Episode-10~花火と金木犀のソナタ~
8月31日、夏休みの最終日。
課題も終わって、午前中は新しい楽譜が出たと情報をゲットしたので楽譜を手に入れたあと、楽器ショップに行ってちょっと奮発して品質の良い弦を購入した。
あと念願のピックアップとマルチエフェクトプロセッサーを買ってしまった。これで複数のエフェクターをカスタマイズ出来る。
「早く練習したいな。でも今日予定あるから難しいな。」
その後ルンルンで昼間はライブハウスのバイトをやって、そして時間は17時くらいになった。
「すいませんが、お先です。」
「お疲れ様!穂川さん!」
秦オーナーが声をかけてくれたので、私はライブハウスを後にした。スタッフの人とは話すことあったけど、最近はバンドの人達が話しかけてくれる。
最近の勢いのあるバンドグループの話とかライブ情報や、最近オーケストラとかに興味あって、チケット情報を入手したりとちょっと楽しい。
「もっと上手くならなきゃ。奏響も慧も優もストイックで上手いから置いてかれないようにしなきゃ。」
自転車で帰って急いで着替えた。
「ただいま。」
「おかえり、煌夏」
喫茶店はまだ営業中なのに、珍しくお父さんがリビングに居た。
「お父さんがいるの珍しいね。」
「忘れ物を取りに来たんだ、煌夏はどこが出かけるのか?」
「友達と夏祭りに」
「そうか、楽しんでこい!」
お父さんと話して、急いで自室に戻った。青紫の布を通して赤の帯を結び、髪を編み込んで纏めて髪飾りを着ける。私は歩きにくい下駄を履いて待ち合わせに向かった。
「あ、煌夏!こっちこっちー!」
「こんばんわ〜きぃちゃん!」
「浴衣姿も似合うね、煌夏ちゃん。」
美紅が前回のライブの打ち上げの時に、近所で夏祭りがあるのだと言ったので、優も奏響も乗り気で、私たちは夏祭りに来たのだ。
「美紅と芽衣、優も浴衣が似合ってるよ。」
美紅は赤、芽衣は黄緑、優は黄色の浴衣姿だった。
「えへ!煌夏に褒められると嬉しいな〜!」
「煌夏ちゃんも青紫の浴衣がすごい似合うね!」
「きぃちゃん、ありがとう!」
奏響と慧は私服だった。私服だけど提灯の明かりが相まって2人は絵になるよね。
「美紅と芽衣も笑って。」
「「いえーい!!」」
「とりあえず、祭り会場の散策も兼ねて1周するか?」
「そうだな、それから何するか決めるか!」
地面の石段とかで会場を一周するのも慣れない下駄に少し戸惑っていた。
「大丈夫?きぃちゃん?」
「うん、大丈夫。」
「はぐれちゃうといけないから、僕の袖掴んでていいよ?」
「でも、優の浴衣シワになるよ。」
「え、そんなの気にしないよ〜!そんなことよりこの人混みではぐれちゃう方が大変だよ!」
そういうのでお言葉に甘えて、少しだけ優の裾を握った。お祭りの会場を一周して奏響は焼きそば、慧はたこ焼き、芽衣と美紅はリンゴ飴、優は射的とか、みんな楽しそうにしているのを写真を撮りながら眺めていた。
「煌夏、何か食べたいものないの?」
「今は大丈夫。」
お祭りは和の雰囲気が好きだな。和太鼓の音に心が弾んで。明るい提灯が夜に映えて、食べ物や遊ぶ屋台を見てるだけで私は楽しい。そしてみんなが笑ってる写真が撮れて満足なんだ。
「太鼓の音にトコトコとついて行って、いつもと違う何かに誘われて。キミたちは笑う。」
ぱっと浮かんだ言葉をぽつりぽつりと繋いでみる。
「それ素敵だね!まるで短歌みたい!」
「すごい煌夏!なんか私ドキドキしちゃった!」
何気なく呟いた言葉を皆に聞かれていたみたいだ。まぁ声に出したら聞かれちゃうか。
「もしかして、そうやって曲を作っているの?」
「うーん、今の詩が歌や曲になるかはわからないけど。そうなったらいいと思うよ。」
「おーなんか新鮮だ!」
スマホにさっき浮かんだ言葉をメモする。
「俺も最初は驚いたな!」
「ふふ、確かにそうだったかも!!」
「いつも唐突だからな。」
そうだよね。
「ごめん、自分でも変だとは思うんだけどね。頭に浮かんで、つい言葉に溢れちゃうんだよね。」
後れ毛を触りながら、提灯の明かりに目をやる。
「あー違う違うよ!勘違いしないで!きぃちゃんのそれほんといいなーって僕思っているんだ!」
「あぁ、穂川のそれを聞くと次はどんな曲が生まれるのか楽しみになる。」
「俺も今ではわくわくする合図だよ!」
灯篭の明かりのせいなのか、夏の暑さのせいか少し顔が熱かった。
