死ぬな!
「どこに行った!?」
プライマリーとゼルバリウスがいない。
「に、逃げたぞ……」
ジャックバッシュが城壁の上を指差している。街に逃げたのか!?
「逃すか!」
城壁に飛び乗り街を見回した。しかし、プライマリー達の姿は無い。
「いない!気配感知!……くっ!」
やはりこのスキルをヴァイラス時に使用すると、全方位から無数の気配を感じる。使いにくい。
「遠ざかる気配があるはず!それを追えば……ダメだ!気配が多すぎて分からない!」
街は逃げ惑う民衆で溢れている。これでは見つけられない。
「くそっ!目視で探すしかない!」
城壁を飛び降りようとした時、シャロンが悲鳴に似た叫び声を上げた。
「アーヴァイン殿!!!……アーヴァイン殿が……息をしていません……」
アーヴァインが!?振り向くと、アーヴァインが目を閉じたままグッタリとして動かない。全身傷だらけで大量の出血があるみたいだ。顔からは血の気が引いている。すぐさま駆け寄りポーションを取り出した。
「これを飲ませろ」
「ありがとうございます!」
シャロンが受け取りアーヴァインに飲ませようとした。
「ダメです!飲みません!」
口に入れたが溢れ出て来る。意識が無いため喉を通らない。
「よこせ!」
ジャックバッシュがポーションを強引に奪い、自分の口に含み直接口を付けて流し込んだ。
「傷が塞がり始めました!アーヴァイン殿!」
シャロンが呼びかける。
「アーヴァイン!目を覚ませ!」
そう言ってジャックバッシュがアーヴァインの胸に耳を当てた。
「心臓が止まってる!!死ぬな!」
なんだって!?勇者が死んじゃダメだ!
「代わってくれ!」
そう言ってジャックバッシュを押し除け、アーヴァインに跨がり心臓マッサージを試みる。両手を重ねてアーヴァインの胸に当て、肘を伸ばし、肩から垂直に力を伝えるように体重を乗せて一気に押し付けた。
【ドン!】
アーヴァインの背後の地面がベコンと沈んだ。
「しまった!ちょ、ちょっと強すぎたかな……」
ヴァイラスAランクの心臓マッサージの威力が想定外過ぎる……。
「ガフゥァッ!」
大量の血を吐き出した。……死んだかも。
「…………ガハッ!ゴホゴホッ!……ハァハァ……モモチロンちゃん?」
アーヴァインが奇跡的に息を吹き返した。とどめを刺したかと思って血の気が引いたぞ。色んな意味で危機一髪だった……。
「良かった……」
シャロンが崩れ落ちた。
「モモチロンちゃんが僕を助けてくれたんだね。ありがとう……ジャックは?」
「ああ、ここに……あれ?」
ジャックバッシュがいない。今までここにいたのに……。
「……げっ!」
500メートル程先にある城の壁に埋まっている。俺が押したから飛んで行ったのか!?Aランクの力加減が分からない!
「ゴフッ!」
ジャックバッシュが血を吐き、頭をガクリと垂らした。
「死ぬなぁぁぁ!」
慌ててジャックバッシュの元に駆け寄り胸に耳を当てた。
「……止まってる!」
間違いなく俺がとどめを刺してしまった。
「これを飲め!」
ポーションをジャックバッシュの口に流し込んだが溢れ出て来る。心臓は止まったままだ。
「ダメか!」
マスクをしている俺には口移しはできない。ポーションをジャックバッシュの全身に振りかけ、空になった瓶を投げ捨てた。
心臓マッサージしかない。アーヴァインの時と同じように、ジャックバッシュに跨がり心臓マッサージだ!
「死ぬな!」
【ドン!】
地面が脆かったのか、アーヴァインの時よりも更に沈んだ。
「おっと!」
足場が不安定になり、体制を崩した。
【ガチン!】
ジャックバッシュに頭突きをしてしまった。
「ぐほっ!」
ジャックバッシュが白目を剥いた。
「あ、はは……」
とどめを刺したかも……。
「…………グハッ!……ハァハァ……桃色の君……ま、まさか!く、く、く、口移しで……」
「目を覚ました!良かったぁ……」
殺したかと思った。
「く、く、口移し……キ、キ、キ、キッスを……」
ん?キス?何を言ってるんだ?人工呼吸のことか?俺はしてないぞ?バランスを崩して頭突きをしたからな、それで顔の距離が近かったから勘違いしてるな?
あ!額がパックリ切れている……。頭突きしたのは黙っていよう。
『ワォォォォォン!』
「!?あの声は!ウインドウルフ!城の中からだ!」
「プライマリーの魅了が解けたのかもしれん!」
「城の外に出られたらマズイな……ジャックバッシュ動けるか?」
「勿論だ!」
「よし!俺は城内に残ったモンスターを始末する!ジャックバッシュ達は城外に出て来たモンスターを頼む!」
「ああ任せろ!」
俺は城内へと駆け出した。
〜〜〜
広いロビーはモンスターの爪痕でボロボロだ。
「気配感知!……いるいる!」
至る所から気配を感じる。
「行くぜ!」
次々と出会い頭にパニックスマッシュで吹き飛ばす。
コボルト。ゴブリン。オーク。ニーボアまでいる。片っ端から排除して回る。
「気配感知!……このフロアからは感じない」
1階は終わったみたいだ。
次は2階だ。
順調に進んでいく。2階では、トリックラット、グレムリン、ラブオウル、そしてデーモンスパイダーの魔石を回収できた。
『ビーッ!ビーッ!ビーッ!』
そこで変身解除10秒前の警告音だ。
「もう終わりか!?仕方ない。どこかに隠れてクールタイムを過ごさないと……あそこが良いな」
部屋を覗くと豪華なクローゼットが見えた。急いでその中に入った。
「ふぅ……変身が解除されたか……5分間をここで乗り切ってやる!」
手に入れた魔石をショルダーバッグに入れて、デーモンスパイダーの魔石を握りしめ胸に添えた。




