第二章:囚われた少女の正体
第二章:囚われた少女の正体
【ダンジョン 第2層:盗賊団との戦闘後】
盗賊団を退け、俺はゆっくりと息を吐いた。
目の前には、先ほどまで鎖で拘束されていた金髪の少女が立っていた。
彼女は、まだどこか怯えた様子で俺を見つめている。
ボロボロの服は所々破れており、腕や足には無数の擦り傷があった。
華奢な身体は震えており、肌にはかすかな痣も見える。
(……こいつ、どんな扱いを受けてたんだ?)
「……あの、あなたは?」
小さな声が響いた。
俺は短く答える。
「探索者だ。」
「……助けてくれたんですか?」
少女は、自分の手首を触りながら呟く。
もう枷はないが、そこに刻まれていた**「奴隷の刻印」**はまだ薄く残っていた。
俺は腕を組みながら、少し考える。
(助けた、というより……巻き込まれたって言ったほうが正しいな。)
正直、このまま見捨てるのも選択肢の一つだった。
だが、ここで彼女を放置すれば、また盗賊に捕まるか、モンスターに食われるのがオチだろう。
「お前、名前は?」
「……フィオナ。」
「フィオナ、なぜお前はこんなところにいる?」
俺が問いかけると、フィオナは視線を逸らし、静かに口を開いた。
【フィオナの過去】
「……私は元々、貴族の娘でした。」
俺は少し驚いた。
貴族? こんなダンジョンの奥で?
「でも、家が没落して、私は奴隷として売られたんです。」
(なるほどな……)
異世界融合の影響で、社会の体制は大きく変わった。
貴族制度は一部残ったが、それと同時に、**「奴隷制度」**も合法として認められた地域がある。
元貴族が落ちぶれ、奴隷として売られることも珍しくはないのだろう。
「……じゃあ、お前はあの盗賊団に捕まって?」
「はい……彼らは、私を『ダンジョン奴隷』として売ろうとしていました。」
「ダンジョン奴隷?」
俺は眉をひそめた。
フィオナは、苦しげな表情を浮かべながら説明する。
「……ダンジョン探索は、とても危険です。だから、一部の探索者たちは奴隷を道具として使うんです。」
(……なるほどな。)
ダンジョン攻略には、戦闘だけでなく、罠解除や荷物運び、探索の補助が必要になる。
そのため、**「奴隷を戦闘要員や探索要員として使う連中」**がいるというわけか。
フィオナもその犠牲になった。
(……クソみてぇな話だな。)
俺は無意識に拳を握りしめる。
【フィオナの選択】
「……フィオナ、お前はこれからどうする?」
俺の問いに、フィオナは驚いたように目を丸くする。
「え……?」
「このまま一人でいるなら、また誰かに捕まるか、モンスターに食われるぞ。」
フィオナは唇を噛みしめた。
「……私は……」
彼女は俯き、しばらく沈黙する。
(……そりゃそうだよな。)
自由になったばかりの少女に、「これからどうする?」なんて聞かれても、すぐに答えられるわけがない。
彼女には、もう帰る家も家族もいないのだから。
俺はしばらく考え、ゆっくりと口を開いた。
「……お前、戦えるか?」
「え?」
フィオナが驚いた顔を上げる。
「俺の仲間になれ。戦力になれるなら、俺がお前を守ってやる。」
「……っ!」
フィオナの瞳が大きく揺れる。
しばらく沈黙した後、彼女はそっと手を胸に置き、深呼吸した。
そして、ゆっくりと頷いた。
「……はい。」
「よし、決まりだ。」
俺はフィオナに手を差し出した。
「よろしくな、フィオナ。」
フィオナは少し迷った後、そっと俺の手を握る。
「……よろしくお願いします。」
この瞬間──俺は、初めての仲間を得た。
【フィオナの初期ステータス】
【名前】 フィオナ・エルフォード
【職業】 魔法剣士(初級)
【スキル】
•剣技(N):基本的な剣技を扱える。
•風刃(R):風の魔力を纏った斬撃を放つ。
•耐魔力(N):微弱な魔法耐性を持つ。
(魔法剣士か……悪くない。)
フィオナは戦闘能力を持っている。
それなら、錬金精製を使って彼女の装備を強化し、さらに鍛えれば戦力になりそうだ。
俺はフィオナに、先ほど手に入れた「魔力鉱石」を渡した。
「これを使って、お前の剣を強化する。見てろよ。」
フィオナの短剣を手に取り、錬金精製を発動する。
──魔法陣が展開される。
「錬金精製──剣の強化!」
魔力鉱石が短剣の刃に吸収され、刃が淡く青く発光する。
【武器進化:魔力短剣(R)】
•攻撃時に魔力ダメージが追加される。
•スキル「風刃」との相性が向上。
「すごい……!」
フィオナが驚きながら、短剣を握りしめる。
「これが……あなたの力?」
「そうだ。俺は、錬金召喚師だからな。」
俺は軽く笑いながら、ダンジョンの奥を見据える。
「行くぞ、フィオナ。まだ、先がある。」
「はい!」
こうして、俺はフィオナと共に、さらにダンジョンの奥へと進んでいった。