「芽衣、あのメンバー仲良いね!」
「ね!美紅!私たちも楽しくて笑っちゃうね!」
暫くまたお祭りを回って、私もたこ焼きやリンゴ飴を食べた。芽衣が金魚を取ったり。慧がヨーヨー釣りの写真も撮ったりして、涼しげなのに赤やいろんな色と柄に心が踊る色に目を奪われるばかりだ。
「すみません、かき氷のイチゴください。」
「はいよ!」
私たちはある程度屋台の物を買い込んで、花火を見るために花火を見る会場に来た。イチゴのシロップがかかった雪山を掘っていく、まるで夏のかまくらみたいで、この冷たさと甘さが絶妙である。
「やっぱ、花火の時間になると人多いな。」
「だね〜!」
「でも、楽しみだよね!」
「私も花火好き。」
こんな人と過した夏は、初めてかもしれないな私。
「楽しかったな。」
みんなに聞こえるか聞こえないかで呟いたら、ヒューと音が空から火花が響いた。
「うわぁ、やっぱいいね〜花火!」
「うん。綺麗。」
"賑やかな提灯、笑い声の響く音。
どんなに歩き続けても
静かに見上げてしまう。
ヒューと空を駆け抜ける音。
バンっと、弾ける色とりどりの光。
遥か遠くても、輝きつける音と光は、なんでか目が緩むのはなんでだろうか。それとも花火に圧倒された会場の静けさのせいかもしれない。"
「いい詩が浮かんだ。」
こんな詩が産まれるのもみんなのおかげ、私だけでは浮かばなかったかもしれない詩だ。
私はこの出会いと、これからの出会いに音楽をもたらす。
「たーまやー!!」
「春田くん、ふるーい!」
「え、マジ?」
奏響の一言と奏響に対しての美紅の鋭いツッコミのおかげで、花火に負けない笑い声が輝いた。祭りの騒がしさは、嵐の静けさのように終わり、長いようで短い夏祭りが終わった、9月1日に新学期が始まった。
お祭りで浮かんだ詩をすぐ曲にしたくて、私はまた通り机で寝てしまっていた。
「おはよう、穂川さん!」
「おはよう。」
「あれ?なんか右首腫れてない?」
「気のせいじゃないの。」
寝違えたからな。ていうかなんで気付くの?私鏡で見ても、わからないよねと思って家出てきたのに。
そんなあまり変化のない新学期、たまにライブやMV動画のこととかを、同級生に聞かれるくらいかな。そして、2学期が始まってから2週間くらい過ぎるとHRであることを決めるみたいで、クラスの人達はいつもより楽しそうだ。
「文化祭、このクラスは何をしますか?」
なるほど、もう文化祭の時期か。
「候補上げてください!」
クラス委員の奏響と美紅が、一ヶ月後に行われる文化祭を決める指揮を取っている。お化け屋敷やメイド喫茶、展示物など、文化祭らしい提案がクラスの人達から出る。
「はい!質問です!」
とある男子生徒の挙手から事が始まった。
「三浦くんなんですか?」
「BlueStaR L!neЯの文化祭ライブあるんすか!?」
「このクラスにはメンバー全員いるもんね!」
「それ俺も気になったー!」
「私も!めっちゃこのライブもかっこよかったからさー!」
前のストリートの動画やライブ映像までもが互いに見せ合ったりしていた。
「どうする、穂川 煌夏さん?」
「え、どうするって…」
「BlueStaR L!neЯのギター&ボーカルの煌夏さんに決めてほしいみたいだよ?」
優も奏響もこの時ばかりからかうんだから。
「私が言う必要ないじゃん。もう奏響と慧と優が答え出してるじゃん。」
「俺たちは穂川の意思が聞きたいんだよ。」
いつも授業は寝てるのに、慧、こういう時は起きてるんだから。
「宣言する、BlueStaR L!neЯは文化祭ライブやります。」
クラス中が賑やかな声が上がる。
「まったく。」
「はは!お疲れ、煌夏!」
「リーダーは大変だね!」
美紅と芽衣に励まされながら文化祭の話は進み、クラス内は盛大に盛り上がりを見せて、私たちのクラスはメイド喫茶になった。
私は今日バイトで、そろそろ文化祭の時期だよねーっと同い年のスタッフと話していたら、文化祭ライブの話題に発展して。
「いいじゃん、文化祭ライブ!青春って感じ!」
秦さんがたまたま通りかかった。
「そういうものですか?」
「うん!青春で高校生らしくていい!」
秦さんがそういうなら前向きのセトリ組むことにした。文化祭なら、TR!BE L!NE DR!VEかWataR ArM BANG?それか昨日考えたFIRE-FLOWER!!!!かな??
