き、効かないぜ?
「何やってんだか……」
あいつは本当に勇者なのか?全くもって締まらない。
『『『『『ブヒィッ!ブヒィィィィィ!』』』』』
「ゴブリンの次はオークか!」
二階のバルコニーにオーク達が現れた。そして勢い止まらず、手すりを破壊して飛び降りた。地上には民衆がいる。あの巨大で乗られたら押し潰されて即死だ!
頼みのアーヴァインは既にグロッキー状態。何もされてないのに!それで良いのかアーヴァイン!根性見せろ!
「ハァハァ……うっぷ……オークオロロロロ……」
ありゃダメだ……。壁に手を突き、酔っ払いの見本のように吐き続けている。やっぱり下に戻らないと!
と、手摺に手をかけたその時、あの声が聞こえた。
「エアダスター!」
『『『『『ブヒィィィィ!!』』』』』
突風がオーク達を城内に押し戻した。
「ジャ……」
ジャックバッシュ!恥ずかしげもなく、ダサスキル名を大声で叫ぶジャックバッシュ!相変わらずダサ過ぎる……。しかし、勇者よりも後に駆けつけて、美味しい所を掻っ攫うなんて有りなのか?普通逆じゃないか?でも助かった!ジャックバッシュも魅了されてなくて良かった。
「私の魅力が分からないなんて!あなたも何なの?」
魔拳闘士ジャックバッシュだよ。
「俺は、魔け……」
負け?
『チャリン』
小銭が落ちる音が城内から聞こえた。……まさか。
「百ギャリィィィー!!!」
目がGに変わったジャックバッシュは、体に風を纏い軽やかに舞い上がると、城内へ向かって嵐のように去って行った。
「おいおいおい……それで良いのか勇者一行……」
「邪魔者は退場したみたいね。そろそろあなたにも退場してもらおうかしら」
「冗談だろ?お前を倒してゲームクリアだ!」
「ゲームオーバーの間違いでしょ。私のために死んでちょうだい!」
プライマリーがそう言った次の瞬間、レイピアを俺に向けて放った。一直線に心臓へと向かって来る。俺はそれを左に避けて……ダメだ!避けようとしても、それ系のスキルが無いから全く動こうともしない。
「ピンチワン!」
ピンクの閃光が俺の胸に突き刺さった。
「かはっ!」
プライマリーが俺の心臓にレイピアを突き刺した。これはダメかもしれない。死……。
【ー19】
……ん?マイナス19ポイントのダメージ?少なくないか?
【キィン!】
金属音が鳴り響いた。
「は?」
「は?」
……刺さってない!レイピアは心臓には達していない。それどころか、胸に当たっただけで傷一つ付いていない。
目を見開くプライマリー。呆気に取られる俺。
「そ、そんな……でもまだよ!」
再びレイピアを突き刺した。ピンクの閃光が今度は喉に当たった。
【キィン!】
【ー21】
「は、弾かれた?」
「き、効かないぜ?」
ビビった!2回も攻撃を受けてしまった。全く攻撃が見えなかった。そしてダメージは20ポイント前後なのにも驚いた。急所に当たったが、その程度のダメージ。ラスボスからの急所攻撃なのに!普通は即死だ。ヴァイラス強ぇ〜!
だが、これ以上はダメージを受けたくない。残りHPは510ポイント。時間にして8分30秒だ。急がないと。
「今度はこっちから行くぜ!」
「いいえ!まだ私のターンよ!」
「いっ!」
【ー20】
ピンクの閃光が眉間に当たった。マイナス20ポイント。残り500ポイントを切った。
【パキィン!】
「馬鹿な!」
レイピアが折れた。動揺して動きが止まった今がチャンス!
「今度こそ俺のターンだ!」
革の鞭を振り下ろした。
「遅い!」
かわされた。革の鞭は床に当たり、線状の溝を作った。そして跳ね返った鞭は俺に当たった。
【ー1】
「まだだ!」
縦横無尽に振り回すが、プライマリーに全てかわされる。跳ね返って俺には全て当たる。なんなんだ!
