あれは亜種だね
武器屋から追い出されるように外に出された。
「……ん?」
通路の両側に大勢の人が並んでいる?さっきまでは普通に歩いていたが、何か始まるんだろうか?みんな同じ方向を向いてるぞ。何を見てるんだ?……あれは?
「馬車だ!」
視線の先から、一列に並んだ馬車が何台も向かって来る。その周りには重装備の護衛がついている。
「何かあったのか?」
「オークションに出品する商品だよ」
俺の独り言に、隣のおばさんが答えてくれた。
「へぇ。今ギャリバングに着いたところかな?」
「違う違う!今回は特別だからね。ほらあそこを見てごらん」
おばさんは、向かいのアイテム屋の2階を指差した。その窓から商人風の男達が、羊皮紙片手に荷台を覗き込み品定めしている。
「出品する商品を事前に見せているのさ。今回はどれも高額間違いなしだろうねぇ」
「なるほど」
他の建物からも顔を出している。
後ろを向くと、武器屋の店員が2階の窓から顔を出していた。
「おいおい!」
商品を見るために急いでたのか。剣、槍、斧はオークションで手に入れたコレクションだな!
先頭の馬車が目の前を通過した。荷台には幌が無いから荷物が丸見えだ。早速、背伸びして荷台を覗き込んだ。
「どれどれ……」
先頭の馬車には、美しい装飾が施された箱が載っていた。その箱は蓋が開いており、中には鉄の腕輪が乗っていた。あれがオークションに出されるのか?鉄の腕輪だろ?オークションに出す程の品物には見えない……聞いてみるか。
「鉄の腕輪って珍しいのか?」
「いんや。珍しくはないねぇ。まぁ、最初はこんなもんさね。もしかしたら、何か特殊な力が付与されているのかもね」
「へぇ〜……オークションはあまり期待できないかも」
と思っていたら、次の馬車には珍しいアイテムが、ごっそり乗っていた。巨大な牙や、カラフルな毛皮、魔石を加工したネックレス等、豪華なアイテムが乗っている。
アイテムの次には、武器、そして防具が通過した。
武器が通過した時には、武器屋の二階から奇声が上がっていた。
装備品が通過して、次の馬車は鉄製の檻になっている。
『グルル』
鎖で繋がれたウインドウルフが10匹現れた。
「モンスターもいるのか!……あれはテイム用だな?」
「それもあるけどねぇ、装備の素材がメインだろうね」
ゴブリン。アクセルビー。オーク。トリックラット……様々なモンスターが種類毎に運ばれて行く。
「おっ!珍しい、あれは亜種だね」
「亜種?」
檻の中には真っ白なレイビが乗っていた。
「へぇ。綺麗だな」
「亜種はねぇ、なかなかお目にかかれないんだよ」
レイビの亜種は怯えているのか、丸くなって目を閉じている。そして動きもしない。あれって本当に生きてるのか?
モンスターの次には、人が乗っている馬車が通過した。
「奴隷か……」
老若男女、様々な人間がギュウギュウに詰められている。
彼等を助け出したい……。無理なのは分かっている……。
ヒトツメが脳裏をよぎり、自然と笑顔になる。
「俺にもっと力があれば……」
檻の中の人間は、全員、諦めた虚な目をしている。あの気持ちは分かる……。
最後尾の馬車が近付いて来た。
「「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」」
馬車を覗く参列者達から感嘆の声が上がる。
「何が乗ってるんだ?」
「分からんよ。でも、あれが今回のメインなのは確かだね」
最後の馬車が目の前を通過した。この馬車には人が一人だけしか乗っていないみたいだ。
「……ほぉぉぉぉ!これは美しい!本当に実在しておったのか!!!」
「獣人か!」
馬車には、黄金に輝く美しい髪をした狼の獣人が乗っていた。
「狼の獣人は初めてみるよ!綺麗な色だな……え!?」
心臓が大きく跳ね上がった。
「あの子は!!!」
あの時の犬耳の少女だ!彼女は俺と一緒にヒトツメに捕えられていた子だ!あの時は、泥で汚れていて黒犬の獣人だと思っていたが、金色の狼の獣人だ。
「あの子もオークションに出されるのか!?」
「そりゃそうさ……今回のメインだろうね」
「そうか……生きてたのか……」
虚な目をした少女と目が合った。しかし少女は俺を見るなり鋭い眼光で睨み返してきた。
「えっ!?どうして?」
どうして睨まれるんだ?あの時君を置いて消えたからか?しかし、今の俺の姿はあの時とは違う。彼女が今の俺を見るのは初めてのはず。なのに何故!?
「あんた……悪い人だねぇ」
「え?俺が?」
「奴隷を見るのがそんなに楽しいかい?」
「!?」
しまった!ヒトツメの恐怖と絶望を思い出して、自然と笑顔になっていた。
「そんなつもりじゃ……」
俺はなんて事を……。
「くそっ!」
走ってギルドへ向かった。




