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頑張れ〜

「知り合いってゴールドウルフ族だったんだね!?」


驚愕の表情でステージを見つめるアーヴァイン。


「黄金の獣人……初めて見ました。本当にいたんですね……驚きました」


シャロンが珍しく目を見開いている。

そんなに凄い子なのか?確かに今までギャリバングでは人間しか見ていない。いや、キャッスリンがいたな……熊の獣人が。

俺は最初にあの子を見ていたから、この世界には獣人もいるだろう位にしか思っていなかった。だが、それは違った。この世界でも獣人は珍しいんだ。だとしたら……マズイ!


「アスカ……あの子は無理だ。最低でも10億は必要だ!」


やはりそうなるか!


「そこまで珍しいのか?」


「当たり前だ!絶滅したはずの獣人だぞ!!」


「……でも何とかして助けたい!」


「伝説の獣人!ゴールドウルフ族の少女です!それでは参りましょう!1千万ギャリーからのスタートです!」


スタートから額がデカ過ぎる。さっきまでとは会場の雰囲気も明らかに違う。ピンと張り詰めた緊張感と、それを上回る期待感。息苦しささえ覚える。


「2千万」


どよめきが起こる。


「3千万」


どよめきは止まらない。


「4千万」


どよめきは喝采に変わる。


「上がり方がおかしいぞ!」


「アスカ!」


「アスカ殿!」


「くっ……」


1千万単位で上がっていく。でも俺は10億なんて大金は持っていない。1億ちょっとで安心していた。俺にはもう、打つ手が無い!諦めるしかないのか……。


『ワオォォォォン!!』


「!?」


突然、狼の遠吠えが聞こえた。


「何だ何だ!?」


「今の鳴き声は何ですの?」


会場に違う緊張感が走る。


「……」


「大変だ!ウインドウルフが逃げたぞ!!」


ステージの袖からウインドウルフが現れた。


『グルルルル……』


「ウ、ウインドウルフだ!!」


オークショニアの目の前に飛び出して来た。


「うわぁぁぁ!く、来るな!」


腰を抜かして小さなハンマーを振っている。


『ワォォォォォォォン!』


遠吠えに集まるようにウインドウルフが4匹現れた。あいつらはオークションの商品だ。


「きゃぁぁぁぁぁぁ!」


「逃げろぉぉぉ!」


会場はパニック状態だ。

そこへアーヴァインが立ち上がり声を上げた。


「皆さん落ち着いて!僕たちに任せてください!」


「見ろ!勇者アーヴァインだ!」


「勇者様だわ!」


「勇者がいるなら安心だ!」


「全員動かないでくれ!直ぐに終わらせる!」


流石勇者とその仲間。パニックが一瞬で収まった。


「ジャック行くぞ!シャロンは皆んなを守って!」


「任せろ!」


「承知しました!」


三人は颯爽とステージへと駆け出した。


「私のウインドウルフだ!頼む!殺さないでくれ!!」


「任せてください!全部生きたまま捕まえますよ!」


アーヴァインが貴族に笑顔を向ける。

流石だなぁ。


「頑張れ〜」


3人に手を振った。

振り向いたジャックバッシュがサムズアップする。しかしそれをステージに向けた。


「何やってんだアスカも来るんだよ!」


「え?俺も!?」


「アスカはステージの裏に回って!他にも檻から出てるモンスターがいるかもだから!」


「えぇぇぇ!!」


嘘だろ!俺は変身しないと何もできないぞ!足手まといになるだけだ。


「だそうだ!頼んだぜアスカ!」


嬉しそうなジャックバッシュ。満面の笑みだな。


「え〜い!なるようになれ!スピードスター!」


俺はダッシュでステージまで降りて、袖から裏へと向かった。


「ハァハァ……檻が壊れてる……」


壊れた檻は1つだけだ。他のモンスターは大人しく檻の中にいる。


「他は……大丈夫そうだな。さて、戻るか……いや、待てよ……飛び出して来た5匹のウインドウルフは商品だろ?」


確か、この折で競り落とされたウインドウルフは全部で6匹だったはずだ。


「だったら……もう1匹いるはずだっ!?」


咄嗟に振り向いた。


『グルルルルァァ!!』


ウインドウルフが、飛びかかって来ていた。


「いっ!?」


転がって避ける。


『ヴゥゥゥゥ』


着地して振り向いたウインドウルフは、頭を低くして風を纏い始めた。


「嘘だろ!」


武器は何も持っていない!ショルダーバッグは預けたから魔石も無いぞ!


「くそっ!何か使えそうな物は無いのか!?」


モンスターが入った檻やドラゴンの牙しか残っていない。重くて運べなかったんだろうけど、ことごとく使えない物ばかりだ。レアなアイテムは係員が持って行ったみたいだ。


「何も無いっ!」


「「「「「わぁぁぁぁぁ!!!」」」」」


会場から喝采が聞こえた。アーヴァイン達がウインドウルフを倒したのか?


『ガウ!』


来た!


「スピードスター!」


横に飛んで回避した。


「うわっ!」


勢い余って、棚にぶつかりオークションの商品が散乱した。


「いてて……ん?これは?」


レア度が低いおまけの魔石セットだ。幻属性の魔石もある!


「使わせてもらうぜ!ヴァイラス!」


『説明しよう!グリムモンキーの魔石に秘められたスキル、【威圧】【力+4】【素早さ+5】の中から1つ取得可能である』


あの時、森で逃げられたモンスターだ。


「威圧にする」


『説明しよう!威圧を取得した』


「ふぅ〜。危ないところだった。これで倒すことが……いや、殺さないでくれって言ってたな。ちょうどいいスキルを覚えたぞ。この威圧を使って……」


「アスカ!無事か!?」


あの声はジャックバッシュ!こ、こっちに向かって来ている!急いで変身を解除しなければ!いやダメだ!変身解除の瞬間を見られてしまう!ヤバイ!!


「アスカ!」


「ジャックバッシュ!」


「……アスカなのか?……どうしたんだ?何だ?その格好は?」


間に合わなかった。


「いや……あ、あれだ……ウインドウルフに驚いて転がったら……こうなった……みたいな?」


言い訳が苦しいか?


「わははは!ウインドウルフ相手にビビり過ぎだろ!」


バレてない!

俺は咄嗟に、商品にかけてあった黒い布を体に巻き付けた。今の格好は、全身黒色の布を巻き付けた状態だ。


「うるせぇ!ビビって何が悪い!俺は弱いんだよ!早く助けてくれ!」


「わはは!任せろ!……よっと」


ジャックバッシュはウインドウルフに瞬時に近接して後頭部に手刀を落とした。


『キャイン……』


一瞬で終わらせた。流石だ。


「ジャック!終わったみたいだね」


アーヴァインとシャロンが、それぞれウインドウルフを抱えて現れた。


「ああ!こいつで最後だ」


「それじゃあ行こうか。僕達はこの子達を安全な場所まで連れて行くよ……って何その格好?」


「ビビったんだよ!」


「ふふ。なかなか似合ってるよ!でも表に出るのは防いでくれたんだよね?ありがとう」


「ああ……」


「あと少しでオークションが再開されるよ。アスカは戻って参加するんだよ」


「分かった!」


「知り合いの獣人の子を助けてあげてください!」


「必ず助けるよ!」


「さぁてオークションの続きだ!行って来い!」


「ああ!行ってくる!!」


俺はステージに向かい、3人はウインドウルフを抱えて関係者のいる部屋に向かった。

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