「私のお城を壊さないでもらえるかしら?」
「お前のじゃないだろ!」
またかわされた。また地面に当たった。また跳ね返って俺に当たった。そしてついに、革の鞭が悲鳴をあげた。
「鞭が!」
床を叩き続けたせいで、革の鞭が千切れてしまった。
「あらあら。これでお互い武器は無くなったわね」
「関係ないさ」
革の鞭を投げ捨て拳を握った。パニックスマッシュで吹き飛ばしてやる!
「慌てないで。私にはまだ兵隊がいるわ」
「何っ!?」
「来なさい!」
『『『『『ブィーン』』』』』
「……この音は!?アクセルビー!」
振り向くと、レースのカーテンを破り、窓枠を破壊してアクセルビーが飛び出して来た。
「うおっ!人に城を壊すなとか言っといて、自分も壊してるじゃないか!」
「あなたのせいよ!」
「横暴だ!パニックスマッシュ!」
ぱふっと可愛い音を立て、アクセルビーを吹き飛ばした。
『『『『『ブィンブィーン』』』』』
「パニックスマッシュ!パニックスマッシュ!」
ぱふぱふぱふと可愛い音を奏で、轟音と共に空の彼方へ吹き飛ばしていく。しかし、一向に数が減らない。
「多過ぎる!何でこんなにいるんだよ!」
「オークションで買ってもらったの。まだまだいるわよ」
オークションでモンスターを買い占めてた奴は、プライマリーが魅了した王族関係者だったのか!
「ふざけやがって!」
これじゃキリがない。足元には幾つもの鞭の跡と、その時にできた小石がある。作戦通り!……ツッコむ人がいないから声には出さない。それを拾い投げつける。
「投石!」
『『『『『『『ブブブ』』』』』』』
石は、アクセルビーを貫通して行く。嘘みたいな威力だ。石を拾い次々と投げる。
『ブブ……』
そして、全てのアクセルビーを倒した。
「時間稼ぎにもならなかったな!次はプライマリー!お前の番だ!」
片足を上げて、投球フォームを取った。
「どうかしら」
ほくそ笑むプライマリーの前に、ギャリバング王が立ち塞がった。
「……ラン様」
「おいおいおい!これじゃ攻撃できない!」
アリスもプライマリーを守るように前に立った。そして王族達が全員並んで俺を見る。みんな目が虚だ。
「次はあなたの番みたいよ。動かないでね」
プライマリーが、ギャリバング王の首に折れたレイピアを当てた。
「卑怯だぞ!」
「卑怯?私の兵隊は、あなたに次々と殺されたのよ。でも私は、誰一人として殺していないわ。どっちが卑怯なの?」
「向かって来たからだ!正当防衛だよ!だから人質を取らずに戦え!」
「あなたが死ねばこの人達は死なない。動いたらその度に一人ずつ殺していくわ」
「くそっ……」
王族達を人質に取られた。スピードスターで距離を積めるか?いや、プライマリーも素早い。俺が攻撃するよりも先に折れたレイピアを首に刺す事ができる。下手に動いたらギャリバング王が死んでしまう。どうすることもできない。
「最悪だ……」
自然と笑顔になってしまう。おそらく絶望だ。
「ゲームオーバーね。あははははは!」
プライマリーが笑ったその時、辺りが冷気に包まれた。
「……寒いわ。何かしら?」
「これは!」
勇者一行にはもう一人いた!トリを飾るのはシャロンだ!
背後に気配を感じる。振り向くと、バルコニーの手摺にシャロンが立っていた。
「シャ……ごほん!……シャロン!ナイスタイミングだ!」
裏声は忘れない。
「……アイスフィールド」
シャロンが腕を払ったのと同時に足元が凍りついた。
「助かった……って、おいおいおい!俺の足が凍ってるぞ!」
膝まで凍り付いて身動きが取れなくなった。
「……ラン様」
「嘘だろ!魅了されてるのか!?」
シャロンの目は虚。まさかの魅了状態だった。
「ピンチワン……」




