誰をお探し?
アーヴァインの奥義?である酔剣は、色んな意味で想像を絶する破壊力だった。
しかし、2発の100メガショック・焔を使ったためか、それとも、体内全てのアルコールを消費したのかは分からないが、全身を覆っていた赤い稲妻は消えている。
表情からも覇気がなくなり、二日酔いのように顔面蒼白でゲッソリとしている。
「あはははははは!なかなか面白い余興だったわ」
「アーヴァイン!まだケツ虫2号が残っているぞ!」
「うっぷ……下品だよモモチロンちゃん。その呼び方はやめた方が良いよ」
「なっ!アーヴァインが言っ……分かった。プライマリーが残っているぞ!いけるか?」
「蓄えてたアルコールを使い果たしたし、起爆酒も無いから酔剣はもう使えないよ」
起爆酒?豪炎酒・焔の事か?
「そうか……分かった。あとは俺に任せろ!アーヴァインはここで休んでてくれ」
「あら?そこにいて大丈夫?」
プライマリーが地面を指差し微笑んだ。
「おいおいおい……」
地面にバキバキと亀裂が入り始めた。ファントムドラゴンとの戦いで、地面が脆くなったのか?だとしたらこの場所は危険だ。地下は空洞のはず!
「これ以上衝撃を与えると地面が崩落する!動くなよアーヴァイン!」
「ひっく……あぁぁぁ」
アーヴァインが地面に大の字で倒れた。
「うぉい!」
【ゴゴゴゴゴゴゴ!】
アーヴァインのダメ押しで地面が崩れ始めた。
「何やってるんだよ!動くなって言っただろ!」
グラグラと揺れ、ボコンボコンと地面が消えていく。
「マズイ!」
ファントムドラゴンが崩落に飲み込まれた。
「あははははははは!飛べないって不便ね」
不意に重力が無くなり、俺達の足場も落下し始めた。
「くそっ!少し痛いが我慢しろよ!」
アーヴァインを掴んで城に向かって放り投げた。
「あぁぁぁぁぁぁ……」
回転して飛んで行くアーヴァインが、気絶しているジャックバッシュに当たった。
「ぐふっ!」
「すまん!ジャックバッシュ!」
次は俺だ。早く脱出しなければ!
落下する地面を踏み台にしてジャンプした。
「とう!」
しかし、俺が地面を攻撃した判定になったみたいで、地面の方が猛スピードで落下し始めた。
「なにぃ〜!?ダメか!」
手の届く範囲には何も無い。他に助かる手段が無い!
「くそっ!」
見上げると、崩れた地面が次々と雪崩れ込んで来る。
【ビーッ……ビーッ……ビーッ】
変身解除10秒前だ。
「ピンチワン……」
地面が覆い被さり何も見えなくなった。
〜〜〜
「うっ……」
真っ暗だ……。何も見えない……。体も動かない……。
俺は死んだのか?
「……くっ!ハァハァ……生きてる!……俺は気を失っていたのか?」
どうやら生きているみたいだ。
「変身は……解除されているみたいだな」
ステータスを確認すると生身のそれだった。幸運な事に全快している。ダメージは受けてないみたいだ。
「くそっ!身動きが取れない!」
ここは地中だろう。崩落に巻き込まれて死ななかっただけでも運が良かった。
「ラッキーだな!いや、身動きが取れずに苦しんで死ぬならアンラッキーか……諦めてたまるか!うぎぎぎ!ハァハァ……動いた!」
わずかに体と地面に隙間が出来た。
「それにしても……なんだかこの土はヌメヌメするな……それに生臭い……」
動く度にヌチャヌチャと不快な音が聞こえる。
「泥の中にいるのか?ナレーション!俺はどこにいるんだ?」
『説明しよう!ファントムドラゴンの体内である』
「はぁ?ファントムドラゴンの体内だって?喰われたのか?いや、アーヴァインの100メガショック・焔で間違いなく死んでいただろ?どうして体内にいるのか説明してくれるか?」
『説明しよう!マスターの落下地点にはファントムドラゴンの死骸があり、破壊されていた逆鱗を突き破り体内へ侵入したのである』
「なるほど……それで助かったって訳か……だが、助かった訳じゃない!脱出する手段が無い!魔石も無い!ここで死を待つしかないだろ!」
『説明しよう!変身はできるのだ。目の前に魔石があるのである』
「へっ?目の前に……ある?……どこだ!真っ暗で何も見えないぞ!」
腕を動かすと、何か硬いものに当たった。触れてみると、側面しか手が届かない。俺の体よりも大きい。
「そうだ!シルクバットから手に入れたスキルがあった!暗視!」
真っ暗だった視界が緑になり見えるようになった。
「おお……見える!まるで暗視スコープだ!」
ここはファントムドラゴンの肉の中だ。上を向くと俺が通って来た狭い穴が空いている。そして目の前には、俺と同じ大きさのクリスタルのような物が見える。
「デカいな!これは魔石か?」
『説明しよう!ファントムドラゴンの魔石である』
「なんだって!?それじゃあこの魔石を使えば変身できるのか!?」
『説明しよう!変身可能である』
「いいぞ!早速変身だ!」
体を密着させて魔石に胸を当てた。
「ヴァイラス!!!」
『説明しよう!ファントムドラゴンの魔石に秘められたスキル、【従魔契約】【MP+50】【攻撃力+45】の中から1つ取得可能である』
MPプラス50!?凄い!これを取得すればスキルは使いたい放題になる!それに攻撃力プラス45も魅力的だ!だがそれよりも欲しいスキルがある!
