ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「うっぷ……ハァハァ……みんな無事かい?」
そう言うアーヴァインが一番辛そうだぞ!
「平気だ!」
「ジャックバッシュ殿!助かりました」
ジャックバッシュとシャロンは、即座に息を整え戦闘態勢をとった。流石だ!
「微力ながら、私奴もお力添えさせていただきます」
ゼルバリウスだ!微力なんてとんでもない!主戦力だぞ。相変わらず謙遜しすぎだ。
「まずは手分けしてあれを倒そう!街に出す訳にはいかないよ!」
アーヴァインが指差すのは、プライマリーが魅了しているモンスター達だ。城の入り口を破壊しながら続々と出て来る。
「おう!必ずここで食い止める!」
「承知しました」
「かしこまりました」
ジャックバッシュ、シャロン、ゼルバリウスが答えた。
「桃色の君!手を貸してくれるか?」
ジャックバッシュだ。桃色の君とは誰の事だ?俺を見ている……モモイロ……って俺か!?意表を突かれた!気付くのに遅れたが俺に言ってるみたいだ!
「も、もちろん!」
「何を言ってるんだ?……モモ……チロン?……下ネタか?破廉恥な!」
「んな訳あるか!も・ち・ろ・ん!って言ったんだよ!意表をつかれて焦ったんだ!しかも、モモチロンのどこが下ネタ何だ!」
「イチャついてる場合じゃないよ!来るよ!」
心外だ!ジャックバッシュなんかとイチャついてはいない!
『ワオォォォォン!』
先頭はウインドウルフだ!
風を纏って疾走して来る。
「いささか数が多すぎますね」
ゼルバリウスがペーパーナイフを取り出して、扇子のように広げた。
「私に任せてください!アイスフィールド」
シャロンがスキル名を発すると、辺り一面冷気で包まれ地面が凍り始めた。
【ピキピキピキ】
氷が地面を走り、ウインドウルフ達の足元を凍らせた。
『キャイン!』
氷で滑り転倒する。更に転倒したウインドウルフ達が次々と凍り始めた。
「やりますな!それでは上は私奴が」
ゼルバリウスがペーパーナイフを上空に投げた。
『ピィィッ!』
レッドイーターに突き刺さり落ちて来る。次に投げたペーパーナイフはラブオウルに突き刺さった。そして次々にペーパーナイフを投げ始める。百発百中だ!
『ブヒィィィィ!』
オーク達が窓を壊して飛び出してきた。
「デカブツは任せろ!」
ジャックバッシュが風を纏いオークの元へ跳躍した。
「コォォォォ……」
上空で腕を交差して力を溜めている。そして二匹のオークの間に着地して、両腕を左右に大きく広げた。二匹同時に裏拳だ。
「エアブロワー!」
更に、両拳からゼロ距離で風が爆発した。オーク達の頭が吹き飛んだ。
『ブヒィッ……』
「エアブロワー!エアブロワー!エアブロワー!」
ジャブ、フック、ストレート。縦横無尽に腕を振る度に風の爆発が起こり確実に仕留めている。なかなかやるじゃないか。
俺もやってやる!
「次は俺の番だ!」
「待って!モモチロンちゃんはプライマリーを頼むよ!残りは僕に任せて!」
モモチロンちゃんて……。
「そうだ!これはモモチロンちゃんが持っててよ。マジックバッグに入らなかったんだ」
プライマリーの左腕を渡された。そして勇者ウインク。真っ青な顔色じゃなければ決まっていたな。
プライマリーの左腕か……。マジックバッグには生きている物は入らないって言ってたな。こんなカラカラな状態でも生きてるって事か。絶対に奪われる訳にはいかない!ショルダーバッグに入れた。
「8メガビット!」
アーヴァインが駆け出した先には、ゴブリン、アクセルビー、コボルト、レイビその他諸々が押し寄せる危険地帯だ。
「8メガショック!」
流石勇者だ。稲妻を纏った剣を振り、並みいるモンスターを次々と斬り伏せていく。電光石火とは正にこの事だ。
上等だ!プライマリーと勝負してやる!上空でホバリングしているプライマリーに指差した。
「プライマリー!あとはお前だけだ!お前は俺が倒す!」
「あははははは……あなたには無理よ!それに、兵隊はまだいるわよ。出て来なさい!」
【ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!】
突然地面が激しく揺れ始めた。
「な、何だ!?地震か!?」
「うわっととと!」
アーヴァインが立ち止まった。
「何事ですか?」
シャロンは片膝をつく。
「皆さん気を付けてください!地面が割れます!」
ゼルバリウスが言った直後、バキバキと激しい音を立て、地面に亀裂が入った。亀裂は俺の足元まで伸びて来た。
ヤバイ避けるスキルがないから動けない。
その時、亀裂は俺の目の前で止まった。
「止まった……」
揺れが収まった。
「何か来る!」
ジャックバッシュが、亀裂を睨み叫んだ。
『グオオオオオオォォォン!』
ビリビリと空気が震える。
「この声は……」
聞き覚えがある!二度と聞きたくなかった。自然と笑顔になってしまう。静寂が恐怖を加速させる。
【ドゴォ〜ン!】
地面が盛り上がり、爆発音と共に巨大なドラゴンが姿を現した。
『グォォォォン!』
「みんな下がって!ドラゴンだよ!!」
アーヴァインの顔色が更に悪くなった。
「ド、ドラゴンだと!?」
ジャックバッシュが見上げながら言った。
「どうしてこのような場所に……」
普段表情を変えないシャロンが、冷や汗を垂らし恐怖に慄いている。
「ずっと城の地下にいたのでしょうか……」
自分が生活していた足元にドラゴンがいたとは、ゼルバリウスも知らなかったみたいだ。
ドラゴンの左目が潰れている。間違いない。このドラゴンは、ヒトツメの屋敷の地下にいたファントムドラゴンだ。
「ここにいたのか!」
となると、俺が奴隷の時にセバスに連れて来られた場所は、ヒトツメの屋敷の地下じゃなくて、このギャリバング城の地下だったのか?
だとしたら、ヒトツメはギャリバング城内の誰か、と言う事になる。そして執事のセバスは、執事長のゼルバリウスに聞けば何か知っているかもしれない。
『グォォォォォォォン!!』
今はそれどころじゃない!ファントムドラゴンが地面をかき分け地上に這い出て来た。
「やるしかない!……だが、俺の攻撃が通用するのか?」
Fランクのヴァイラスでは、プライマリーへ攻撃しても通じなかったが、ファントムドラゴンにはどうだろうか?やはり通じないかもしれない。
他に高ランクの魔石は無いのか?城の中に、高ランクのモンスターはいないのか?有ったとしても、次の変身まで5分間のクールタイムが必要だ。その間もドラゴンは襲って来る。ギャリバングを破壊する。一番強い俺が変身を解除したら全滅だ……。どうすれば……。
いや、考えていても始まらない!やるだけやるさ!!
「投石!」
小石がファントムドラゴンの前足に当たった。カツンと乾いた音を立てて飛んで行った。
「くそっ!全くダメージが入らない!パニックスマッシュ!」
懐に入りジャンプして顎を叩く!
【ぱふ】
硬い!全くビクともしないじゃないか!
「目を狙うしかない!」
槍が刺さったように、柔らかい部分を攻撃するしか残された方法は無い。
「投石!」
ファントムドラゴンが目を閉じた!小石は瞼に当たりカツンと弾かれた。
「ダメだ!攻撃が通らない!」
『グォォォォォォォン!』
万事休す……。




