睡だ」
「どーせ、穂川のことだから夜更かししたんだろう。」
「ははっ、想像できるな。」
よく見ると目の下が薄らと影が見える。
「たく。」
「きぃちゃんだからね〜」
「それだけ、音楽に一直線ってことだろうな。」
それはわかる。
初めて春田に無理やり連れられて、昼休みに屋上で弾く穂川を見た時と 。あいつが作る曲や歌詞からも伝わるし、練習してるギター弾いている時の穂川はいつも楽しそうだ。
ここまで来れたのは、間違いなく穂川煌夏が居たから。
見ればわかる、才能だけじゃないのが、努力しているのが。
「はぁ。」
「けーくん、どしたの?」
「いや…なんでもねぇ。」
聴けばわかる…悔しいが、俺はまだまだだ。
だから、俺も、春田も、井間も
穂川と並ぶために頑張るしかない。
「ん…?」
「あ、起きたみたい!」
「おはよう〜」
「……あれ。」
「練習、始めるか。」
たまには、こういうのも悪くないな。俺たちは今日もお前を追いかける。
練習を終えた後、荷物や機材を片して学校の外を歩いていたら。
「きぃちゃん!」
自転車を押して追いかけてきたのは、優。
そう言えば…慧と奏響は、このあとバイトと言ってたな。
「優」
「一緒に帰ってもいいかな?」
「うん。いいよ。」
「あれ?そっちきぃちゃんの帰り道じゃなくない?」
「今日は遠回りしたい気分なの。付き合ってくれる?」
「ふふ、いいよ!」
少し歩くと木々にはイルミネーションが飾られている。赤色とか黄色とか、ピカピカして。
「なんか、クリスマスが近づいてるって感じだよね〜」
「たしかに。」
そう返事して、私は木とか街頭とか季節の変わり目に見せる、ちょっとした変化に写真を撮る。
「わぁ!きぃちゃん、あそこ見て!」
「ん?これは、大きなツリーだね。」
商店街の中央に大きなもみの木があって、クリスマスツリーになっていた。
「1週間前まではもみの木すらなかったのに。」
「時間経つの早いよね〜!」
私はベンチに座って、クリスマスツリーを眺めてたら。優が自転車を止めて、隣に座った。
「ね、優。聞いて欲しい曲あるんだけど……聞いてくれる?」
「もちろんだよ!」
「これなんだけど。」
優のメッセージに2曲を送ると、優は上着のポケットからイヤホンを取り出して耳につけた。
「うんうん、いいね!なんかキラキラとしている感じが伝わって、温かい気分になる曲だね。
こっちは、シンバルを叩きたくなるような曲調だね。勢いがあって背中を押してくれる感じがする。」
「そう。ちょっと何か足りない気がして。」
「もしかして、これに悩んでたの?」
「すぐできるかなって思ったんだけど、思ったより行き詰まっちゃったみたい。」
「そっかそっか、明日これそーくんとけーくんにも相談しようよ!きっといいアイデア出ると思うよ!!」
「そうだね。」
「でも、きぃちゃんすっごいなぁ!こんなにいい曲作っちゃうなんて、本当に凄い。まるでイルミネーションみたいだった!」
「まだ途中なのに?」
「途中でも凄いよ、僕には曲作れないし。きぃちゃんに任せっきりだからさ、困った時くらい言ってくれると僕もだけど、そーくんとけーくんも嬉しいと思うよ!」
暗い夜の中キラキラ光りすぎてて、なんか選べていない感じなんだよね。優の大きい手が、私の手を握った。
「大丈夫だよ、きぃちゃん!自信を持って!
僕、きぃちゃんの作る曲と歌詞大好きなんだ!
これをドラムで叩けるのが本当に嬉しい。
僕も誰かの背中を押したり、励ます一員になれることがさ!そんな曲であるのが、本当に素敵だと思うよ!」
優しくて、冬に負けないくらい本当に眩しい笑顔。
「ありがとう。優」
「ふふ、どういたしまして!もう帰ろう、風邪ひいたら大変だしね!」
優を追いかけるように、私も帰り道を歩いた。
「じゃ、また明日ね!」
「うん、送ってくれてありがとう。」
「いいえ〜!」
「気をつけて、帰ってね。」
「ありがとう!」
優は自転車に乗って、もう姿は見えなくなったから、私は家の玄関の扉を開けた。
今日も誰もいない部室。
昨晩は早めに寝れて、少しすっきりした気分。
私はアコギを鳴らしてみる。
1弦増やしたことで、深い音が出るようになったし、エフェクターかペダル踏むと雰囲気がいい感じになる。例えるならコーヒーみたいかもしれない。
2曲のタイトルはもう決まっている。
1つは、White Some Star'Liru。
自分ながらいい曲だと思う。
寂しい空気を進むと、なにもなくて。
一人で見ていた空から雲がちぎれて
ふわりふわりと白が舞い落ちる。
その中で手を広げて、あまりの冷たさに
きっと止まってしまった。
そっと、振り返れば街を彩る灯りが
僕の心を自然と弾ませてくれる。
そんな温もりが今は切ない気持ちから
無数の星が輝いて見えるのかもしれない。
Star'Liru…Ra〜。あぁ、綺麗すぎるな〜。
「最後がなぁ。もう少しいい言葉がある気がするんだよねぇ。」
詩集読んだり、写真を撮ったりしながら
待つしかないんだよね。
Winter Sky Lim!tの方は、みんなに相談した方が良さそう。
皆はまだ来ないか……メッセージ入れて
アコギ持って、屋上に行こう。
あ、その前に缶コーヒーとチョコを自販で買おう。案外リラックスしてる方が、パッと浮かぶことが多いし。
階段を登って、屋上のドアを開けると
広くて青い空が見える。
この瞬間が、好き。
冬は特に…冷たい空気が心を落ち着かせてくれる。頭をすっと晴らしてくれる。
この甘さと苦さのバランスが、今はちょうどいい。
明日の休み、海に行きたいな。行っちゃおうかな……。
……To be continued
エピソード20を読んでいただき
誠にありがとうございます。
BlueStaR L!neЯの日常は、音楽と仲間との温かい瞬間で彩られている。学校ライブを終え、クリスマスワンマンに向けて準備を進める中、穂川の写真や新曲への情熱が仲間との絆を深める。優の明るさ、奏響の気遣い、慧の静かな支えが、彼女の心を温め、White Some Star’Liruのメロディと共に新たな輝きを生み出す。冬の空の下、BlueStaR L!neЯの物語はまだまだ続く!
次回の投稿は、9月9日火曜日の正午です。
よろしくお願いします。