悩むなぁ…ふとポコッと閃いた提案した浮かび上がった。
「それか学校の投票で選曲を決める?」
ギターのチューニングしながら呟いてみた。
「おー、それも楽しそうだね〜!」
優がそれに乗っかる。
「一通りは練習してるからな、当日の出たどこ勝負にしてみるか?」
「慧それいいね!せっかくなら文化祭らしくしたいよな!」
と、BlueStaR L!neЯで話し合った結果。
「投票ライブ!?面白そうそれ!!」
美紅はかなり前のめりに来た。
「楽しそうだけど、大変そう。」
「大丈夫。こんなことで屈しないのが私たち。」
そう言ったらクラス内から謎の拍手が沸いた。
「???」
「きぃちゃん、かっこいい〜」
「俺らも、負けないようにしないとな」
「そうだな。穂川ばかりいい顔させられないな。」
文化祭の準備が益々深まる、授業という授業も文化祭の準備になった。教室の飾りやメニュー決めまで、賑やかな教室だ。
「優、生徒会に設置したボックスどんな感じ?」
「めっちゃ入ってたよ!ちょっと溢れそうかも!」
「なら、もう少しボックス増やすか。」
「そうだな!」
「どんなライブになるか、ワクワクするね〜」
私は看板に黄色のペンキを塗っていく。メイド服も出来始めたり、装飾もたくさん飾られてきたりして。いよいよ文化祭当日になった。
文化祭は4日間で行われる。
「私がメイド服なの??」
「似合うよ、煌夏ちゃん!」
芽衣に着付けてもらったけど、私はふりふりのスカートに慣れないと思いながらも接客をした。
「いらっしゃいませ。」
「穂川さん、笑顔〜」
接客自体はライブハウスで慣れているが。いつもと違う雰囲気にぎごちなくなってしまう。優やクラスに茶化されたり。
"黄色や華やかな色の似合う、いつもと違う廊下で看板持ち。"
「穂川さん、メイド服似合う〜!」
「秦さん。本当に来たんですね。」
昨日のバイトの時、掃除してる時に別のスタッフと文化祭の話で盛り上がっている時に、秦さんがたまたま聞いてたらしく、行きたいって言ってたもんな。
「だって、僕ここのOBだもん!せっかくなら青春したいからね、若いオーラ時々は取り込まなきゃ!」
秦さんも行くと聞いた時は、メイド服を着るか悩んだ。
「秦さん、いらっしゃ〜い!」
「優くんもメイド服なんだね、いいね!」
「わーい!ありがとうございます〜!」
優と秦さんは何だかんだ仲良さそうだし。私は他の接客に行こう。
「いらっしゃいませ。」
「柳くんのオムライス、好評で売り切れそう」
慧はキッチンで忙しそうだ。
「井間くんのクッキー人気でもう無くなるかも」
優は受付に忙しそうだ。
「春田くんのおかげでお客さんたくさん来てくれる!!」
奏響は相変わらず女子に人気だ。
「あれ…私はあんまり貢献出来てないのでは?」
昨晩にアコギでカバーBGM集を10曲くらい曲のアルバムに入っている。小型スピーカーにiPodを繋いで私は再生ボタンを押す。
ーーージャララ〜ン。
メイド喫茶を邪魔しないつつ、アコギが雰囲気を明るくする。ゆったりとしたアフタヌーンティーを楽しんで貰えるような優雅なメイド喫茶を。
「流石だね、音楽でこの教室を和ませるなんて」
「凄いでしょ〜!ウチのリーダー!」
「ほんと恐ろしいよ。」
この後も行列は耐えなかったとか、そんな文化祭1日目。
「僕とそーくん、行けそうにないから二人で行ってきて!」
「ごめんな。慧、穂川さん!」
優と奏響に休憩だと教室を追い出されて、慧と煌夏の文化祭巡りすることになった。
「穂川、どうする?」
「うーん。何があるのか見て回りたいかな。」
「そうだな。そうするか。」
2人で、あちこちの教室を回った。お化け屋敷に行ったんだけど。慧から「ひっ!」と怯えた声が…意外とお化け苦手なのかな?