「従魔契約だ!」
『説明しよう!従魔契約を取得した』
ヴァイラスピンクに変身完了。
「みんな生きててくれよ!」
ファントムドラゴンの体内へ侵入した道を広げつつ地上を目指す。途中、俺のショルダーバッグを見つけた。
ファントムドラゴンの体内から這い出ると次は土と石だ。硬い地面をかき分けながら突き進む。
「……あはははは!」
プライマリーの笑い声が聞こえた!地上はもう直ぐだ!
「もう諦めたかしら?私も忙しいのよね。私のお城を建て直さないといけないし、腕探しの穴掘りもしないといけないし……全部、民にお願いしちゃおうかしら」
「その必要はないぜ!」
地面から飛び出した。
「……しつこい!まだ生きてたの!」
「I’m ready!」
渾身のポーズ!
「左腕を探す手間は省けたわね」
「渡さないけどな」
プライマリーの足元に、アーヴァイン、ジャックバッシュ、シャロンが倒れている。
「みんな生きてるよな?」
「ハァハァ……モモチロンちゃん……良かった」
「桃色の君……逃げ……ろ」
「くっ!……私たちの事は……ハァハァ……気にしないで下さい」
ギリギリだが、みんな無事みたいだ。
「あははははは!ご覧の通り虫の息よ」
ゼルバリウスがいない!
「誰をお探し?もしかして執事長さんかしら?」
「私奴ですかな?」
俺の真後ろから声が聞こえた。振り向くとゼルバリウスが立っていた。
「無事だったか!良かった!」
しかしどこかおかしい。笑顔が歪んでいる。まるでAIのように……。
「モモチロンちゃん!ゼルから離れるんだ!」
アーヴァインが苦悶の表情で叫んだ。
「執事長さん。ヴァイラスを殺してちょうだい」
「かしこまりましたプライマリー様」
「なにっ!」
ゼルバリウスが俺に向けてペーパーナイフを投げた。
【キン!】
【ー5】
胸に当たったが大したダメージじゃない。
「どうしたんだ!?そうか!魅了されてるんだな!」
「滅相もございません。私奴は正気でございます」
続けて、上着の懐からペーパーナイフを取り出し、そのまま俺に向けて投げた。
【キン!】
【ー6】
「じゃあどうして!」
何がどうなってるんだ。ゼルバリウスが俺を攻撃するなんて。
「おや?おかしな事を聞かれますな」
【キン!】
【ー6】
「攻撃するのをやめろ!」
狂気に満ちた目で俺を見ている。ゼルバリウスは紛れもなく自分の意思で攻撃している。
倒れているジャックバッシュが、地面の砂を握り歯軋りをした。
「くっ!……何を言っても無駄だ!ゼルは……プライマリーの……僕にされたんだ」
「しもべ……だって?」
「いいえ。プライマリー様の執事でございます」
【キン!】
【ー7】
ダメージは無いに等しいが、全て俺の心臓に投げている。確実に殺す気だ。
「投げるのをやめろ!そんな物は効かないぞ!」
「そのようですね。それではこれはどうですかな?」
そう言うと、両手で執事服の胸元を握り、勢い良く左右に引き裂いた。
「何を!……それは!?」
ゼルバリウスの胸が露わになった。そこには、土属性であるイエローアントの、茶色い魔石が埋められている。
「その魔石はどうした!?」
「プライマリー様に頂きました」
「タネ明かしが早すぎない?あはははは!」
なんて事を……。
「いささか早計ではありましたが、プライマリー様より授かりしこの力。使用をお許しください」
「いいわ。ちゃちゃっと片付けて頂だい」
「それでは失礼して……メタモルコンバート!」
ゼルバリウスの胸の魔石が禍々しい光を放ち始めた。
「まさか……そんな……」
【ドックン!】
衝撃波がゼルバリウスから発生した。プライマリーの時と同じだ。
「やめろ!ゼル!」
【ドックン!】
「ダメだ!」
【ドックン!】
三度目の衝撃波のあと、黒と茶のオーラが立ち昇り、ゼルバリウスを包み込んだ。




