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1億!!!

必ず助ける!


「とは言ったものの……金が足りないんだよな……無理じゃないか?」


そもそもアーヴァイン達のテンションがおかしい!俺が何とかするだろう。的な雰囲気で送り出されたが、金が無いのに何とかなる訳がない。熱血で解決できるとでも思っているのか!?それは勇者だけだ!


「それでは皆さん宜しいでしょうか?アクシデントはありましたが、勇者アーヴァインによる素晴らしい捕獲劇に早変わり!最後の商品に華を添えるショーとなりました……ここで終わる訳にはまいりません……オークションを再開いたします!!」


「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」


始まってしまう!

しかし、俺はまだステージの袖にいる。出るタイミングを失ったからだ。

だってそうだろ?黒の布を全身に巻き付けた男が出て行ったら注目の的だ。ステージ上で外す事にでもなれば、ヴァイラスピンクが公の元になる。で、俺との関係が疑われて、アーヴァイン達の証言により俺は消滅する。

それなら変身を解除して、布を取ってから出ればとも思ったが、それはそれで目立ってしまう。勇者一行だと勘違いされたくない。

ここから出る方法は分かっている。変身したままでスピードスターを使い、誰にも見られないように素早く移動するしかない。

しかし出てどうする?また競りに参加するのか?明らかに金が足りないのに?それよりも、この場で獣人の少女の檻を破壊して拐って逃げた方が良いのでは?


「先程の続きから参ります!4千万ギャリーからのスタートです!」


「5千万!」


始まってしまった。もう手段を選んでる場合じゃ無い!


「こうなったら檻を壊して助ける!I’m rea……」


少女が顔を上げて虚な目を向けた。その胸には奴隷紋がある。そうだ……奴隷紋……あの場所から強制的に助け出しても、奴隷紋がある限り逃げる事はできない。彼女が死んでしまう。


「くそっ!……スピードスター!」


俺は咄嗟にスピードスターで飛び出した。


「6千万」


俺は入って来た正面の扉までダッシュした。


「7千万」


そして入り口付近の席に座った。この布だらけの格好で元の席に座るにはリスクが高すぎる。いつでも姿を消せるように出入り口付近で待機することにした。


「8千万」


それに、ここは全員が見渡せるし、ステージから離れているから薄暗い。ここなら俺も競りに参加できそうだ。


「9千万」


ふぅ〜……行くぞ!


「1億!!!」


俺の声に歓声が上がる。


「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」


そして会場が静まり返った。

しかしそれも束の間。


「1億1千万」


だろうな。


「1億2千万」


ダメだ止まらない。


「1億3千万」


俺が出せるのは1億5千万までだ。


「1億5千万」


こうなったら最後の賭けだ!手に入れたばかりのスキルを使う!頼む効いてくれ!


「威圧!1億5千万!!!!!」


「「「「「「「「「うっ!」」」」」」」」」


「………………」


静まり返った。

何人かは白目を剥いて気を失った。

俺と競っていた貴族達は、札を上げようとしているが、冷や汗を垂らしてブルブルと震えている。

オークショニアも意識を保つのがやっとらしい。

威圧が効いたようだ。


「……っ……ハァハァ……1億5千万……他に……ハァハァ……778番の方……落札……です……」


オークショニアは崩れるようにその場に倒れ込んだ。

地面で木槌が叩かれた。


「良し!」


唯一こちらを向いていたオークションニアが倒れた今、誰1人としてこちらを見ている者はいない。変身を解除するなら今しかない。


「ナレーション変身解除してくれ!」


『説明しよう!変身を解除するのである』


変身が解除された。

例え見られていたとしても、布を全身に巻いているから大丈夫だとは思う。誰も見てないのを確認したのは、リスク軽減のために念のためだ。布を取り、ため息を吐いた。


「ふぅ〜……上手くいって良かった……」


威圧のスキルは、名前から大体の効果は想像がついたが、俺が思ってるような効果なのか確証が無かった。しかしそれをナレーションに聞いている時間は無かった。

もしかしたら一瞬怯ませるだけかもしれない。効果は1人だけかもしれない。

だが、ヴァイラスピンクに変身していればスキルの効果が上がる。それを利用すればどうにかなると願うしかなかった。全ては賭けだった。

昨日に引き続き、今日もツイてる。賭けは俺の一人勝ちだ。


「よう!こんなとこにいたのか」


「ジャックバッシュ!」


「お疲れさん!どうやら上手くいったようだな」


「はぁ〜。ほんと疲れたよ」


「まだ終わってないよ!迎えに行ってあげないとね」


「そうだな。アーヴァイン達はどうする?」


「私達も同行してもよろしいですか?」


「勿論だよ。ありがとうシャロン!」


4人で正面の扉を出ると、関係者に呼び止められて預けていた装備品を受け取った。そして別室に案内された。

そこには、羊皮紙を持った黒服の男と、その隣に獣人の少女が立っていた。両手首には、あの黒い手枷を嵌められ、重たそうに両腕を前にダラリと垂らしている。頭も前に倒れているので顔は見えない。


「お買い上げありがとうございます」


黒服の男に頭を下げられ、1億5千万ギャリーを支払うように言われた。アーヴァインに預けていたギャリーをマジックバックから出してもらい支払った。


「確かに……それでは奴隷契約についてご説明いたします。まずは、この奴隷紋ですが……」


奴隷紋が見えるようにと男が少女の顔を上げた。あの時よりも痩せたみたいだ。目は虚で頬はこけている。栄養のある物は食べさせてもらえてないみたいだ。


「……っ!!」


少女と目が合うや否や鋭い眼光で睨まれた。見知らぬ男に買われて不安なのだろう。俺にとっては再会だが、彼女にとっては初めて会った事になる。などと考えていたが、どうやら違うみたいだ。彼女の瞳には、俺に対する激しい怒りを感じる。何故だ?俺が何をしたって言うんだ?……まさか!慌てて自分の顔を触った。やっぱりそうだ。


「最悪だ……」


笑っていた。おそらく、あの黒い手枷を見てからだと思う。


「……以上が奴隷契約のご説明となります。何かご不明な点はございますか?」


全く聞いてなかった。後でナレーションに聞こう。


「いや、無い」


「ありがとうございます。それではこちらに、お客様の血を一滴頂きます」


人差し指に針のような物を刺された。チクリとした。


「いっ!」


俺の血が羊皮紙に垂れると淡く輝いた。少女の奴隷紋も、それに呼応するようにジワリと光を放った。


「奴隷契約は以上です。これよりこの獣人はお客様の所有物となりました」


所有物……。


「……そ、そうか」


俺はその言葉に罪悪感を感じ、睨み続ける少女から目を逸らした。

本当にこれで良かったのだろか?


「危ない!」


アーヴァインの声が聞こえた。と思った次の瞬間、顎に激痛が走った。


「ぐはっ!!」


【ー21】


21ポイントのダメージを受けた。狼耳の少女だ。黒い手枷で俺を殴った。ヤバイ!一撃で瀕死だ!


「きゃぁぁぁぁぁ!!!」


そして、狼耳の少女が胸を押さえて苦しみ始めた。どうやら俺を殴った事により、奴隷紋が痛みを加えているみたいだ。


「ぁぁぁ……」


狼耳の少女が気を失った。


「アスカ!しっかりしろ!アスカ……目を……」


そして俺も……。


これが、俺と彼女の最悪な再会だった。

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