第一章:奴隷少女との出会い
第一章:奴隷少女との出会い
【ダンジョン 第2層:古代の回廊(奥地)】
ダンジョンの奥へと進むにつれ、空気はさらに冷たくなり、静寂が支配する世界へと変わっていった。
壁には青白い光を放つ刻印が並び、微かに発光している。
床には砕けた石材が散らばり、かつてここが何かの施設だったことを物語っていた。
(……ダンジョンって、元は異世界の遺跡だったのか?)
そう考えながら慎重に歩を進めると、足元に光る鉱石が転がっているのが目に入った。
「……ん? これは?」
俺はしゃがみ込み、それを拾い上げる。
手のひらの上で淡い光を放つその鉱石には、魔力の波動が微かに感じられた。
【アイテム入手:魔力鉱石(下級)】
•魔力を微弱に蓄えている鉱石。錬金素材として使用可能。
•武器や防具の強化、スキルの補助に使える。
「なるほど、これなら錬金精製で強化できそうだな。」
ダンジョンには、モンスター以外にも錬金に使える素材が点在している。
それらを集めて強化すれば、俺の能力は飛躍的に向上する。
さらに周囲を探索していると、別のアイテムを発見した。
赤黒い液体が詰まった瓶だ。
光にかざすと、粘性のある液体がゆっくりと揺れる。
【アイテム入手:魔獣の血】
•特定のスキルや召喚獣の進化に必要な触媒。
•錬金精製で合成すると、より強力な強化素材へ変化する可能性がある。
「これは……召喚獣の進化に使えるか?」
俺は魔獣の血の瓶を慎重にバッグへ収納し、さらに奥へと進んだ。
そして、その時だった。
「……うっ……!」
微かな呻き声が聞こえた。
俺は瞬時に身を低くし、音のする方向へと目を向ける。
通路の先、薄暗い部屋の隅で、何かが蠢いていた。
慎重に近づくと、そこには──
鎖で繋がれた少女がいた。
【囚われた少女】
金色の髪は乱れ、頬には汚れが付着している。
手足には鉄の枷がはめられ、壁際に無造作に放り出されていた。
(……なんで、こんなところに人間が?)
ダンジョンは基本的にモンスターの縄張りであり、普通の人間がいるはずがない。
だが、彼女の手首につけられた枷には、見覚えのある「奴隷刻印」が刻まれていた。
(……なるほど、そういうことか。)
この少女は、**人間によって連れてこられた「奴隷」**なのだ。
「くそっ……お前ら、俺の金になるんだから、逃げるんじゃねえぞ!」
遠くから、荒々しい男の声が響いた。
その声の主は、俺の存在には気づいていない。
おそらく、この少女をダンジョン内で売買しようとする輩──**「ダンジョン盗賊団」**だろう。
(……どうするか。)
今ここで動けば、確実に連中と戦闘になる。
だが、このまま見過ごすつもりもない。
俺は少女の手首を見つめ、短く言った。
「助けてやるよ。」
【錬金精製:鉄錆の分解】
俺は慎重に少女の手首を確認し、枷に触れた。
「……!」
彼女は驚いて身を引こうとしたが、俺はゆっくりと首を横に振る。
「大丈夫、すぐに終わる。」
そして、手のひらに魔力を込める。
──錬金精製、発動!
俺の足元に淡い青白い魔法陣が広がる。
その中心に、枷の構造を示す**「金属分解の構造図」**が浮かび上がった。
(なるほど、これは魔力封印の施された特殊な枷か……ならば。)
──鉄錆の分解、発動!
魔法陣が回転し、枷の表面が一瞬で赤茶色に変色する。
次の瞬間、ボロボロと崩れ落ちた。
──カラン……
音を立てて、枷が床に転がる。
「……え?」
少女が驚いたように、自由になった手首を見つめる。
俺は軽く笑いながら言った。
「こんなの、鎖の形をしてるだけの鉄くずさ。」
【進化召喚:スライムナイト】
「おいおい、なにしてくれてんだ?」
鎧を着込んだダンジョン盗賊団が、俺たちを囲んでいた。
武器を手にした男たちは、あからさまな敵意を向けている。
「そのガキは、俺たちの獲物なんだよ。さっさと消えろ、クソガキが。」
俺は奴らを見つめながら、静かに呟いた。
「……交渉の余地はなさそうだな。」
俺は手をかざし、魔法陣を展開する。
「スライムソルジャー──進化召喚!」
──ゴゴゴゴゴゴ……ッ!
魔法陣が活性化し、スライムソルジャーの体が吸い込まれる。
俺はバッグから、さっき拾った魔力鉱石(下級)と魔獣の血を取り出し、それを融合させる。
魔力鉱石が砕け、魔獣の血が発光しながらスライムソルジャーの魔法陣へと流れ込む。
【進化条件達成:進化可能】
次の瞬間、青白い光が爆発し、全身を青い鎧で覆った騎士の姿のスライムが出現した。
【召喚獣:スライムナイト(SR)】
•スライムソルジャーが進化し、鎧を纏った騎士の形態へ変化。
•物理攻撃に対する耐性が強化され、武器を自由に変形可能。
•スキル:「魔槍変形」──槍の形状を自在に変え、範囲攻撃が可能。
俺は盗賊団を見つめ、ニヤリと笑った。
「……さて、どっちの死体が転がるか、試してみるか?」