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民よ民

「人が多いな」


「……」


「これ以上進めそうにないな」


「……」


「端っこだけどここでいいか?」


「……」


「アーヴァイン達はどこに行ったんだろうな?」


「……」


俺は今、ルゥルゥと二人きりだ。周りには大勢の人がいる。

言ってる事がチグハグだが、つまりはそう言う事だ。

人が多くて、アーヴァイン達と、はぐれてしまった。

ルゥルゥに話しかけているが無視され続けている……。最悪だ。


場所は、ギャリバング城の目の前にある広場。今だけは、城門が開放されて敷地内に入る事が許されている。と言うか、敷地内に入る事が王命だった。

ただ、入ったは良いが、人の波に揉まれてアーヴァイン達を見失い、気付いたら端の方に追いやられていた。隣には何かの小屋がある。何か匂う……。


背伸びをして城を見ると、城内への正面入り口は固く閉ざされていた。二階の左右、そして三階中央に広いバルコニーがあり、三階のバルコニーからは、手摺を覆うように赤い垂れ幕が下がっている。中央には、金の鳳凰が描かれている。


「レッドイーターに狙われそうだな」


「……」


赤い垂れ幕を狙っているのか、上空ではレッドイーターが旋回している。


『ピィィィ』


「のどかだねぇ」


「……」


レッドイーターを見上げていると、何やら周囲がざわめき始めた。

視線を落とすと、3階のバルコニーが何やら慌ただしい。


「そろそろだ」


「……」


そして今、城のバルコニーに人が出て来た。

何やら説明が始まった。

内容は、このあとギャリバング王が出て来て、ありがた〜いお言葉を述べられる。そしてロンベルト皇太子出て来て、その次に第二皇子とその妻となる皇女が出て来るとのこと。

隣の小屋からヒヒンと聞こえた。


「馬小屋みたいだな」


「……」


どうやら馬小屋のようだ。匂いで分かってはいたけど。


「民よ!」


出て来た。ギャリバング王を見るのは二度目だ。

そんな事よりも、ルゥルゥと二人きりで会話が無い事をどうにかしたい。ここに来るよりも先に、ちゃんと話をしておかないといけなかった。皇子の結婚相手より、ルゥルゥとのわだかまりを解く方が重要だ。


「始まったな」


「……」


ルゥルゥは俺の隣でバルコニーを見上げている。金色の綺麗な瞳でギャリバング王を見つめている。狼耳はフードを被っているので見えない。これは混乱を避けるためにと、シャロンが気を利かせて購入してくれた。確かに、伝説のゴールドウルフ族がこんな所に居たとなれば、第二皇子の結婚相手なんかより目立ってしまう。


「「「「「わぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」


歓声が上がった。

いつの間にかギャリバング王のスピーチは終わっていた。

そして、ロンベルト皇太子とセリーナ皇太子妃が出て来た。その娘アリスもいる。トリックラットはいないみたいだ。

その後から、見知らぬ若者とベールで顔を隠した女性が出て来た。第二皇子と結婚相手だろう。


「あれが結婚相手みたいだ」


「……」


「綺麗なドレスだな」


「……」


ダメだ……。返事をしてくれない。

これ以上は無理かもしれない。アーヴァイン達と一緒じゃないと口も効いてくれない。どこに行ったんだろう?辺りを見回してもアーヴァイン達はいない。例えいたとしても、この状況じゃ移動はできそうもない。

ん〜……。

考え方を変えよう!今が、わだかまりを解くチャンスなのかもしれない。最高のタイミングだ。

ルゥルゥと目が合った。


「ルゥルゥ聞いてくれ……」


「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」


第二皇子のスピーチも終わったみたいだ。タイミングが悪かった……。

これから結婚相手のスピーチが始まるみたいだ。

結婚相手が一歩前に出てベールを上げた。整った美しい顔をしている。


「「「「「おぉぉぉぉ!」」」」」


会場がため息で包まれた。


確かに文句なしの美しさだ。絶世の美女とは彼女のことだろう。世界一美しいと言っても過言じゃない。ルゥルゥの方が綺麗だけど……だだ、あの顔は……。


「どこかで見たことあるような……ん〜…………あっ!思い出した!」


あの顔には見覚えがある!よく知っている顔だ!


「あいつは、俺の金とアイテムを盗んだ、トレジャーハンターのランだ!!!本当に白馬の王子様を捕まえたのか!」


上手いことやったみたいだな。悔しいが、ランから金を返してもらうのは諦めよう。簡単に話しかけて良い相手じゃなくなった。門前払いが関の山だ。


「私はランと申します」


そう言うと、ランが手の平を上に向けて口元に添えた。


「あれはテンプテーション?モンスターでも呼ぶ気か?」


小さな声で何かを呟いた後、優しく息を吹きかけた。


「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」


民衆からため息が漏れる。本当に美しい……。


「美しい……じゃない!やっぱりテンプテーションだ!……まさか人間を魅了するつもりか!?」


キラキラとピンクに輝く粉のような物が、あっという間に空一面を覆い、ゆっくりと降りかかり広場を包んだ。


「綺麗……」


「うわぁ〜!素敵」


それを見た民衆は、拝んだり、両手を広げて全身で浴びようとしている。


「ルゥルゥ!息を止めろ!!」


ふざけやがって!何が目的だ!

ざわめき立っていた民衆は、一人、また一人と静かになり動かなくなっていった。どうやら粉を吸い込んだみたいだ。魅了されたのか?


「うっ!」


そろそろ苦しくなってきた。息が持たない!


「うぐっ!……ゔゔゔっ!……」


もう限界だ!

諦めかけたその時、風がテンプテーションを振り払った。


「ぶは〜!ハァハァ……ギリギリだ……ハァハァ……ランは何を考えているんだ!?」


そのランが口を開いた。


「民よ民……この世で一番美しいのは誰?」


「「「「「それはラン様です!」」」」」


俺以外の民衆が口を揃えて答えた。


「はあ?」

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