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死に戻った私は、冤罪で殺された娘の幸せだけを求めます  作者: 凛蓮月@騎士の夫〜発売中です!
第二章/ユリアーナの幸せ

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31.神様との対話


 イルゼ様との面会を終え、屋敷に戻ってきた私は死に戻ってから今までの事を整理する事にした。


 前回の生では、私はカールハインツへの愛に破れ、自暴自棄になりアルコールに逃げ、最終的に病気で早逝した。

 カールハインツはティアナを後妻に迎え、彼女の娘クラーラを可愛がった。

 ユリアーナはラルス殿下と婚約していたが、婚約を破棄された。

 さらに、クラーラが近くにいた近衛に命じてユリアーナを殺させた。

 つらつら並べられていた罪状は、クラーラがユリアーナにしていた事で、ユリアーナはもちろん冤罪だ。


 殺されたユリアーナは、誰かを恨むこともなくさっさと天に召されようとしていた。

 だから私はユリアーナのやり直しを願ったのだ。


 死から舞い戻った今、様々な事が判明した。

 まず、私の死因はティアナとカールハインツの身分差の恋を応援していたロッテが毒を盛っていた事が判明した。幸いにもまだ間に合う段階だったので、現在命に別状はない。

 実行犯はロッテだが、毒の入手経路は明かされていない。

 だがその後、ティアナが私の同級生のアルビーナ様の夫エッカルト様の愛人に収まっていた事を鑑みれば、おそらくそうなのだろう。


 そして、一番驚いたのが、ティアナの娘はカールハインツの子ではなく、フォルクハルト元王太子殿下の子だという事。

 にわかには信じ難いが、カールハインツはティアナを愛していたわけではなく、ただ、仕事に邁進して私たちを蔑ろにしていた。

 その理由は、フォルクハルト元王太子殿下が廃嫡され、後釜として据えられたリュディガー殿下とイルゼ様のサポートをしていたから。


 前回の私が知ることがなかった事実が次々と明らかになり、ただ絶望に打ち震えていた私が滑稽でならない。

 もっと話し合えていたら、このすれ違いもなかったのかしら、一度たりともユリアーナは殺されずに済んだのでは、と自己嫌悪に陥る。


 今の私がこうして生きているのは、神様に出会えたからだ。


「そういえば、神様はどうしているかしら」


 時を戻してくれたのは神様だった。

 絶望しかけていたとき、ちょうど雲に乗った目の前にいるような小さなつるっぱげの頭上にわっかを乗せた、もじゃもじゃの髭をたくわえた老人で子犬くらいの大きさだった。


「呼んだかの?」


 そうそう、これくらいの大きさの……と思考したところで目を見開いた。


「か、神様!?」

「久しぶりじゃの」


 雲の上から手を振られ、神様は見知ったおじさんのように気さくに挨拶をした。


「元気にしとるかの? もう毒は全部抜けたようじゃな」

「私が毒を盛られていたことをご存知なのですか?」

「もっちろん。ワシ、神様だからの」


 えっへん、とふんぞり返り、また後ろに倒れかけた。……何だか頼りないな。


「うーむ、身体は元気になったようじゃが、因果はまだまだ真っ黒じゃのぅ」


 神様が私の周りを回り、顎に手を当てながらうーん、ふーむ、ぬーんと唸る。

 あまりにも忙しなく動くから、思わず叩いてしまいそうになった。


「それはそうと、神様。時間を戻していただき、ありがとうございます」


 忘れてはならない、時を戻してくれたお礼を言い、頭を下げた。

 顔を上げたとき、神様は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。


「お主は知らなんだかの」

「……なにを? ……ですか……?」

「ワシの力じゃ、時間を戻す事はできぬよ」


 ……なんですと?


「ワシは許可を出しただけ。時を戻す事は、容易な事ではない。魔法を発動させる者、禁忌魔法に対する生贄二人が必要じゃ」

「いけ……にえ……?」


 物騒な言葉に思わず息を呑む。生贄というのは、その名のとおり、命を捧げる者だ。そんな物騒なものは、禁忌魔法ではないだろうか。

 

「生贄の命を対価に、神への承諾を伺う。可ならば時を戻せる。不可ならば……生贄は死に、時も戻らない」


 咄嗟に言葉が出なかった。

 それならば、命を捧げた後にもしも神様がだめだと言ったら、生贄二人は死に損じゃない。


「時間を戻す事を簡単に考えるのではない。

 過去が変われば未来も変わる。たった一人を生かすだけで、どれ程の人間関係が変わると思う?

 お主の友人が新たな命を授かった。それも、大きな影響を及ぼすだろう」


 確かに、時を戻り、私は生き長らえ、イルゼ様は新たな命を授かった。

 途方もない未来を考えたとき、どれくらいの人に影響があるのだろう。


「今回は、起点となる者──即ち、お主が闇に囚われ絶望を振り撒く厄災になるのを防ぐために許可を出した」

「私が……厄災になる……?」


 神様は頷いた。それはにわかには信じ難い言葉だった。


「ユリアーナを目の前で殺されたお主は、血を分けた娘を殺された絶望で浮遊霊から怨霊となり、ついには世界を滅ぼす呪いを振りまく厄災となったのじゃ」

「まさか……!?」

「時を戻る前の元の世界の末路がこれじゃ」


 神様が空中に向かって指を差すと、そこに映像が現れた。

 その映像の中の世界は真っ暗な闇に覆われ、人々は倒れ、植物は枯れ、地上も水中も空中さえも、あらゆる生命体は死滅したかのように思えた。

 そんな中、大きな存在から真っ黒な何かが吐き出されている。


「これが……私?」

「そうじゃ。ユリアーナを殺され、時を戻らなかった場合の未来の話じゃ。

 革命が起き、裏組織と呼ばれる者たちの支配下で人々が苦難を強いられた。じゃがそんなもの、この厄災の前では赤子のようなものじゃった」


 大きな存在は、時折咆哮のような音を出している。見るからにおぞましいそれが、まさか私だなんて、思いたくもないが、神様の神妙な顔つきが、それが真実なのだと言っていた。


もう少し早くに出したかった神様…

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