疲れている慧の様子を見ながら焼きそばとかクレープ食べたり、色とりどりの写真も取れて楽しい。慧といると涼しい秋風のような感じなんだよね。
「穂川、お前ほんと写真が好きなんだな。」
「写真は毎日見てる風景とは違う顔を見せてくれるから好きかな。」
「ふーん。屋上のアーチ作品ががあるみたいだから、そっち行ってみるか?」
屋階段を登って、ドアを開けるといつもと違う屋上の景色とアーチ作品が飾られていた。眩しい太陽が凄い照らしてて、アーチ作品がキラキラ輝いた夕焼けと一緒にめっちゃいい写真が撮れた。
少し慧と話をしたりして、私らはメイド喫茶に戻った。文化祭2日目は1日目と変わらない忙しさだった。
「悪いな。俺、キッチン離れられない。」
「僕も受付抜けらんないから、今日はそーくんときぃちゃん楽しんできて!」
奏響と煌夏の文化祭巡りだ。昨日の慧と同じようにとりあえず見て回った。
「昨日回ってて、何かいいところあった?穂川さん」
「お化け屋敷。慧が苦手なの知らなくて。」
「あー!慧、怖い話とか絶対観ないもんな。」
何気なく喋りながら、廊下を歩く。またお化け屋敷に行くと奏響と優は大丈夫そうだよね。
「お客さん!着せ替えとかどうですか!?」
着ぐるみを来た人が目の前にいる。
「だって、穂川さんどうする?」
……着せ替え?と思いながら。奏響はタキシードと言うんだろうか?明るい彼に白い服は少し眩しく感じるな。
「穂川さんスタイルいいし、髪が綺麗だからなんでも似合いますねー!」
「洋風ドレスだって……変かな?」
「そんなことないよ!似合うと思う!」
記念に写真まで取ってもらって、その後カラオケ喫茶を模様しているクラスに奏響が行きたいと言うので寄ってみたら、前より上手くなった気がする奏響の歌声を聴きながら珈琲を楽しんだ。
「おー!煌夏も春田くんもめちゃ似合うじゃん!」
「まさに文化祭だね!」
たまたま美紅と芽衣に廊下で会った。
「せっかく2人とも似合ってるんだからだから洋風ドレスとタキシードのまま喫茶店の宣伝に行ってたら?」というのでやってみたらクラスのメイド喫茶店の売上は、昨日より多いらしい。
文化祭3日目は優と煌夏が回るみたいだ。
「行こっか、きぃちゃん!」
「うん。」
私は優の後ろを歩く。
「僕お腹すいちゃったな〜!」
「なら、E組のクレープ美味しかったよ。生地がモチモチしてて」
「ほんと!?じゃ、そこ行こう!」
私と優はE組のクレープ屋に行って、私はクリームチーズとブルーベリーのやつ。優はストロベリーとクリームのやつ。
「写真いい?」
「うん!撮って撮って!てか、僕にもその写真くれる?」
「いいよ。」
今の写真とここまで撮った写真を何個か送った。
「はは、けーくん。オムライス真剣に作ってるね!」
「うん。奏響は女子に囲まれすぎて困っているし」
「ふふ、ほんとだ〜!あ、その屋上のアーチ作品だよね!夕焼けもあっていい写真だね!」
「うん。この写真は一番のお気に入り」
何気なくクレープ食べたり、チーズドッグ食べたりして、ふと立ち寄った教室は絵を体験出来る教室らしい。
「絵か〜!どうする?」
「……やってみる?」
教室に入って、目の前にある物を30分でデッサンをするというのらしい。サラサラっとなんとなくの感覚で鉛筆を動かす。私の絵は可もなく不可もなくと言ったところ。
「わぁ、きぃちゃんの絵は綺麗って言葉がぴったりだね!」
「そうかな」
ちらっと優の絵を見たら、、、見なかったことにして黙っておくことにした。優って、凄く器用な人でなんでもソツなくこなすイメージだった。そういう面もあるのなんかこういう意外なところが優らしいかも。
こんな一面見れるんだと思うと、この文化祭も前の合宿も行って良かった気がするな。今度海外とかも、行ってみたいな。BlueStaR L!neЯで、アメリカンライブとが楽しそうだ。
海外で見える景色は、また違う光になるのかなBlueStaR L!neЯは。
「さてと、もう時間だね!きぃちゃん!」
「そうだね、教室に戻ろう。」
楽しい3日間の文化祭を終えた。スマホに映る写真はどれもみんな素敵に笑っていた。
……To be continued
エピソード10まで、読んでいただき
誠に有難う御座います!
いよいよ文化祭最終日が、来ます!
みんなの高校時代の文化祭や学園祭はどんなものでしたか?
そんな青春待った中のBlueStaR L!neЯの文化祭はどうなるのか?
よろしくお願いします。